~裁判の分類~
日常的用語として「裁判」といえば、訴訟における審理手続き全般、すなわちテレビドラマなどで行われている証人尋問などを含めた裁判所で行われる一連の手続きをイメージされると思います。
しかし、訴訟法上の「裁判」とは、裁判所・裁判官の行う意思表示的な訴訟行為だけを意味します。
裁判をその機能で分類すると、訴訟をその審級において終了させる効果を持つ終局裁判と、終局裁判までの過程で生じる手続上の問題を処理する裁判と、終局裁判後の付随的な問題を処理する裁判に分けられます。
また、終局裁判のうち、被告事件の実体そのものを判断する裁判を実体的裁判といい、被告事件の実体について判断することなく訴訟手続きを打ち切る裁判を形式的裁判といいます。
前者が、有罪とか無罪とかを決める裁判のことであり、後者は、たとえば公訴棄却の判決や決定のように、申立て自体について判断する裁判のことを指します。
さらに、裁判を形式によって分類すると、判決・決定・命令の3つに分けることができます。
判決は、「裁判所による」裁判であり、特別の場合を除いて口頭弁論の手続きを経てなされます。
判決は、訴訟上重要な事項を内容とする終局裁判であり、必ず理由を付さなければなりません。
判決に不服がある場合は、控訴・上告という不服申立ての手段があります。
決定も「裁判所による」裁判ですが、口頭弁論を経てなされる必要はありません。
判決と異なり、常に理由を付けなければならないわけではありません。
決定に対しては、抗告・即時抗告・特別抗告といった手段で不服を申し立てることができます。
命令は、「裁判官による」裁判であり、捜査段階における令状の発布や第1回公判期日前の勾留に関する処分が、代表的な例です。
命令に不服がある場合には、準抗告という手続きをとることができます。
判決の種類
判決とは、裁判所が口頭弁論に基づいて示す判断のことを言いますが、判決にもいくつかの種類があります。
実体的裁判
- 有罪判決
検察官によって起訴された事件の犯罪事実が証明された場合になされる判決で、刑の言渡しの判決と刑の免除の判決があります。
刑の言渡しの判決の中にも、執行猶予付きの判決と執行猶予が付いていないいわゆる実刑判決があります。
また、刑の免除の判決は、被告人の行為について犯罪は成立するものの、法律で刑罰を免除するよう規定している場合に言い渡されます。
例えば、親族間の窃盗の特例の規定(刑法244条)などがあります。
- 無罪判決
法廷での審理の結果、被告人の行為は犯罪にならないと判断された場合、あるいは犯罪事実があったとの証明が不十分であると判断された場合に言い渡されます。
無罪判決を受けた被告人の損失を補償する制度として、刑事補償制度と費用補償制度があります。
刑事補償制度は、無罪判決を受けた被告人が身柄拘束されていた期間に応じて金銭的な補償を請求できる制度です。
この制度は、無実であるのに身柄拘束されていた人の不利益を補填することが目的ですから、無罪判決さえ受ければ誰でも受け取ることができます。
具体的な金額としては、1日あたり1000円~12500円の範囲で補償されます。
次に費用補償制度は、無罪を受けた被告人が裁判に要した費用の一部(出頭するのに要した旅費、日当及び宿泊料並びに弁護士報酬)を国が補償する制度です。
形式的裁判
- 管轄違いの判決
事件がその裁判所の管轄に属さない場合に言い渡される判決で、管轄の有無は裁判所が職権で調査すべき事項とされています。
- 公訴棄却の判決
実体裁判に至る前に手続きを打ち切る裁判の一種であり、訴訟条件の欠如が重大な一定の場合に、口頭弁論を経てなされます。ちなみに、訴訟条件の欠如が明らかな一定の場合には、決定で公訴棄却がなされます。
- 免訴の判決
有罪か無罪かの判断をせずに訴訟を打ち切る判決のことで、すでに確定判決を経たとき、刑が廃止されたとき、大赦があったとき、公訴時効が完成したときに言い渡されます。
刑罰の種類
刑法9条によれば、日本においては、死刑・懲役・禁錮・罰金・拘留・科料・没収の7つの刑罰が定められています。
このうち、没収以外の6つの刑を主刑といい、没収は主刑に付加してのみ科しうる付加刑とされています。
死刑
極刑とも呼ばれる生命刑であり、日本での最高刑です。
日本では、絞首という方法で執行されることとされています。
殺人罪や強盗致死罪などの重大犯罪についてのみ法定されています。
懲役・禁錮
一定期間身柄を拘束して自由を奪うことから、自由刑と呼ばれます。懲役・禁錮には、無期及び有期があり、有期は1月以上20年以下とされています。
ただ、刑の加重減軽を行う場合には、上限を30年以下までに挙げることができ、下限を1月未満とすることもできます。
懲役と禁錮が異なるのは、前者に刑務作業が科されるのに対し、後者は選択することができるという点です。
また、懲役・禁錮については、「改悛の状」があるときは、有期刑で刑期の3分の1を、無期刑で10年を経過した後に仮釈放することが認められます。
拘留
1日以上30日未満の範囲で、身柄を拘束する自由刑であり、刑務作業は要求されません。
情状により、行政官庁の判断によって、いつでも仮出場(身柄の解放)を許すことができます。
比較的軽微な犯罪の罰則として規定されています。
罰金・科料
一定額の財産を徴収する刑罰であり、財産刑と言われます。
罰金は、1万円以上の金銭が徴収されますが、減刑する場合には1万円未満に下げることも可能です。
また、上限はそれぞれの罪の罰則に規定されています。
科料は、千円以上1万円未満の軽微な財産刑であり、拘留と同じく軽微な犯罪に対する刑罰として定められている。
罰金・科料を完納することができない場合は、労役場に留置されることとなります。
労役場留置の処分では、刑務所に付属する施設に留置して軽作業を行うこととなります。
没収
対象となる物を国庫に帰属させる処分であり、財産刑としての性質を持ちます。