Archive for the ‘薬物事件’ Category

覚醒剤所持の再犯 執行猶予の可能性は?

2024-02-25

覚醒剤所持の再犯で起訴された事件を参考に、一部執行猶予について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所神戸支部が解説します。

参考事件
Aさんは、3年前、神戸地方裁判所で覚醒剤の使用および所持で懲役1年6月執行猶予3年が言い渡されました。
その後、Aさんは覚醒剤とは縁を切り、真面目に仕事をしていました。
しかし、職場の人間関係のトラブルから強いストレスを感じるようになったAさんは、再び覚醒剤に手を出すようになりました。
そして、Aさんは、兵庫県葺合警察署に、覚醒剤所持の容疑で現行犯逮捕されました。
Aさんは、再び覚醒剤に手を出してしまったことを大変後悔していますが、今度こそは実刑になるのではと不安でなりません。
(フィクションです。)

覚醒剤の使用および所持については、10年以下の懲役が法定刑となっています。

懲役刑というのは、刑務所に収容され、刑務作業を負う刑罰のことです。
懲役刑が執行されると、刑務所に収監されることになります。
ただ、刑の執行が猶予されると、直ちに刑務所に収監されることはなく、社会で通常の生活を起こることができます。
言い渡された刑の執行が猶予されることを「執行猶予」といいます。

執行猶予について

執行猶予は、判決で刑を言い渡すにあたり、一定の期間その刑の執行を猶予し、その猶予期間中罪を犯さず経過すれば、刑の言い渡しの効力を失わせる制度です。

執行猶予の要件

執行猶予には、刑の全部の執行猶予と刑の一部の執行猶予とがありますが、まずは前者の要件について説明します。

刑の全部の執行を猶予することができるのは、
①前に禁固以上の刑に処せられたことがない者、または、
②前に禁固以上の刑に処せられた者であっても、その執行を終わった日又はその執行の免除を得た日から5年以内に禁固以上の刑の処せられたことがない者
が、3年以下の懲役もしくは禁固または50万円以下の罰金の言い渡しがなされる場合です。

この場合、情状により、裁判が確定した日から1年以上5年以下の期間で刑の全部の執行を猶予することができます。

覚醒剤の使用・所持の法定刑は10年以下の懲役ですので、3年以下の懲役を言い渡すことは可能です。
初犯であれば、執行猶予が付くことが多いようです。

覚せい剤事件で再度の執行猶予の可能性は?

覚醒剤のような薬物事犯は、残念ながら再犯率が高いです。
上のケースのように、執行猶予期間中に再び薬物に手を出してしまう事案は少なくありません。
実は、執行猶予期間中に再び罪を犯してしまった場合でも、再度執行猶予となる可能性はあります。
それを「再度の執行猶予」といいます。

再度の執行猶予となるには、以下の要件を全て満たす必要があります。

①前に刑の全部の執行猶予が付された懲役または禁固の判決を受けていること。
②執行猶予期間中に、1年以下の懲役または禁錮の判決を受けること。
③情状に特に酌量すべきものがあること。
④保護観察中に罪を犯したものでないこと。

覚醒剤事件では、初犯で懲役1年6月執行猶予3年となるのが相場となっています。
再犯の場合、1年以上の懲役の判決が言い渡される可能性が極めて高く、覚醒剤事件で、再度の執行猶予となる可能性はかなり低いと言えるでしょう。

一部執行猶予について

執行猶予期間中に覚醒剤の再犯で有罪判決を受けた場合、実刑となる可能性は極めて高いです。
しかしながら、実刑の場合にも、刑の一部の執行を猶予することを目指すという選択肢もあります。

服役期間の一部の執行を猶予する「一部執行猶予制度」は、2016年6月から施行されています。
一部執行猶予を定めているのは、刑法と、薬物使用等の罪を犯した者に対する刑の一部の執行猶予に関する法律です。

◇刑法上の一部執行猶予◇
(1)前科要件
・初めて刑に服する者。
・禁固以上の前科の執行終了または免除後、5年以内に禁固以上の刑に処せられていない者。
(2)宣告刑
3年以下の懲役または禁固。
(3)再犯防止の必要性・相当性
犯情の軽重及び犯人の境遇その他の事情を考慮して、再犯防止に必要かつ相当であること。

