脱税事件

脱税とは、不正な行為により課税を免れることによって成立する犯罪をいいます。納税義務を負う者が、故意に税金の納付を免れたり、不正に還付を受けたりすることをいい、各種の税法によって処罰の対象とされています。

主な法規制

所得税法違反

偽りその他不正の行為により、所得税の額につき所得税を免れ、又は所得税の還付を受けた者は、10年以下の懲役若しくは1000万円以下の罰金、又はこれらが併科されることになります(所得税法238条1項)。

法人税法違反

偽りその他不正の行為により、法人税の額につき法人税を免れ、又は法人税の還付を受けた場合には、法人の代表者、代理人、使用人その他従業者で、違反行為をした者に10年以下の懲役若しくは1000万円以下の懲役、又はこれらの併科が科せられることになります(法人税法159条1項)。

所得税法・法人税法のいずれも、脱税の額が1000万円を超える場合には、罰金額が脱税額以下まで引き上げることができるとされています。
脱税は、国民の生活を支える国家の運営基盤となる税金の徴収を妨げる犯罪ですから、厳しい罰則が設けられているとともに、行政処分による追徴課税により懲罰的な意味合いの税金が余分に課されることになります。

  • 所得税法・法人税法における偽りその他の不正な行為とは、脱税の意図を持って、その手段として税の賦課徴収を不能もしくは著しく困難ならしめるようななんらかの偽計その他の工作を行うことを意味します。
  • 所得税法・法人税法における税を免れ、税の還付を受けたというのは、法律に基づく正当な税額の確定を妨げたことが問題とされます。法定の納付期限が経過することにより、直ちに犯罪が成立するものとされています。
  • 所得税法・法人税法違反による脱税事件は、故意犯ですから、犯罪の成立には脱税の認識が必要です。意図的でない申告漏れは所得税法・法人税法違反の脱税には含まれません。所得税法・法人税法違反による犯罪の成立のためには、納税義務の存在、自らの行為が偽りその他不正の行為であること、脱税の結果のすべてについて認識が必要とされます。

脱税事件の捜査・告発

所得税法・法人税法違反等による脱税事件は、税という専門性の高い分野についての犯罪ということもあり、通常の警察官が捜査するのは困難です。

所得税法・法人税法違反等による脱税事件においては、税務調査や徴収の専門機関である国税局によって脱税の調査が行われることになっています。

一般に、税務調査は、調査対象の規模が大きければ国税局が、そうでないものを各税務署が行うものとされています。

そして、税務調査にも任意で行うものと裁判所の令状を得て行う強制調査の2種類があります。

任意の税務調査は、主に申告漏れなど行政上の処分の対象となる事実を調査するのに対して、強制調査は、犯則調査とも呼ばれ、査察部(通称マルサ)により、多くは刑事責任の対象となる事件について調査がなされます。 

国税局などの強制調査により、脱税の事実があると判断されれば、検察官に対して脱税容疑の告発がなされます。
告発がなされた場合には、検察官(大規模検察庁の特捜部)に脱税事件の捜査が引き継がれ、刑事手続きが開始されることになります。

脱税事件の刑事手続

所得税法・法人税法違反等による脱税事件においては、脱税容疑で告発された段階で、既に国税局や税務署による調査がなされており大量の証拠資料が押収されていることが大きな特徴です。

所得税法・法人税法違反等による脱税事件で逮捕される割合は他の重大事件に比較すると比較的少なく、在宅にて脱税事件の捜査が進む可能性も十分あります。

逆に、所得税法・法人税法違反等の脱税事件で逮捕された場合は、勾留がつく可能性が極めて高く、釈放される確率も低くなります。

所得税法・法人税法違反等の脱税事件で逮捕や勾留がされたということは、証拠隠滅が可能であるか、逃亡の可能性が顕著である場合だからと考えられるためです。

所得税法・法人税法違反等の脱税事件では、事件の専門性・複雑性から、不起訴処分や略式手続きによる起訴よりも公判請求され正式裁判になる可能性が高くなっています。

裁判において考慮される事情

所得税法・法人税法違反等による脱税事件においては、量刑の重要な考慮要素として脱税額・脱税の手口・修正申告や納税状況・同種前科の有無などが考慮されます。

脱税事件で公判請求された場合でも、およそ半数程度は執行猶予付き判決が下されています。
ただ、脱税事件の中でも脱税額が高額の場合は、執行猶予が付かない実刑判決になる可能性が高くなります。

脱税の手口が巧妙であったり、申告率が悪かったりすれば、脱税額が少額であっても実刑判決となる可能性があります。

~脱税事件における弁護活動~

事前の対応

所得税法・法人税法違反等の脱税行為が明るみになり、告発されてしまえば、納税義務者の場合、ほぼ間違いなく起訴されてしまうため、十分な防御活動を行うためには、検察への告発前から、対策を考える必要があります。

任意調査の段階であれば、脱税に当たりうる事実を調査し、修正申告等で速やかに改善するなどして、事件が不用意に拡大することを防ぐよう動くことができます。

できる限り、告発による刑事事件化よりも前に早急に弁護士に相談し、調査機関との交渉や意見書提出など水際で防御活動を行うことが大切です。

無罪の主張

所得税法・法人税法違反等による脱税事件では、単なる計算間違いや税法に関する知識不足・解釈の誤りなどが原因で本来納付すべき税額の納付を免れた場合は、脱税犯罪にはなりません。
弁護士は、単なる申告漏れであるなど被疑者・被告人に脱税行為の認識がなかったということを、客観的な証拠や事実に照らして、具体的に主張していきます。
こうした主張が認められると、所得税法・法人税法違反等による脱税犯罪が成立していないとして不起訴処分や無罪判決を勝ち取ることができます。

脱税の故意を争う場合にはできるだけ早く信頼できる弁護士に無実を証明する弁護活動をしてもらうことが大切です。

プロの査察官や検察官による取調べに答えているうちに、脱税の故意を認めるかのような内容の調書をとられてしまう場合があります。早期に弁護士による取調対応のアドバイスを受けるようにしましょう。

減刑及び執行猶予判決の獲得

所得税法・法人税法違反等の脱税容疑で起訴されてしまった場合、修正申告やそれに基づく納税を早急に行うことが刑を軽くするうえで極めて重要です。
脱税額や悪質性にもよりますが、速やかに脱税の事実を認め修正申告や納税を行うことで、実刑を避け、執行猶予付きの判決となる可能性が高くなります。

また、所得税法・法人税法違反等の裁判では、脱税をするに至った経緯・動機・犯行態様・具体的な脱税金額・前科前歴の有無など被告人に有利な事情を裁判官に説得的に主張し、可能な限り穏便な処分となるように尽力します。

また、被告人が納税義務者ではなく共犯としてかかわったような場合には、脱税への関与が希薄であることや、同種事件に比べて悪質ではないことなどを主張し、起訴猶予(不起訴処分)や執行猶予付き判決の獲得を目指すこともできます。

 

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