Archive for the ‘経済事件’ Category

債務不履行と詐欺罪

2019-09-17

債務不履行と詐欺罪

~ケース~
Aさんは、会社の経営がうまくいかず、知り合いから会社の運営資金200万円を借りていました。
しかし、その借金を返すことができないため、知人のVさんから運営資金200万円を借り、経営が軌道に乗れば必ず返済することを約束しました。
その後、Vさんが借金の返済を迫っても、Aさんは、「必ず返す。あともう少し資金があれば、経営がうまくいくんだ。」と更なる借り入れを申し入れる始末でした。
そのうち、VさんはAさんと連絡がとれなくなってしまいました。
いつまで経っても返済する様子がないことに業を煮やしたVさんは、Aさんに対して、債務不履行による損害賠償の請求を裁判所に申し立てました。
それでも何ら連絡のないことに腹を立てたVさんは、「Aさんは元々返すつもりがなく借りたのではないか?」と疑いはじめ、兵庫県宍粟警察署詐欺の疑いで被害届を提出することにしました。
(フィクションです)

借金を踏み倒すと…

「会社の経営がうまくいかない…」、「生活が苦しい…」等の理由で貸金業者や知人等からお金の借り入れをされた経験がある方も少なくないと思います。
借りる際には、「きちんと借りたお金を返す」と約束するのですが、いつまで経っても貸したお金を返してもらえないというケースも残念ながらあります。
借金を踏み倒した場合、債権者は債務者に対してどのような手段を講じ得るのでしょうか。

1.債務不履行による債務履行請求・損害賠償請求~民事事件~

お金の貸し借りの約束は、債権者と債務者との私人間の約束です。
当該約束内容には、お金を借りた者(債務者)はお金を貸した者(債権者)にいついつまでに借りたお金を返すことが含まれています。
この約束により、債務者には、借りたお金を返す「義務」が生じるわけですが、借りたお金を返さない行為は、その約束に違反する行為、つまり、借金を返済する義務を怠ることとなります。
故意または過失によって自分の債務(この場合の債務は、お金を借りた者がお金を貸した者に借りたお金を返すという義務)を履行(実行)しないことを「債務不履行」といいます。
そして、債務を履行しない場合には、法的な責任=債務不履行責任が債務者に生じます。
債務不履行責任が生じた場合、債権者は債務者に対して、完全な履行を請求すること、契約に基づく債務の場合には契約を解除すること、債務不履行から生じた損害賠償を請求することができます。
よって、お金を貸したがいつまでたっても返済されない場合には、債権者が貸金返金請求(債務履行請求)訴訟や債務不履行により生じた損害賠償請求訴訟を裁判所に起こすことが予想されます。

2.詐欺罪による被害届等の提出~刑事事件~

先述しましたが、借金の貸し借りというのは私人間のやりとりですので、私人間の消費貸借契約から生じた紛争は民事事件として取り扱われます。
しかし、「最初から返すつもりがないにもかかわらず、相手方に返すと嘘をついてお金を借りた」場合に限っては、詐欺罪として刑事事件へ発展する、ということがあります。

詐欺罪は、「人を欺いて財物または財産上不法の利益を詐取する」犯罪です。
詐欺罪の成立には、①欺く行為をして、②それに基づき相手方が錯誤に陥り、③その錯誤によって相手方が処分行為をし、④それによって財物の占有が移転または利益が移転するといった一連の関係性がなければなりません。
借金返済が問題となる場合、①の欺く行為があったかあったのか、つまり、相手方を騙す行為があったのかどうかがポイントとなります。
つまり、返済する意思がない、返済する能力がないにもかかわらず、あるかのように装い、相手方を騙してお金を借りたのであれば、欺罔行為に当たることになります。

実際にはそのような人の心の中を立証することは困難です。
しかし、その時の金銭状況を示す客観的な証拠があれば、返済する意思も能力もなかったことを立証することは可能です。
借金の返済踏み倒しで刑事事件に発展する可能性も0ではありません。

詐欺罪の疑いがかけられている方やご家族が詐欺事件で逮捕されてしまいお困りの方は、今すぐ刑事事件を専門とする弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。
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詳しくは、フリーダイヤル0120-631-881までお問い合わせください。

窃盗罪成立?~一時使用行為~

2019-09-12

窃盗罪成立?~一時利使用行為~

~ケース~
Aさんは、兵庫県宝塚市の駅から友人宅に向かう際、歩くには遠いけれどタクシー代を払うのももったいないと思っていたところ、駅付近の駐輪場に鍵が差し込まれたままの原動機付自転車を発見しました。
Aさんは、後で返すつもりでその原動機付自転車に乗って友人宅に向かいました。
3時間後、Aさんは原動機付自転車に乗って駅に戻り、駐輪場に止めようとしたところ、駐輪場の管理人に「ここは契約者以外は駐車できないから、他に止めてくれるか。」と言われ、対応に困っていたので、怪しいと思った管理人は兵庫県宝塚警察署に通報し、Aさんは警察署で事情を聞かれることとなりました。
(フィクションです)

人の原動機付自転車を使用したAさんは、警察署で事情を聞かれることになりましたが、Aさんは「後で返すつもりで乗って、実際に返しに駐輪場にいたので、原動機付自転車を盗んではいません。」と主張しています。
さて、Aさんの行為について、窃盗罪は成立するのでしょうか。

窃盗罪とは?

