ネット上の誹謗中傷で刑事事件に

2021-01-10

ネット上の誹謗中傷刑事事件に発展する場合について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所神戸支部が解説します。

~事例~
兵庫県南あわじ警察署は、ある日の早朝にAさんの自宅を訪れました。
「V社に対するネット上の誹謗中傷で、何か身に覚えはありませんか。」と尋ねられたAさんは、昨年まで勤めていたV社が「反社会的勢力と裏取引をしている」、「V社はブラック企業」、「V社は社員を奴隷扱いしている」などと、あることないことネットに書き込んでいたことを認めました。
Aさんは、人間関係のトラブルからV社を退社することになったため、その腹いせにネット上で誹謗中傷の書き込みを1年ほど続けていました。
Aさんは、大変なことをしてしまったと反省しており、今後どのような処分を受けることになるのか不安でたまりません。
(フィクションです)

止まぬネット上の誹謗中傷

インターネットの普及に伴い、ネット上でのトラブルも増加しています。
特に、SNSや掲示板での誹謗中傷の書き込みは後を絶ちません。
残念ながら、ネット上では相手方に自分の顔や名前を知られることがないということをいいことに、相手の気持ちを無視した無責任な書き込みをする者は少なくありません。
しかしながら、ネット上の誹謗中傷は刑法上の名誉棄損罪や侮辱罪にあたる可能性があります。

(1)名誉毀損罪

刑法第230条 公然と事実を摘示し、人の名誉を毀損した者は、その事実の有無にかかわらず、3年以下の懲役若しくは禁錮又は50万円以下の罰金に処する。

◇客体◇

名誉毀損罪の客体は、「人の名誉」です。
ここでいう「人」には、自然人のほかに、法人、法人格のない団体も含まれますが、特定の人や団体であることが求められます。
「関西人」といった漠然とした集団は「人」には含まれません。
「名誉」とは、人に対する社会一般の評価を意味します。
ざっくり言えば、「自分が社会からどのように評価されているのか」に関わるものです。
名誉毀損罪における「名誉」には、人の経済的な支払能力や支払意思に対する社会的評価は含まれません。
また、「名誉」は、その内容としての人の価値は積極的(ポジティブ)なものに限られ、消極的な(ネガティブ)価値は含まれません。

◇行為◇

名誉毀損罪の行為は、「公然と事実を適示し」て「人の名誉を毀損」することです。
「公然」とは、不特定または多数人が認識し得る状態のことをいいます。
SNSやネット掲示板における書き込みは、通常誰でも閲覧可能である状態であることから、公然性は認められるでしょう。
適示される「事実」は、人の社会的評価を害するに足りる事実でなければなりません。
人の社会的評価を害するか否かは、相手方のもつ名誉如何によって決まります。
例えば、医者でもない者に「医者のくせに風邪も治せないやぶ医者」といっても、相手方はそもそも医者ではないので、適示された事実によって社会的評価を害することはありません。
適示される事実については、それが真実が否か、公知か否か、過去のものか否か、といったことは問いません。
「適示」とは、具体的に人の社会的評価を低下させるに足りる事実を告げることをいい、その方法・手段は特に制限されません。
そして、社会的評価を害するおそれのある状態を発生させれば「人の名誉を毀損」したことになり、通常、公然と事実を適示することにより、通常人の名誉は毀損されたものといえ、既遂に達することになります。

◇故意◇

名誉毀損罪の成立には、行為者において、他人の社会的評価を害し得る事実を不特定または多数人が認識し得る形で適示していることについての認識がなければなりません。

(2)侮辱罪

刑法第231条 事実を摘示しなくても、公然と人を侮辱した者は、拘留又は科料に処する。

◇客体◇

侮辱罪の客体は、「人の名誉」です。

◇行為◇

侮辱罪の行為は、「公然と人を侮辱」することです。
「公然」および「人」については、名誉毀損罪におけるそれらの意義を同じです。
「侮辱」とは、他人の人格を蔑視する価値判断を表示することをいいます。

名誉毀損罪と侮辱罪との違い

名誉毀損罪と侮辱罪は、公然と人の社会的評価を低下させ得ることを示す点で共通していますが、これらの罪は、具体的な事実を示す場合が名誉毀損罪、具体的な事実ではない抽象的な評価などを示す場合が侮辱罪に該当すると言えます。
上記事例においては、「反社会的勢力と裏取引をしている」、「V社はブラック企業」、「V社は社員を奴隷扱いしている」と書き込んでおり、それらを具体的な事実とまでは言えず、抽象的な評価の適示にとどまるため、侮辱罪が成立するものと考えられます。

刑事事件に発展した場合

名誉毀損罪も侮辱罪も、告訴がなければ公訴を提起することができない「親告罪」と呼ばれる罪です。
「告訴」というのは、犯罪の被害者やその他の告訴権者が、捜査機関に対して犯罪事実を申告し、その訴追を求める意思表示のことです。
親告罪は、被害者らが「犯人を厳しく処罰してください。」と捜査機関に申し出ることで、検察官は起訴することができる罪です。
つまり、被害者らからの申し出がなければ、検察官は起訴することができません。
そのため、刑事事件となった場合でも、被害者との間で示談を成立させ、行為者の処罰を求めない旨の合意を成立させることができれば、起訴されることはありませんので、名誉棄損・侮辱事件においては、何よりも被害者との示談が重要になります。
しかしながら、示談交渉を当事者間で行うことはあまりお勧めできません。
当事者同士の交渉は、感情的になり易く、交渉が難航する場合が多いからです。
また、示談が成立した場合であっても、法律に詳しくない者同士では、合意内容を適切に示談書にすることは難しく、後々言った言わないの争いに発展することもあるからです。
被害者との示談交渉は、法律の専門家である弁護士を介して行うのがよいでしょう。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件・少年事件を専門に扱う法律事務所です。
ネット上の誹謗中傷刑事事件に発展し対応にお困りであれば、弊所の弁護士に一度ご相談ください。
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