【事件検討】交番に自転車で突っ込む 器物損壊罪の故意について
交番に自転車で突っ込んだ女性が器物損壊罪で逮捕された事件を、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所神戸支部が解説します。
4月28日に報道された記事によりますと、兵庫県長田警察署は、同警察署新長田駅前交番に自転車で突っ込み、交番の出入口のガラスを割ったとして、器物損壊罪の容疑で女性を逮捕したようです。
逮捕された女性は酒を呑んで酔払っていたようですが、どうして器物損壊罪で逮捕されたのでしょうか?
酔っ払いが自転車の運転操作を過って交番に突っ込んでしまった交通事故ではないのでしょうか?
そこで本日は、この事件を、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所神戸支部の弁護士に解説してもらいましょう。
器物損壊罪
人の物を壊した時に成立する犯罪です。
ガラスを割るといった、今回の事件のように物理的に物を壊す以外に、その物を使えなくする行為も、器物損壊罪でいう損壊に当たります。
例えば、自転車のサドルを外して自転車を使えなくしたり、人のバイクに、勝手にワイヤー錠をかけてバイクを使えなくする行為も器物損壊罪に抵触する可能性があります。
故意
ただ器物損壊罪が成立するには、行為者に物を壊す意思(故意)が必要です。
故意とは結果の認識と、その結果の認容ですが、こういった事をすれば物が壊れてしまうだろうけど、壊れてもいいやという、未必の故意でも器物損壊罪は成立します。
つまり今回の事件で器物損壊罪が成立するには、逮捕された女性に故意、少なくとも未必の故意が存在するかどうかです。
事件を検討
今回の事件は、多くの報道機関の新聞やネットニュースで報じられていましたが、記事になっている内容をまとめると、逮捕された女性は
①交番に勤務する警察官の対応に不満を持っていた。
②抗議のために交番を訪ねた。
③酒に酔って自転車を運転していた。
ようです。
この①~③の客観的な状況を考慮して、現場に居合わせた警察官は、女性に器物破損の故意があると判断して器物損壊罪で女性を現行犯逮捕したのでしょう。
当然、故意とは人の心の中の声ですので、今後の取調べ次第では、故意が認められずに不起訴になる可能性は十分にあると思われます。