風営法違反・風適法違反

※2025年6月1日より、改正刑法に基づき懲役刑および禁錮刑は「拘禁刑」に一本化されました。当ページでは法改正に基づき「拘禁刑」と表記していますが、旧制度や過去の事件に関連する場合は「懲役」「禁錮」の表現も含まれます。

風俗営業は、風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律(風営法又は風適法)に基づき、各都道府県の公安委員会などの行政庁が、営業者に対して、許可を出したり、適正な営業がなされているかを監督する等しています。
風俗営業が風営法(風適法)に違反した場合の規制には、行政上の処分と刑事上の責任の2種類があります。

風俗営業が風営法(風適法)などの法令に違反する場合には、営業停止や営業許可の取消し等が行われます。
これらの処分を行政処分といいます。

これに対して、風営法(風適法)の罰則規定に違反した場合は、警察や検察官による捜査がなされ、最終的には刑事裁判の手続きに進み、罰金や拘禁刑などの刑事処罰がなされることになります。

風営法(風適法)違反

風営法(風適法)の違反で、最も多いのが無許可営業です。

風俗営業を行う際には、営業許可をとる必要がありますが、これをとらずに、店舗でホステスによる接待行為が行われているような場合、無許可営業として規制対象となります。
女性店員が客の横について接客しているガールズバーなどが警察に摘発されているのをよくテレビなどで見かけますが、これは風営法違反による摘発例です。

また、風俗営業の許可を取得する際に、虚偽の事実で申請したり、実際の営業者とは別の者が許可を受け、営業者に名義を貸すという行為も風営法(風適法)による規制の対象です。

これらの他にも、風俗店に、18歳未満の者を働かせたり、客として入店させたりした場合など、風俗営業に関する様々な行為が風営法(風適法)上の規制対象とされています。

主な風営法違反の類型

罪となる行為罰則・法定刑
風俗営業の無許可営業虚偽・不正手段による許可の取得名義貸し禁止違反営業の停止等処分の違反店舗型性風俗特殊営業の禁止区域等営業  など 5年以下の拘禁刑若しくは1000万円以下の罰金、又はこれらの併科 
(風営法49条)
構造設備の無承認変更・不正手段による承認の取得18歳未満の者に接待行為をさせること18歳未満の者を客とすること  など 1年以下の拘禁刑若しくは100万円以下の罰金、又はこれらの併科 
(風営法51条)
客引き(つきまとい、立ちふさがり行為を含む) 6か月以下の拘禁刑若しくは100万円以下の罰金、又はこれらの併科
(風営法53条)
広告制限地域に広告物を設置した従業者名簿の備付け義務違反等従業者の身分確認規定の違反公安委員会への報告義務違反や警察官の立ち入り妨害  など100万円以下の罰金  
(同風営法54条)
許可申請書等の虚偽記載深夜酒類提供飲酒店営業の無届営業  など50万円以下の罰金  
(風営法55条)
営業許可証の掲示義務違反風俗営業に係る変更届出書提出義務違反 など30万円以下の罰金  
(風営法56条)

なお風俗営業に関する細かな規制は各都道府県の条例で定められていることが多いです。風俗営業に関する条例の規制は各都道府県で異なるため、風俗営業をする場合は各都道府県の条例にも注意する必要があります。

2025年風営法改正と事業者への影響

2025年5月28日に改正風営法が公布されました。改正法の施行日は公布日から起算して1か月後の2025年6月28日であり、一部の規定(後述の欠格事由追加)は公布日から6か月後の2025年11月28日施行と定められています。

改正風営法の主な改正点は以下のとおりです。

  • 接待飲食営業に関する遵守事項の追加(ホストクラブ・キャバクラ等への新たなルール)
  • 接待飲食営業に関する禁止行為の追加(悪質行為の明確な禁止と罰則化)
  • 性風俗店(性風俗関連特殊営業)におけるスカウトバックの禁止(違法な人材募集ルートの遮断)
  • 無許可営業等に対する罰則の強化(罰則の引き上げと適用範囲の拡大)
  • 風俗営業許可の欠格事由の追加(許可を受けられない者の要件拡大)

