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刑事事件における弁護人
刑事事件における弁護人について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所神戸支部が解説します。
~事例~
兵庫県宝塚市のアパートに住む女性の部屋に、わいせつ行為目的でベランダの窓から侵入したとして、兵庫県宝塚警察署はAさんを強制わいせつ未遂、住居侵入の容疑で逮捕しました。
Aさんは、取調官から弁護人を選任することができる旨の説明を受けましたが、刑事事件に詳しい弁護士に頼みたいと考えています。
(フィクションです。)
弁護人とは
日本国憲法は、被疑者・被告人に弁護人依頼権を保障しています。
これを受けて刑事訴訟法は、被疑者・被告人の弁護人依頼権を規定しており、被告人の国選弁護人選任請求権、及び被疑者の国選弁護人選任請求権についても規定しています。
被疑者・被告人に弁護人依頼権が保障されているのは、刑罰権を行使する国家権力に対して、刑罰を受ける被疑者・被告人は弱い立場にあるため、被疑者・被告人の権利・利益を保護する法律を熟知した専門家が必要だからです。
罪を犯したとされる者は、被疑者・被告人として刑事手続に付され、身体拘束などの個人の事由が制限されることがあります。
有罪となった者には刑罰が科され、罰金を収めたり、刑務所に収容されることがあります。
このような処分は、個人の自由や権利を大きく害するものであるため、適正な手続に基づいて事件を処理していかなければなりません。
罪を犯したとされる者は、適正な手続の下で処罰されるべきであり、有罪であった場合にも、適正な量刑がなされなければなりません。
弁護人は、被疑者・被告人の権利・利益を守る上で、欠かすことのできない重要な役割を担っています。
弁護人には、選任の点から、国選弁護人と私選弁護人の2種類に分類されます。
国選弁護人
貧困その他の事情により、弁護人を選任できない場合に、国の費用で裁判所が弁護人を選任する「国選弁護制度」というものがあります。
この制度により選任された弁護人を「国選弁護人」といいます。
国選弁護人は、国の費用で裁判所により選任されるため、被疑者・被告人がその弁護費用を負担することはありません。
匡が費用を負担するため、被疑者・被告人が国選弁護人制度を利用するためには、一定限度の資力の有無が要件となります。
その要件とは、被疑者・被告人の資力が50万円未満であること、です。
被疑者・被告人の資力が50万円以上の場合には、弁護士会に私選弁護人選任の申出を行っていることが必要となります。
申出を受けた弁護士会は、弁護人候補者を被疑者・被告人に紹介するのですが、弁護人なろうとする者がいないとき、または、照会した弁護人が選任の申し込みを拒んだときには、国選弁護人選任の手続に入ることになります。
その他にも、職権により、被疑者・被告人に国選弁護人が付される場合、起訴後に弁護人がいなければ開廷することができない必要的弁護事件で、弁護人が在廷しなかったり、いないときには、裁判長は職権で国選弁護人を選任します。
被疑者段階では、勾留に付されてから国選弁護人が選任されます。
被疑者国選弁護制度には、職権による場合と請求による場合とがあります。
職権による場合とは、死刑、無期、または長期3年を超える懲役・禁錮にあたる事件で勾留状が発せられ、かつ弁護人がいない場合において、精神上の障害その他の事由により弁護人を必要とするかどうかを判断することが困難である疑いがある被疑者について、必要があるとみとめるときに、裁判官が職権で国選弁護人を付するものです。
請求による場合は、被疑者段階で弁護費用を支払う資力のない被疑者に対して、国の負担で弁護人を付す制度です。
被疑者国選弁護制度は、勾留状が発せられていることが要件となっておりますので、逮捕段階では適用されません。
起訴後は、被告人国選弁護制度が適用され、それには請求によるものと職権によるものとがあります。
職権による場合とは、被告人が未成年者、70歳以上、耳が聞こえない、口がきけない、心神喪失・心身耗弱の疑いがある、その他必要と認めるときに裁判所が職権で国選弁護人を選任するものや、弁護人がいなければ開廷することができない必要的弁護事件で、弁護人が在廷しなかったり、いないときに、裁判所が職権で国選弁護人を選任するものとがあります。
請求による場合は、資力50万円を基準とした要件を充たした被告人による請求を受け、裁判所が国選弁護人を選任するものです。
私選弁護人
私選弁護人は、被疑者・被告人、またはその家族等が依頼して選任する弁護人です。
国選弁護人とは異なり、弁護費用は自己負担となります。
しかし、被疑者・被告人やその家族が自ら弁護人を選ぶことができるので、刑事事件専門の弁護士や、信頼できる弁護士、実績がある弁護士など、好きな基準で選任することができる点が、国選弁護制度と異なります。
また、国選弁護人は勾留が決定してから選任することができるのに対して、私選弁護人は、身体拘束を受けていない在宅事件や、逮捕された直後から選任することができるため、勾留を回避するための活動や被害者の示談交渉などを早い段階から行うことができます。
適切な手続に基づいて事件を処理するよう、冤罪を防止するためにも、罪を犯したと疑われて対応にお困りであれば、できる限り早い段階から弁護士に相談されるのがよいでしょう。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件・少年事件専門の法律事務所です。
刑事事件・少年事件でお困りであれば、今すぐ弊所の弁護士にご相談ください。
無料法律相談・初回接見サービスに関するご予約・お問い合わせは、フリーダイヤル0120-631-881で24時間受け付けております。
接見禁止の解除に向けて
