運転免許証を偽造したとして、公文書偽造罪・同行使罪について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所神戸支部が解説します。
事件概要
兵庫県赤穂市を自家用車で走行していたAさんは、一旦停止を怠ったとして兵庫県赤穂警察署の警察官に呼び止められました。
免許証の提示を求められたAさんは、所持していた免許証を提示しました。
しかし、実は、Aさんの免許は去年に更新時期を迎えていたにもかかわらず更新手続をしておらず、所持していた免許証は更新日を偽った不正なものだったのです。
警察官に提示した際には、不正が発覚しませんでしたが、いつか発覚するのではないかと不安になり、刑事事件に強い弁護士に相談することにしました。
(フィクションです)
公文書偽造罪等について
公文書偽造等罪は、刑法第155条に規定されています。
第百五十五条 行使の目的で、公務所若しくは公務員の印章若しくは署名を使用して公務所若しくは公務員の作成すべき文書若しくは図画を偽造し、又は偽造した公務所若しくは公務員の印章若しくは署名を使用して公務所若しくは公務員の作成すべき文書若しくは図画を偽造した者は、一年以上十年以下の懲役に処する。
2 公務所又は公務員が押印し又は署名した文書又は図画を変造した者も、前項と同様とする。
3 前二項に規定するもののほか、公務所若しくは公務員の作成すべき文書若しくは図画を偽造し、又は公務所若しくは公務員が作成した文書若しくは図画を変造した者は、三年以下の懲役又は二十万円以下の罰金に処する。
上の第1項は有印公文書偽造、2項は有印公文書変造、3項は無印公文書偽造・変造に関する規定です。
公文書は、私文書と比べると証拠力が強く、公衆の信用度も高く、偽造による被害も私文書よりも大きいことが予想されるため、私文書の偽造・変造よりも重く処罰されます。
(1)有印公文書偽造罪・有印公文書変造罪
【客体】
本罪の客体は、公務所・公務員の作成すべき文書(公文書)や図画(公図画)です。
つまり、公務所・公務員がその名義をもって権限内で所定の形式に従って作成すべき文書・図画のことです。
「公務所」というのは、官公庁その他公務員が職務を行う場所のことです。
公文書の具体例としては、運転免許証、旅券、印鑑登録証明書などを挙げることができます。
運転免許証は、公安委員会が発行しますので、「公文書」にあたりますし、公安委員会の印章が使用されているので「有印」となります。
一方、公務員により作成された文書であっても、職務権限に基づいてその職務に関し作成されたものでない場合、公文書ではありません。
この点、役場書記の退職願は、職務の執行について作成すべきものではないため、公文書にはあたらないとする判例があります。(大判大10・9・24)
【構成要件的行為】
有印公文書偽造罪・有印公文書変造罪の行為は、行使の目的をもって、①公務所・公務員の印章・署名を使用して、公文書・公図画を偽造・変造すること、または、②偽造した公務所・公務員の印章・署名を使用して公文書・公図画を偽造・変造すること、です。
「印章」とは、公務所・公務員の人格を表象するために物体上に顕出された文字・符号の影蹟をいいます。
つまり、判子です。
当該公務員が公務上の印として使用するものであれば、公印、私印、職印を問いません。
「偽造」とは、作成権限を有しない者が、他人の名義を許可なく使用して文書を作成することです。
「変造」とは、真正に作成した文書に変更を加えることをいいます。
文書の本質的部分に変更を加えて、既存の文書と同一性を欠く新たな文書を作出した場合は、変造ではなく偽造または虚偽文書作成となります。
有効期限の経過した真正な運転免許証の有効期限の年月日を不正に修正した場合、「偽造」にあたると考えられます。
有印公文書変造罪も有印公文書偽造罪と同様に処罰されますので、法定刑は1年以上10年以下の懲役となり、罰金刑はありません。
【主観的要素】
有印公文書偽造罪・有印公文書変造罪は、目的犯ですので、行使の目的がなければ成立しません。
単に、観賞用に作っただけでは罪には問えません。
以上の偽造・変造された公文書を真正文書または内容の真実な文書として他人に認識させ、または認識し得る状態においた場合は、偽造公文書行使等罪が成立する可能性があります。
先述しましたが、有印公文書偽造等罪の法定刑は懲役刑のみと重いものとなっています。
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