◇薬物法上の一部執行猶予◇
(1)前科要件
刑法、大麻取締法、毒物及び劇物取締法、覚醒剤取締法、麻薬及び向精神薬取締法及びあへん法に定める薬物使用等の罪を犯した者。
(2)宣告刑
3年以下の懲役または禁錮。
(3)再犯防止の必要性・相当性
刑法上の要件に加えて、刑事施設内処遇に引き続き、薬物依存の改善に資する社会内処遇を実施する必要性があること。
こちらは、保護観察が必要的に付されます。

一部執行猶予は、全部実刑と比べると、刑務所に服する期間が短くなる等のメリットがあります。
他方、ほぼすべての一部執行猶予に保護観察が付されるため、全部実刑に比べ、服役期間と出所後の猶予期間の全体をみれば、公的機関の干渉を受ける期間は長い等といったデメリットもあります。

一部執行猶予を目指すべきか否かは、刑事事件に精通する弁護士に相談されるのがよいでしょう。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所神戸支部は、覚醒剤事件も含めた刑事事件・少年事件を専門に扱う法律事務所です。
無料法律相談初回接見サービスに関するお問い合わせは、フリーダイヤル0120-631-881までお電話ください。

【事件速報】独身寮で乾燥大麻を所持 兵庫県警巡査を現行犯逮捕

2023-06-23

【事件速報】兵庫県警巡査が独身寮で乾燥大麻を所持していたとして現行犯逮捕された事件について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所神戸支部が解説します。

事件内容(6月22日配信の産経新聞記事を引用

現職の警察官が乾燥大麻を所持していたとして、兵庫県警に現行犯逮捕されるという衝撃的な事件が発声しました。
報道によりますと、今年に入って「警察官が大麻を使用している。」という情報提供があり、兵庫県警が捜査を進めていたようで、6月22日の早朝、逮捕された巡査の住む、兵庫県警の独身寮に捜索に入り、そこで少量の乾燥大麻が発見押収されて現行犯逮捕されたようです。

大麻所持

大麻取締法で、大麻の所持や栽培、譲渡、譲受、輸出入等が禁止されています。
※大麻取締法では、大麻の使用は規制対象となっていない

大麻取締法によると、規制されている「大麻」とは、大麻草(カンナビス・サティバ・エル)及びその製品のことで、これらには幻覚作用を示すTHC(テトラヒドロカンナビノール)という成分が含まれています。
他方、大麻草の成熟した茎及びその樹脂を除く製品や、大麻草の種子及びその製品は、この成分が含まれていないので規制されていません。(大麻取締法第1条参照)
かつて、大麻といえば植物片の形状をした「乾燥大麻」が主流でしたが、最近は、液体やワックス状の大麻も流通しており、こういった製品もTHC(テトラヒドロカンナビノール)という成分が含まれている場合は大麻取締法違反の対象となります。

大麻所持の罰則と量刑

大麻を所持していたとして有罪が確定すれば「5年以下の懲役」が科せられますが、営利目的で所持していた場合は「7年以下の懲役」が科せられ、懲役刑と合わせて200万円以下の罰金も合わせて科せられることがあります。
今回逮捕された巡査は「自分で使うために持っていた」と供述し、実際に押収された大麻の量も少量みたいなので、営利目的ではないでしょうから、有罪が確定した場合は「5年以下の懲役」が適用されるでしょうが、警察に押収された大麻の量が微量の場合は起訴されない場合もあります。

自己使用の大麻所持事件は、起訴されたとしても、初犯であれば、100%に近い確率で執行猶予判決となりますが、再犯の場合は、実刑判決が言い渡される可能性もあるので注意が必要です。

大麻所持事件の弁護活動

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所神戸支部は薬物事件等の刑事弁護活動を専門にしている法律事務所です。
ご家族、ご友人が大麻所持で逮捕されてしまった方や、ご自身が大麻所持で警察の捜査を受けておられる方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所神戸支部の、初回接見サービス無料法律相談をご利用ください。

覚醒剤の営利目的輸入で逮捕 覚醒剤取締法の故意

2023-06-14

覚醒剤の営利目的輸入で逮捕された事件を参考に、覚醒剤取締法の故意について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所神戸支部が解説します。

