児童虐待・保護責任者遺棄

児童虐待・育児放棄について

日本には、子供の福祉を守る法律として、児童福祉法が設けられています。

もっとも、一昔までは、児童福祉法に規定されている手続き(児童相談所への通告や立ち入り調査、一時保護等)の利用はあまりされていませんでした。
しかし、近年子供の虐待が社会問題化してきたため、児童福祉法とは別に児童虐待の防止に関する法律(児童虐待防止法)が制定されることとなり、それに合わせて児童福祉法も数度の改正がなされてきました。

児童虐待・育児放棄は、児童虐待防止法により、以下のように4つに分類されています。

  • 身体的虐待
    児童の身体に外傷を生じ、又は生じる恐れのある暴行を加えること
  • 性的虐待
    児童にわいせつな行為をすること又は児童をしてわいせつな行為をすること
  • ネグレクト
    児童の心身の正常な発達を妨げるような著しい減食又は長時間の放置、保護者以外の同居人による虐待行為と同様の行為の放置、その他の保護者としての看護を著しく怠ること
  • 心理的虐待
    児童に著しい心理的外傷を与える言動を行うこと

児童虐待・育児放棄の相談件数は、年々増加傾向にあり、児童虐待防止法施行前の平成11年に比べ、平成26年度では7.6倍に増加しています。(厚生労働省HPより)

児童福祉法では、要保護児童を発見した者は児童相談所などに通告しなければならないとされており、これを受けた児童相談所長は、一定の措置をとることが可能とされていますが、この措置をとる前に必要であると判断した場合、児童に一時保護を与えることができるとされています。

これにより、児童虐待が疑われる場合には、早期の対応が採られる事例が増加したのですが、裁判所の令状がなくても行えるために、虐待の事実はないのに、一時保護の措置が採られるといった事例が問題視されています。

児童虐待のうち、親など児童を保護する責任のある者が児童を遺棄し又はその生存に必要な保護をしなかったと疑われる場合には刑法上の保護責任者遺棄罪の成立が問題となります。
児童をわいせつ行為に関与させたような場合については、児童福祉法で刑事罰が規定されています。
また、虐待により接触を禁じられた親が保護された児童に接触した場合について、児童虐待防止法に刑事罰が法定されています。

 

児童福祉法違反

児童に淫行をさせる行為をした場合は、10年以下の懲役若しくは300万円以下の罰金、又はこれらが併科されます(児童福祉法34条1項6号、60条1項)。

児童に淫行をさせる恐れのある者に、それを知りながら児童を引き渡したような場合には、3年以下の懲役若しくは100万円以下の罰金、又はこれらが併科されます(児童福祉法34条1項7号、60条2項)。

 

児童虐待防止法

虐待した親権者などが、施設等の入所措置が取られている児童に対するつきまといなどの接触を禁止する命令に違反した場合、1年以下の懲役又は100万円以下の罰金が科されます(児童虐待防止法12条の4第1項、17条)。

 

保護責任者遺棄罪

老年者、幼年者、身体障害者又は病者を保護する責任のある者がこれらの者を遺棄し、又はその生存に必要な保護をしなかったときは、3月以上5年以下の懲役が科されます(刑法218条)

保護責任者遺棄罪とは、親等の保護責任者が被保護者である子供に対する遺棄及び生存に必要な保護をしない行為を処罰するもので、行為者が保護責任者である点で、単純遺棄罪よりも加重されています。

 

保護責任者

保護責任者遺棄罪の成立のためには、行為者が、保護する責任のある者である必要があるが、これは法令や契約、慣習、条理に基づき具体的事情の下で判断されます。

児童虐待・育児放棄で保護責任者遺棄罪に問われる親等の親権者は、通常は保護責任者に該当するものと考えられます。

 

遺棄

保護責任者遺棄罪における遺棄というのは、保護を要する子供を保護のない状態に置くことにより、その生命・身体を危険にさらすことを言います。

場所的な移動を伴う移置だけではなく、置き去りのように危険な場所に放置する行為も含まれます。

 

不保護

保護責任者遺棄罪生存に必要な保護をしないというのは、場所的離隔を伴うことなく、要保護者である子供が生存のために必要な保護をしないことを意味します。

 

保護責任者遺棄致死傷罪

保護責任者遺棄によって、人を死傷させたときは、傷害の罪と比較して重い刑により処断されます(刑法219条)。

傷害罪の法定刑が、15年以下の懲役又は50万円以下の罰金で、傷害致死罪は、3年以上の有期懲役となっていますから、遺棄や不保護による結果が、傷害に止まるときは、3月以上15年以下の懲役となり、死亡した場合には、3年以上の有期懲役となります。

保護責任者遺棄致死罪が成立するには保護責任者遺棄罪の成立に必要な故意があれば足り、被害者である子供の死傷結果についての認識がある場合には殺人罪や傷害罪のみが成立することとなります。

 

児童虐待事件・育児放棄事件における弁護活動

児童虐待・育児放棄の事実がないことの主張

児童虐待・育児放棄事件で虐待の事実がなく単に事故に過ぎないような場合、保護者の方にとっては、子供が事故にあったショックに加え、自らが刑事訴追されてしまうという2重のショックを受けることとなります。

このような場合には、日常的に虐待の事実がなかったことや当時どのような生活状態であったかなどをできる限り客観的な資料とともに示し、遺棄や不保護に当たる行為の存在がなかったことを主張していきます。

 

殺意・故意がないことの主張

児童虐待・育児放棄などにより子供が死亡してしまった場合、不作為による殺人罪に問われてしまうことがあります。

このような場合でも、保護者が、死んでも構わない、死ぬかもしれないといった認識がなかったのであれば、保護責任者遺棄致死罪の成立に止まります。

自分の虐待行為により、子供を亡くならせるということは非常に悲しい行為であるとともに重い非難に当たる行為です。

ですが、死んでもいいと考えてまで、犯行を行う保護者が多いわけではないと思います。
このような場合には、殺意の存在を争って、殺人罪の成立を争って、減刑を目指します。

 

情状弁護

児童虐待・育児放棄は非常に悲しい事実ですが、やりたくないと思っていながら行ってしまうという苦悩を抱えているケースも多くあります。

このようなケースでは、保護者の方の内面にもかなりのダメージがあることも多いため、専門医によるカウンセリングや、治療により、二度と児童虐待・育児放棄を起こさせないように環境を整えることも重要です。

児童虐待・育児放棄の再発を防止する環境を調整し、本人の反省を促し、寛大な処分となるように裁判所や捜査機関に働きかけを行います。

 

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