不法投棄で逮捕

不法投棄で逮捕

不法投棄逮捕される場合について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所神戸支部が解説します。

~ケース~
兵庫県高砂市で青果店を営むAさんは、従業員のBさんと、店で処理した野菜の皮などを大量に、正規の処理業者を介さずに、同市の山林に不法に捨てていました。
ある日、兵庫県高砂警察署に「山に野菜くずが大量に捨てられている」との通報があり、事件が発覚しました。
同署は、捜査をすすめ、AさんとBさんによる犯行であることを突き止め、AさんとBさんを廃棄物処理法違反(不法投棄)の容疑で逮捕しました。
(産経WEST 平成31年1月28日22時13分掲載記事を基にしたフィクションです)

不法投棄で刑事事件に~廃棄物処理法違反~

廃棄物処理法(「廃棄物の処理及び清掃に関する法律」の略称)は、廃棄物の排出抑制、リサイクル、適正処理をすすめることで、生活環境の保全と公衆衛生の向上を図ることを目的とした法律です。
本法は、本法で定められた処分場所以外に廃棄物を投棄する行為(不法投棄)を禁止しており、違反に対して罰則を設けています。

第十六条 何人も、みだりに廃棄物を捨ててはならない。

第二十五条 次の各号のいずれかに該当する者は、五年以下の懲役若しくは千万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
 八 第十六条の規定に違反して、廃棄物を捨てた者

それでは、上記のケースが不法投棄罪に該当するのか否かについて検討していきます。
「みだりに廃棄物を捨てる」行為とは、どのような行為をいうのでしょうか。

まず、「青果店で処理した野菜の皮など」が「廃棄物」に当たるのでしょうか。

廃棄物処理法における「廃棄物」とは、その2条に以下の様に定義されています。

第二条 この法律において「廃棄物」とは、ごみ、粗大ごみ、燃え殻、汚泥、ふん尿、廃油、廃酸、廃アルカリ、動物の死体その他の汚物又は不要物であつて、固形状又は液状のもの(放射性物質及びこれによつて汚染された物を除く。)をいう。

ここでいう「不要物」とは、判例上、「占有者が自ら利用し又は他人に有償で売却することができないため不要になった物」と解釈されます。
「廃棄物」は「産業廃棄物」と「一般廃棄物」とに分類されます。
「産業廃棄物」は、事業活動に伴って生じた廃棄物のうち、廃棄物処理法で規定された20種類をいいます。
この20種類には、「動植物性残さ」があり、食料品、医薬品、香料製造業から生ずるあめかす、のりかす、醸造かす、魚および獣のあら等の固形状の不要物とされています。
「青果店で処理した野菜の皮など」は、青果店で野菜を販売する際に、皮などの要らない部分をとる作業で発生するものですので、食料品製造業から生じているとは言えず、「産業廃棄物」には該当しないでしょう。
一方、「一般廃棄物」には「事業系一般廃棄物」「家庭廃棄物」「特別管理一般廃棄物」とに分類されます。
「事業系一般廃棄物」とは、事業活動に伴って生じた廃棄物で「産業廃棄物」以外のものをいいます。
ですので、「青果店で処理した野菜の皮など」は「事業系一般廃棄物」に当たるでしょう。

次に、「捨てる」の解釈についてですが、「捨てる」とは、市場に投棄する行為だけでなく、海中に投棄する行為や地中に埋める行為など、最終処分する行為のことをいい、廃棄物を最終的に占有者の手から離して自然に還元することをいいます。
不法投棄の際には「放置したままにする」という不作為も「捨てる」に該当するかについてですが、不要物としてその「管理を放棄した」時点で「廃棄物を捨てる」行為に該当すると理解されています。
上記ケースでは、「捨てる」に当たると考えられるでしょう。

最後に、「みだりに」の意味ですが、社会通念上、公衆衛生・生活環境の保全に支障が生じうると認められる方法です。
この判断には、行為の態様、当該物の性質・量・管理の状況、周囲の環境、行為者の内心の意図など客観的及び主観的側面を総合し、生活環境の保全及び公衆衛生の向上という廃棄物処理法の趣旨と社会通念に照らして、個別具体的に決められます。
この点、野菜の皮などは事業系一般廃棄物に当たり、処理業者に処理を委託するか、事業者が処理施設等に搬入しなければなりませんので、「みだりに」の要件にも該当するでしょう。

上記ケースでは廃棄物処理法違反(不法投棄罪)が成立すると考えられます。
事業活動に関して従業員が廃棄物処理法違反をした場合、その従業員のみならず、その人を雇用していた法人にも、1億円以下の罰金が科される可能性があります。

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