死亡事故を起こした男性に対して神戸地検が2回目の不起訴を決定した事件について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所神戸支部の弁護士にインタビューしました。
Q 先生、死亡事故を起こした男性が2回目の不起訴を獲得した事件をご存知ですか?
A 数日前の新聞に掲載されていた事件ですね。
確か、今年の2月に、神戸市内の路上に寝転がっていた男性が駐車場から出てきた車に轢かれて死亡した事故ですね。
車を運転していた40代の男性が過失運転致死罪で警察に逮捕されて捜査を受けていましたが、一度は嫌疑不十分を理由に不起訴処分となっ ていました。
しかし10月に検察審査会で、不起訴処分は不当だと判断されて再び捜査が行われており、今回はこの再捜査の結果をもって不起訴となったようです。
Q どうして不起訴になったのですか?
A 過失運転致死傷罪というのは、自動車等の運転手が必要な注意義務を怠って事故を起こし人を死傷させることによって成立する犯罪です。
事故を起こして相手を死傷させたからといって、絶対に過失運転致死傷罪に問われるわけではありません。
十分な安全確認を果たしながら運転していたのに、予期せぬ出来事が原因で起こった事故に関しては、過失運転致傷罪に問われない可能性もあるのです。
まさに今回の事件は、そういった理由で不起訴になったのではないでしょうか。
Q つまり、今回の事故は、十分に注意しながら運転しても防ぐのが難しかったということですか?
A はい。少なくとも検察庁はそのように判断したということになります。
Q 死亡事故を起こした方が不起訴になるというのは、よくあるのですか?
A 人が死亡するといった結果の重大性から、死亡事故で不起訴処分というのは珍しいことだと思います。
特に今回は、検察審査会で不起訴不当だと議決されて再捜査が行われての2回目の不起訴処分なので極めて珍しいケースではあります。
Q 先生は交通事故を起こした方の弁護活動も行っているのですか?
A はい。
一言で「交通事故」と言っても、誰も怪我していない軽微な物損事故もあれば、今回の事故のように、人が亡くなるような大きな事故もありますが、人身事故は刑事事件として扱われますので、刑事事件を専門に扱っている弊所でもお取り扱いできます。
Q 交通事故を起こした方で注意すべきことはありますか?
A よくある話しですが、被害者対応を保険会社に任せてしまって刑事手続きに関する対処を何もしないのは危険です。
加入している保険会社が被害者対応をしているので大丈夫だと思っている方が多いかと思いますが、保険会社の補償で満足する被害者はほとんどいませんし、特約がない限り、保険会社が、刑事手続きで有効となる示談までしてくれることはありませんので、事故を起こしてしまった方で刑事罰の軽減を望むのであれば、専門の弁護士に相談することをお勧めします。
Q 車を運転される方に何かメッセージはありますか?
A 車やバイクを運転する方であれば、誰しもが交通事故を起こす可能性がありますし、どんなに注意していても予期せぬことが起こって事故に巻き込まれてしまうこともあります。
大切なのは安全運転をして事故を起こさないように、事故に巻き込まれないようにすることですが、事故を起こしてしまった場合は、負傷者を救護し、警察に事故を届け出て、そして弁護士に相談することです。