少年事件とは、少年法の適用対象である20歳未満の男子・女子が、捜査の対象となる事件を意味します。
少年法の適用される少年事件・少年犯罪では、成人事件と大きく手続きや処分が異なります。
具体的には、捜査機関による捜査が行われた後に、家庭裁判所に事件が移されることになります。
家庭裁判所での調査を経て、少年審判を開始するかどうかが決められ、審判がなされた場合は一定の保護処分がなされるという流れで手続きが進みます。
ただし、事件当時20歳未満であっても、少年審判が開かれるときに20歳になっていた場合は、成人の刑事事件として手続きがなされることに注意が必要です。
また,17歳以下と,18歳・19歳(特定少年といいます)の少年でも,異なる扱いをされる場面がありますので,少年の年齢にも注意が必要です。
少年事件手続の説明
捜査段階
少年事件・少年犯罪は、基本的には成人事件と同様、警察や検察などの捜査機関によって捜査活動が行われます。
ただ、勾留された場合、留置場所が少年鑑別所となる可能性があります。
少年事件・少年犯罪の場合には、捜査機関である検察官から、原則としてすべての事件が家庭裁判所に送致されることになります。
この家庭裁判所送致については,18歳・19歳の特定少年が起こした事件であっても例外ではなく,まずは全件家庭裁判所に送致されます。
観護措置
観護措置とは、家庭裁判所が少年の処分を決定するために、少年の性格・資質、精神状態、家庭環境等を調査することを意味します。
観護措置には、在宅の場合と少年鑑別所に収容して行う場合がありますが、通常、観護措置が採られた際には、少年鑑別所に収容されることがほとんどであるため、観護措置イコール少年鑑別所送致とも捉えられています。
観護措置の期間は、家庭裁判所に送致されてから2週間で特に継続の必要があれば1回に限り更新することができるとされています。
実務上は、ほとんどの事件で更新がなされており、観護措置の期間は通常4週間とされています。
なお、一定の場合には、特別更新が認められ最大8週間の観護措置をとることができます。
捜査段階で勾留されていた場合には観護措置が採られるケースが多くなります。
調査
家庭裁判所調査官が少年や保護者・参考人と面接して、非行事実や審判条件について調査し、どのような処分が適正かを調べます。
家庭裁判所調査官の調査の結果、処分が不要であるとされる場合には、この段階で手続きを終える審判不開始になることもあります。
審判
家庭裁判所の調査官による調査などを行ったうえで少年審判が開始された場合、審判では、裁判官が、少年に非行事実が認められるかを確認したうえで、少年の更生のために保護処分にするのが適切なのか,刑事処分が適切なのかなどを選択判断することになります。
検察官送致(逆送)
事件について,家庭裁判所が保護観察などの保護処分にするのではなく,刑事処分が妥当であると考えられた場合には,事件は再び検察庁に戻されます。このような家庭裁判所の決定のことを,検察官送致(逆送)と呼んでいます。検察官送致(逆送)となるのは,以下のような場合です。
①家庭裁判所で審判を受けるまでに20歳になったとき
②死刑、懲役又は禁錮に当たる罪の事件について、調査の結果、その罪質及び情状に照らして刑事処分を相当と認めるとき
①は,保護処分の要件として審判のときに20歳未満でなければならないことの裏返しです。
②は,極めて重大な事件(殺人)や,少年の更生があまり問題とならない過失運転致死傷事件,罰金などが予定されている道路交通法違反事件などで,事件を検察官に戻すものです。
基本的に,家庭裁判所は保護処分とするか,②によって検察庁に事件を戻すのかを調査の結果などを踏まえて検討するのですが,一定の条件を満たす場合には原則検察官送致としなければならないと決められています。このような事件のことを「原則検察官送致(逆送)事件」と呼んでいます。
原則逆送事件となるのは以下のような場合です。
③故意の犯罪行為により被害者を死亡させた罪の事件であつて、その罪を犯すとき十六歳以上の少年に係るもの