窃盗罪は、他人の財物を窃取した場合に成立する犯罪です。
「窃取」とは、他人が占有する財物を、占有者の意思に反して自己または第三者の占有に移転させることをいいます。

窃盗罪の成立を肯定するためには、主観的要件である「他人の財物を窃取することの認識」に加えて、「不法領得の意思」が必要とされます。
判例によれば、「不法領得の意思」というのは、「権利者を排除して他人の物を自己の所有物としてその経済的用法に従い利用、処分する意思」であるとされます。(大判大正4・5・21)
つまり、不法領得の意思は、権利者を排除して、他人の物を自己の所有物として扱う意思(排除意思)、および他人の物をその経済的用法に従い利用・処分する意思(利用意思)から構成されます。

一時使用について

先述のように、窃盗罪が成立するためには、「権利者を排除し、他人の物を自己の所有物と同様にその経済的用法に従い、これを利用し又は処分する意思」が必要となりますが、他人の物を利用し、利用後は元に戻す意思で物を持ち去って利用するような「一時使用行為」においては、排除意思が認められるかが問題となります。

この点、権利者を排除する意思を認めるか否かを判断するに当たっては、利用により価値の減少や消耗が生じ、または、その危険性が大きい場合には、権利者でなければできない利用である点で排除意思が認められ、利用の妨害の程度が大きければ排除意思が認められます。
上記ケースにおいては、Aさんは原動機付自転車を利用後は元の場所に返すつもりで利用し、実際に元の駐輪場に戻しています。
また、使用時間も3時間ほどであり、使用した原動機付自転車の所有者の利用の妨害も生じていません。
しかし、原動機付自転車を使用したことで、そのガソリンを消耗しており、使用した原動機付自転車で事故を起こし当該原動機付自転車を損傷させてしまう危険性もあると考えられることから、Aさんには排除意思が認められる、つまり不法領得の意思が認められ、窃盗罪が成立することになるでしょう。

「ちょっと借りるだけ」と安易に他人の者を勝手に使用すると、窃盗の罪責を負うことになりかねません。
もし、あなたが窃盗事件の被疑者として取調べを受けているのであれば、今すぐ刑事事件に強い弁護士にご相談ください。
容疑を認めている場合には、被害者への被害弁償や示談を行い、不起訴処分獲得に向けて動く必要があります。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件・少年事件を専門に取り扱う法律事務所です。
窃盗事件をはじめ刑事事件でお困りの方は、今すぐフリーダイヤル0120-631-881までご連絡ください。

少年事件で保護観察処分

2019-09-11

少年事件で保護観察処分

~ケース~
兵庫県淡路市に住む高齢女性の自宅を訪れ、弁護士の秘書を装い、女性から現金100万円を騙し取ったとして、少年Aくん(17歳)が兵庫県淡路警察署に詐欺罪で逮捕されました。
Aくんは、逮捕・勾留後に家庭裁判所に送致され、少年審判を受けることになりました。
Aくんの両親は、審判で少年院送致が言い渡されるのではないかと不安でなりません。
(フィクションです)

少年と特殊詐欺事件

兵庫県警察によると、兵庫県における特殊詐欺の認知件数は、平成26年度以降増加しており、平成30年中には773件となっています。
交付形態は、振込型や現金送付型は減少する一方、現金手交型、キャッシュカード手交型、電子マネー型が増加しています。
増加している手交型のように、被害者に直接会いに行って現金やキャッシュカードなどを受領する役割は「受け子」と呼ばれており、受け子役は犯罪組織の内部の者ではなく、外部の者に担わせることが多くなっています。
ネットの掲示板などで「高額アルバイト募集」などと謳い外部から特殊詐欺に加担する者を募るわけですが、20歳未満の者(以下、「少年」といいます。)が受け子として事件に関与したケースは少なくありません。
少年は、「荷物を受け取るだけで数万稼げるなんて…」「友人や先輩から誘われたし…」と、安易な気持ちで特殊詐欺に加担してしまうケースが多く見受けられます。
このような特殊詐欺の裏には、犯罪組織が存在しており、最も警察に捕まりやすい「受け子」や「出し子」の役割を少年たちに担わせ、自分たちは足がつかないようにしているのです。
言葉巧みに少年たちを勧誘し、利用する大人たちが背後にいるのです。

特殊詐欺事件における処分傾向

少年(20歳未満の者)が犯罪行為を行った場合、原則、少年法に基づいた手続に従って処分が決定されます。
処分は、家庭裁判所の調査や審判を経て、少年の更生に適したものが下されることになります。
家庭裁判所が言い渡す終局処分には、次のようなものがあります。
①保護処分(保護観察、少年院送致、児童自立支援施設等送致)
②検察官送致
③不処分
④都道府県知事または児童相談所長送致
⑤審判不開始

少年事件であっても、組織的な詐欺に関与したことが疑われる場合には、初犯であっても、逮捕・勾留される可能性が高く、家庭裁判所に送致された後も、そのまま少年鑑別所に収容される割合が高くなっています。
また、勾留と同時に、弁護士以外の者との面会等を禁止する接見禁止が付される可能性もあります。
また、少年に前歴や補導歴がないとしても、終局処分として少年院送致が言い渡される可能性があります。
そのような処分を回避するため、できるだけ早期に弁護士に相談・依頼するのがよいでしょう。

保護観察処分

特殊詐欺の少年事件では、弁護士は、少年院送致を回避し保護観察処分となるよう弁護人・付添人として活動することになります。

保護観察処分は、少年が保護観察官や保護司の指導監督の下、社会内で更生できると判断された場合に付される保護処分です。
保護観察に付された場合、少年は決められた遵守事項を守りながら家庭等で生活し、保護観察官や保護司と定期的に面会し現状報告した上で、彼らから生活や交友関係などについて指導を受けることになります。

保護観察の期間は、原則として、少年が20歳に達するまでです。
ただし、決定時から少年が20歳になるまでの期間が2年に満たない場合は、2年となります。
また、少年の改善更正に役立つと判断される場合には、期間を定めて保護観察を一時的に解除することもあり、保護観察継続の必要性がなくなったと認められるときは、保護観察は解除されます。

少年事件では、付添人である弁護士が、少年が社会内での更生が期待できることを客観的な証拠を提示し、裁判官に説得的に主張するなどの付添人活動を行います。
具体的には、少年が自らの行為を反省しているなど少年自身の更生可能性や、家族や学校・職場の協力を得て少年の周囲の更生環境が整っていることを主張していきます。

お子様が逮捕されてお困りであれば、今すぐ弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。
少年事件・刑事事件を専門とする弁護士が無料法律相談初回接見を行います。
詳しくは、フリーダイヤル0120-631-881までご連絡ください。

ひったくりで窃盗罪?強盗罪?