参考事件(6月12日配信のサンテレビ記事を参考

兵庫県警は、オランダから覚醒剤約250グラムを密輸したとして、覚醒剤取締法違反(営利目的輸入)の容疑で30代の女性を逮捕、送検したと発表しました。
報道によりますと、逮捕された女性は「即金性のある仕事を探している」などとSNSに投稿して事件に関与したようで、取調べに対しては「違法薬物などである可能性が高いとの認識はありました」とおおむね容疑を認めているようです。

覚醒剤の営利目的輸入

覚醒剤取締法において、覚醒剤に関することが規制されていますが、その中でも覚醒剤の営利目的輸入は非常に厳しい罰則となっています。
まず覚醒剤取締法で規制されて主な行為は、所持や使用、譲渡、譲受、製造、輸出入です。
その中でそれぞれの規制内容に、その行為が営利目的である場合と、営利目的ではない場合に分類されており、営利目的の場合は厳罰化されています。
覚醒剤の輸入の場合ですと、営利目的でない場合の罰則規定が「1年以上の有期懲役」であるのに対して、営利目的の場合は「無期又は3年以上の懲役、情状により1000万円以下の罰金を併科」と非常に厳しいものです。
有罪になったとしても、執行猶予を得ることで服役を免れれる可能性は残されていますが、初犯であっても実刑判決となる可能性は十分に考えられる犯罪ですので、起訴前は取調べの対応を、そして起訴後は証拠を精査し、刑事裁判でどういった主張をしていくのかを専門の弁護士に相談することをお勧めします。
また覚醒剤の営利目的輸入罪で起訴された場合、刑事裁判は裁判員裁判で審議されることになります。

覚醒剤取締法の故意

今回の事件のような覚醒剤の密輸事件等では、覚醒剤であることの認識を否認したり、曖昧な供述にとどめるなどして、薬物事件の故意が争点となることが少なくありません。
こういった場合の刑事裁判では、検察官が被告人の違法薬物の認識に関する間接事実を積み重ねてその故意を立証しますが、今回のような裁判員裁判の対象事件の場合は、被告人が薬物の種類や性質について明確に認識していたことまでの認定ができずに無罪判決が言い渡された事件も存在します。
今回の事件で逮捕された女性は、警察の取調べにおいて「違法薬物などである可能性が高いとの認識はありました」と供述しているようです。
この供述内容は、法律的に不確定ながらも、覚醒剤取締法における故意を認めていることになるでしょうが、今後起訴されて裁判員裁判で審理された場合に、この供述だけで故意が認められるかは分かりません。
このように覚醒剤取締法における「故意」は、犯罪として成立するかどうかを見極める大きなポイントとなりますので、早い段階で専門の弁護士に相談することをお勧めします。

薬物事件に強い弁護士に相談を

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所神戸支部では、薬物事件に関するご相談を初回無料で、また薬物事件で逮捕された方への 初回接見 については即日で対応しています。
兵庫県内の薬物事件でお困りの方は フリーダイヤル0120-631-881 までお気軽にお問い合わせください。

姫路駅前で職務質問 採尿後に覚醒剤使用容疑で逮捕

2023-05-27

姫路駅前で職務質問され、採尿後に覚醒剤使用容疑で逮捕された事件について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所神戸支部が解説します。

参考事件

無職のAさんは、3日前に、姫路駅前を歩いていたところ、兵庫県姫路警察署の警察官に職務質問されました。
覚醒剤の使用事件で逮捕されたことのあるAさんは、警察官に任意採尿を促されて、警察署に任意同行されて採尿されました。
この日は、その後帰宅することができたAさんですが、実は、採尿される2,3日前に覚醒剤を使用しています。
Aさんは、いつ警察に逮捕されるのかが不安で、刑事事件に強いと評判の弁護士に相談しました。(フィクションです)

~覚醒剤使用事件の流れ~

1 採尿
覚醒剤の使用は、尿に覚醒剤成分が含まれているかどうかで判断されるので、覚醒剤の使用が疑われた方は、まず警察に採尿されます。
採尿には、任意採尿強制採尿の2種類があり、Aさんの場合は警察署において自ら排尿しているので任意採尿です。
強制採尿は、任意採尿を拒否した場合、警察官が裁判官に対して強制採尿の許可状(捜索差押許可状)を請求し、その許可状をもとに強制的に採尿されることで、自ら排尿しない場合は、病院に連行されて尿道にカテーテルを挿入して、膀胱にたまっている尿を強制的に排出させられます。