以下、各項目について改正内容や事業者への影響を具体的に解説します。

1 接待飲食営業※に係る遵守事項の追加

※接待飲食営業とは、設備を設けて客の接待をし、客に遊興または飲食をさせる営業(典型例:キャバクラ、ホストクラブ等)のことをいいます。風俗営業の一種です(風営法2条1項1号営業)。

改正法は、ホストクラブやキャバクラなど接待を伴う飲食店営業に対し、新たに遵守事項を追加しました。ガールズバー、ボーイズバー、コンカフェなどで「接待」する場合も対象になります。これらは従来明文化されていなかった悪質な勧誘・接客行為を禁止するものです。

具体的には以下の3点が新たな遵守事項として規定されました。

  • 料金に関する虚偽の説明の禁止:
    料金体系や請求額について事実と異なる説明をしたり、誤認させる説明をする行為。
  • 客の恋愛感情等につけ込んだ勧誘の禁止:
    客が接客従業者(ホスト・ホステス等)に抱く好意や恋愛感情を悪用し、「自分と恋人関係になれる」「一緒にいたいならもっとお金を使って」等と信じ込ませて巧みに高額な飲食をさせる行為。
  • 客が注文していない飲食物等の提供禁止:
    客が明確に注文の意思表示をしていないのに飲食やシャンパン等を提供し、後から料金を請求する行為。いわゆる勝手注文(無断で高額ボトルを開けて料金に加算する等)の手口が該当します。

以上の遵守事項違反は刑事罰の対象ではありませんが、行政処分(営業停止処分や許可取消し等)の理由となり得ます。接待飲食業者は店内ルールやスタッフ教育を見直し、料金表示の明確化や営業トークの指導などを通じて、これら禁止行為を徹底的に避ける必要があります。

2 接待飲食営業に係る悪質行為の明確化・罰則化

上記遵守事項とは別に、ホストクラブやキャバクラ等の営業者による特に悪質な行為については、改正法により「禁止行為」として新設され、刑事罰の対象となりました。ガールズバー、ボーイズバー、コンカフェなどで「接待」する場合も対象になります。

禁止行為には以下の二点があります。

  • 威迫による注文・支払強要の禁止:
    客に注文させる目的や、未払い金の支払等をさせる目的で威迫して困惑させる行為が禁止されました。
  • 売掛金回収のための違法行為強要の禁止:
    未払い料金等を支払わせる目的で、客に対し威迫または誘惑して次のような行為を要求することが禁止されました。「誘惑して…要求すること」も禁止されており、誘い文句であっても違法となります。
    • 違法行為による金策の要求:
      「法令違反となる手段で金を作って来い」と唆すこと。
    • 売春の要求:
      売春防止法その他の法令に違反する売春行為(国内外問わず)をするよう要求すること。
    • 性風俗店で働くよう要求:
      改正法の対象とする性風俗関連営業(後述)で異性の客に接触するサービス提供業務に従事することを要求すること。
    • アダルトビデオ出演の要求:
      A V新法(AV出演被害防止・救済法)で定義される性行為映像の制作物への出演をするよう要求すること。例:「AVに出て借金を返せ」と出演強要。

これらの禁止行為に違反した場合、風営法違反の刑事罰が科されます。具体的な罰則規定としては、6月以下の拘禁刑若しくは100万円以下の罰金又は併科となっています。

改正前から、売春を強要した場合は売春防止法違反等で摘発され得ましたが、改正風営法ではこれら一連の悪質行為そのものを風営法上明確に禁じ、独自に罰則を設けることで包括的かつ迅速な取締りを可能としています。

接待飲食業の経営者は改正内容を十分に周知し、従業員によるこの種の行為を絶対に行わないよう厳格に指導・管理することが求められます。

3 性風俗店によるスカウトバックの禁止

改正法は、デリバリーヘルス等の性風俗関連特殊営業(性風俗店)における人材スカウト行為にもメスを入れました。具体的には、性風俗店の経営者がスカウトマン等から求職者(働き手)の紹介を受けた際に、その紹介者(スカウト)や第三者に対し、紹介の対価として金銭等を支払うことを禁止しました。いわゆる「スカウトバック(紹介料キックバック)」の禁止規定であり、違反した場合は6月以下の拘禁刑若しくは100万円以下の罰金又は拘禁刑と罰金の併科が科されます。

