あおり運転で刑事処分を受ける場合について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所神戸支部が解説します。
他車の走行を著しく妨害する「あおり運転」は、人身事故につながることも多く、社会問題として大きく取り沙汰されてきました。
理不尽なあおり運転の末、尊い命が犠牲になる何とも痛ましい事件も起きており、あおり運転に対する取締り強化や厳罰化を望む声が高まっています。
警察庁は、あおり運転にあたる行為を新たに道路交通法で定め、厳しい罰則を設ける方針を打ち出しているようです。
さらに、あおり運転と認定されれば免許取消となる厳しい行政処分とする方針も固めたようです。
あおり運転にあたる行為を行った場合、どのような罪に問われ刑事処分の対象となるのでしょうか。
あおり運転行為自体について成立し得る罪
「あおり運転」の定義について、法律上明確に定められたものはありません。
しかし、道路を走行する自動車等に対して、車間距離を極端に詰めたり、ハイビームでパッシングをしたり、並走して幅寄せをしたりすることで、相手の自動車等を威嚇する危険な運転行為を指すものと一般的に理解されています。
このような危険な運転行為は、「道路交通法」において禁止されており、違反行為に対しては罰則も設けられています。
(1)車間距離保持義務違反
車両等は、同一の進路を進行している他の車両等の直後を進行するときは、その直前の車両等が急に停止したときにおいてもこれに追突するのを避けることができるため必要な距離を、これから保たなければならない。(道路交通法第26条)
自車の前方に他車が走行している際には、当該他車が急にブレーキを踏んだとしても、それに追突するのを回避できる車間距離を空けて走行しなければなりません。
車間距離保持義務違反に対する罰則は、高速道路上の場合は3月以下の懲役または5万円以下の罰金、その他の道路上の場合は5万円以下の罰金です。
(2)進路変更禁止違反
第二十六条の二 車両は、みだりにその進路を変更してはならない。
2 車両は、進路を変更した場合にその変更した後の進路と同一の進路を後方から進行してくる車両等の速度又は方向を急に変更させることとなるおそれがあるときは、進路を変更してはならない。
3 車両は、車両通行帯を通行している場合において、その車両通行帯が当該車両通行帯を通行している車両の進路の変更の禁止を表示する道路標示によつて区画されているときは、次に掲げる場合を除き、その道路標示をこえて進路を変更してはならない。
一 第四十条の規定により道路の左側若しくは右側に寄るとき、又は道路の損壊、道路工事その他の障害のためその通行している車両通行帯を通行することができないとき。
二 第四十条の規定に従うため、又は道路の損壊、道路工事その他の障害のため、通行することができなかつた車両通行帯を通行の区分に関する規定に従つて通行しようとするとき。(同法第26条の2)
1項は、正当な理由ない進路変更を禁止したもので、進路変更に関する原則的な規定です。
正当な理由というのは、法令の規定に従って進路を変更するとき、危険を防止するため進路を変更するとき、警察官の命令によって進路を変更するときなどです。
2項は、後者との関係における進路変更の禁止について定めており、現実に他車に危険を生じさせるような進路の変更を禁じています。
3項は、道路標示による進路変更の禁止について規定しています。
車両通行帯が設けられている場合、その車両通行帯が「進路変更の禁止」を表示する道路標示で区画されているときは、原則その道路標示をこえて進路を変更することは禁止されています。
進路変更禁止違反(2・3項)の罰則は、5万円以下の罰金です。
(3)急ブレーキ禁止違反
車両等の運転者は、危険を防止するためやむを得ない場合を除き、その車両等を急に停止させ、又はその速度を急激に減ずることとなるような急ブレーキをかけてはならない。(同法第24条)
「危険を防止するためやむを得ない場合」とは、走行している車両の直前に歩行者が飛び出してきた場合や、左側端を通行していた自転車が走行している車両の直前に急に右折をはじめ入ってきた場合、道路の損壊や道路上の障害物をその直前で発見した場合など、目前で危険を防止するためにはやむを得ない場合を指します。
急ブレーキ禁止違反の罰則は、3月以下の懲役または5万円以下の罰金です。
このように「あおり運転」に該当するような行為は、道路交通法違反となる可能性があることがご理解いただけたと思いますが、これ以外にも、「あおり運転」行為それ自体が刑法上の「暴行罪」に当たる場合があります。
(4)暴行罪
暴行を加えた者が人を傷害するに至らなかったときは、二年以下の懲役若しくは三十万円以下の罰金又は拘留若しくは科料に処する。(刑法第208条)
ここでいう「暴行」の意義についてですが、「他人の身体に対する有形力の行使」であると解されます。
殴る蹴るといった相手方に対する直接の身体的暴力行為のみならず、音・光・電流等を行使する場合も「暴行」に含まれます。
ですので、相手の車に物理的にぶつからなくとも、車間距離を接近されたり、幅寄せしたりする方法により威嚇した場合には、その行為が「暴行」にあたると判断される可能性もあるのです。
以上のように、いわゆる「あおり運転」行為を行った場合には、刑事処分が科される可能性もありますので、くれぐれも運転には注意しておきたいものです。
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