あおり運転の厳罰化

2020-09-13

あおり運転厳罰化について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所神戸支部が解説します。

~事例~
兵庫県加東市の高速道路で、Vさんが運転する乗用車に左右から幅寄せしたり前方で急制動したりして、Vさんの車を停車させるなどした疑いで、兵庫県警察高速隊は、Aさんを道路交通法違反(妨害運転罪)の容疑で逮捕しました。
Aさんは、「運転の仕方が気に入らず、イラっとしてあおった。」と容疑を認めています。
警察からの連絡で夫の逮捕を知ったAさんの妻は、ニュースであおり運転厳罰化が特集されていることを思い出し、Aさんに対してどのような処分が下されるのか不安で仕方ありません。
(フィクションです)

交通事故に繋がりかねない危険な運転行為である「あおり運転」は、これまで道路交通法や刑法の暴行罪などを適用して対処されてきました。
あおり運転が引き起こす交通事故の危険性・重大性を鑑み、あおり運転に対する厳罰化が求められてきました。

道路交通法改正~妨害運転罪の創設~

令和2年6月10日に公布された道路交通法の一部を改正する法律により、「妨害運転」に対する罰則が創設されました。

道路交通法第117条の2の2第11号は、「他の車両等の通行を妨害する目的で、次のいずれかに掲げる行為であって、当該他の車両等に道路における交通の危険を生じさせるおそれのある方法によるものをした者」を、3年以下の懲役または50万円以下の罰金に処すとしています。
本条の対象となる行為は、
①通行区分違反:右折や左折などをする場合に、方向別に区分された車線を通らない。
②急ブレーキ禁止違反:不必要に車を急停止させたり、急激な減速をするような急ブレーキをかける。
③車間距離保持違反:前の車との距離を極端に詰める。
④進路変更禁止違反:みだりにその進路を変更する。
⑤追い越し方法違反:追い越し車線ではない通行帯で追い越す。
⑥車両等の灯火違反:ハイビームでの威嚇。
⑦警音器等使用違反:むやみやたらにクラクションを鳴らす。
⑧安全運転義務違反:幅寄せや蛇行運転。。
⑨最低速度違反:高速道路での最低速度より遅い速度での進行。
⑩停車・駐車禁止違反:高速道路での駐停車。

また、道路交通法第117条の2の2第11号の罪を犯し、よって高速道路において他の自動車を停止させ、その他道路における著しい交通の危険を生じさせた者は、5年以下の懲役または100万円以下の罰金が科せられます。(道路交通法第117条第6号)

このように、あおり運転自体を行った場合には、新たに創設された妨害運転罪に該当する可能性があります。

自動車運転処罰法改正~危険運転致死傷罪の対象~

あおり運転を行った結果、人身事故を起こした場合には、自動車運転処罰法の危険運転致死傷罪に該当することがあります。

危険運転致死傷罪は、自動車の危険な運転によって人を死傷させた場合に成立する犯罪です。
自動車運転処罰法に関する改正法が7月2日に施行され、高速道路などで走行中の車両前方に停止するなど、他の車の通行を妨害する行為が危険運転致死傷罪に追加されました。

法改正以前では、あおり運転による人身事故に危険運転致死傷罪が適用されるのは、「人や車の通行を妨害する目的で、走行中の自動車の直前に侵入し、その他通行中の人や車に著しく接近し、かつ、重大な交通の危険を生じさせる速度で自動車を運転する行為」を行い、その結果、人を死傷させた場合でした。
つまり、あおり運転に高速度での運転という要件が課されていたため、適用範囲が限定されていました。

改正後は、先の類型に加えて、「車の通行を妨害する目的で、走行中の車(重大な交通の危険が生じることとなる速度で走行中のものに限る。)の前方で停止し、その他これに著しく接近することとなる方法で自動車を運転する行為」と「高速道路・自動車専用道路において、自動車の通行を妨害する目的で、走行中の自動車の前方で停止し、その他これに著しく接近することとなる方法で自動車を運転することにより、走行中の自動車に停止又は徐行(自動車が直ちに停止することができるような速度で進行することをいう。)をさせる行為」も危険運転致死傷罪の対象となりました。
前者は、走行している車の前で急ブレーキをし、その車を停止させたり、極端に接近したりした結果、交通事故を起こし、人を死傷させた場合が該当し、高速道路のような路上で駐停車していることが予想されていないような場所で、前方に割り込んだり、極端に接近したりして走行中の車を停止・徐行させたことで、人を死傷させた場合は後者に当たるでしょう。

以上の様に、危険なあおり運転については、これまで以上に厳しい処罰が科されることになります。

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