人身事故・死亡事故

法律の規制

自動車運転中に人身事故を起こした場合の罰則については、自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律(自動車運転死傷行為処罰法)によって規定されています。

従来は刑法の中に規定が置かれていましたが、自動車事故の多発と国民の処罰感情の高まりを受けて、規制を強化する形で、平成25年に当該法律が制定されました。

 

犯罪類型

危険運転致死傷罪

以下に記載する行為により、人を負傷させた者は、15年以下の懲役が、人を死亡させた者は1年以上の有期懲役が科されます(自動車運転死傷行為処罰法2条)。

  • 酩酊運転
    飲酒薬物の影響により、正常な運転が困難な状態で自動車を走行させる行為
  • 制御困難運転
    進行を制御することが困難な高速度で、自動車を走行させる行為
  • 未熟運転
    進行を制御する技能を有しないで、自動車を走行させる行為
  • 進路妨害
    人または車の通行を妨害する目的で、走行中の自動車の直前に進入し、その他通行中の人または車に著しく接近し、かつ、重大な交通の危険を生じさせる速度で自動車を運転する行為
  • 信号無視
    赤色信号又はこれに相当する信号を殊更に無視し、かつ、重大な交通の危険を生じさせる速度で自動車を運転する行為
  • 通行禁止違反
    通行禁止道路を進行し、かつ、重大な交通の危険を生じさせる速度で自動車を運転する行為

 

準危険運転致死傷罪

アルコールや薬物、あるいは一定の病気による影響により、正常な運転に支障が生じるおそれがある状態で、自動車を運転し、よって、そのアルコール又は薬物、あるいはその病気の影響により、正常な運転が困難な状態に陥り、人を死傷させた場合に成立します。

人を負傷させた場合には、12年以下の懲役が、人を死亡させた場合には、15年以下の懲役が科されます(自動車運転死傷行為処罰法3条)。

 

過失運転致死傷アルコール等影響発覚免脱罪

過失による事故の場合でも、運転時のアルコール又は薬物の影響が発覚することを免れる目的で、さらにアルコール又は薬物を摂取したり、逃走して身体に保有するアルコール又は薬物の濃度を減少させることなどして、その影響の有無又は程度が発覚することを免れるべき行為をしたときは、12年以下の懲役が科されます(自動車運転死傷行為処罰法4条)。

従来、飲酒運転により事故を起こした場合に、逃げ得の問題を解消するために規定されました。

 

過失運転致死傷罪

自動車の運転上必要な注意を怠り、よって人を死傷させた者は、7年以下の懲役又は100万円以下の罰金が科されます(自動車運転死傷行為処罰法5条)。

前方不注視やスピード違反などの過失により、自動車事故で人を負傷させたり、死亡させたりする場合に成立します。

 

無免許による加重

上記、各類型の罪を犯した場合に、事故の時点で無免許だった場合には、刑罰が加重されています(自動車運転死傷行為処罰法6条)。

危険運転致死傷罪の適用がされるハードルが高かったことから、無免許運転による重大事件の際の刑罰が軽すぎるという社会的批判を受けて、規定されました。
 
自動車運転死傷行為処罰法における犯罪類型別の法定刑一覧は、以下の表にまとめています。

行為態様・死傷結果 法定刑 無免許による加重
過失による事故 負傷事故 7年以下の懲役若しくは禁錮、
又は100万円以下の罰金
10年以下の懲役
死亡事故
飲酒や薬物の発覚を免れる行為をした場合 12年以下の懲役 15年以下の懲役
危険運転 負傷 15年以下の懲役 6月以上の懲役
死亡 1年以上20年以下の懲役 なし
準危険運転 負傷 12年以下の懲役 15年以下の懲役
死亡 15年以下の懲役 6月以上の懲役

 

人身事故・死亡事故における弁護活動

無実の主張

人身事故・死亡事故を起こしてしまっても、運転者に不注意(過失)がなければ、犯罪は成立しません。
そこで、そのような場合には、客観的証拠に基づき運転状況や被害者の行動などを精査し、運転者が人身事故を予測することは困難であったことや、十分に注意していても事故を回避することは困難であったことなどを主張していきます。
こうした主張が認められれば、無罪判決や不起訴処分につながります。

また、危険運転致死傷罪は、故意犯ですから、不注意で人身事故・死亡事故を起こしてしまったような場合には、過失運転致死傷罪の成立に止まることを主張し、不当に重い刑責を負わされないよう活動します。

 

被害弁償と示談交渉

自動車事故などによる犯罪成立に争いがない場合、主な弁護活動は被害者・遺族の方に対する被害弁償や示談交渉になります。こうした活動を通じて、被害者に対する償いの気持ちを伝えます。

示談が成立すると、被害者の方に生じた被害結果が大きい場合や犯行態様が悪質な場合を除いて、起訴猶予による不起訴処分や執行猶予判決を受けられる可能性があります。

また、危険運転致死傷罪が適用されるような場合や、被害者が重大な傷害を負ったり、死亡したりした場合には、被害者感情が極めて強いことが多々あります。

そのような場合でも、被害者やの方に弁償や謝罪を通じて示談を模索することは重要ですが、容易ではありません。
被害者参加制度というものを利用して、被害者が法廷で、被害感情などの意見を述べることもあります。

 

裁判員裁判

危険運転により人を死亡させた場合には、裁判員対象事件となるため、無罪を主張する場合でも、罪を認める場合でも、裁判員の方を納得させるだけの材料が必要ですし、分かりやすい主張であることを心掛けなければなりません。

裁判員裁判では、連日の集中審理が行われますから、それまでに弁護側の主張を効果的に伝えるためにも綿密な事前の準備をすることが大切です。

 

情状(減刑)の主張

自動車事故などについて有罪判決が下されることを免れないとしても、被害者や遺族の方などに対する被害弁償や示談成立の事実、加害者の不注意の程度が軽微であったことなど被告人に有利な事情を主張・立証して、減刑・執行猶予判決の獲得を目指します。

また、重大事故を起こしてしまった場合や、無免許で事故を起こしてしまったような場合、今後車に乗ることがないように廃車にするなどの環境を整えることも検討します。

 

身柄解放活動

人身事故・死亡事故で逮捕・勾留されてしまった場合でも、証拠隠滅・逃亡の恐れがないことや養うべき家族がいることなど、加害者の酌むべき事情を警察・検察や裁判所に対して積極的に主張し早期の釈放・保釈を目指します。

 

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