不正指令電磁的記録供用罪で逮捕

不正指令電磁的記録供用罪で逮捕

不正指令電磁的記録供用罪について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所神戸支部が解説します。

~ケース~
大学生のAさん(21歳)は、彼女のVさんのスマートフォンに「遠隔操作アプリ」を勝手にインストールし、遠隔操作でメールをチェックしたり、居場所を特定できるアプリを無断でインストールして、居場所を確認していました。
Vさんは、見覚えのないアプリが入っていることに気づき、兵庫県福崎警察署に相談しに行ったことにより事件が発覚しました。
Aさんは、兵庫県福崎警察署の警察官に不正指令電磁的記録供用罪の容疑で逮捕されました。
(フィクションです)

不正指令電磁的記録供用罪とは

平成23年の刑法改正により、不正指令電磁的記録に関する罪が新設されました。
コンピューターを使って膨大な情報を処理することが不可欠となっている現代社会において、コンピューターウイルスによりパソコンを使用している者の意図に反した動作が行われるといった事態が野放しにされると、プログラムを実行する際に果たしてそのプログラムを信頼してよいものか不安になりますし、その結果、コンピューターでの情報処理業務が円滑にいかなくなるおそれが出てくるでしょう。
そのような事態を回避するためにも、不正指令電磁的記録に関する罪(いわゆる「コンピューター・ウイルス」に関する罪)が設けられたのです。
不正指令電磁的記録に関する罪は、「不正指令電磁的記録作成等」(刑法第168条の2)及び「不正指令電磁的記録取得等」(刑法第168条の3)から成ります。

第百六十八条の二 正当な理由がないのに、人の電子計算機における実行の用に供する目的で、次に掲げる電磁的記録その他の記録を作成し、又は提供した者は、三年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。
一 人が電子計算機を使用するに際してその意図に沿うべき動作をさせず、又はその意図に反する動作をさせるべき不正な指令を与える電磁的記録
二 前号に掲げるもののほか、同号の不正な指令を記述した電磁的記録その他の記録
2 正当な理由がないのに、前項第一号に掲げる電磁的記録を人の電子計算機における実行の用に供した者も、同項と同様とする。
3 前項の罪の未遂は、罰する。

本条第1項は、「不正指令電磁的記録作成・提供罪」について規定しており、第2項が「不正指令電磁的記録供用罪」について定めています。
つまり、上記ケースで問題となっている不正指令電磁的記録併用罪とは、
①正当な理由がないのに
②前項第1号に掲げる電磁的記録を
③人の電子計算機における実行の用に供した
ことにより成立します。

【客体】
併用罪の対象は、「前項第1号に掲げる電磁的記録」、つまり、「人が電子計算機を使用するに際してその意図を沿うべき動作をさせず、又はその意図に反する動作をさせるべき不正な指令を与える電磁的記録」です。
「人」とは、犯人以外の者であり、「電子計算機」とは、自動的に計算やデータ処理を行う電子装置のことで、パソコンや、サーバーコンピューター、スマートフォンなどがこれに当たります。
ここでいう使用者の「意図」とは、個別具体的な使用者の実際の認識を基準として判断されるのではなく、問題となるプログラムの機能の内容や機能に関する説明内容、想定される利用方法等を総合的に考慮して、その機能について一般に認識すべきであるところを規範的に判断されます。
例えば、市販のソフトウェアであれば、電子計算機の利用者は、そのプログラムの指令によって電子計算機が行う基本的な動作について当然認識しているものと考えられますし、説明書には当該プログラムの機能の詳細について記載されていますので、使用者が認識し得る状態にあるので、使用者がプログラムの機能すべてを現実に認識していなくても、当該プログラムによる電子計算機の動作は、「使用者の意図に反する動作」には当たらないことになります。
「電磁的記録」とは、電子的方式、電磁的方式その他人の知覚によって認識することができない方式で作られる記録のことです。

【行為】
不正指令電磁的記録を「人の電子計算機における実行の用に供する」とは、不正指令電磁的記録を、電子計算機の使用者にこれを実行しようとする意思がないのに実行され得る状態に置くことをいいます。
つまり、電子計算機を使用している者は、不正指令電磁的記録がパソコンなどの電子計算機に入っているとは知らずに、使用者が当該不正指令電磁的記録を作動させることが出来るようにしておくことです。

【正当な理由の不存在】
「正当な理由がないのに」というのは、「違法に」という意味です。

上記ケースでは、彼女のスマートフォンに遠隔操作や位置確認のアプリを彼女に断りなく勝手にインストールして使っていたので、不正指令電磁的記録併用罪が成立すると考えられます。
本罪の法定刑は、3年以下の懲役または50万円以下の罰金です。

「恋人の浮気を確かめたくて…」と軽い気持ちで行ってしまったとしても、犯罪となる場合もあります。
兵庫県の不正指令電磁的記録併用事件で加害者となりお困りの方は、サイバー犯罪を含めた刑事事件専門の弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。

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