2 尿の鑑定
鑑定は
①採尿直後に警察官が専用のキットや、機械を使用してその場で行う場合
②採尿した尿が科学捜査研究所に持ち込まれて鑑定される場合

の2種類があります。
①は簡易鑑定と呼ばれており、簡易鑑定は数分で鑑定結果が出るので、もし覚醒剤反応が陽性だった場合は、その場で緊急逮捕される可能性が非常に高いです。
簡易鑑定が行われた場合も、その後、科学捜査研究所に残りの尿が持ち込まれて鑑定を受けますが、簡易鑑定の結果が覆る可能性は非常に低いです。
また鑑定結果は、基本的に「陽性」「陰性」に二分されますが、簡易鑑定では、ごくたまに「擬陽性(ギヨウセイ)」という結果が出ることがあります。
尿から何らかの覚醒剤成分が検出されて限りなく陽性に近いが、覚醒剤の使用を約束するまでではないといった結果ですので、その場で逮捕されることはなく、いったん解放されて、科学捜査研究所での鑑定結果を待つことになります。
②の場合、Aさんのように採尿後、いったん帰宅が許されますが、科学捜査研究所の鑑定によって覚醒剤反応が陽性だった場合は、警察官が逮捕状を請求して、後日、通常逮捕されることとなります。
採尿から逮捕されるまでの期間は定まっておらず、短い方は数日以内に逮捕されますが、長い方は半年近く経って逮捕される場合もあります。

姫路市の薬物事件でお困りの方、覚醒剤の使用事件で逮捕される可能性のある方は、薬物事件を扱っている刑事事件に強い「弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所神戸支部」にご相談することをお勧めします。

覚醒剤使用罪で逮捕 逮捕の種類と逮捕後の流れについて~①~

2023-05-03

覚醒剤使用罪で逮捕された方の事件を参考に、逮捕の種類と逮捕後の流れについて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所神戸支部が解説します。

覚醒剤使用罪で逮捕された事件

Aさんは、覚醒剤使用で過去に執行猶予判決を受けた前科があります。
現在は、その執行猶予期間も経過しているのですが、先日、知人から誘われて覚醒剤を使用してしました。
そして、使用して1週間も経過しないうちに、高砂市のスナックで他の客とトラブルを起こしてしまい、警察官が臨場する騒ぎになってしまったのです。
トラブル自体は警察沙汰になることなくおさまったのですが、そこで覚醒剤前科があったAさんは、警察署に任意同行されて任意採尿されてしまい、その尿から陽性反応が出たことから、Aさんは覚醒剤取締法違反(使用罪)緊急逮捕されたのです。
(フィクションです。)

覚醒剤使用事件で逮捕される場合、Aさんのように、採尿後に簡易鑑定されて、陽性反応が出た時点で、緊急逮捕されることもあれば、採尿された数日後に、通常逮捕されることもあります。
逮捕とは、被疑者の身体を拘束し、引き続き短期間の拘束を継続することをいい、通常逮捕緊急逮捕現行犯逮捕の3種類があります。
そこでまずは、逮捕の種類について解説ます。

通常逮捕

通常逮捕とは、裁判官のあらかじめ発する逮捕状によってする逮捕をいいます。
通常逮捕の特徴は、裁判官のあらかじめ発する逮捕状を必要とする点です。
つまり、この逮捕状がなければ被疑者を通常逮捕することはできません。
では、どういう場合に逮捕状が発せられるのかといえば、

〇逮捕の理由(=被疑者が罪を犯したと疑うに足りる相当な理由があること)
〇逮捕の必要性

が存在する場合とされています。
裁判官から発布された逮捕状が捜査機関により、いつ執行されるのかは分かりません
発布された逮捕状には有効期限が定められていますから、その有効期限内であればいつでも執行することができますし、それなりの理由があれば、時効を迎えるまで逮捕状の有効期限は更新し続けることができます。
ちなみに逮捕時に逮捕状がなくても、逮捕状を緊急執行されて、通常逮捕されることがあるので注意が必要です。

現行犯逮捕

現に罪を行い、又は現に罪を行い終わった者を現行犯人といい、これらの者を逮捕することを現行犯逮捕といいます。
現行犯逮捕の特徴は

〇裁判官の令状(逮捕状)が不要なこと
〇私人(捜査機関以外の者)でも逮捕が可能なこと

です。
これは、現行犯人は、逮捕者にとって犯罪と犯人が明白であることから、誤認逮捕のおそれがなく、犯人を確保し、犯罪を制圧するなど速やかに犯人を逮捕する必要も高いことがその理由とされています。
覚醒剤事件の場合、所持事件では現行犯逮捕されることがあります。

