チケット詐欺で被害届が提出されたら

チケット詐欺被害届が提出された場合について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所神戸支部が解説します。

~ケース~
兵庫県たつの警察署は、人気アイドルグループXのコンサートチケット代名目で現金を騙し取ったとして、県外に住むAさんを詐欺容疑で逮捕しました。
Aさんは、Twitterで「Xのコンサートチケット売ります」などと投稿し、被害者Vさんに現金5万円を振り込ませ、だまし取ったとされています。
チケットが届かず、VさんがAさんに連絡しようとしたところ、AさんのTwitterのアカウントが削除され連絡がとれなくなったことから、兵庫県たつの警察署に相談し、被害届を提出したようです。
(フィクションです)

チケット詐欺によるトラブルが後を絶ちません。
人気のアイドルや歌手ともなると、コンサートチケットを手に入れるだけでも一苦労です。
コンサートに行きたいと願うファンの気持ちを利用する悪徳なチケット詐欺は、もちろん犯罪です。
チケット詐欺の多くの場合、刑法の詐欺罪に該当します。

詐欺罪とは

ある犯罪が成立するためには、法律に定められる犯罪類型に該当し、違法であり、かつ有責でなければなりません。

どのような行為が処罰の対象となるかは、あらかじめ法律に規定されています。
法律によって定義された犯罪行為の類型を「構成要件」といいます。
ある犯罪が成立するか否かを判断する際には、まず、この構成要件を満たしているか否かを検討することになります。

詐欺罪については、刑法246条が以下のように定義しています。

第二百四十六条 人を欺いて財物を交付させた者は、十年以下の懲役に処する。
2 前項の方法により、財産上不法の利益を得、又は他人にこれを得させた者も、同項と同様とする。

つまり、詐欺罪の構成要件は、
(1項)①人を欺いて
    ②財物を
    ③交付させたこと
(2項)①人を欺いて
    ②財産上不法の利益を得、または他人にこれを得させたこと
となります。

まずは、1項の詐欺についてですが、これは「人を欺いて財物を交付させる」ことにより成立するものです。
つまり、(a)人を欺く行為、(b)それに基づき相手方が錯誤に陥り、(c)その錯誤によって相手方が処分行為をし、(d)それによって財物の占有が移転し、(e)財産的損害が生ずる、といった一連の流れがなければならず、これらの行為が客観的に相当因果関係にあることが必要です。

(a)欺く行為(欺罔)
欺く行為は、「一般人をして財物や財産上の利益を処分させるような錯誤に陥らせる」ことです。
「人を欺く行為」であるので、機械に対して虚偽の情報を入力しても本罪の欺く行為にはあたりません。
また、詐欺罪における欺く行為(欺罔)が認められるのは、「財物交付や財産上の利益移転に向けられた」欺罔行為をした場合であることに注意が必要です。
つまり、財物の交付や財産上の利益の移転に関する判断の基礎となる重要な事項について偽ることが必要で、単に、嘘をついただけでは欺罔には当たらず、詐欺罪が成立しないことになります。

(b)錯誤
(a)の欺く行為によって、被害者が実際に錯誤に陥ったことが必要です。
錯誤とは、真実と観念との不一致のことをいいます。
それは、財産的処分行為をするように動機付けられるものであればよく、法律行為の要素の錯誤であると、動機の錯誤であるとを問いません。

(c)処分行為
被害者が錯誤に陥ったことによって、被害者が財物を処分することが必要です。
財産の処分とは、1項詐欺の場合、「財物を交付させる」ことです。
つまり、欺かれた者の瑕疵ある意思に基づく交付により、財物が犯人または犯人に関係する第三者に移転することです。
処分行為は、処分の意思と処分の事実が必要となります。

(d)財物の移転
財物の移転とは、(c)処分行為によって、被害者の財物の占有が移転したことをいいます。

(e)財産的損害
財産が移転した結果、被害者に何らかの財産的損害が生じていることが必要です。
1項詐欺については、欺かれなければ交付しなかったであろう財物を交付していれば、財産的損害が発生しているものと解されます。

次に、2項詐欺に関して、「人を欺いて財産上不法の利益を得ること」が構成要件となります。
「財産上不法の利益を得る」とは、欺く行為に基づく錯誤の結果、行われた財産的処分行為によって行為者または一定の第三者が不法に財産上の利益を取得することをいいます。
債務免除、弁済の猶予、役務の提供などが含まれます。

加えて、詐欺罪の成立には、故意が必要です。
人を欺いて錯誤に陥らせ、その錯誤に基づく財産的処分行為により、財物を交付させ、自己または第三者がその占有を取得すること、あるいは、財産上不法の利益を得または他人に得させることの認識がなければなりません。

チケット詐欺の場合、はじめから手元にチケットがないのに、嘘のチケットの販売を持ち掛け、その嘘を信じた被害者がチケット代を支払ってしまったのであれば、詐欺罪が成立するでしょう。
このような場合、被害者から被害届が提出されることで、事件が警察などの捜査機関に発覚します。
被害届の提出を端緒として、警察は捜査を開始します。
捜査を行う上で、犯人の身柄確保が必要と判断されれば、警察は裁判官に逮捕状を請求し、許可が出れば犯人を逮捕します。

チケット詐欺事件でご家族が逮捕されてお困りであれば、刑事事件・少年事件を専門とする弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所に今すぐご相談ください。
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