なお、このスカウトバック禁止規定は性風俗店(風俗第2条第6項・第7項該当業種)に限って適用されます。ホストクラブやキャバクラ等の接待飲食業は含まれません。

また紹介料とみなされるもの全般が禁止対象のため、仮に従業員の友人紹介であっても金銭や商品券等の謝礼を渡すことはNGとなり得ます。性風俗店の経営者は、自店舗の採用方法を速やかに見直し、報奨金付き紹介制度やスカウト業者への依頼を廃止する必要があります。

4 無許可営業等に対する罰則の強化

改正法は、風俗営業等を無許可・不適切な形態で営んだ場合の罰則を大幅に引き上げています。風俗営業には警察署経由で公安委員会からの許可が必要ですが、無許可で営業したり、許可証の名義を他人に貸して実質的に営業させる「名義貸し」行為は後を絶ちませんでした。

改正法では、こうした無許可営業・名義貸し等に対する法定刑を以下のように強化しています。

  • 個人に対する罰則強化:
    無許可営業等を行った者への罰則が5年以下の拘禁刑もしくは1000万円以下の罰金又は拘禁刑と罰金の併科に引き上げられました。従来の「2年以下の懲役または200万円以下の罰金」から拘禁刑の上限が2.5倍、罰金額の上限は5倍となり、抑止力が高められています。
  • 法人に対する罰則強化(両罰規定):
    風俗営業関連の違法行為について、従業員や代表者だけでなく法人も処罰される両罰規定があります。改正法では法人に科される罰金の上限額が「200万円以下」から「3億円以下」へと大幅引き上げられました。企業として違法営業の経済的メリットが失われる水準であり、法人ぐるみの違法経営に強い歯止めをかける狙いがあります。

「風俗営業」が対象なので、パチンコ屋やゲームセンターなども対象となるほか、深夜酒類提供飲食店営業の届出で営業をしているガールズバー、ボーイズバー、コンカフェなどが「接待」をしたとして逮捕・摘発される場合にも適用されます。「風俗営業」が対象なので、「性風俗関連特殊営業」であるソープ、ハコヘル、デリヘルなどの風俗店には適用されません。

さらに、今回の罰則強化は適用範囲の拡大も含んでいます。例えば、改正法の新罰則規定では風営法28条に基づく都道府県条例違反(禁止区域内での営業など)も重い処罰対象に含まれました。

これにより、従来グレーとされてきた無届の「マンション型メンズエステ」(実態は性的サービス提供だが風俗営業の届出や許可がなく、禁止区域で営業するケース)なども、無許可営業と同様の厳罰で取り締まることが可能になります。

また、他人名義の許可で営業する名義貸しも実質的には無許可営業とみなされ、同様に5年以下の拘禁刑/1,000万円以下の罰金の対象として厳しく追及されます。

風俗関連事業者は、自社の営業形態が許可範囲から逸脱していないか再点検する必要があります。例えばガールズバー等で実質的に接待行為をしている場合、従来より格段にリスクが高まっています。

許可が必要な営業は必ず事前に取得し、許可範囲外の営業形態(接待の有無、深夜営業時間など)を行わないことが肝要です。

また、名義貸しによる営業や、風俗営業禁止区域での偽装営業(例:無届けの出張エステで実質デリヘル行為を行う等)は、発覚すれば経営者個人も法人も破滅的な制裁を受ける可能性があります。改正法施行後は、グレーな営業スキームに安易に手を出さず、許可・届出を含む行政手続を厳密に遵守する姿勢がこれまで以上に求められます。

5 風俗営業許可に係る欠格事由の追加

最後に、風俗営業の許可を取得できない者(欠格事由)の範囲が拡大されました。改正前から、暴力団員や禁錮刑以上受刑者、過去に許可取消処分を受けて5年経過していない者などは許可が下りない規定がありました。改正法では新たに以下のケースが追加されています。