2019-09-08

ひったくりで窃盗罪?強盗罪?

~ケース~
兵庫県尼崎市や伊丹市などの路上で通行人から現金が入ったかばんを奪ったとして、兵庫県尼崎東警察署は、AさんとBさんを窃盗強盗致傷の疑いで逮捕しました。
逮捕の連絡を受けたAさんの家族は、事件の詳細も分からず対応に困ってしまいました。
(神戸新聞NEXT 2019年8月21日21時12分掲載記事を基にしたフィクションです)

ひったくり行為で成立する犯罪は?

道を歩いている人のカバンを、原付バイクや自転車などに乗った犯人が奪取する「ひったくり」事件は、兵庫県警察によれば、平成30年中兵庫県下では、71件が認知されています。
ひったくりの発生は、主に都市部に集中しており、高齢者や女性を狙ったものが多くなっています。
ひったくりは、その犯行内容により成立する犯罪は異なります。

(1)窃盗罪

AさんとBさんは、自転車の前かごに入れてあったカバンを追い抜きざまにひったくり、Vさんはあっけにとられてしばらく呆然としていました。

このような場合には、「窃盗罪」が適用される可能性が高いでしょう。

第二百三十五条 他人の財物を窃取した者は、窃盗の罪とし、十年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。

窃盗罪は、
①他人の財物を
②不法領得の意思をもって
③窃取した
ことで成立します。
「不法領得の意思」というのは、「権利者を排除し他人の物を自己の所有物としてその経済的用法に従いこれを利用もしくは処分する意思」のことをいいます。(大判大4・5・21)
また、「窃取」とは、占有者の意思に反して財物に対する占有者の占有を排除し、目的物を自己または第三者の占有に移すことをいいます。(最決昭31・7・3)
窃取の手段や方法は問いませんので、こっそりであっても、ひったくりのようにあからさまであっても構いません。

このように、ひったくり窃盗罪に当たるケースがほとんどです。
しかし、ひったくる時にうまくバックを盗ることができずに、被害者ともみあった場合には、「窃盗罪」ではなく「強盗罪」となることもあるのです。

(2)強盗罪

AさんとBさんは、カバンを肩に提げて歩いていた歩行者から、カバンをひったくろうとしました。その際に、バックを離さない歩行者を転倒させてしまいました。

このような場合、強盗罪が、被害者に怪我を負わせたのであれば強盗致傷罪が成立する可能性があります。

(強盗)
第二百三十六条 暴行又は脅迫を用いて他人の財物を強取した者は、強盗の罪とし、五年以上の有期懲役に処する。
2 前項の方法により、財産上不法の利益を得、又は他人にこれを得させた者も、同項と同様とする。
(強盗致死傷)
第二百四十条 強盗が、人を負傷させたときは無期又は六年以上の懲役に処し、死亡させたときは死刑又は無期懲役に処する。

強盗罪は、
(1項)①暴行または脅迫を用いて
    ②他人の財物を
    ③強取したこと
(2項)①暴行または脅迫を用いて
    ②財産上不法の利益を得、または他人にこれを得させたこと
により成立する犯罪です。
実行行為の手段である「暴行・脅迫」は、相手方の反抗を抑圧するにたりる程度のものであることが必要となります。(最判昭24・2・8)
ひったくりは、犯行抑圧に向けられた暴行ではなく、暴行を手段とするものであっても窃盗罪にしかなりません。
しかし、暴行の程度如何によっては強盗罪若しくは恐喝罪が成立する可能性はあります。
「強取」とは、暴行・脅迫を用いて相手方の反抗を抑圧し、その意思によらずに財物を自己または第三者の占有に移す行為をいいます。
強盗罪の法定刑は、5年以上の有期懲役と、窃盗罪のそれよりも重くなっています。
また、強盗により人に怪我を負わせた場合には、強盗致傷罪となり、その法定刑も無期または6年以上の懲役と加重されます。

ひったくりには、被害に遭った方がいらっしゃいますので、重要な刑事弁護活動のひとつに、被害者への被害弁償や示談交渉があげられます。
このような活動には、刑事事件に精通する被害者との示談に豊富な経験を持つ弁護士に依頼するのがよいでしょう。

ご家族がひったくり事件で被疑者として逮捕されてしまったのであれば、刑事事件専門の弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所に今すぐご相談ください。

身柄解放活動③~起訴後~

2019-08-19

身柄解放活動③~起訴後~

~ケース~
兵庫県南あわじ市の玉ねぎ農家の玉ねぎ畑に何者かが侵入し、大量の玉ねぎが盗まれるという事件が起きました。
兵庫県南あわじ警察署は、被害届の提出を受けて捜査に乗り出しました。
警察の地道な捜査の結果、県内に住むAさんの犯行であることが判明し、警察はAさんの自宅に赴き、家宅捜索後に窃盗の容疑でAさんを逮捕しました。
逮捕・勾留・勾留延長を経て、神戸地方検察庁洲本支部はAさんを窃盗罪で起訴しました。
(フィクションです)