~次回に続く~
次回のコラムでは、緊急逮捕と、逮捕後の流れについて解説します。

ゴールデンウィーク中に、ご家族等が逮捕された方は こちら をクリック

覚醒剤使用容疑で逮捕 任意採尿の違法性を主張して不起訴を獲得

2023-04-24

覚醒剤使用容疑で逮捕された方の、任意採尿の違法性を主張して不起訴を獲得した事件について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所神戸支部が解説します。

参考事件

Aさん(覚醒剤使用の前科1犯)は、SNSで知り合った売人から覚醒剤を購入し、その覚醒剤を使用しました。
それからしばらくして、その売人が警察に逮捕されたらしく、Aさんの自宅にも、兵庫県川西警察署の捜査員が捜索に来ました。
捜索においては何も発見されませんでしたが、覚醒剤の使用を疑った警察はAさんに任意採尿を求めました。
数日前に覚醒剤を使用していたAさんが、警察官の任意採尿を断ったところ、警察官と押し問答になってしまい、Aさんは公務執行妨害罪現行犯逮捕されてしまったのです。
そして警察署に引致された後に採尿されて、その尿から覚醒剤成分が検出されたとして、覚醒剤使用容疑で再逮捕されてしまいました。
接見で、Aさんが採尿された時の経過に疑問を感じた弁護士は、事件を担当する検察官に任意性を指摘しました。
その結果Aは不起訴処分となり、釈放されました。
(フィクションです。)

採尿

ほとんどの覚醒剤使用事件で、覚醒剤の使用を裏付ける証拠は尿の鑑定です。
その尿は、任意採尿又は強制採尿によって警察に押収されます。
しかし任意採尿の経過に不備がある場合は、尿そのものが違法収集証拠となる場合があり、そのときは鑑定書の証拠能力が否定され、無罪となる可能性があります。
採尿に至るまでの経過が指摘され、無罪判決が言い渡された刑事裁判は何件もあるので、起訴までに、任意性を指摘することができれば、無罪を避けるために検察官は不起訴処分を決定するでしょう。
今回の場合、採尿することを目的に、公務執行妨害罪で逮捕した可能性があり、この逮捕が違法だと認定された場合、その後の採尿で押収された尿についても証拠能力が失われるでしょう。

不起訴処分

主な不起訴処分の種類は

  • 罪とならず(そもそも犯罪行為がなかった場合)
  • 嫌疑なし(犯罪を認定できなかったり、または犯人ではなかった場合)
  • 嫌疑不十分(犯人のようではあるが、決定的な証拠がない場合)
  • 起訴猶予(犯罪が存在し、犯人である事には間違いないが、様々な理由であえて起訴しない場合)

の4種類です。
今回のような覚醒剤使用事件の場合は、Aさんの尿から覚醒剤反応が出ているので、犯罪の事実は存在するが、尿についての証拠能力が認められなかった場合は、嫌疑不十分による不起訴決定となる可能性が大です。

まずは弁護士に相談を

川西市の薬物事件でお困りの方や、警察の証拠収集方法に疑問のある方は、一度、刑事事件専門の弁護士に相談することをお勧めします。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所神戸支部では、薬物事件に関するご相談を
フリーダイヤル0120-631-881
にて、24時間、年中無休で受け付けております。

覚醒剤所持事件で執行猶予を獲得できるの?一部執行猶予について~②~

2023-03-20

~本日のコラムでは一部執行猶予について解説します。~

一部執行猶予

薬物事件を犯した者に対する一部執行猶予については、「薬物使用等の罪を犯した者に対する刑の一部の執行猶予に関する法律(以下「法律」)」に規定があります。
一部執行猶予判決を受けるには次の要件が必要です(法律3条)。

①薬物使用等の罪を犯したこと
②本件で、1の罪又は1の罪及び他の罪について3年以下の懲役又禁錮の判決の言い渡しを受けること
③刑事施設における処遇に引き続き社会内において規制薬物等に対する依存の改善に資する処遇を実施することが、再び犯罪をすることを防ぐために「必要」であり、かつ、「相当」であること

なお、薬物使用等の罪については、他の犯罪と異なり、前科の要件は必要とされていませんので、Aさんのような累犯前科を持つ方であっても、一部執行猶予判決の対象となり得ます。

対象となる事件

法律第2条2項には列挙されている対象となる薬物事件とは

  • 大麻の所持又はその未遂罪(2号)
  • 覚醒剤の所持、使用等又はこれらの罪の未遂罪(4号)
  • 麻薬及び向精神薬取締法の所持罪等(5号)


です。

全部執行猶予との違いは?