接見禁止の解除に向けた活動について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所神戸支部が解説します。
~事例~
兵庫県西脇警察署は、大麻取締法違反(大麻栽培)の容疑で、兵庫県西脇市に住むAさんを逮捕しました。
その後、勾留が決定しましたが、接見禁止が付いており、Aさんの家族はAさんと面会することができません。
自営業のAさんは、仕事のことについて家族と直接話をしたいと思っており、どうにか接見禁止が解除されないかと困っています。
(フィクションです。)
接見禁止とは
身柄が拘束されている被疑者・被告人は、弁護人その他の物との接見交通(面会)や、書類その他の物の受け渡しをすることができます。
弁護人との接見等は、被疑者が逮捕された段階から認められており、家族などの一般の方との面会等は、通常、勾留が決定してから行えます。
しかしながら、裁判官は、「逃亡し又は罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由」があるときは、検察官の請求により、または職権で、接見を禁止し、または授受すべき書類その他の物を検閲し、その授受を禁止し、もしくはこれを差し押さえることができます。
接見等を禁止する決定を「接見禁止決定」といいます。
接見禁止決定は、否認事件、認め事件であっても、組織犯罪や共犯事件については、起訴前まで付くことが多くなっています。
しかしながら、身体拘束により精神的・身体的な苦痛を強いられている被疑者は、接見禁止が付くことで家族等と会えず、さらに精神的に追い詰められた中で取調べを受けなければなりません。
そのような精神状態での取調べにおいて、被疑者が自己に不利な供述をしてしまったり、安易に取調官の誘導に乗ってしまうおそれがあります。
接見禁止による不利益を回避するためにも、弁護人は接見禁止決定に対して不服申立を行ったり、解除を申立て、被疑者と家族等が面会できるよう尽力します。
接見禁止の解除のために
勾留に接見禁止が付された場合には、家族等との面会が実現するように、弁護士は、次のような活動を行います。
■準抗告・抗告■
準抗告とは、裁判官がした裁判の取消しや変更を、その裁判官所属の裁判所に対して請求する手続のことです。
抗告は、裁判の取消しや変更を、その裁判をした裁判所の上級裁判所に請求する手続のことです。
■一部解除の申立て■
被疑者や弁護人に接見等禁止処分について解除を申し立てる権利はありません。
そのため、一部解除の申立ては、裁判官の職権発動を促すものにすぎません。
しかしながら、一般人である被疑者・被告人の両親や配偶者が罪証隠滅を行うおそれは低く、そのような近親者の一部解除が認められることは多いです。
いずれの手続においても、被疑者・被告人との接見を希望する近親者が、事件とは無関係であり、罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由がないことを主張・立証する必要があります。
そのような活動は、刑事事件に精通する弁護士にお任せください。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件・少年事件を数多く取り扱う法律事務所です。
ご家族が刑事事件を起こし、接見禁止となりお困りであれば、今すぐ弊所の弁護士にご相談ください。
無料法律相談・初回接見サービスに関するご予約・お問い合わせは、フリーダイヤル0120-631-881で24時間受け付けております。
風俗トラブル:盗撮事件
風俗トラブルの盗撮事件について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所神戸支部が解説します。
~事例~
兵庫県姫路市にあるホテルで風俗嬢からのサービスを受けていたAさんは、相手方の許可なく風俗嬢の裸を撮影しました。
盗撮行為に気が付いた風俗嬢は、すぐに店に電話しましたが、電話している間にAさんは部屋を後にしました。
後日、兵庫県姫路警察署からAさんに連絡があり、「盗撮事件で被害届が出ているから、一度署で取調べをしたい。」と言われました。
風俗トラブルが刑事事件になるとは思ってもみなかったAさんは、どう対応したらいいのか分からず不安です。
(フィクションです。)
風俗トラブル~風俗店の女性を盗撮~
風俗トラブルの相談で多いのが、風俗店の女性と合意なく性交をしたとして店側から問い詰められるケース、そして、サービスを受ける様子や女性の裸を許可なく撮影する、いわゆる盗撮事件です。
このような風俗トラブルは、被害者とされる女性や女性の勤務先の店長が、慰謝料や罰金名目で加害者とされる男性に高額な金銭の支払いを要求することも少なくありませんが、被害に遭った直後に警察に被害を申告するケースもあります。
警察は、被害女性や店側からの被害の申告を受け、犯罪の疑いがあると思料するときには、刑事事件として捜査を開始します。
風俗店の女性をホテルや自宅で盗撮するケースでは、公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例(以下、「迷惑防止条例」といいます。)違反が成立する可能性があります。
迷惑防止条例違反
兵庫県の迷惑防止条例は、その第3条の2において、卑わいな行為等の禁止について定めています。
第3条の2 何人も、公共の場所又は公共の乗物において、次に掲げる行為をしてはならない。
(1) 人に対する、不安を覚えさせるような卑わいな言動
(2) 正当な理由がないのに、人の通常衣服で隠されている身体又は下着を撮影する目的で写真機、ビデオカメラその他これらに類する機器(以下「写真機等」という。)を設置する行為
2 何人も、集会所、事業所、タクシーその他の不特定又は多数の者が利用するような場所(公共の場所を除く。)又は乗物(公共の乗物を除く。)において、次に掲げる行為をしてはならない。