窃盗事件で起訴されたら~保釈で身柄解放~

逮捕後に、勾留が決定し、10日間もしくは20日間の身体拘束を余儀なくされた場合であっても、起訴後に釈放となる可能性はあります。
それは、「保釈」により身柄解放となる場合です。

「保釈」というのは、一定額の保釈保証金を納付することにより、勾留されている被告人を暫定的に釈放する制度です。
この保釈は、起訴前の段階では利用することが出来ません。
つまり、検察官が被疑者を起訴してから利用できるものです。

保釈には、次の3種類があります。

1.権利保釈(必要的保釈)

第八十九条 保釈の請求があつたときは、次の場合を除いては、これを許さなければならない。
一 被告人が死刑又は無期若しくは短期一年以上の懲役若しくは禁錮に当たる罪を犯したものであるとき。
二 被告人が前に死刑又は無期若しくは長期十年を超える懲役若しくは禁錮に当たる罪につき有罪の宣告を受けたことがあるとき。
三 被告人が常習として長期三年以上の懲役又は禁錮に当たる罪を犯したものであるとき。
四 被告人が罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由があるとき。
五 被告人が、被害者その他事件の審判に必要な知識を有すると認められる者若しくはその親族の身体若しくは財産に害を加え又はこれらの者を畏い怖させる行為をすると疑うに足りる相当な理由があるとき。
六 被告人の氏名又は住居が分からないとき。

裁判所は、保釈の請求があったときは、原則として保釈を許可しなければなりません。
例外として、刑事訴訟法第89条の1号~6号の除外事由がある場合には、請求を却下することができます。

2.裁量保釈(任意的保釈)

第九十条 裁判所は、保釈された場合に被告人が逃亡し又は罪証を隠滅するおそれの程度のほか、身体の拘束の継続により被告人が受ける健康上、経済上、社会生活上又は防御の準備上の不利益の程度その他の事情を考慮し、適当と認めるときは、職権で保釈を許すことができる。

裁判所は、権利保釈の除外事由がある場合であっても、適当と認めるときは、職権で保釈を許可することができます。

3.義務的保釈

第九十一条 勾留による拘禁が不当に長くなつたときは、裁判所は、第八十八条に規定する者の請求により、又は職権で、決定を以て勾留を取り消し、又は保釈を許さなければならない。

裁判所は、勾留による拘禁が不当に長くなったときは、請求により又は職権で、保釈を許可しなければなりません。

上記ケースにおいて、Aさんは窃盗罪で起訴されています。
まずは、権利保釈が認められるか検討しましょう。

窃盗罪の法定刑は、10年以下の懲役または50万円以下の罰金ですので、「短期一年以上の懲役」には該当しないので、除外事由1号には当たりません。
Aさんに前科がないとすれば、2号も該当しません。
しかし、問題は3号です。
Aさんが窃盗1件のみで起訴されたとしても、同じ犯罪を複数回(2回以上)繰り返していた場合には「常習」犯とみなされます。
また、法定刑が「長期3年以上の懲役」の罪となっていますので、上限が3年以上である窃盗罪(上限が10年)も含まれますので、3号に該当する可能性はあります。
また、4号の「逃亡・罪証隠滅のおそれ」についても、余罪が複数ある場合や共犯者が複数いる場合など捜査が終了していなければ、罪証隠滅のおそれが高いと判断される可能性があります。

権利保釈が認められない場合であっても、裁量保釈が認められる可能性もあります。
形式的には逃亡・罪証隠滅のおそれが残る場合であっても、その程度が低く、身体拘束によって被る被告人の不利益の程度等を考慮して、裁判所の裁量によって保釈が許可されるのです。
権利保釈と同時に裁量保釈を請求することが出来ますので、弁護人に頼んで両方の保釈を請求してもらうのがよいでしょう。

裁判所に保釈が許可され、保釈保証金を納付すれば、被告人は釈放されることになります。
保釈保証金の額は、犯罪の性質や被告人の資力にもよりますが、窃盗被告事件で被告人の資力もそれほどでない場合は、150~200万円が相場となっています。
出頭を拒んだり、逃亡したりしなければ保釈保証金は、裁判終了後に戻ってきます。

逮捕後に勾留となり、長期間の身体拘束を余儀なくされた場合には、家族や仕事の関係ですぐにでも釈放されることを希望されるものです。
早期の保釈を希望されるのであれば、刑事事件に強い弁護士にご相談ください。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、窃盗事件をはじめとする刑事事件を専門に扱う法律事務所です。
ご家族が刑事事件を起こして対応にお困りであれば、今すぐ弊所の弁護士にご相談ください。
お問い合わせは、フリーダイヤル0120-631-881まで。

身柄解放活動②~勾留決定後~

2019-08-18

身柄解放活動②~勾留決定後~

~ケース~
兵庫県南あわじ市の玉ねぎ農家の玉ねぎ畑に何者かが侵入し、大量の玉ねぎが盗まれるという事件が起きました。
兵庫県南あわじ警察署は、被害届の提出を受けて捜査に乗り出しました。
警察の地道な捜査の結果、県内に住むAさんの犯行であることが判明し、Aさんの自宅に赴き、家宅捜索後に窃盗の容疑でAさんを逮捕しました。
その後、Aさんは神戸地方検察庁洲本支部に送致され、神戸地方裁判所洲本支部はAさんに対して勾留を決定しました。
(フィクションです)

窃盗事件で逮捕されたら~勾留から起訴まで~

上記ケースでは、Aさんは勾留されることになりました。
勾留」というのは、被疑者または被告人を拘禁する裁判と執行をいいます。
刑罰の一種である「拘留」と読み方は同じですが、意味は異なるので注意が必要です。
拘留は、1日以上30日未満の一定期間、刑事施設に収監する刑罰です。
懲役と違って、所定の作業はありません。

