不良行為少年と虞犯少年

不良行為少年虞犯少年との違いについて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所神戸支部が解説します。

~ケース~
中学2年生のAさん(14歳)は、夏までは真面目に学校に通っていましたが、夏休みの間にクラブに入り浸り、家にも帰ってこない等、乱れた生活を送るようになりました。
徐々に学校にも行かなくなり、何度も家出を繰り返していました。
ある日、少年Bとクラブに行った帰りに、兵庫県生田警察署の警察官に職務質問を受けたAさんは、酒に酔っていたこともあり気が大きくなり、警察官に反抗的な態度をとりました。
警察官はそのまま2人を署に任意同行し、事情を聴くことにしましたが、薬物をしているわけでもなく、2人の両親に引き取ってもらい一時的な補導で終わらせることにしました。
しかし、Aさんは、迎えに来た母親に対して、「なんでここに来とんねん。お前とは帰らへん。」と反抗的な態度を取り続けました。
母親から事情を聴いた警察官は、Aさんをこのまま自宅に返したとしても、また家出をするかの可能性が高いこと、Aさんは少年Bが恐喝で得たお金で遊んでいること、複数人と性的関係を持つなど、将来、財産犯や売春を行うおそれがあると判断したため、神戸家庭裁判所虞犯少年として送致しました。
(フィクションです)

不良行為少年とは

不良行為少年は、少年警察活動規則第2条1項6号において、「非行少年には該当しないが、飲酒、喫煙、深夜はいかいその他自己又は他人の徳性を害する行為をしている少年」と定義されています。
警察は、そのまま放置すれば、非行その他健全育成上の支障が生じるおそれがあると認められる少年について、不良行為の中止を促すなど必要な注意を行ったり、非行防止その他の健全育成上必要な助言を行ったりします。
注意・助言だけでは少年の非行防止その他健全育成上十分でないと認められる場合は、警察は保護者と連絡をとり、不良行為の事実を伝え、必要な監護や指導上の措置を促します。

不良行為少年に対しては、補導等で済みますが、場合によっては虞犯少年として家庭裁判所に送致されることもあります。

虞犯少年とは

虞犯少年は、犯罪を犯していないものの、虞犯事由があり、かつその性格又は環境に照らして、将来罪を犯し、又は刑罰法令に触れる行為をするおそれのある少年です。
虞犯は犯罪ではありませんが、少年法は、これを家庭裁判所の審判に付すこととしています。
その理由として、未だ犯罪行為に至ってはいないけれども、不良な行為をしている少年を早期に発見して適切な保護を加えることにより、少年の健全な育成を図るとともに、犯罪の発生を未然に防止するためであることがあげられます。

虞犯事由には、次の4つがあります。
①保護者の正当な監督に服しない性癖のあること。
②正当な理由がなく家庭に寄りつかないこと。
③犯罪性のある人若しくは不道徳な人と交際し、又はいかがわしい場所に出入りすること。
④自己又は他人の徳性を害する行為をする性癖のあること。
これらのうち1つでも該当すると、虞犯事由があることになります。

虞犯事由を概観すると、不良行為少年虞犯少年が重複しているように思えますね。
しかし、不良行為少年の定義である「自己又は他人の徳性を害する行為」と虞犯事由の④が重複しますが、不良行為少年は「非行少年には該当しないが」、虞犯事由④に該当する少年ということになります。
「非行少年」とは、「犯罪少年」、「虞犯少年」、「触法少年」といった家庭裁判所の審判に付することとされている少年です。

さて、不良行為少年虞犯少年とを区別する要素である「将来罪を犯し、又は刑罰法令に触れる行為をするおそれ」、つまり、「虞犯性」は、知能・性格等の本人の問題点や家庭、学校、不良交友等の非行の誘因・抑止双方に関係する環境的要因等を総合的に検討して判断されます。

虞犯に関する通告・送致

警察官が街頭補導等によって虞犯少年を発見した場合、警察官は当該少年の調査を行います。
この調査においては、少年や保護者に対して、事件の事実、原因及び動機、少年の性格、行状、経歴、教育程度、環境、家庭の状況、交友関係等について質問します。
調査の後、少年が14歳以上であり、家庭裁判所の審判に付することが適当と認められるときは、少年を家庭裁判所に送致します。
少年が14歳以上18歳未満であり、保護者がいないとき又は保護者に監護させることが不適当であると認められ、かつ家庭裁判所に直接送致するよりも児童福祉法上の措置をとるべきであると認められる場合は、少年を児童相談所に通告します。

家庭裁判所に送致されると、犯罪少年の場合と同様に、家庭裁判所の調査官による調査が行われた上で審判に付され、終局処分が言い渡されることになります。
また、家庭裁判所送致後に、観護措置がとられる可能性もあります。

このように虞犯少年として家庭裁判所に送致された場合、犯罪少年の場合と同じ手続きとなります。
虞犯少年の場合には、その性質上観護措置がとられることも多いでしょう。

お子様が虞犯少年として家庭裁判所に送致され、対応にお困りの方は、刑事事件・少年事件を専門に取り扱う弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。
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