(1) 正当な理由がないのに、人の通常衣服で隠されている身体又は下着を写真機等を用いて撮影し、又は撮影する目的で写真機等を向ける行為
(2) 前項第2号に掲げる行為
3 何人も、正当な理由がないのに、浴場、更衣室、便所その他人が通常衣服の全部又は一部を着けない状態でいるような場所にいる人を写真機等を用いて撮影し、撮影する目的で写真機等を向け、又は撮影する目的で写真機等を設置してはならない。
【1項】
迷惑防止条例第3条の2第1項では、「公共の場所・公共の乗物」での「不安を覚えさせるような卑わいな言動」および盗撮目的でのカメラ等の設置を禁止しています。
「公共の場所」とは、不特定かつ多数が自由に利用し、又は出入りすることができる場所のことをいい、道路、公園、広場、駅、デパート、飲食店、興行場などが含まれます。
「公共の乗物」とは、電車、バス、船舶、航空機など不特定多数の者が利用するための乗物のことです。
「卑わいな言動」は、一般人の性的道義観念に反し、他人に性的羞恥心、嫌悪を覚えさせ、又は不安を覚えさせるようないやらしくみだらな言語、動作を意味します。
盗撮や痴漢も、この「卑わいな言動」に該当します。
【2項】
迷惑防止条例第3条の2第2項では、公共の場所・乗物を除いた不特定多数の者が利用するような場所での、盗撮、盗撮目的でのカメラの差し向けや設置が禁止されます。
【3項】
迷惑防止条例第3条の2第3項では、「人が通常衣服の全部又は一部を着けない状態でいるような場所にいる人」の盗撮、盗撮目的でのカメラの差し向けや設置が禁止されています。
条文にも列挙されている浴場・更衣室・便所といったような場所は、第1項の「公共の場所」や2項の「不特定多数が利用する場所」には該当しませんが、人が通常衣服の全部・一部を着けない状態でいるような場所」となり、本項の対象となります。
ホテルや自宅での盗撮は、迷惑防止条例第3条の2第3項の「人が通常衣服の全部又は一部を着けない状態でいるような場所にいる人」の盗撮に当たります。
盗撮事件として捜査の対象となった場合、被害者のいる事件においては、何よりも被害者との示談が成立するかどうかが最終的な処分にも大きく影響します。
そのため、早期に弁護士に相談し、被害者との示談交渉に着手することが重要でしょう。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、盗撮事件を含めた刑事事件を専門に扱う法律事務所です。
風俗トラブルでお困りの方、盗撮事件での対応にお悩みの方は、今すぐ弊所の弁護士にご相談ください。
無料法律相談・初回接見サービスに関するご予約・お問い合わせは、フリーダイヤル0120-631-881で24時間受け付けております。
特殊開錠用具禁止法違反で現行犯逮捕
特殊開錠用具禁止法について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所神戸支部が解説します。
~事例~
兵庫県宍粟警察署は、県外に住むAさんを特殊開錠用具禁止法違反の疑いで現行犯逮捕しました。
近隣住民から、「見かけない男が公園にいる。」と通報を受け、宍粟署の警察官がAさんに職務質問をしたところ、持っていたカバンから指定侵入工具であるバールが見つかりました。
Aさんは、調べに対して黙秘しています。
(フィクションです。)
特殊開錠用具禁止法とは
「特殊開錠用具の所持の禁止等に関する法律」(以下、「特殊開錠用具禁止法」といいます。)は、特殊開錠用具の所持等を禁止するとともに、特定侵入行為の防止対策を推進することにより、建物に侵入して行われる犯罪の防止に資することを目的とする法律です。
特殊開錠用具禁止法は、特殊開錠用具の所持、そして指定侵入工具の携帯を禁止しています。
1.特殊開錠用具の所持の禁止
第3条 何人も、業務その他正当な理由による場合を除いては、特殊開錠用具を所持してはならない。
同条で所持が禁止されるのは、「特殊開錠用具」です。
特殊開錠用具とは、第2条2項で「ピッキング用具(錠に用いられるシリンダーをかぎを用いることなく、かつ、破壊することなく回転させるための器具をいう。)その他の専ら特殊開錠(施錠された状態にある錠を本来の方法によらないで開くことをいう。以下同じ。)を行うための器具であって、建物錠を開くことに用いられるものとして政令で定めるものをいう。」と定義されています。
具体的には、ピッキング用具、破壊用シリンダー回し、ホールソー、サムターン回しが「特殊開錠用具」に含まれます。
「所持」とは、特殊開錠用具を事実上管理、支配することをいいます。
2.指定侵入工具の携帯の禁止
第4条 何人も、業務その他正当な理由による場合を除いては、指定侵入工具を隠して携帯してはならない。
同条で携帯が禁止されるのは、「指定侵入工具」です。
指定侵入工具は、第2条3項で、「ドライバー、バールその他の工具(特殊開錠用具に該当するものを除く。)であって、建物錠を破壊するため又は建物の出入口若しくは窓の戸を破るために用いられるもののうち、建物への侵入の用に供されるおそれが大きいものとして政令で定めるものをいう。」と定義されています。
政令では、
・ドライバー…①先端部が平らで、その幅が0.5㎝以上。
②長さが15㎝以上。
・バール…①作用する部分のいずれかの幅が2㎝以上。
②長さが24㎝以上。
・ドリル…直径1㎝以上の刃が附属するもの。
このような指定侵入工具を「隠して携帯」することが禁止されています。
「隠して携帯」するとは、日常生活を営む自宅ないし居室以外の場所において、いつでも使用できる状態で、かつ、他人が観察した場合、その視野に入ってこないような状態で、身体に帯びる、自己の身辺近くに置くことによって、事実上その支配下に置いている状態をいいます。
例えば、ポケット内に入れる、バッグやカバンの中に入れる、自動車のダッシュボード内に在中させていた場合などです。