勾留がなされると、検察官が勾留請求をした日から、原則10日間、刑事施設に留置されることになります。
勾留を延長する必要があると検察官が判断した場合には、検察官は裁判官に対して勾留延長の請求を行います。
検察官からの請求を受けた裁判官は、勾留を延長するか否かを決定します。
勾留延長となると、最大で10日間勾留期間が延長されることになり、検察官の最初の勾留請求から20日間の身体拘束となる可能性もあります。

勾留が決定した場合、弁護士は、主に以下のような身柄解放活動を行います。

1.勾留に対する準抗告の申立て

勾留の理由はあっても、勾留の必要性がないとして勾留に対する準抗告の申立が認められることもありますので、勾留が決定した場合には、勾留に対する準抗告申立書を提出します。
「準抗告」というのは、裁判官の裁判や検察官・警察官の処分の取消や変更を裁判所に請求することをいいます。

第429条
裁判官が左の裁判をした場合において、不服がある者は、簡易裁判所の裁判官がした裁判に対しては管轄地方裁判所に、その他の裁判官がした裁判に対してはその裁判官所属の裁判所にその裁判の取消又は変更を請求することができる。
①忌避の申立を却下する裁判
②勾留、保釈、押収又は押収物の還付に関する裁判
③鑑定のため留置を命ずる裁判
④証人、鑑定人、通訳人又は翻訳人に対して過料又は費用の賠償を命ずる裁判
⑤身体の検査を受ける者に対して過料又は費用の賠償を命ずる裁判

刑事訴訟法第429条第1項第2号において、勾留に対する準抗告について規定されています。

弁護士は、勾留阻止の際と同様に、勾留の要件を満たさない旨を主張します。
しかし、勾留決定された時点では明らかではなかった事実やその後に被疑者に有利な事情が生じた場合などは、これを新たに証拠として裁判所に提出します。
例えば、勾留決定時には弁護人がおらず、被疑者の釈放を求める切実な事情などが勾留決定の判断の前提となるような記録には現れていなかった場合には、準抗告の申立により被疑者側の事情を明らかにすることになり、勾留の必要性がないと判断されることがあります。
また、勾留決定後に示談交渉が進み示談締結に至るなど、もはや罪証隠滅のおそれがなくなった場合にも、勾留の理由がないとして準抗告が認容されることもあるでしょう。

2.勾留の取消請求

被疑者について、勾留の理由または勾留の必要性がなくなった場合に、「勾留取消請求」を行い、被疑者の身柄解放を求めます。
勾留の取消しについては、刑事訴訟法第87条に規定されます。

刑事訴訟法第87条
勾留の理由又は勾留の必要がなくなったときは、裁判所は、検察官、勾留されている被告人若しくはその弁護人、法定代理人、保佐人、配偶者、直系の親族若しくは兄弟姉妹の請求により、又は職権で、決定を以て勾留を取り消さなければならない。

勾留取消請求の場合も、勾留に対する準抗告と同様に、勾留の理由や勾留の必要性がなくなったことを、裏付ける資料と共に具体的に述べる必要があります。
勾留に対する準抗告が1つの勾留に対して1回しか認められないのに対して、勾留取消請求は、事情の変更があれば何度でも認められる点で、勾留に対する準抗告と異なります。
ですので、勾留の理由や勾留の必要性がなくなったというべき事情が生じた場合には、何度でも勾留取消請求を行うことができます。

このように、勾留が決定した場合であっても、身柄解放に向けて動くことで、釈放となる可能性を高めることができます。

ご家族が刑事事件を起こし、逮捕・勾留されてしまいお困りであれば、刑事事件専門の弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。
詳しくは、フリーダイヤル0120-631-881までご連絡を。

身柄解放活動①~逮捕から勾留まで~

2019-08-17

身柄解放活動①~逮捕から勾留まで~

~ケース~
兵庫県南あわじ市の玉ねぎ農家の玉ねぎ畑に何者かが侵入し、大量の玉ねぎが盗まれるという事件が起きました。
兵庫県南あわじ警察署は、被害届の提出を受けて捜査に乗り出しました。
警察の地道な捜査の結果、県内に住むAさんの犯行であることが判明し、Aさんの自宅に赴き、家宅捜索後に窃盗の容疑でAさんを逮捕しました。
Aさんは、今後どのような流れになるのか、このまま留置施設に拘束されたままになるのか、気が気でなりません。
(フィクションです)

窃盗事件で逮捕されたら~逮捕から勾留までの流れ~

上記ケースでは、Aさんが玉ねぎ畑に勝手に入り、無断で玉ねぎを盗んでいます。
これらの行為により、窃盗と軽犯罪法違反(立ち入り場所等侵入の罪)が成立することになります。
Aさんは、警察に上の罪を犯したとして逮捕されましたが、その後、Aさんはどうなるのでしょうか。

逮捕から送致まで

Aさんは、逮捕後、兵庫県あわじ警察署で取調べを受けることになります。
警察は、被疑者を逮捕すると、「弁解録取書」を作成します。
この「弁解録取書」には、逮捕事実の認否、認めの場合には動機、弁護人をどうするか否かについてが記載されます。
「弁解録取書」の他に、事件の詳細について聞き取った内容の調書と被疑者の「身上経歴書」が作成されます。
警察は、逮捕から48時間以内に、被疑者を釈放するか、それとも検察に送致するかを決めます。
「送致」とは、刑事事件の被疑者本人や、刑事事件の証拠や資料などを検察官に引き継ぐことをいいます。
警察が被疑者を釈放するか送致するかの判断は、被疑者を留置する必要があるか否かにあります。
更に詳しくいうと、被疑者が犯罪を行ったと疑うに足りる相当な理由があり、被疑者が逃亡のおそれや罪証隠滅のおそれがあると疑うに足りる相当な理由がある場合に、検察への送致がなされます。

