過失運転致死傷罪と道路交通法違反:ひき逃げ事件を事例に解説

道路上での事故は誰にでも起こり得る悲劇ですが、事故によって人に怪我をさせたり、最悪の場合、命に関わるとき、過失運転致死傷罪や道路交通法違反といった法律問題が登場します。
本日のコラムでは、刑事事件を専門に扱っている弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所神戸支部が、これらの罪の成立要件と罰則について、ひき逃げ事件の事例を交えて詳しく解説します。

過失運転致死傷罪の定義

過失運転致死傷罪は、交通事故によって他人に対して死傷を与えた場合に適用される罪です。
過失とは、一般的に「注意義務に反する不注意」を指します。
この罪が成立するためには、運転者が交通ルールに違反した上で、その違反が直接他人の死傷につながったことが必要です。

道路交通法違反の定義

道路交通法違反とは、道路交通法に定められたルールや規制に違反する行為を指します。
交通違反の種類は、スピード違反、無許可での運転、シートベルト未着用など様々です。

道路交通法違反の成立要件としては、違反行為をした事実が確認されれば、基本的にこの罪は成立します。
ただし、いくつかの違反には特定の状況下でのみ適用される場合もあります。
例えば、飲酒運転は、お酒を飲んで車を運転したからといって、必ず違反が成立するわけではなく、血中アルコール濃度が法定限度を超えた場合に適用されます。

道路交通法違反は、一般的には反則金や違反点数の付与など交通反則通告制度による行政手続きによる罰則が科されます。
しかし、重大な違反行為に対しては、交通反則通告制度の対象外となり、刑事手続きが進んだ後に、最終的には罰金刑や懲役刑といった刑事罰が科せられることがあります。

ひき逃げ事件の一般的な特徴

ひき逃げ事件とは、交通事故を起こした後、負傷者を救護せずに事故現場から逃げ去る行為を指します。
このような事件が発生する背景には、運転者が法的な責任や罰則を逃れようとする心理が多く作用しているようです。

一般的に、ひき逃げは夜間や人目が少ない場所で多く発生します。
また、運転者が飲酒などの重要な違反をしているケースも少なくありません。
飲酒運転をしている運転者は、すでに一つの違法行為を行っているため、追加の罰則を恐れて逃げるようです。
また事故を起こしたことによって、状況を正確に把握できずに、パニックになって逃げるケースもあるようです。

以上のような一般的な特徴を理解することで、ひき逃げ事件の予防や対策が考えられます。
次の項目では、ひき逃げ事件における過失運転致死傷罪に焦点を当てて解説します。

ひき逃げ事件における過失運転致死傷罪

ひき逃げ事件が発生した場合、多くの状況で過失運転致死傷罪が成立する可能性があります。
例として、夜間に飲酒運転をしていた運転者が歩行者をはね、そのまま逃げた場合を考えてみましょう。

この事例での過失は、飲酒運転という明確な違反行為に起因しています。
運転者は飲酒により判断力が鈍っている状態で運転をしたため、歩行者を見逃し、結果として死傷事故を引き起こしました。
この過失行為が死傷につながったため、過失運転致死傷罪が成立すると考えられます。

また、運転者が現場から逃げた行為自体も、罪の重大性を高める要素となります。
ひき逃げをしたことで、被害者に対する救護が遅れ、それが死傷の状態を悪化させる可能性もあるためです。

このように、ひき逃げ事件においては過失運転致死傷罪が成立するケースが多く、その罪の重大性も非常に高いと言えます。
次の項目では、ひき逃げ事件における道路交通法違反について詳しく解説します。

ひき逃げ事件における道路交通法違反

ひき逃げ事件では、当然ながら過失運転致死傷罪だけでなく、多くの場合、道路交通法違反も成立します。
例えば、前述の飲酒運転の事例においても、運転者は「飲酒運転」であり「ひき逃げ」の両方で道路交通法に違反しています。

飲酒運転の罰則は、非常に厳しく、運転免許の取消しという行政罰に加えて、高額な罰金、さらには懲役刑にもなり得ます。
ひき逃げの行為自体も、道路交通法に明確に禁じられており、この違反で免許取り消しや罰金、懲役刑が科されることがあります。

過失運転致死傷罪と道路交通法違反の罰則の具体例

過失運転致死傷罪と道路交通法違反には、それぞれ異なる罰則が適用されます。
これらの罰則は、事案の重大性や犯罪者の前歴によっても変わる可能性があります。

過失運転致死傷罪に対する罰則は、懲役や罰金が一般的です。
具体的には、死亡事故を起こした場合、最高で懲役刑の上限が7年とされています。
傷害事故の場合でも、懲役または罰金が科されることが一般的です。

一方で、道路交通法違反(例えば、飲酒運転やひき逃げ)に対する罰則は、通常、罰金や運転免許の取り消しが考慮されます。
飲酒運転に対する罰金は最高で50万円、または懲役刑が科される場合もあります。
ひき逃げの罰則としては、最高で懲役刑10年または罰金が科されることがあります。

重要な点として、これらの罰則は積み重なる可能性があります。
すなわち、過失運転致死傷罪と道路交通法違反を同時に犯した場合、それぞれの罰則が加算されることも考えられます。

ひき逃げ事件を防ぐための予防策と対処法

ひき逃げ事件の発生を防ぐため、また発生した場合の適切な対処法には、いくつかのポイントがあります。

まず、予防策としては、運転中は絶対に飲酒をしない、スマートフォンの操作を避ける、適切な速度で運転するといった基本的な交通ルールを厳守することが重要です。
これによって、過失運転致死傷罪や道路交通法違反のリスクを大幅に減らすことができます。

次に、事故が発生した場合の対処法ですが、まずは現場から逃げず、速やかに救急車や警察に通報することが求められます。
逃げた場合、後に自首しても罰則が軽減されるわけではありませんので、その点を十分に理解しておく必要があります。

また、被害者に対する救護活動も非常に重要です。
現場で救護を怠った場合、それが過失運転致死傷罪の成立要件に影響を与える場合があります。

最後に、事故後には必ず専門の弁護士に相談することをお勧めします。
法的な問題は複雑であり、素人判断で対処すると後に重大な結果を招く可能性があります。

以上が、ひき逃げ事件を防ぐための予防策と対処法です。
このような基本的な知識と行動指針を身につけることで、自身と他人の命と財産を守るための第一歩となります。

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