特殊開錠用具の所持も、指定侵入工具の携帯も、「業務上その他正当な理由」による場合には罪となりません。
これには、職務上、あるいは日常生活上の必要性から、社会通念上、正当と認められる場合が該当します。
単なる護身用とか、特に使用目的がないといった場合には、正当な理由がないものと判断されます。
特殊開錠用具禁止法第3条、4条に違反した場合の法定刑は、1年以下の懲役又は50万円以下の罰金です。
特殊開錠用具禁止法に違反する侵入工具を携帯していた場合、侵入盗等の疑いもかけられるでしょう。
取調べに対してはきちんと対応する必要があります。
特殊開錠用具禁止法違反事件で現行犯逮捕された場合には、すぐに弁護士に相談し、自己に不利な供述がとられないよう対応することが重要となります。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件・少年事件を専門に扱う法律事務所です。
ご家族が刑事事件・少年事件を起こし逮捕されてお困りであれば、今すぐ弊所の弁護士にご相談ください。
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居直り強盗で逮捕
居直り強盗で逮捕された場合について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所神戸支部が解説します。
~事例~
Aは、兵庫県川辺郡猪名川町の民家に侵入し、現金や貴金属などを盗もうとしていたところ、家人に見つかってしまいました。
Aは、家人を脅し、金庫を開けさせ現金や貴金属を奪い去りました。
後日、兵庫県川西警察署は、居直り強盗事件の被疑者としてAを逮捕しました。
(フィクションです。)
居直り強盗
他人の居宅に侵入し、金品を盗んだ場合、住居侵入罪及び窃盗罪が成立すると考えられます。
ただ、盗みに入った後に、家人に見つかり、犯人が家人に暴力を振ったり脅迫したりして、最終的に逃亡した場合には、いわゆる居直り強盗としての強盗罪又は事後強盗罪が成立する可能性があります。
1.強盗罪
刑法第236条
暴行又は脅迫を用いて他人の財物を強取した者は、強盗の罪とし、5年以上の有期懲役に処する。
2 前項の方法により、財産上不法の利益を得、又は他人にこれを得させた者も、同項と同様とする。
暴行・脅迫を手段として、人の財物を奪ったり、財産上の利益を得、又は第三者に得させた場合に成立する犯罪です。
暴行・脅迫は、財物奪取の手段として行われていなければなりません。
財物奪取以外の意思で相手に暴行を加え、相手が財布を落とし、その財布から現金を抜き取った場合、相手に加えた暴行は、強盗罪における暴行には当たらず、暴行罪と窃盗罪が成立することになります。
そして、暴行・脅迫は、相手の反抗を抑圧する程度に強いものでなければなりません。
この程度に達しているか否かは、社会通念上一般に相手の反抗を抑圧するに足りる程度か否かという点について客観的に判断されます。
2.事後強盗罪
刑法第238条
窃盗が、財物を得てこれを取り返されることを防ぎ、逮捕を免れ、又は罪跡を隠滅するために、暴行又は脅迫をしたときは、強盗として論ずる。
窃盗は、窃盗の実行に着手した者が、財物を取り返されることを防ぐ目的で、或いは逮捕を免れる目的で、又は罪証を隠滅する目的で、窃盗の現場ないし窃盗の機会に暴行・脅迫をした場合、事後強盗罪に当たります。
強盗と事後強盗の違いは、暴行・脅迫の目的にあります。
強盗の場合は、財物奪取のための暴行・脅迫ですが、事後強盗の場合は、財物を取り返されるのを防ぐため、逮捕を免れるため、罪証を隠滅するための暴行・脅迫です。
そのため窃盗犯人が、窃盗の実行行為を開始した後に家人に発覚したため、居直って、強盗の意思が生じ、相手に暴行・脅迫を加えて財物を奪うという居直り強盗は、通常の強盗罪に該当します。
いずれにしても法定刑は同じ5年以上の有期懲役であり、罰金刑は設けられていません。
初犯であっても、有罪となれば実刑となる可能性がありますので、早期に刑事事件に強い弁護士に相談・依頼するのがよいでしょう。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件専門の法律事務所です。
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万引きで略式手続
略式手続について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所神戸支部が解説します。
~事例~
兵庫県西脇警察署は、兵庫県多可郡多可町にあるコンビニで商品を万引きしたとして、Aさんを窃盗の容疑で逮捕しました。
Aさんには窃盗の前科・前歴があり、直近では2年前にスーパーマーケットで万引きし、最終的に罰金20万円が言い渡されていました。
逮捕の連絡を受けたAさんの家族は、今回はより厳しい処分になるのではないかと心配し、すぐに弁護士に相談することにしました。
(フィクションです。)
万引きで検挙される被疑者の多くは、初犯ではない場合が少なくありません。
つまり、検挙された事件以前にも同様の万引き事件を起こしているケースが多く見受けられます。
無論、万引きという比較的軽微な犯罪であっても、何度も罪を重ねれば、その分科される処分も重くなります。
万引きの場合、初犯であれば微罪処分で処理される傾向にあります。
微罪処分というのは、犯罪事実が極めて軽微であり、かつ、検察官から送致の手続をとる必要がないと定められた犯罪について、警察で処理する手続のことをいいます。
警察で取調べを受けて終了するような場合は、微罪処分で事件処理されたというわけです。
初犯ではなく2回目の万引きとなれば、事件は警察限りでの処理というわけにはいきません。
事件は検察官に送致され、検察官が起訴・不起訴の判断を行います。