送致後

兵庫県では、午前中に検察への送致が行われます。
Aさんは、兵庫県南あわじ署を9時頃に出発し、神戸地方検察庁洲本支部に向かいます。
神戸地方検察庁洲本支部は、Aさんの身柄と先述した書類や証拠品などを一緒に検察庁に送致します。
担当検察官は、Aさんと面談します。(これを「弁解録取」といいます。)
その後、担当検察官は、その後も継続してAさんを拘束する必要があると認める場合には、裁判官に対して勾留の請求を行います。(これを「勾留請求」といいます。)
勾留」というのは、被疑者や被告人を刑事施設に拘束することです。
この「勾留」には、起訴前の勾留(「被疑者勾留」)と起訴後の勾留(「被告人勾留」)の2種類がありますが、ここでは「被疑者勾留」について説明します。
検察官が勾留の必要がないと判断すれば、Aさんは釈放となります。

勾留請求となったAさんは、検察に送致された日の午後に、検察庁から裁判所に身柄を移し、今度は裁判官と面談することになります。(これを「勾留質問」といいます。)
勾留質問を終えた裁判官は、勾留の要件を満たしている場合に、Aさんを勾留するとの決定を出します。

被疑者を勾留するには、勾留の「理由」および、勾留の「必要性」がなければなりません。

勾留の理由
・被疑者が罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由がある場合で、かつ、
・住所不定、罪証隠滅のおそれ、若しくは逃亡のおそれの少なくとも1つに該当する場合。

勾留の必要性
被疑者を勾留することによって得られる利益と、これによって被る被疑者の不利益を比較衡量した上で、被疑者を勾留する必要がある場合。

これらの要件を満たしている場合に、裁判官は勾留の決定を行います。

身柄解放活動

逮捕から勾留までの段階での身柄解放活動は、弁護士は勾留を阻止することを目標とし行われます。

1.検察に送致された段階

警察がAさんを検察に送致した場合、弁護士は、担当検察官に対して勾留請求をしないよう働きかけます。
具体的には、Aさんは勾留要件を満たしていない旨を主張した意見書を担当検察官に提出します。
意見書には、Aさん作成の誓約書、Aさんの家族作成の上申書や身元引受書を付せ、客観的に罪証隠滅や逃亡のおそれがないことを主張します。
これにより、検察官が裁判官に対して勾留請求をしないよう働きかけます。

2.勾留請求した場合

上の働きかけにもかかわらず、検察官が勾留請求をした場合には、弁護士は、裁判官に対して勾留決定をしないよう働きかけます。
勾留要件をを満たしていない旨を意見書を通じて裁判官に主張します。

検察に送致された日に勾留決定まで行われます。
勾留を阻止するためには、送致から勾留決定までの短期間に上記の活動を行う必要があります。
このような活動は、刑事事件に強い弁護士に任せるのがよいでしょう。
刑事事件に強い弁護士であれば、刑事事件の流れや提出すべき書面・資料をきちんと把握していますので、素早く的確に動くことが期待されます。

あなたの家族が逮捕されてしまったのであれば、今すぐ刑事事件専門の弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。
勾留阻止を目指して尽力いたします。
お問い合わせは、フリーダイヤル0120-631-881まで。

刑罰はどうやって決められるの?

2019-08-08

刑罰はどうやって決められるの?

~ケース~
兵庫県洲本市の民家に侵入し、現金20万円と貴金属などを盗んだとして、兵庫県洲本警察署は無職のAさんを窃盗と住居侵入の容疑で逮捕しました。
Aさんは容疑を認めていますが、どのような刑罰が科せられるのか不安です。
Aさんは、接見にやってきた弁護士に、どのような刑罰が科せられる可能性があるのか聞こうと考えています。
(フィクションです)

刑罰の種類

刑罰には、死刑、懲役、罰金、拘留、科料の5種類があります。
刑の重さは、上の並び順となります。
逮捕に引き続き行われる「勾留」と、刑罰としての「拘留」とは異なりますので、ご留意ください。

刑法を含めた刑罰法令は、「この罪名で有罪となった場合には、この範囲内で刑罰を科すことができる」と定めており、この法律に記載のある刑罰を「法定刑」と呼んでいます。
上記の事例でみていると、

刑法第235条 窃盗 10年以下の懲役又は50万円以下の罰金
刑法第130条 住居侵入 3年以下の懲役又は10万円以下の罰金

という形で法定刑が定められています。

法定刑は、あくまで、罪名と刑の対応となります。
そのため、具体的に事件の内容によって実際にどのような刑の範囲が適当かは異なります。
例えば、複数の事件が同時に発生した場合には、どのような範囲で刑を科せばよいかが問題となります。
法律では、具体的事件の形に合わせて、実際に処罰することが可能な刑の範囲を定めます。
この範囲を「処断刑」といいます。
処断刑の定め方は、いろいろありますが、今回は複数の事件がある場合の刑の定め方についてみていきます。

(1)原則(併合罪加重)
原則として、複数の事件が発生した場合、以下のような形で処罰します。
・最も重い法定刑が定められている罪で処罰する。
・刑の範囲は、法定刑を基準に、懲役であれば1.5倍、罰金であれば複数の罪の合計額を限度とします。ただし、懲役の場合には、元の罪の懲役の合計を超えてはなりません。
このような処罰の形を「併合罪加重」といいます。