一部執行猶予判決がついてもあくまで「実刑判決」の一部であることに変わりはありません。
刑の執行を猶予された期間以外は刑務所に服役しなければなりませんが、刑務所に服役する期間が短くなるというメリットがあります。

まずは弁護士に相談を

兵庫県加古川市薬物事件において執行猶予付きの判決を望んでいる方は、一度、薬物事件の一部執行猶予に強いと評判の弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所神戸支部にご相談ください。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所神戸支部では、薬物事件に関するご相談をフリーダイヤル0120-631-881にて24時間受け付けておりますので、お気軽にご連絡ください。

覚醒剤所持事件で執行猶予を獲得できるの?一部執行猶予について~①~

2023-03-19

覚醒剤所持事件で起訴された方の執行猶予獲得と、一部執行猶予について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所神戸支部が解説します。

参考事件
  
兵庫県加古川市に住むAさんは、去年の春ごろまで覚醒剤所持の容疑で刑務所に2年間服役していました。
実はAさんは、出所後も覚醒剤を使用しており、出所直後からこれまでずっと覚醒剤を使用し続けています。
そんな中、車を運転中に交通事故を起こしてしまったAさんは、このままだと警察に覚醒剤の使用が発覚してしまうと思い、車を放置して事故現場から逃走してしまいました。
事故処理の際に、Aさんが乗り捨てた車の中から覚醒剤が発見されたようで、事故を起こして2週間ほどしてAさんは、覚醒剤所持の容疑で、兵庫県加古川警察署逮捕されました。
Aさんは起訴されることを覚悟しており、執行猶予が獲得できないまでも一部だけでも執行猶予を獲得できないものかと期待しています。
(フィクションです)

執行猶予

執行猶予とは、裁判官が犯罪を認め有罪を認定したものの、言い渡した刑事罰(懲役刑、罰金刑)の執行を一定期間猶予することをいいます。
執行猶予には「全部執行猶予」「一部執行猶予」の2種類があります。

全部執行猶予

全部執行猶予を受けるための要件は、刑法に規定されており、その内容は下記のとおりです。

刑法第25条1項
次に掲げる者が3年以下の懲役若しくは禁錮又は50万円以下の罰金の言渡しを受けたときは、情状により、裁判が確定した日から1年以上5年以下の期間、その刑の全部の執行を猶予することができる
第1号 前に禁錮以上の刑に処せられたことがない者
第2号 前に禁錮以上の刑に処せられたことがあっても、その執行を終わった日又はその執行の免除を受けた日から5年以内に禁錮以上の刑に処せられたことがない者

この内容を要約すると、執行猶予を受けるためには
①3年以下の懲役若しくは禁錮又は50万円以下の罰金の言渡しを受けること
②上記1号、あるいは2号に該当すること
③(執行猶予付き判決を言い渡すのが相当と認められる)情状があること

ことが必要となります。

Aさんの事件を検討

1号の「前に禁錮以上の刑に処せられた」とは、判決前に、禁錮以上の刑の言渡しを受け、その刑が確定していることを意味します。
Aさんは懲役2年の実刑判決を受け刑務所に服役している歴があるので、1号には当たりません。
続いて2号に当たるか検討します。
「執行を終わった日」とは刑の服役期間が満了した日をいい、Aさんの場合、去年の8月に刑務所を満期出所していますので、2号の要件も満たしていません。