2回目(もしくは3回目)であっても、被害の回復ができている場合には、起訴猶予で不起訴処分となる可能性はあります。
さて、それ以上の再犯になると、いくら被害を回復している場合であっても、検察官が不起訴で事件を処理する可能性は随分と低くなります。
3~4回目の万引きとなれば、起訴される可能性が高いと言えます。
しかしながら、起訴にも種類があり、刑事裁判を開いて有罪・無罪を審理することを要求する公判請求と、書面だけで審理する略式手続に付すことを要求する略式起訴とがあります。
万引き事件では、いきなり公判請求となるよりも、略式手続となることがほとんどです。
略式手続は、簡易裁判所が、その管轄事件について、検察官の請求により、公判手続を経ないで、検察官の提出した証拠を審査して、一定額以下の罰金又は科料を科す簡易裁判手続をいいます。
略式手続に付すための要件は、
①簡易裁判所の管轄に属する事件であること。
②公訴提起と同時の、書面による検察官の請求があること。
③検察官による説明、正式裁判を受ける権利の告知、略式手続に異議がない旨の書面による確認が行われていること。
④検察官による略式命令請求と同時に書類・証拠物を差し出していること。
⑤略式手続によることの相当性があること。
です。
簡易裁判所が出す略式命令は、100万円以下の罰金又は科料を科すことができ、刑の執行猶予をすることもできます。
略式命令を受けた者又は検察官は、略式命令の告知を受けた日から14日以内に正式裁判の請求をすることができます。
略式手続となるメリットは、通常の公判手続ではなく簡略化された手続で処理されるという点です。
通常の公判手続となれば、起訴されてから公判期日までも時間を要しますし、最終的に判決が言い渡されるま2か月ほどかかります。
また、被告人本人が法廷に行く必要があり、公訴事実を認める場合であっても最低2回は出廷しなければなりませんので、被告人の負担ともなります。
公開の審理ですので、自分が犯した罪についていろんな人に知られるという不利益がありますが、略式手続は書面だけの審理であるので、関係者以外に事件が漏れる心配はありません。
ただ、略式手続となることのデメリットもあります。
裁判官は、検察官が提出した証拠書類を基に審理しますので、被告人が自分で裁判官に対して意見を述べることはできません。
以上のような略式手続のメリット・デメリットを考慮した上で、検察官から略式手続を提示された場合には同意・不同意を決めることになります。
上の事例では、前回が罰金20万円の刑が言い渡されていますが、これもおそらく略式手続に付されたと考えられます。
今回は、検察官に公判請求される可能性もあるため、検察官に働きかけ略式手続で事件を処理してもらうことを目指します。
もちろん、容疑を否認しているのであれば、略式手続に付されることを拒否し、公判で争う必要があります。
万引きの再犯で対応にお困りであれば、一度刑事事件に強い弁護士にご相談ください。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件専門の法律事務所です。
刑事事件でお困りの方は、弊所の弁護士にご相談ください。
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盗撮事件で逮捕
盗撮事件について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所神戸支部が解説します。
~事例~
兵庫県赤穂郡上郡町にあるホテルの大浴場の脱衣所で女性を盗撮したなどとして県外に住むAさんが逮捕されました。
調べに対してAさんは、「撮ったことは認めるが、交際相手から指示を受けてやった。私は盗撮した画像をどうにかするつもりはなかった。」と話しています。
(フィクションです。)
盗撮をした場合
盗撮は、多くの場合、各都道府県が制定する迷惑防止条例で禁止する行為に該当します。
兵庫県は、「公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等に関する条例」の第3条の2において、以下のように規定しています。
第3条の2 何人も、公共の場所又は公共の乗物において、次に掲げる行為をしてはならない。
(1) 人に対する、不安を覚えさせるような卑わいな言動
(2) 正当な理由がないのに、人の通常衣服で隠されている身体又は下着を撮影する目的で写真機、ビデオカメラその他これらに類する機器(以下「写真機等」という。)を設置する行為
2 何人も、集会所、事業所、タクシーその他の不特定又は多数の者が利用するような場所(公共の場所を除く。)又は乗物(公共の乗物を除く。)において、次に掲げる行為をしてはならない。
(1) 正当な理由がないのに、人の通常衣服で隠されている身体又は下着を写真機等を用いて撮影し、又は撮影する目的で写真機等を向ける行為
(2) 前項第2号に掲げる行為
3 何人も、正当な理由がないのに、浴場、更衣室、便所その他人が通常衣服の全部又は一部を着けない状態でいるような場所にいる人を写真機等を用いて撮影し、撮影する目的で写真機等を向け、又は撮影する目的で写真機等を設置してはならない。
◇1項◇
第2条の2第1項は、「公共の場所」又は「公共の乗物」において、①人に対する、不安を覚えさせるような卑わいな言動、或いは、②正当な理由がないのに、人の通常衣服で隠されている身体又は下着を撮影する目的で写真機等を設置する行為を禁止しています。
「公共の場所」とは、不特定かつ多数が自由に利用し、又は出入りすることができる場所のことをいいます。
道路、公園、広場など国や地方公共団体の所有地や施設のみならず、駅、桟橋、埠頭、デパート、飲食店、興行場も公共の場所に当たります。
「公共の乗物」とは、電車、バス、船舶、航空機その他不特定多数の者が利用するための乗物を指します。