(2)例外
併合罪加重は原則ですが、法律は様々な例外についても定めています。

a 牽連犯
2つの行為が目的と手段の関係にある場合には、併合罪加重はせず、重い方の罪の法定刑を遮断刑とするとされています。
これを「牽連犯」といいます。
例えば、上記ケースのように家に入って盗みをした場合には、住居侵入と窃盗が成立しますが、目的(窃盗)と手段(住居侵入)の関係にあるので、処断刑は、窃盗の罪の法定刑がそのまま用いられることになります。

b 包括一罪
法律に定めはありませんが、同じ目的をもって、時間的場所的に近接している状況で、同じ事件を反復継続して起こしている場合には、まとめて1罪として処罰します。
街頭募金詐欺は、被害者は募金をした一人ひとりなので、複数の詐欺罪が成立することになりますが、同じ場所で同じ時間、同じ目的で詐欺をしていますので、まとめて1つの詐欺罪として扱われた事例があります。

このように、実際にどのような刑が科せられるかは、起こした事件の内容により異なります。

刑事事件を起こし、どのような罪に問われ、どのような刑罰が科され得るのかご不安な方は、刑事事件に強い弁護士にご相談ください。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件を専門とする法律事務所です。
無料法律相談初回接見サービスを24時間受け付けております。
フリーダイヤル0120-631-881までお気軽にお問い合わせください。

兵庫県のホテルで無銭宿泊

2019-08-07

兵庫県のホテルで無銭宿泊

~ケース~
兵庫県豊岡市にあるホテルに宿泊していたAさんは、2泊の予約を入れていましたが、更に2泊の延泊を希望しました。
ホテルは、延泊の申請を受けた際に、Aさんに一旦清算することを求めましたが、Aさんは「財布がなくなった」などと言い訳をして支払う様子がありません。
Aさんの対応を不審に思ったホテルは、兵庫県豊岡北警察署に通報しました。
駆け付けた警察官が、Aさんに事情を聴いたところ、チェックイン時に記入した氏名や住所も嘘で、所持金もほとんどないことが分かりました。
(実際の事件を基にしたフィクションです)

無銭宿泊で詐欺罪成立?

ホテルや旅館などに宿泊したものの、会計を済まさずにそのまま帰ってしまう行為を「無銭宿泊」といいます。
無銭宿泊をした場合、詐欺罪が成立する可能性があります。

詐欺罪とは?

刑法第246条は、詐欺罪について規定しています。

第二百四十六条 人を欺いて財物を交付させた者は、十年以下の懲役に処する。
2 前項の方法により、財産上不法の利益を得、又は他人にこれを得させた者も、同項と同様とする。

詐欺罪の構成要件(犯罪類型)は、以下のとおりです。

【1項詐欺】①人を欺いて
      ②財物を
      ③交付させたこと。
【2項詐欺】①人を欺いて
      ②財産上不法の利益を得、または他人にこれを得させたこと。

まず、1項詐欺(刑法第246条第1項に規定される詐欺罪)についてみていきましょう。

(1)客体
他人の占有する他人の動産および不動産です。

(2)行為
人を欺いて財物を交付させることです。
詐欺罪が成立するには、①人を欺く行為をして、②それに基づいて相手方が錯誤に陥り、③その錯誤によって相手方が処分行為をし、④それによって財物の占有が移転し、⑤財産的損害が生じることが必要です。
①欺く行為
一般人として、「財物や財産上の利益を処分させるような」錯誤に陥らせることを「欺く」といいます。
「人」を欺くものでなければならず、機械に対して嘘の情報を入力する行為は詐欺罪における「欺く行為」とはなりません。
②錯誤
錯誤は、財産的処分行為をするように動機付けられるものであれば足ります。
③処分行為
条文の「財産を交付させ」るというのは、相手方の錯誤に基づく財産的処分行為により財物の占有を取得することをいいます。
処分行為には、処分の意思と処分の事実が必要とされます。
④財物の移転
「財物の移転」というのは、財物の占有が移転することです。
⑤財産的損害
一連の行為の結果、被害者に何らかの財産的損害が生じたことが本罪の成立には必要とされます。

次に、2項詐欺の構成要件についてみていきます。

(1)行為
人を欺いて財産上不法の利益を得ることで、欺く行為に基づく錯誤の結果行われた財産的処分行為によって行為者または一定の第三者が不法に財産上の利益を取得することを指します。

さて、本題の無銭宿泊が詐欺罪に当たるかどうかという点について検討していきたいと思います。

ホテルなどに宿泊したにもかかわらず、宿泊代を清算することなく宿泊先を後にする行為が「無銭宿泊」ですが、どの時点で無銭宿泊をしようと思ったか、そして、相手方を騙して無銭宿泊したか否かによって犯罪の成否は異なります。

(ア)宿泊を申し入れた時点に既に支払いの意思がない場合
代金を支払う気がないのに、あたかも代金を支払うかのように騙し、宿泊先はチェックアウト時に代金を支払ってくれるものと錯誤に陥り、宿泊予約を受け入れています。
この錯誤に基づき、宿泊先は宿泊サービスを提供し、宿泊者は当該サービスを受けています。
よって、1項詐欺罪が成立すると考えられます。
「代金を支払う意思があるか否か」という点は、人の内心の問題ですので、どうやって立証するの?と思われるかもしれませんが、ホテルなどに宿泊するのに所持金がない場合であれば、最初から払う意思がなかったと判断されるでしょう。

(イ)支払い時にお金がないことに気が付き、「ATMでお金を下ろしてくる」などと言い支払いを免れた場合
この場合、宿泊先に対して支払いを済ます意思があると誤信させ、宿泊代の支払いを免れています。
相手方を騙す行為によって、代金債務を免れた=不法に財産上の利益を取得していますので、2項詐欺が成立するでしょう。

