~執行猶予判決とは~
執行猶予(以下では、刑の全部執行猶予付き判決を念頭に説明します)とは、有罪の判決を言い渡された者が、執行猶予期間中に他の刑事事件を起こさずに過ごせば、刑の言い渡しをなかったことにするという制度をいいます。
判決の宣告で、「被告人を懲役2年に処する。この裁判確定の日から4年間その刑の執行を猶予する。」といった形で言い渡されます。
この場合、直ちに刑務所へ服役する必要はなく、もとの日常生活に戻ることが可能です。
そして、猶予期間である4年間、何ら犯罪を起こすことなく過ごせば、刑の言い渡しは効力を失いますので、刑務所に服役することはなくなります。
ただ、執行猶予付き判決であっても、有罪判決であることには違いありませんので、残念ながら前科は残ってしまいます。
それでも、実刑判決を受けて服役することになるよりも、通常の生活をすることができる点でメリットがあるといえます。
また、執行猶予期間中にあらたに犯罪を起こしてしまった場合には、執行猶予が取り消されるとともに、新たな犯罪についての刑罰も科されることになりますので、今後の生活においては注意する必要があります。
~法律上の要件~
- 前に禁錮以上の刑に処せられたことがない者
- 前に禁錮以上の刑に処せられたことがあっても、その執行を終わった日又はその執行の免除を得た日から5年以内に禁錮以上の刑に処せられたことがない者
- 3年以下の懲役・禁錮又は50万円以下の罰金の言渡しをするとき
1,2のどちらかの場合であって、かつ3の場合、1年以上5年以下の期間、刑の執行を猶予することができます。
~執行猶予付き判決を得るためのポイント~
- 犯行態様が悪質でなく、危険性が少ないこと
- 被害が比較的軽微であること
- 同情すべき事情がある
- 被害弁償、示談が成立していること
- 前科・前歴がないこと
- 更生の意思、更生のための環境が整っている
- 常習性、再犯のおそれがないこと
上記に挙げた要素を総合的に考慮して、裁判官が執行猶予付きの判決をするかどうかを判断します。
殺人などの重大事犯であれば、それだけ執行猶予を得られる見込みは厳しいものとなります。
とはいえ、被害者がいる犯罪の場合は、示談が成立していることのインパクトは大きいです。
また、社会内で更生するための環境が整っていることを示すために、ご家族に協力していただくのも大切なことです。
~再度の執行猶予~
執行猶予期間中の犯罪については、一般的に実刑判決になると言われています。
しかし、例外的に再度執行猶予が付される場合があります。
法律上、➀1年以下の懲役又は禁錮の言い渡しを受け、②情状に特に酌量すべきものがある、③保護観察の期間でない、という3点を満たす場合、執行猶予中に犯した罪について執行猶予判決を得ることができます。
たとえ執行猶予期間中に犯罪をしてしまった場合でも、すぐにあきらめず執行猶予判決の獲得を得意とする弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所神戸支部の弁護士にご相談ください。
~執行猶予が取り消される場合~
1 必ず執行猶予が取り消される場合
- 執行猶予期間内に更に罪を犯して禁錮以上の実刑の言渡しがあったとき
- 執行猶予言渡し前に犯した他の罪について禁錮以上の実刑の言渡しがあったとき
- 執行猶予言渡し前に、他の罪について禁錮以上の刑に処せられたことが発覚したとき(ただし、発覚した罪についての刑の執行を終わった日又はその執行の免除を得た日から5年以内に禁固以上の刑に処せられたことがない者を除く。)
2 執行猶予が取り消される可能性がある場合
- 執行猶予期間内に罰金に処さられたとき
- 保護観察付きの執行猶予期間中に保護観察に付された者が、その間守るべき事項を守らず、その情状が重いとき
- 執行猶予言い渡し前に、他の罪について禁固以上の刑に処せられ、その刑の執行を猶予されたことが発覚したとき
注)禁錮以上の刑の執行猶予が取り消された場合、他の禁錮以上の刑の執行猶予も取り消されます。