①卑わいな言動については、一般人の性的道義観念に反し、他人に性的羞恥心、嫌悪を覚えさせ、又は不安を覚えさせるようないやらしくみだらな言語、動作をいうと解されています。(最決平20・11・10)
「不安を覚えさせるような卑わいな言動」と規定してあり、「盗撮」という文言は明記されていませんが、「盗撮」という行為が「不安を覚えさせるような卑わいな言動」に当たるため、公共の場所・公共の乗物において盗撮をした場合には、迷惑防止条例第3条の2第1項に該当し、迷惑防止条例違反の罪が成立することになります。
②正当な理由がないのに、人の通常衣服で隠されている身体又は下着を撮影する目的で写真機等を設置する行為は、実際に盗撮に成功していない場合であっても、盗撮目的でカメラを「設置」する行為が禁止対象となっているため、迷惑防止条例違反の罪が成立することになります。
◇2項◇
第2条の2第2項は、1項で規定されている「公共の場所・公共の乗物」を除いた「集会所、事業所、タクシーその他の不特定又は多数の者が利用するような場所」において、①人の通常衣服で隠されている身体又は下着を写真機等を用いて撮影し、又は撮影する目的で写真機等を向ける行為、及び、②盗撮目的で写真機等を設置する行為を禁止しています。
◇3項◇
第2条の2第3項は、「浴場、更衣室、便所その他人が通常衣服の全部又は一部を着けない状態でいるような場所にいる人を」盗撮する行為、盗撮目的で写真機等を向ける行為、又は盗撮目的で写真機等を設置する行為を禁止しています。
事例のようなホテルの大浴場の脱衣所での盗撮は、この3項違反となります。
しかしながら、被写体が18歳未満の者であった場合には、児童買春・児童ポルノ処罰法違反の罪が成立する可能性があります。
児童買春・児童ポルノ処罰法は、盗撮による児童ポルノ製造も処罰対象としており、ひそかに児童ポルノに係る児童の姿態を写真、電磁的記録に係る記録媒体その他の物に描写することにより、当該児童に係る児童ポルノを製造した者は、3年以下の懲役又は300万円以下の罰金に処するとしています。
いづれの罪の成立にも、「故意」がなければなりません。
「故意」とは、罪を犯す意思のことです。
盗撮を例にとれば、盗撮をしようと思って行為に及んだ場合に罪が成立するのであって、偶然様々な要素が相まって盗撮に当たるような行為をしてしまった(なかなかそんなことはないのですが…)場合には故意が認められず罪は成立しないことになります。
また、「盗撮をしてやる」と確信的な故意はなくとも、「盗撮してしまうかもしれないけど、ま、いいや。」といった犯罪の実現を可能なものと認識して認容している場合(これを未必の故意といいます。)にも故意は認められます。
この点、事例のように、「人に頼まれて盗撮した。自分のためではない。」といった主張をしたからといって、罪の成立が妨げられるわけではありません。
自分のためであろうが、人のためであろうが、大浴場の脱衣所で着替えている人の姿を撮影することの認識があれば、故意は認められます。
盗撮事件のように被害者がいる事件では、被害者への謝罪・被害弁償、そして示談締結の有無が最終的な処分に影響する可能性が高いです。
そのため、事件を穏便に解決するためには、早期に被害者と示談交渉を行うことが重要です。
盗撮事件を起こしてしまい、被害者への対応にお困りであれば、弁護士に相談・依頼されるのがよいでしょう。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、盗撮事件をはじめとした刑事事件・少年事件を専門とする法律事務所です。
無料法律相談・初回接見サービスに関するご予約・お問い合わせは、フリーダイヤル0120-631-881で24時間受け付けております。
まずはお気軽にご連絡ください。
公然わいせつで現行犯逮捕
公然わいせつで現行犯逮捕された場合について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所神戸支部が解説します。
~事例~
会社員のAさんは、兵庫県揖保郡太子町の路上に駐車していた車内で、わいせつな行為をしてたとして、目撃者からの通報を受けて駆け付けた兵庫県たつの警察署の警察官に事情を聴かれました。
その後、「また連絡します。」と警察官から言われたAさんは、今後どのような流れになるのか、いかに対応すべきか分からず、ネットで刑事事件専門弁護士を探し法律相談の予約を入れました。
(フィクションです。)
公然わいせつ罪
刑法第174条
公然とわいせつな行為をした者は、6月以下の懲役若しくは30万円以下の罰金又は拘留若しくは科料に処する。
公然わいせつ罪は、性秩序ないし善良な性風俗を保護法益とするものです。
公然わいせつ罪は、「公然とわいせつな行為」をする犯罪ですが、ここでいう「公然」とは、不特定又は多数の人が認識することのできる状態を意味します。
認識することが「できる」状態であることが求められるのであって、必ずしも公衆の面前である必要はなく、現実に不特定又は多数の人が認識したことまでも必要ではなく、不特定又は多数の人が認識する可能性があれば足ります。
「わいせつな行為」については、その行為者又はその他の者の性欲を刺激興奮又は満足させる動作であって、普通人の正常な性的羞恥心を害し善良な性的道義観念に反するものと理解されています。(東京高判昭27・12・18)
正常な羞恥心を害するか否か、善良な性的道義観念に反するか否かについては、その時代における社会の一般人を基準にして判断され、行為者自身や目撃者が現実に性的羞恥心を害されたか否かといった点で判断されるものではありません。
刑法の公然わいせつ罪に当たらない場合であっても、軽犯罪法に規定される身体露出の罪となる可能性があります。
軽犯罪法の身体露出の罪は、公衆の目に触れるような場所で公衆に嫌悪の情を催させるような仕方でしり、ももその他身体の一部をみだりに露出する犯罪です。