(ウ)当初は支払う意思があったにもかかわらず、支払い時にその意思がなくなり、逃亡した場合
2項詐欺の成立には、先述のように「欺く行為に基づく錯誤の結果行われた財産的処分行為」がなければならず、相手方(ここでは宿泊先)の意思によって財産上不法の利益(支払債務を免れる)を得ることを必要となります。
ですので、宿泊先を騙さず、単に逃走して事実上支払わなかった場合は、2項詐欺は成立しないことになります。
ただし、最初から支払う意思がなく支払い時に逃亡した場合は(ア)に当たり、1項詐欺が成立します。

無銭宿泊を行い詐欺罪で有罪となると、10年以下の懲役刑が科せられる可能性があります。
ただし、初犯で常習性がなく、弁償をしており反省の態度が見られるなどの場合には、起訴猶予となる可能性もありますので、無銭宿泊事件で被疑者として捜査されているのであれば、早期に弁護士に相談し、自己に有利な情状を検察官に主張してもらうのがよいでしょう。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、詐欺罪をはじめとする刑事事件を専門に取り扱う法律事務所です。
刑事事件でお困りの方は、弊所の弁護士にご相談ください。

少年の勾留と勾留に対する準抗告

2019-07-31

少年の勾留と勾留に対する準抗告

~ケース~
高校生のAくん(16歳)は、友人2人とともに、兵庫県多可郡多可町内に止めてあった原動機付自転車2台を盗みました。
後日、兵庫県西脇警察署の警察官がAくん宅を訪れ、窃盗の容疑でAくんを逮捕しました。
Aくんは、翌日神戸地方検察庁姫路支部に送致され、姫路簡易裁判所は検察官からの勾留請求を受け、Aくんに対する勾留決定を出しました。
Aくんの両親は、高校の定期試験があり、これを受けないと留年の可能性が高くなることや、長期間欠席が続けば退学のおそれもあるため、Aくんをすぐに釈放してくれないかと悩んでいます。
(フィクションです)

少年が逮捕されたら

20歳未満の少年が事件を起こし、逮捕されてしまった場合、基本的には成人の刑事事件を同様に刑事訴訟法が適用されます。
つまり、逮捕から48時間以内に、警察はAくんを釈放するか検察に送致するかを決めます。
検察に送致されると、検察官による取調べが行われ、それを受けて検察官はAくんを勾留する必要があるかどうか判断します。
検察官が勾留する必要があると判断すると、裁判官に対して勾留請求を行います。
検察官から勾留請求を受けた裁判官は、Aくんと面談した上で、勾留の要件に該当するかを検討し、勾留決定をするか、勾留請求を却下しAくんを釈放するかを決定します。
裁判官がAくんの勾留を決めると、検察官が勾留請求をした日から原則10日間、延長が認められると最大で20日間の身体拘束となります。
長期間学校や職場に行くことができなくなれば、事件のことが学校や職場に発覚し、最悪の場合には退学や懲戒解雇となる可能性もあります。
そうなれば、少年の社会復帰にも影響し、更生の障害と成り得るでしょう。

ですので、お子様が事件を起こし、逮捕・勾留されたら弁護士に相談し、勾留に対する準抗告を行うなど早期身柄解放に向けて動くことが重要です。

勾留に対する準抗告について

先述のように裁判官が勾留の裁判(決定)を行うと、長期間の身体拘束を余儀なくされます。
このような長期身体拘束を回避する方法として「勾留に対する準抗告」が挙げられます。
準抗告」というのは、裁判官や捜査機関が行った一定の処分について、裁判所に対して取消や変更を求める不服申し立ての手続のことをいいます。
裁判官が行った勾留裁判に対して、準抗告の申立てを行い、申立て先の裁判所が勾留裁判を取消し、検察官が行った勾留請求を却下するよう働きかけます。
勾留」には満たさなければならない要件があります。
申立てには、それらの要件には該当せず被疑者を勾留した原裁判は違法であるためそれを取消し、検察官の勾留請求を却下すべきである旨を主張します。
ここで重要になるので、勾留の要件です。
勾留の要件とは、「犯罪の嫌疑」、「勾留の理由」および「勾留の必要性」です。

(1)犯罪の嫌疑
被疑者が罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由がなければなりません。
身体拘束をする上で、犯罪を行ったことを裏付ける事実が必要となります。
しかし、勾留段階では、すべての証拠がそろっていることはなく、ここで要求されている嫌疑の程度は、それほど高いものではありません。
(2)勾留の理由
以下のうち、どれか一つに該当している必要があります。
①定まった住所を有しないとき。
②罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由があるとき。
③逃亡し又は逃亡すると疑うに足りる相当な理由があるとき。
(3)勾留の必要性
嫌疑及び勾留の理由がある場合であっても、被疑者を勾留することにより得られる利益と、これにより生ずる不利益とを比較し、権衡を失するときは、被疑者を勾留することは許されません。

上記ケースでは、手元にある証拠から、被疑者である少年が罪を犯したと疑うに足りる相当な理由が認められ、釈放した場合には、証拠品を処分したり、共犯者と口裏合わせをするなどして証拠隠滅を図るおそれがあると判断され、勾留となったと考えられます。
しかし、弁護人は、犯行後の少年の態度や証拠品が既に捜査機関によって押収されているため今更証拠隠滅を図ることは困難であること、また、少年に前歴がないことや保護者と生活をともにしていること、少年の保護者による監督が期待できることから逃亡すると疑うに足りる相当の理由が認められないこと、更には、少年が定期試験を控えており、長期の欠席により留年や退学のおそれがあることを考慮すると、勾留の必要性までは認められないということを客観的かつ具体的に主張することで、裁判所が勾留の裁判を取消し、勾留請求を却下する裁判をするよう働きかけます。

お子様が逮捕・勾留されてお困りであれば、刑事事件・少年事件に強い弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所に今すぐご相談ください。
まずは、フリーダイヤル0120-631-881にご連絡ください。
専門スタッフが、無料法律相談初回接見サービスを24時間受け付けております。

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