文書偽造罪・偽造文書行使罪

※2025年6月1日より、改正刑法に基づき懲役刑および禁錮刑は「拘禁刑」に一本化されました。当ページでは法改正に基づき「拘禁刑」と表記していますが、旧制度や過去の事件に関連する場合は「懲役」「禁錮」の表現も含まれます。

文書偽造の罪とは、刑法の第二編17章「文書偽造の罪」に規定される犯罪類型の総称です。

文書には様々な種類がありますが、社会生活の基盤として重要な機能を有しています。
そこで、刑法に、文書の社会的信用性を保護するために、一定の類型に分類したうえで、文書の信用性を害するような行為を処罰の対象として規定されています。

犯罪類型

 刑法は、文書偽造の罪として、以下のものを規定しています。
 詔書偽造等罪(154条) 
 公文書偽造等罪(155条)
 虚偽公文書作成等罪(156条)
 公正証書原本不実記載罪(157条)
 偽造公文書行使等罪(158条)
 私文書偽造等罪(159条)
 虚偽診断書等作成罪(160条)
 偽造私文書行使罪(161条)
 電磁的記録不正作出・供用罪(161条の2)

行為類型

文書偽造罪では、処罰の対象となる行為として、偽造・虚偽文書作成・変造・行使が規定しています。

  • 偽造とは、権限なく他人名義の文章を作成することをいいます。文書の名義人と作成者の人格の同一性を偽ることともいわれます。
    名義人というのは、文書自体から看取される意思・観念の表示主体のことを指し、作成者というのは、文書に意思・観念を表示した者をいいます。
  • 虚偽文書作成とは、文書の作成権限を有する者が内容虚偽の文書を作成することをいい、無形偽造とも呼ばれます。
  • 変造とは、真正に成立した文書に変更を加えることをいい、作成名義人でない者よってなされる場合(有形偽造)と、作成名義人によってなされる場合(無形偽造)とがあります。
  • 行使とは、偽造された文書等を内容が真実である文書等として使用することをいいます。

    また、文書偽造の罪は、公文書と私文書の大きく2つに分けることができます。


公文書とは、健康保険証・運転免許証・戸籍謄本など役所や公務員が作成する文書のことをいい、私文書とは、申込書・誓約書・契約書など公文書以外の文書で権利や義務若しくは事実関係を証明する文書のことをいいます。
一般に私文書よりも公文書の方が、社会の信用は厚いと考えられるので、公文書を偽造するなどした場合のほうが、私文書の場合よりも法定刑が重くなっています。

さらに、文書偽造罪は、有印文書偽造罪と無印文書偽造罪にも分けられます。
印鑑が押してある・署名がされている文書を偽造した場合は、有印文書偽造罪に、そうでない場合は、無印文書偽造罪に分類されます。
この場合も、より社会的信用が高いと考えられる有印文書に対する偽造等の方が、無印文書の場合よりも重い法定刑となっています。

このように、社会一般で、信用性の高い重要な文書に対する場合ほど、刑責が重く定められています。下記のように整理することができます。

罪名 行為 対象文書等 法定刑
詔書偽造罪 偽造・有形変造 詔書のような特別な文書 無期又は3年以上の拘禁刑
公文書偽造罪 偽造・有形変造 有印公文書 1年以上10年以下の拘禁刑
無印公文書 3年以下の拘禁刑又は
20万円以下の罰金
虚偽公文書作成罪 虚偽文書作成・無形変造 特別な公文書 無期又は3年以上の拘禁刑
有印公文書 1年以上10年以下の拘禁刑
無印公文書 3年以下の拘禁刑又は
20万円以下の罰金
公正証書原本不実記載罪 公務員に虚偽の申立てをして、不実の記載をさせること 権利又は義務に関する公正証書の原本 5年以下の拘禁刑又は
50万円以下の罰金
免状・艦札・旅券 1年以下の拘禁刑又は
20万円以下の罰金
私文書偽造罪 偽造・無形変造 有印私文書 3月以上5年以下の拘禁刑
無印私文書 1年以上10年以下の拘禁刑
虚偽診断書等作成罪  (医師による)虚偽文書作成 公務所に提出すべき診断書、検案書、死亡証書 3年以下の拘禁刑又は30万円の罰金
電磁的記録不正作出・供用罪 電磁的記録の不正作成 権利・義務・事実署名に関する電磁的記録 5年以下の拘禁刑又は
50万円以下の罰金
公務所又は公務員により作られるべき電磁的記録 10年以下の拘禁刑又は
100万円以下の罰金
虚偽公文書行使罪 行使・供用 各偽造・変造等された文書や電磁的記録 各偽造・変造等に係る法定刑と同一
虚偽私文書行使罪
電磁的記録不正供用罪

文書偽造罪において最も注意しなければならないのは、同罪が目的犯であるということです。
この点は、裁判でもよく争われます。目的犯とは、一定の目的をもって犯罪行為をしなければ成立しない犯罪類型です。

文書偽造罪は、「行使の目的」がなければ成立しません。

~文書偽造事件・偽造文書行使事件における弁護活動~

無罪弁護

文書偽造の容疑で捕まってしまった場合、捜査機関が嫌疑の根拠としている証拠が不十分であること、場合によっては犯罪に該当しないことなどを主張することが考えられます。

また、文書を偽造してしまった・偽造文書を使ってしまった場合でも、犯罪の不成立を主張する余地はあります。
例えば、偽造文書を使う目的はなかった(「行使目的」の否定)・他人を誤信させるつもりはなかった(「行使」の否定)ことなどを客観的な証拠に基づき主張します。

こうした弁護活動によって、不起訴処分や無罪判決を勝ち取り、前科を回避します。

被害弁償や示談交渉

文書偽造罪・偽造文書行使罪は詐欺などの手段に用いられることが多く、被害が発生している場合には、早急に被害弁償や示談交渉を進める必要があります。

文書偽造による被害が軽微である・組織的反復的な犯行でないなどの事情があれば、示談成立による釈放や起訴猶予による不起訴処分の可能性があります。

不起訴処分になれば、前科を回避でき日常生活に障害が発生することもありません。

減刑(情状弁護)の主張

文書偽造事件・偽造文書行使事件で有罪判決を免れないとしても、犯行態様や反省の態度など被告人に有利な事情を主張して、少しでも減刑されるように弁護します。
また、執行猶予付き判決の獲得も目指します。

身柄解放活動

文書偽造事件・偽造文書行使事件で逮捕・勾留されてしまっても、容疑者・被告人が早期に釈放・保釈されるように弁護活動を行います。

具体的には、客観的証拠に基づき証拠隠滅するおそれや逃亡するおそれがないことを主張・立証していきます。

 

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