裁判は大きく分けて刑事裁判と民事裁判の2種類があります。
ここでは、簡単な事案を用いてその違いを説明します。
事案
Aさんは、友人のVさんの自宅に忍び込んでVさんの財布から3万円を盗んでしまいました。
今後、Aさんはどうなってしまうのでしょうか。
また、お金を返してほしいVさんはどんなことができるのでしょうか。
①刑事事件と刑事裁判
AさんはVさんの自宅に侵入してお金を盗んでしまっているので、住居侵入罪と窃盗罪が成立します。このように、「○○罪」というような犯罪が成立してしまう事件を刑事事件といいます。
犯罪には刑罰(懲役や罰金など)が科せられています。刑事事件が発生すると、警察や検察といった国の捜査機関が捜査を行います。Vさんは「お金を盗まれた」として被害届を出すことがありますが、自ら捜査をするわけではありません。警察や検察などの捜査機関が犯人を突き止め、場合によってはAさんを逮捕し、検察官が起訴し、裁判にかけられることになります。これが刑事裁判です。
刑事裁判では、被告人が有罪か無罪か、有罪ならどのような刑罰が適切かを判断することになります。刑事裁判では、検察官VS被告人&弁護人という対立構造になります。
②民事事件と民事裁判
お金を盗まれたVさんとしては、早く返して欲しいと思うでしょう。また、自宅の鍵を替えたり清掃したりした費用を弁償して欲しいと思うこともあるでしょう。この場合、VさんがAさんに対して、「盗んだ物を返してくれ」「弁償金を払ってくれ」ということで裁判を起こすことができます。
これが民事事件、民事裁判です。物を返して欲しい、お金を払って欲しいというのが民事裁判なのです。
民事裁判には基本的に警察や検察は登場しません。刑事裁判とは異なり、原告(物やお金を返して欲しい人)VS被告(物やお金を返せと言われている人)の対立構造になります。
③刑事裁判と民事裁判の関係
基本的に、刑事裁判と民事裁判は無関係です。
例えば、Aさんが窃盗罪で有罪判決になったとしても、民事裁判でもAさんが負けるとは限らないのです。
また、示談金や罰金と損害賠償も別物です。
示談金は「示談による解決」、罰金については「判決、刑罰の種類」で詳しく説明しています。
示談金は事件を解決するために支払う金銭です。
被害賠償なども含まれ、被害者の方に支払います。
罰金とは裁判を経て出される刑罰の一種です。
罰金が規定されている犯罪しか科すことはできません。支払うのは国に対してです。
これらに対して、損害賠償は損害を賠償するために支払う金銭です。民事事件を解決するために支払う金銭ということになります。
ただ、事件によっては示談金と損害賠償が同一になる場合もあります。
このように、刑事裁判と民事裁判は大きく異なるのです。
対象 | 当事者 | 始まり | 捜査 | 裁判 | |
刑事事件 刑事裁判 | 犯罪 | 被疑者被告人 VS 捜査機関 | 被害者による被害届の提出 警察による捜査 検察官による起訴 | 警察や検察が行う | 有罪か無罪か 有罪なら刑罰の重さ |
民事事件 民事裁判 | お金返して 物返して等 | 原告 VS 被告 | 原告による請求 訴えの提起 | 警察や検察は介入しない 当事者が証拠を集める | 返すべきかどうか 返すべきならいくらか(金銭の場合) |