  • (1)親会社等が許可取消処分を受けた法人:
    申請法人の親会社その他密接な関係会社が、過去5年以内に風俗営業許可を取消されている場合、その申請法人には許可が下りません。例えば、グループ内の別会社が悪質営業で許可取消となっているのに、社名を変えただけの新会社で営業再開といった看板掛け替えを防ぐ規定です。
    「親会社等」の範囲は国家公安委員会規則で定められますが、株式保有や役員の派遣等を通じて実質的に事業を支配している関係があれば該当すると考えられます。
  • (2) 立入調査後に許可証を返納した者:
    風俗営業所への警察の立入り調査を受けた後、その処分が確定する前に自主的に許可証を返上(返納)した者も、新たな許可申請ができない者に追加されました。
    これは、いわゆる処分逃れを防止するための規定です。従来、重大な違反で取消処分が見込まれる事案で事業者が先に許可を返納すると、形式上「取消された」経歴が残らず、しばらくしてから再申請できる抜け穴が指摘されていました。改正法では警察による立入調査後~処分決定までの期間に許可を返納した場合も欠格事由にカウントされます。実質的に取消と同等とみなして5年間の申請禁止となるため、この手法は通用しなくなります。
  • (3) 暴力的不法行為者に支配されている者:
    申請者(営業者)の事業活動に関し、暴力的な不法行為等を行うおそれがある者が支配的な影響力を及ぼしている場合も許可不可となります。
    これは、反社会的勢力が表面上関与していなくても、資金提供や取引を通じて裏で経営に影響力を持つケースを排除するものです。暴力団排除の趣旨を徹底する規定で、フロント企業や周辺者を使った関与も許さない内容と言えます。

以上の欠格事由拡大は、2025年11月28日以降の許可申請から適用されます。風俗営業の新規許可を検討する事業者は、自社および関連会社の過去の行政処分歴や、主要株主・出資者の背後関係を十分洗い直す必要があります。

特に(1)については、グループ内に取消歴がある場合5年間は新規参入ができない可能性があります。

また(2)について、今後は「摘発されたら一旦店を畳んで逃げる」という逃避策は許可再取得不能という重い代償を伴います。違反の疑いを指摘された際には、安易に返納や廃業で逃げようとせず、真摯に改善策を講じることが肝要です。

(3)については、例えば事業に資金提供している人物が反社的風評のある人物でないか、役員や実質的経営者が過去に暴力的違法行為を起こしていないか等、身辺調査を求められるでしょう。場合によっては出資関係の見直しや経営陣の交代も検討すべきです。

~風営法違反における弁護活動~

不起訴処分の獲得

風営法(風適法)違反事件で逮捕・勾留されてしまっても、不起訴処分を獲得すればすぐに釈放されます。
不起訴処分となれば、前科も付きません。弁護士は、不起訴処分を獲得するため、容疑者の方が事件に関与していない・事件に関与していたがその程度、悪質性が弱いなどといった事情を検察官に主張・立証します。

容疑者を起訴して刑事裁判にかけるか否かの判断は、全て検察官に委ねられています。
従って、弁護士が意見書などを通じて、検察官を説得することが大切です。

執行猶予付き判決の獲得

もし、風営法(風適法)違反事件の刑事裁判で実刑判決による拘禁刑を科されてしまうと、刑務所に入らなければなりません。
一方、執行猶予付き判決の場合には、判決確定後、ただちに刑務所に入ることを回避できます。

そして、執行猶予期間中に、再び罪を犯すようなことがなければ、裁判で言い渡された刑の執行を免れることができます。
したがって、仮に有罪判決を回避できないと考えられる状況でも、被告人に有利な事情を客観的な証拠に基づいて主張・立証し、できる限り減刑あるいは執行猶予を受けられるように尽力します。

早期の身柄解放

風営法(風適法)違反事件で違法な営業形態を捜査する必要がある場合などは、逮捕後、勾留され身体拘束が長期にわたることもあります。

風営法(風適法)違反事件では、逮捕後、勾留を回避するためには弁護士を通じて被告人に有利な事情を主張していくことが重要です。

警察や検察、裁判官に対して逃亡や証拠隠滅のおそれがないと思わせることがポイントです。

また身柄を拘束されたまま風営法(風適法)違反事件の刑事裁判が始まってしまった場合でも、保釈という手続きで留置場から出られる可能性があります。

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