④特定少年が審判を受けるときで
ア 故意の犯罪行為により被害者を死亡させた罪の事件であつて、その罪を犯すとき十六歳以上の少年に係るもの
④は,審判を受ける少年が18歳か19歳の場合に用いられる条文です。アは③と同じ内容ですが,イが加わっています。つまり,特定少年(18歳・19歳)の場合には,他の年齢の少年よりも検察官送致になる対象が増えるということになります。イに定めのある「死刑,無期,短期1年以上の懲役若しくは禁錮」の事件とは,強盗,強制性交等,非現住建造物等放火等の事件です。なお,④のイが適用されるのは,罪を犯すときに特定少年(18・19歳)である場合ですから,17歳の時に強盗などの事件を起こし,18歳で捕まったような場合には④は使えません。ただし,この場合でも②の規定によって検察官送致となる場合があります。
保護処分の種類
不処分
少年事件・少年犯罪で少年を保護処分に付する理由がない場合や、必要性がないと判断された場合になされる決定です。
保護観察
少年を家庭や職場等に置いたまま、保護観察官による指導や監督などの社会内処遇により更生を促す保護処分です。
保護観察の期間は,原則20歳になるまでですが,短期保護観察処分となった場合には半年程度です。
なお,特定少年が審判で保護観察を言い渡された場合には,期間は2年間または6か月です。
児童自立支援施設・児童養護施設送致
18歳未満の少年を対象として、不良行為のおそれのある者を施設に入所させたり、保護者の元から通わせたりすることによって自立を支援する保護処分です。
少年院送致
少年の再非行を防止するために、少年院に収容したうえで、矯正教育を行う保護処分です。
少年院収容の期間は、長期と短期がありますが、およそ4か月から2年以内の間で決められます。
特定少年が審判で少年院送致を言い渡された場合には,3年以下の範囲で少年院に収容する期間を定めます。
捜査段階での弁護活動
少年事件・少年犯罪の捜査段階では、被疑者が少年であっても、成人と同じように刑事訴訟法が適用されるため、弁護活動は基本的には成人の場合と同じです。
ただ、少年事件・少年犯罪の場合は、身体拘束につき、勾留に代わる観護措置が採られることがありますし、通常の勾留であっても、鑑別所が留置場所に指定されることがあります。
少年事件・少年犯罪で未成年の少年が逮捕・勾留された場合には、釈放などの身柄の解放に向けた弁護活動が重要になります。
勾留がなされた状態であれば、家庭裁判所に送致された後もすぐに観護措置が採られてしまうことがほとんどです。
ですから、できる限り早期の身柄開放に力を入れて弁護活動を行います。
また、少年事件・少年犯罪では、少年自身が、逮捕・勾留されたことで、大きな動揺と不安を抱えているのが通常です。
なによりも、まずは少年への心理的なケアを行い、そのうえで、少年自身に対して、また、ご両親ほか保護者の方に対しても、事件の見通しや少年事件の手続きについて、丁寧に、しっかりと説明を行うことも忘れてはならない重要な活動であると考えています。
家庭裁判所への付添人としての活動
少年事件・少年犯罪が家庭裁判所に送致された後で重要となるのは家庭裁判所調査官による調査です。
ここで受ける調査の結果や調査官の意見が、調査官報告書として家庭裁判所の裁判官に提出され、少年審判の行方に大きな影響を与えることとなります。
少年事件の付添人である弁護士は、家庭裁判所の調査官との協議・折衝を行いながら、少年に非行事実と真摯に向き合わせ、また、生活環境などの改善をしっかりと促していきます。家庭裁判所調査官に少年の家庭環境や生育状態などを含めた更生環境が整っていること、更生へと向かう将来的ビジョンが描けていることなどを伝えて、家庭裁判所調査官の調査結果が少年にとって望ましいものになるよう働きかけます。
さらに、弁護士が付添人として入ることで、少年審判において、犯行をするに至った経緯・動機・犯行態様・具体的な被害結果など少年に有利な事情及び生活環境などの改善を裁判官に説得的に主張し、不処分や保護観察等の寛大な処遇を目指します。