覚せい剤取締法違反で緊急逮捕

2020-06-07

覚せい剤取締法違反事件で緊急逮捕される場合について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所神戸支部が解説します。

~ケース~
自営業のAさんが、覚せい剤を使用した疑いで、兵庫県明石警察署緊急逮捕されました。
Aさんは、6月7日未明、兵庫県明石市内の路上で不審な動きをしていたため、兵庫県明石警察署の警察官が職務質問をし、尿検査の結果、覚せい剤の陽性反応が出たため、Aさんを緊急逮捕しました。
Aさんは、容疑を認めています。
(フィクションです。)

人の身体を拘束する強制処分である「逮捕」は、原則として、事前に裁判官が発布する逮捕状によるものでなければなりません。
しかし、例外として、逮捕状なく逮捕することも認められています。
逮捕状のない逮捕には、「現行犯逮捕」と「緊急逮捕」とがあります。

今回は、緊急逮捕について解説します。

緊急逮捕とは

刑事訴訟法第210条1項は、緊急逮捕について規定しています。

第二百十条 検察官、検察事務官又は司法警察職員は、死刑又は無期若しくは長期三年以上の懲役若しくは禁錮にあたる罪を犯したことを疑うに足りる充分な理由がある場合で、急速を要し、裁判官の逮捕状を求めることができないときは、その理由を告げて被疑者を逮捕することができる。この場合には、直ちに裁判官の逮捕状を求める手続をしなければならない。逮捕状が発せられないときは、直ちに被疑者を釈放しなければならない。

緊急逮捕は、
①死刑・無期・長期3年以上の懲役・禁固にあたる罪を犯したことを疑うに足りる充分な理由があり、
②急速を要し、
③裁判官の逮捕状を求めることができず、
④逮捕の必要性がある場合に、
その理由を被疑者に告げた上で、逮捕するものです。

緊急逮捕が許されるのは、重い罪に制限されています。
重い罪といっても、①に該当する罪は多く、殺人罪、傷害罪、強盗罪、強制性交等罪、強制わいせつ罪、現住建造物等放火罪といったものから、窃盗罪、公務執行妨害罪、器物損壊罪も含まれます。
上のケースでは、Aさんは覚せい剤取締法違反(使用)を疑われていますが、本罪の法定刑は、10年以下の懲役ですので、長期3年以上の懲役にあたる罪となります。
そして、そのような重い罪を犯したと疑うだけの充分な理由が必要です。

また、緊急逮捕が許されるのは、その名の通り、「緊急性」の要件を満たしている場合です。
すぐに逮捕しなければ逃げてしまう、今逮捕しないと証拠が隠滅されてしまう、といったような切迫した状況にあって、裁判官に逮捕状を請求して、裁判官が逮捕状を発布するのを待っている時間がない場合です。

刑事訴訟法には、その要件が記載されていませんが、通常逮捕の要件である「逮捕の必要性」も緊急逮捕の要件のひとつと解されます。
つまり、「逃亡するおそれ」や「犯罪の証拠を隠滅するおそれ」です。

緊急逮捕の場合、直ちに裁判官の逮捕状を求める手続をしなければなりません。

緊急逮捕は、通常逮捕および現行犯逮捕と以下の点で異なります。

通常逮捕との大きな違いは、事前に裁判官から逮捕状が発布されているか否かという点です。
通常逮捕は、裁判官が発布した逮捕状で逮捕するのに対し、緊急逮捕は、逮捕状なく逮捕することができます。
また、通常逮捕の要件に「罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由」があることとされますが、緊急逮捕では「罪を犯したことを疑うに足りる充分な理由」がある場合にのみ逮捕することができます。
緊急逮捕には、通常逮捕における「相当」な理由よりも高度の嫌疑があることが求められるのです。
さらに、緊急逮捕の対象となる犯罪は、死刑・無期・長期3年以上の懲役・禁固に当たる罪に限定されています。

現行犯逮捕は、逮捕状なしに逮捕できる点で、緊急逮捕と同じですが、緊急逮捕は犯人の身柄を拘束した後で、すぐに逮捕状を裁判官に請求しなければなりません。
また、現行犯逮捕は一般人でも可能ですが、緊急逮捕ができるのは検察官、検察事務官、司法警察職員に限られます。

緊急逮捕された後の流れは、通常逮捕や現行犯逮捕と同じです。

逮捕から48時間以内に検察官に送致されるか否かが決まり、検察官が被疑者の身柄を受けてから24時間以内に勾留請求をするか否かが決まります。
逮捕から勾留までの期間は短く、逮捕から長くても3日で勾留が決まってしまいます。
「家族が逮捕された!」と慌てふためいている間に、勾留が決まり長期間の身体拘束を余儀なくされる…ということもあります。

ご家族が刑事事件を起こし逮捕されてしまったのであれば、できる限り早い段階で弁護士に相談・依頼されることをお勧めします。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、覚せい剤取締法違反事件も含めた刑事事件・少年事件を専門に扱う法律事務所です。
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