「公衆の目に触れるような場所」とは、公然わいせつ罪における「公然」とほぼ同じ意味であり、不特定又は多数の者が認識し得る状態をいいます。
「公衆に嫌悪の情を催させるような仕方」とは、一般通常人の風俗感情からして不快の念を与えるようなものをいいます。
そして、「しり、ももその他身体の一部をみだりに露出」するとは、例示されている尻、ももに代表されるような通常人が衣服などで隠している部分を正当な理由なく人目に触れる状態に置くことを指します。
公衆の面前で身体の一部を露出した場合、その行為が「嫌悪の情を催させるようなもの」であれば軽犯罪法違反となりますが、当該行為が「わいせつ」にあたれば公然わいせつ罪が成立することになります。
公然わいせつで現行犯逮捕された場合
公然わいせつで逮捕されるケースは、
①犯行時、又は犯行直後に警察官に逮捕される場合、
②犯行後、しばらくしてから逮捕される場合
となるでしょう。
①の場合を「現行犯逮捕」といい、目撃者からの通報を受けた駆け付けた警察官や付近を警ら中の警察官に犯行を目撃され、その場で逮捕される場合も少なくありません。
②は、目撃情報などから事件が発覚し、捜査の結果、犯人と思われる人物が特定され、裁判所に逮捕状発行を請求し、逮捕状を得た上で逮捕する「通常逮捕」と呼ばれる場合です。
①も②も、逮捕されてから48時間以内に、被疑者を釈放するか、検察官に証拠物等と一緒に送致するかを警察が決めます。
公然わいせつの場合、身元もはっきりしており、家族等の身元引受人がいる場合には、48時間以内に釈放されるケースが多いでしょう。
当然ながら、釈放されたからといって、それで事件が終わるわけではありません。
事件は引き続き捜査され、検察官に送致された後、検察官が最終的に起訴・不起訴の判断をします。
公然わいせつ事件を起こして捜査を受けておられるのであれば、今後の対応などを含めて弁護士に相談するのがよいでしょう。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件・少年事件専門の法律事務所です。
刑事事件を起こして対応にお困りの方は、一度弊所の弁護士にご相談ください。
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常習傷害罪(暴処法違反)で逮捕
常習傷害罪(暴処法違反)について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所神戸支部が解説します。
~事例~
兵庫県美方郡新温泉町の居酒屋で、他の客と喧嘩になり、止めに入った店長の顔を殴ったとして、Aさんは、通報を受けて駆け付けた兵庫県美方警察署の警察官に傷害の疑いで現行犯逮捕されました。
Aさんは、過去にも酒に酔った上での暴行罪、傷害罪、脅迫罪、器物損壊罪で処罰されており、警察は常習性についても調べるようです。
(フィクションです。)
傷害と常習傷害
暴力を振るい相手方に怪我を負わせた場合、通常、傷害罪が成立すると考えられます。
しかし、加害者に暴行や傷害の前科が多数ある場合には、単なる傷害罪ではなく常習傷害罪が成立する可能性があります。
今回は、それぞれの罪について、いかなる場合に成立し得るのかについて説明していきます。
1.傷害罪
刑法第204条
人の身体を傷害した者は、15年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。
◇犯行の対象◇
傷害罪の客体は「人」であり、行為者本人を除く「身体」を有する自然人です。
法人やその他の団体は本罪の客体とはなりません。
◇行為◇
傷害罪の実行行為は、「傷害する」ことです。
「傷害」の意義については、判例は、人の生理機能に障害を与えること、又は、人の健康状態を不良に変更させることとしています。(最判昭24・7・7など)
傷害の方法については、暴行による方法と暴行によらない方法とがありますが、暴行又は暴行によらない方法による行為と障害結果との間には因果関係が必要となります。
暴行による傷害の場合、人の身体に対する有形力の行使によるものであって、相手方に対して殴る蹴るなどが典型です。
他方、暴行によらない傷害の場合については、性病に羅患している者が強制性交行為によって性病を感染させる場合(最判昭27・6・6)や、自宅から隣家に向けてラジオの音声や目覚まし時計のアラーム音を鳴らし続け、精神的ストレスから睡眠障害等を負わせた場合(最決平17・3・29)などに傷害が認められています。
◇故意◇
傷害罪は故意犯であり、傷害の結果を意図して暴行を加え、それにより傷害の結果が発生した場合に傷害罪が適用されることに議論の余地はありません。
しかし、故意に暴行を加え、その結果、意図しない結果として傷害の結果が発生した場合には故意が認められないとして傷害罪は成立しないことになるのかが問題となります。
この点、傷害罪は故意犯であるとともに、暴行罪の結果的加重犯でもあるため、傷害罪の故意は暴行の認識があれば足りると理解されています。(最判昭25・11・9)
2.常習傷害罪
暴力行為等処罰ニ関スル法律(以下、「暴処法」といいます。)第1条の3は、常習として傷害罪、暴行罪、脅迫罪又は器物損壊罪を犯した者が、人を傷害させた場合は、1年以上15年以下の懲役に処し、傷害に至らずに暴行にとどまった場合は、3月以上5年以下の懲役に処すという常習傷害罪を規定しています。
常習傷害罪が成立する場合には、傷害罪は成立しません。
そのため、常習性の有無によって、成立する犯罪が異なります。
常習傷害罪が成立するためには、
①暴力行為の常習性があり、
かつ、
②本件の行為が暴力行為の常習性の発現として行われたもの
でなければなりません。
これらの要件を判断する際には、行為者の性格や素行、行為の動機・種類・態様、各種暴力行為の反復回数などが考慮されます。
