偽証教唆について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所神戸支部が解説します。
~ケース~
Aさんは、兵庫県神崎郡神河町内の有料道路を走行中、制限速度を時速42キロオーバーの時速102キロで走行していたところ、兵庫県警高速警備隊に発見され、道路交通法違反(速度超過)容疑で検挙されました。
Aさんは、捜査段階から被疑事実を否認しており、神戸地方検察庁姫路支部はAさんを道路交通法違反で起訴しました。
Aさんは公判で、「自分の車を追い抜いた別の車と勘違いされた」と主張しており、同乗していたBさんが証人としてAさんの主張と同様の発言をしました。
しかし、証人の証言を不審に思った検察が捜査を続けたところ、Bさんが「Aさんから口裏合わせを依頼された」と供述したので、Aさんを偽証教唆容疑で、Bさんを偽証容疑で逮捕しました。
(実際の事件を基にしたフィクションです)
偽証の罪とは
上記ケースでは、Aさんらは偽証罪に問われています。
あまり聞き慣れない罪名ですが、偽証罪とはどのような罪なのでしょうか。
刑法第百六十九条
法律により宣誓した証人が虚偽の陳述をしたときは、三月以上十年以下の懲役に処する。
偽証罪の保護法益は、国の審判作用の適正な運用です。
裁判などで嘘の証言がなされると、公正な裁判を行うことが出来ませんから、そのような虚偽の証言がなされないよう、法律により宣誓した証人の偽証を処罰するものです。
主体:法律により宣誓した証人
「法律により」とは、法律の根拠に基づいて、という意味です。
直接法律に規定されている場合や、命令その他の下位立法の規定のある場合も含まれます。
「宣誓」は、有効に行われることが必要となります。
構成要件的行為:虚偽の陳述をすること
「虚偽の陳述」の意義については、主観説と客観説との間で争いがあります。
前者は、「虚偽」とは証人の記憶に反することとし、後者は、客観的事実に反すること、と解します。
判例は、証言の内容たる事実が真実に一致し、もしくは少なくともその不実であることを認めることはできない場合でも、証人がことさらにその記憶に反する陳述をなすときには偽証罪が成立する、として主観説を採っています。(大判大3・4・29)
主観説を採る場合、証人が思い違いをして、結果として客観的な事実と異なる証言をしたとしても、本人がそれが真実だと思い込んでいる場合には、偽証罪に問われないことになります。
共犯関係
刑事被告人が自己の刑事被告事件について、他人を教唆して協議の陳述をさせた場合、偽証罪の教唆犯が成立するか否か、つまり、刑事被告人は偽証罪の正犯とはなりえないのに、教唆犯になり得るのか、が問題となります。
「教唆」とは、他人を唆して犯罪を実行する決意を生じさせることをいいます。
教唆犯は、人を教唆して犯罪を実行させた場合に成立します。
判例・通説は、被告人が、自己の刑事事件に関し他人に偽証を教唆した場合、被告人自身に黙秘権があるからといって、他人に虚偽の陳述をするよう教唆したときは偽証教唆の責を免れないとして、偽証教唆罪の成立を肯定しています。(最決昭28・10・19)
共犯事件は、罪証隠滅のおそれがあると認められ逮捕後勾留となる可能性が高いと言えるでしょう。
偽証罪を含めた刑事事件でお困りであれば、刑事事件・少年事件を専門とする弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。
無料法律相談や初回接見のご予約・お問い合わせは、フリーダイヤル0120-631-881まで。