悪口言いふらしたら、ネットに書き込んだら名誉毀損罪!?
名誉毀損罪について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所神戸支部が解説します。
~ケース~
大学生のAさん(20歳)は、同じサークルに所属するVさんを忌み嫌っていました。
というのも、元々AさんとVさんは仲が良かったのですが、Aさんが同じサークルに所属するBくんに好意を抱いていることをVさんに相談したことで、VさんもBくんに好意を寄せるようになり、結局VさんがBくんに告白し二人が付き合うようになったという出来事があったからです。
Aさんは、Vさんのした裏切り行為を許すことが出来ず、サークル仲間にVさんの悪口を言いまわっていました。
Aさんは、匿名でネットの掲示板にもVさんを名指しし誹謗中傷するような書き込みをしていました。
ある日、サークル仲間を通じてAさんがVさんの悪口を言っていることやネットの掲示板にひどい書き込みがしてあることを知ったVさんが、Aさんに対して「これ以上はやめてほしい。でないと警察に相談する。」とメールで警告してきました。
Aさんは自分のやった行為が犯罪に当たるのか、Vさんが警察に相談した場合にはどうなるのか心配になり刑事事件に詳しい弁護士に相談することにしました。
(フィクションです)
人の悪口を言いふらす行為やネット上に書き込む行為は犯罪?
誰もがみな仲良く争いもなく生活を送る、そんな素晴らしい人生が送らたらどんなに幸せでしょうか。
十人十色といいますが、人生長く生きていれば、気が合う人もいれば、そうでない人も出てくるでしょう。
ついつい嫌いな人や苦手な人の悪口を言ってしまうものですが、度が過ぎる行為は犯罪となる可能性もありますので気を付けましょう。
名誉毀損罪
第二百三十条 公然と事実を摘示し、人の名誉を毀損した者は、その事実の有無にかかわらず、三年以下の懲役若しくは禁錮又は五十万円以下の罰金に処する。
公然と事実を摘示し、人の名誉を毀損した場合に、その事実の有無にかかわらず成立する犯罪です。
「人の名誉」というのは、人についての事実上の社会的評価を意味します。
ですので、人の真価とは異なった評価である虚名も保護され、摘示した事実が真実でも、後述する真実性の証明による免責が認められない限り、処罰対象となります。
名誉の対象は、自然人の他に、法人などの団体を含みます。
「公然」とは、不特定多数人が認識し得る状態をいいます。
不特定人というのは、相手方が特殊の関係によって限定された者でない場合をいい、多数人とは数字によって何人以上と限定することはできないが、単に数名では足りず、相当の員数であることを必要とします。
また、特定少数の者に事実を摘示した場合であっても、伝播して不特定多数の者が認識し得る可能性を含む場合には公然性が認められます。
摘示される事実は、人の社会的評価を害するに足りる事実であることが必要となります。
この事実は、真実か否か、公知か否か、過去のものか否かは問われません。
「摘示」とは、具体的に人の社会的評価を低下させるに足りる事実を告げることをいいます。
摘示の方法・手段には制限がありません。
名誉毀損罪は、社会的評価を害するおそれのある状態を発生させればたり、公然と事実を摘示すれば通常人の名誉は毀損されたものといえます。
さて、真実である事実を摘示した場合にも名誉毀損罪は成立するのですが、真実性の証明による免責が設けられています。
名誉毀損行為が、公共の利害に関する事実に係り、その目的が専ら公益を図ることにあったと認められる場合で、摘示した事実が真実であることの証明があったときに、免責が認められます。
加えて、公訴が提起されるに至っていない人の犯罪行為に関する事実、公務員又は公選による公務員の候補者に関する事実についての特則も定められています。(刑法第230条の2)
では、Aさんの行為が名誉棄損罪に当たるのか検討してみましょう。
(1)Vさんの悪口をサークル仲間に言いふらす行為について
Aさんは、AさんがBくんを好きなことを知った上でBくんに告白し付き合うことになったVさんが許せないのですから、おそらくAさんが言いふらしたVさんの悪口は「Vさんは友人の好きな人を知っていたのに、その人を奪うような人間だ!」といった感じの内容でしょう。
これが事実だとしても、この内容はVさんの社会的評価を下げるものと言えるでしょう。
しかし、Aさんがサークル仲間にその事実を言いふらしたことが「公然」と言えるかが問題となります。
サークル仲間全員の前で、事実を摘示したのであれば公然性が認められるでしょうが、サークル仲間のうち数名だけに対して摘示したのであれば、それだけで公然とは言うことは難しいでしょう。
摘示した人物が「おしゃべり好き」で知られた人物であった場合には、その人から不特定多数の者に摘示した事実が伝播する可能性が認められるかもしれません。
(2)Vさんの悪口をネットの掲示板に書き込む行為について
一方、ネットの掲示板に書き込む行為は、それによってサークル仲間に限らず不特定多数の者が閲覧可能な状態にしていることになりますので、公然性が認められることになります。
ですので、この場合には、名誉棄損罪が成立する可能性が高いでしょう。
名誉棄損事件を穏便に解決する方法としては、被害者との示談成立が挙げられます。
なぜならば、名誉棄損罪は親告罪だからです。
親告罪というのは、告訴権者による告訴がなければ、公訴を提起することができない罪のことです。
ですので、名誉棄損事件で加害者となってしまった場合には、すぐに被害者との間で示談を成立させ事件化回避や不起訴獲得などを目指します。
しかし、名誉を棄損された被害者は、加害者に対して怒りや恐怖を感じていることが多く、直接話をすることに積極的でない場合が多いのです。
ですので、被害者との示談交渉には、第三者である弁護士を介して行うことをお勧めします。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、名誉棄損事件をはじめとする刑事事件を専門に取り扱う法律事務所です。
名誉棄損事件でお困りであれば、弊所の弁護士にご相談ください。