つまりAさんは、法律的にも全部執行猶予を得ることは不可能でしょう。

~明日のコラムでは一部執行猶予について解説します。~

薬物事件における身体拘束 勾留について②

2023-02-17

~昨日からの続き~

昨日は、勾留の理由と必要性について解説しました。
本日は勾留の目的について解説します。

勾留の目的

被疑者勾留の目的は

・捜査・公判の紛糾防止
・公判廷への出頭確保
・刑の執行確保

などが挙げられます。
これらの目的から導き出される「公益的な利益」が、被疑者の身体拘束を解いた状態では害される可能性があり、被疑者の身柄確保=勾留の必要性があると判断されると、例え被疑者が仕事を失うおそれがあり、それによって被る不利益や身元引受人が被疑者の監督を誓約していたとしても勾留が決定する可能性があります。
また、薬物事件においては、勾留と共に接見禁止決定がなされることも多いのです。
接見禁止となると、弁護士以外の者との面会ができなくなります。
これもまた、関係者と接触し罪証隠滅を図るおそれがあるためです。
このように、薬物事件においては、逮捕から起訴までは身体拘束される可能性は高いのです。

起訴後の釈放(保釈)

起訴後であれば、保釈で釈放される可能性があります。
保釈は、一定額の保釈保証金を納めることにより、勾留を停止し、身体拘束を解くものです。
保釈保証金の相場は、150~200万円となっており、一般人にとってはとても安いとは言えない金額です。
ですので、被告人も容易に逃亡しようとは思えないというわけです。
もちろん、逃亡を思いとどまらせるだけの金額でなければならないので、被告人の経済状況によって保釈保証金の額も変わってきます。
保釈を許可するか否かの判断にあたっては、検察官は、確実に有罪にできる証拠を収集して被疑者を起訴しますので、起訴した段階では十分な証拠が取得できている状態にありますので、被疑者勾留の段階よりも罪証隠滅のおそれは低いと判断されます。
また、保釈保証金の納付により、被告人が逃亡するおそれも高くないとし、勾留の判断と比べると保釈の判断は緩やかだと言えるでしょう。
そのため、薬物事件勾留接見禁止が付いていたとしても、起訴後は保釈により釈放されることも多いのです。

まずは弁護士に相談を

ご家族が薬物事件で逮捕・勾留され、長期の身体拘束を受けてお困りであれば、刑事事件専門の弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所神戸支部にご相談ください。
詳しくは、フリーダイヤル0120-631-881までご連絡ください。

薬物事件における身体拘束 勾留について①

2023-02-16

薬物事件における身体拘束について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所神戸支部が解説します。

参考事件

覚醒剤取締法違反の罪に問われた被告人Aさんは、逮捕・勾留により兵庫県明石警察署の留置場に拘禁されていました。
勾留決定と共に、接見禁止が付されており、Aさんは弁護人以外の者と面会することはできませんでした。
勾留延長の満期日に、Aさんは神戸地方検察庁に覚醒剤取締法違反の罪で起訴されました。
Aさんは、弁護人にすぐに保釈請求をしてほしいと話しています。
(フィクションです)

薬物事件で逮捕されたら

覚醒剤、大麻、麻薬、危険ドラッグなどの薬物に手を出し、警察に逮捕された場合、その後勾留される可能性は高いです。
勾留は、被疑者や被告人の身柄を拘束する裁判とその執行のことです。
起訴前の勾留を「被疑者勾留」、起訴後の勾留を「被告人勾留」と呼びます。
被疑者勾留は、逮捕が先行していること、検察官の請求によること、保釈が認められないこと、勾留期間が短いこと等の点で、被告人勾留と異なります。
被疑者を勾留するには、①勾留の理由、そして②勾留の必要性が必要です。

①勾留の理由

勾留の理由は、以下の通りです。
(a)被疑者が罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由がある。
かつ、
(b)次の少なくとも一つに該当する。
 ・住所不定
 ・罪証隠滅のおそれ
 ・逃亡の恐れ

薬物事件の場合、薬物の入手先や譲渡先など被疑者本人だけでなく複数人が事件に関与しているため、釈放されることにより関係者と接触し、罪証隠滅を図るおそれが高いと判断されます。
そのため、勾留の理由があるとして勾留がなされるケースが多いのです。

②勾留の必要性

勾留の必要性というのは、勾留の「相当性」のことであるとされており、相当性のない場合に勾留は認められません。
被疑者や被告人を勾留することによる「公益的な利益」と、これによって被疑者や被告人が被る「不利益」とを比較衡量して総合的に判断されます。
多くの場合、勾留による長期身体拘束は被疑者や被告人が仕事を失う可能性を高めることになる旨の不利益が挙げられます。

~明日に続く~

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