性格や素行の面で粗暴傾向が強く、行為の動機・種類・態様に繰り返しが多い場合には、上の要件は認定されやすくなります。
これらを考慮する際には、前科・前歴が重要な判断資料となります。
本件における行為の動機・種類・態様が前科・前歴と共通している場合には、暴力行為の常習性、その発言としての本件行為が認められるでしょう。
常習性の有無によって、傷害罪にとどまるのか、常習傷害罪となるのかが違ってきますので、傷害等の前科があり常習性の有無が問題となる場合には、一度弁護士に相談されるのがよいでしょう。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件・少年事件を専門に扱う法律事務所です。
ご家族が傷害事件で逮捕されてお困りであれば、弊所の弁護士にご相談ください。
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置き引き事件で逮捕
置き引き事件について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。
~事例~
兵庫県朝来市のスーパーマーケットで置き引き事件が発生しました。
男性客Vさんがビールを1ケースを購入しようと、傍に持っていた自分のカバンを置き、ビールの入った段ボール箱を持ち上げたところ、カバンを置いたままそのままレジに向かってしまいました。
Vさんは会計時に自分のカバンがないことに気が付き、慌ててビール売り場に戻りましたが、カバンは既になくなっていました。
店員にも確認してもらいましたが、落とし物として届けられてはいませんでした。
店の防犯カメラには、Vさんが立ち去った直後に、別の男性が現れ、Vさんのカバンを手に取り、中身を確認したうえで、カバンを持ち去る映像が残っていたため、店長は警察に通報しました。
通報を受けて捜査を開始した兵庫県朝来警察署は、後日、市内に住むAさんを置き引き事件の容疑者として逮捕しました。
(フィクションです。)
置き引き事件~窃盗罪が成立する場合~
置いてある他人の荷物を許可なく持ち去る行為を、一般に「置き引き」と呼びます。
この「置き引き」は、刑法上の「窃盗罪」または「占有離脱物横領罪」に当たる可能性があります。
ここでは、窃盗罪が成立する場合について解説します。
窃盗罪とは
窃盗罪は、「他人の財物を窃取」する犯罪です。
◇犯行の対象◇
窃盗罪における犯行の対象は、「他人の占有する財物」です。
「財物」は、形があるもの(=有体物)と理解されていますが、有体物でなくとも、電気など物理的に管理可能なものも含まれます。
「他人の占有する」というのは、人が物を実力的に支配している状態を意味します。
物を実際に持っている場合が「占有」の典型的な例ですが、それ以外にも、物に対する「事実上の支配」があれば、窃盗罪における「占有」が認められます。
「事実上の支配」は、物を客観的に支配している場合だけでなく、物の支配を取り戻そうと思えばいつでも取り戻せる状態も含まれます。
そして、物の支配をいつでも取り戻せる状態であるかどうかは、支配の事実や占有の意思という2要素を考慮して判断されます。
◇行為◇
窃盗罪の行為である「窃取」とは、財物の占有者の意思に反して、その占有を侵害し、目的物を自己または第三者の占有に移すことをいいます。
◇結果◇
財物の他人の占有を排除して、自己または第三者の占有に移したことにより、窃盗罪の実行に着手してこれを遂げ、犯罪を完成させたことになります。
◇故意◇
窃盗罪は故意犯ですので、犯罪の成立には、罪を犯す意思(=故意)がなければなりません。
窃盗罪の故意は、他人の財物を窃取することの認識・認容です。
◇不法領得の意思◇
条文上の規定はありませんが、窃盗罪の成立には、主観的要件として故意のほかに、「不法領得の意思」が必要となります。
「不法領得の意思」というのは、権利者を排除し、他人の物を自己の所有物と同様にその経済的用法に従い、これを利用しまたは処分する意思のことです。
置き引きが窃盗罪に当たるかどうかを判断する際のポイントは、行為時に、他人の占有があるかどうかです。
つまり、犯人が他人の財物を手に入れたとき、その財物に他人の占有が認められるか否か、という点が問題となります。
先にも述べたように、「占有」の概念については、その物に対する「事実上の支配」の有無が問題となります。
「事実上の支配」とは、持ち主が物を目に見える形で支配している場合だけでなく、持ち主が物の支配を取り戻そうと思えばいつでも取り戻せる状態をも含みます。
そして、持ち主が物の支配を取り戻そうと思えばいつでも取り戻せる状態であるかどうかについては、持ち主の物に対する支配の事実や支配の意思の観点から判断されます。
持ち主の物に対する支配の事実については、持ち主が物を置き忘れてから気付くまでの時間的、場所的近接性が、支配の意思については、持ち主が物の存在していた場所をどの程度認識していたか、といった点が考慮されます。
上の事例では、具体的な時間的場所的関係は明らかではありませんが、スーパーマーケットの酒売り場でカバンを置き忘れ、会計時に気付いてすぐに酒売り場に戻ってきていますので、持ち主が物を置き忘れてから気付くまでの時間的・場所的近接性が認められ、置き忘れた場所もしっかりと認識していたことから、カバンに対する事実上の支配が認められる可能性があるでしょう。
窃盗罪のような財産犯では、被害の回復の如何が最終的な結果に大きく影響します。
そのため、窃盗事件を起こした場合には、できる限り早期に被害者に対して被害弁償、示談に向けた交渉を行うことが重要です。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件・少年事件を専門に扱う法律事務所です。
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