麻薬及び向精神薬取締法違反

麻薬とは

麻薬というのは、もともとはモルヒネやヘロインのようなケシから生成される麻薬性鎮痛薬のオピエートやオビオイドを指しますが、一般的には麻酔作用や依存性等の危険がある薬物の総称として使用されており、非常に多義性を含む用語です。

日本における法律上の意味における麻薬とは、麻薬及び向精神薬取締法の別表に規定がされています。
具体的には、アヘン、モルヒネ、ヘロイン、コカイン、THC、LSD、MDMAなどです。国際的には、LSDやMDMAのような幻覚剤の多くは、向精神薬と認識されているが、日本の法律上は、麻薬として扱われています。

また、向精神薬とは、精神に作用する薬物の総称であり、非常に広い意味を有する用語ですが、規制の対象となるのは麻薬の場合と同じく、麻薬及び向精神薬取締法の別表で指定されている薬物となっています。

日本における薬物規制においては、覚せい剤取締法、大麻取締法、あへん法、麻薬及び向精神薬取締法を薬物4法として、主たる薬物犯罪を規制しています。

 

麻薬及び向精神薬取締法(麻向法)における規制

麻薬及び向精神薬取締法(麻向法)では、麻薬や向精神薬の輸出入を規制するとともに、免許を持たない者の麻薬や向精神薬の所持や施用等を禁止しています。

そして、規制される行為が営利の目的をもって行われた場合には、罪罰が加重されており、非常に重い刑罰が科されることになっています。

 

ヘロインについての規制

  • 輸入・輸出・製造の禁止(麻薬及び向精神薬取締法64条)
    ヘロイン等をみだりに輸入・輸出・製造した場合は、1年以上の有期懲役となります。
    営利目的の場合には、無期若しくは3年以上の懲役又は1000万円以下の罰金が併科されます。
    なお、国外犯も処罰の対象となります。
  • 製剤・小分け・譲渡し・譲受け・交付・所持の禁止(麻薬及び向精神薬取締法64条の2)
    ヘロイン等をみだりに、製剤・小分け・譲渡し・譲受け・交付又は所持した場合には、10年以下の懲役に処されます。
    営利目的の場合には、1年以上の有期懲役又は500万円以下の罰金が併科されます。

 

ヘロイン以外(モルヒネやコカイン、MDMA等)についての規制

  • 輸入・輸出・製造・栽培の禁止(麻薬及び向精神薬取締法65条)
    ヘロイン以外の麻薬をみだりに、輸入・輸出・製造・栽培した場合は、1年以上10年以下の懲役に処せられます。
    営利目的の場合には、1年以上の有期懲役又は500万円以下の罰金が併科されます。
  • 製剤・小分け・譲渡し・譲受け・交付・所持の禁止(麻薬及び向精神薬取締法66条)
    ヘロイン以外の麻薬をみだりに、製剤・小分け・譲渡し・譲受け・交付又は所持した場合には、7年以下の懲役に処されます。
    営利目的の場合には、1年以上10年以下の懲役又は300万円以下の罰金が併科されます。

 

向精神薬

  • 輸入・輸出・製造・製剤・小分けの禁止(麻薬及び向精神薬取締法66条の3)
    向精神薬をみだりに、輸入・輸出・製造・製剤・小分けした場合には、5年以下の懲役が科されます。
    営利目的の場合には、7年以上の懲役又は100万円以下の罰金が併科されます。
  • 譲渡・譲渡し目的所持の禁止(麻薬及び向精神薬取締法66条の4)
    向精神薬をみだりに、譲渡し、又は譲渡目的で所持していた場合には、3年以下の懲役が科されます。
    営利目的の場合には、5年以下の懲役又は100万円以下の罰金が科されます。

 

~麻薬及び向精神薬取締法違反事件における具体的な弁護活動~

無罪の主張

麻薬及び向精神薬取締法違反の事件では、たとえば中身を知らされず運ばされた場合のように、違法な物とは知らずに行った行為で検挙されることが考えられます。
しかし、違法性の認識については、それが規制されているという認識までは要求されず、違法な物かも知れないという程度の認識で足りるとされているため、知らなかったという主張はなかなか通りません。

ですが、全く知らずにうちに、麻薬の受け渡しや輸入などに利用されていたという場合には、物自体を所持していたこと自体の認識がなかったわけですから、十分に争う余地があります。
弁護士は、違法薬物との認識がなかったということを、客観的な証拠や事実に照らして、具体的に主張していきます。

また、仮に麻薬及び向精神薬取締法違反事件を起こしてしまっていたとしても、それが捜査機関による違法な捜査によって発覚したものであれば、その違法性ゆえに不起訴処分や無罪判決を得られる可能性があります。

ですから、職務質問、所持品検査、採尿・採血、捜索、差押え、逮捕、勾留、取調べなど各捜査段階において、重大な違法行為がなかったか・それによって重要な証拠である覚せい剤・麻薬が収集されたのではないかという点を徹底的に調査して不起訴処分や無罪判決の獲得を目指します。

 

環境整備・再犯防止

麻薬及び向精神薬取締法違反事件をはじめとする薬物事件は、被害者なき犯罪と呼ばれます。

ですから、被害者との示談等を検討することはできません。薬物事犯においてもっとも重要なのは、ご本人自身が心から反省し、二度と薬物に手を染めないということです。

薬物依存は、一度常用しますと抜け出すのは容易ではありません。
再犯率が非常に高いのもこの種の犯罪の特徴です。

薬物による依存は、自分一人の力だけでは、なかなか克服することは困難です。
ですから、専門の医療機関や、薬物依存からの回復・更生をサポートする施設などの利用をすることも重要です。
また、薬物に関わる者との関係を断ち切り、ご家族などの監視により、二度と薬物に関わらせないという環境づくりも大切です。

薬物依存は、そこから抜け出すことは容易ではないですし、裁判官もそのことは十分理解しています。
ですから、減刑や執行猶予付き判決の獲得には周りの協力を得られる環境づくりが十分にできていることを裁判で示すことが重要です。

 

早期の身柄解放

麻薬及び向精神薬取締法違反事件で逮捕・勾留されてしまった場合でも、事案に応じて釈放や保釈による身柄拘束を解くための弁護活動を行います。

薬物事犯では、身柄を開放することによって、その期間に再度麻薬等に手を出すのではないか、ということが非常に危惧されています。
また、薬物犯罪は被害者のいない密行性の高い犯罪ですから、共犯者との口裏合わせなどによる証拠隠滅の可能性も高いと判断されがちです。

このように、麻薬及び向精神薬取締法違反事件で逮捕・勾留されると、長期間身体拘束を受ける可能性が高く、保釈も認められにくいのが現状です。
しかし、そのような場合でも、証拠隠滅の恐れがないことや逃亡の恐れがないことを示す事情を示すとともに、場合によっては、一刻も早い治療のために早期に身柄を開放する必要があるとの主張をすることで、釈放・保釈の判断がなされることもあります。

 

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