不同意性交等罪(旧強制性交等罪、準強制性交等罪、強姦罪等)

【不同意性交等罪】 

不同意性交等罪とは、一定の類型、状況、状態において行われた性交等について、5年以上の有期懲役を以て処罰するというものです。

1つ前の改正で罪名が強姦罪等から強制性交等罪等に変更となりましたが、令和5年の改正で不同意性交等罪となりました。

・ 対象(被害者) 

従来の旧強姦罪の客体は、女子とされていたため、男子に対して成立することはありませんでした。しかし、強制性交等罪では、客体に男女の区別はなく、男性を被害者とした場合も含まれ、この点は不同意性交等罪となった現在でも変わりません。

また、13歳未満が被害者の場合には、手段方法を問わず性交等を行った場合にはすべて不同意性交等罪となります。13歳未満の者は、性的な事柄について十分な判断能力がないとの前提から、後見的見地から絶対的保護が与えられているということです。

次に、この点が改正された点となりますが、13歳以上16歳未満の者と性交等をした場合、①加害者が被害者より5歳以上年長であれば、13歳未満と同様、手段方法を問わず性交等行為が全て不同意性交等罪となります。反対に、5歳未満であれば、下記のような類型に該当する性交等が不同意性交等となります。

・ 類型

旧強制性交等、強姦罪においては「暴行・脅迫」が手段となる場合、準強制性交等、準強姦においては「抗拒不能等」の状態の場合の性交等が犯罪となっていました。

しかし、令和5年改正により、一定の類型にある性交等罪が処罰されることとなりました。類型とは下記の通りです。

①暴行若しくは脅迫を用いること又はそれらを受けたこと。

②心身の障害を生じさせること又はそれがあること。

③アルコール若しくは薬物を摂取させること又はそれらの影響があること。

④睡眠その他の意識が明瞭でない状態にさせること又はその状態にあること。

⑤同意しない意思を形成し、表明し又は全うするいとまがないこと。

⑥予想と異なる事態に直面させて恐怖させ、若しくは驚愕させること又はその事態に直面して恐怖し、若しくは驚愕していること。

⑦虐待に起因する心理的反応を生じさせること又はそれがあること。

⑧経済的又は社会的関係上の地位に基づく影響力によって受ける不利益を憂慮させること又はそれを憂慮していること。

⑨行為がわいせつなものではないとの誤信をさせ、若しくは行為をする者について人違いをさせ、又はそれらの誤信若しくは人違いをしていることに乗じた場合

(①~⑧と⑨では成立要件が異なります)。

・ 対象行為

強姦罪のころは、被害者は女性のみと想定されており、「姦淫」という行為、すなわち、男性器の女性器への一部挿入という行為のみが規制の対象とされてきましたが、改正法である強制性交等罪では、肛門性交や口腔性交も規制対象とされることになりました。

不同意性交等においてはこれに加え、膣若しくは肛門に物や体の一部(指など)を入れる行為を性交等として処罰されることとなりました。これらの行為も、被害者に与える影響という意味では陰茎の挿入と異ならないからです。

【旧準強制性交等罪】 

令和5年改正前は、強制性交等罪とは別に準強制性交等罪が規定されていましたが、改正により不同意性交乙罪として一本化されました。

【監護者性交等罪】

18歳未満の者に対し、その者を現に監督する者であることに乗じて性交等をした場合にも、5年以上の有期懲役が科せられます(刑法179条2項)。  

従来、性犯罪の大部分が、告訴がなければ起訴することのできない親告罪とされてきました。これは、被害者の心情や負担に鑑みて、刑事裁判にかけるか否かを被害者の意思に委ねようとするということが趣旨であったわけですが、かえって被害者への負担になるとか、加害者が処罰されないことに対して、批判も強く、今回の改正により親告罪の規定が撤廃され、非親告罪化する運びとなりました。

また、性犯罪の厳罰化の潮流を受け、法定刑も「3年以上」から「5年以上」の有期懲役に引き上げられることとなりました。ここで気を付けなければならないのは、原則として実刑の可能性が非常に強くなったということです。執行猶予が付けられるためには、もちろん、犯罪自体の事情や反省、被害者への謝罪や弁償示談等、様々な有利な要素が必要となるのですが、法律上、執行猶予が付されるのは、3年以下の懲役刑が言い渡される場合のみということとなっています。

すなわち、「5年以上」の有期懲役がベースとなる不同意性交等罪においては、法律上の減刑や酌量減刑など法定刑以下に減刑される場合を除いては、執行猶予判決を得ることが出来なくなったということです。

【改正後のポイント】

 1 暴行・脅迫や抗拒不能以外に様々な類型が追加された

 2 性交等の範囲が広がり、物や指を入れる行為も性交等となった

 3 性交同意年齢が16歳となり、年齢差が5歳以上ある場合には手段を問わず不同意性交等罪

  となるようになった

不同意性交等罪は、性犯罪の中でも重い法定刑が規定されています。罰金刑がないため、起訴されれば正式裁判で懲役刑に問われることになりますし、被害者との接触が懸念されることから、身柄の拘束も長期間となりやすいです。

また、実刑判決を受ける可能性も高い犯罪です。近年では、出会い系サイトを通じて知り合った女性に対する事件や、風俗店において禁止されている本番行為を行って事件となるケースがよく問題とされています。

~不同意性交等罪(強制性交等罪・準強制性交等罪)における弁護活動~

・ 示談交渉

不同意性交等罪では、親告罪の規定がありませんので、示談による告訴の取下げに成功しても、必ずしも不起訴処分が得られるとは限らなくなりました。しかし、事件発覚前の示談によりそもそも事件化を防いだり、早期の示談の成立による不起訴処分の獲得など、示談交渉が重要な活動であることには変わりありません。また、起訴されてしまった後でも、示談の成立は、有利な情状として考慮され、減刑につながる可能性が大きく上がります。

このように、被害者との示談は非常に有効ですが、不同意性交等罪にかかる事件の場合は特に、被害者が犯人に対して強い拒絶感や処罰感情を有していることがほとんどです。中には、絶対に示談などしないという被害者の方もいらっしゃるかもしれません。このようなもとで、加害者である犯人が直接に被害者との交渉に当たって、逆効果となるおそれがあることは容易に想像できるでしょう。

まずは誠心誠意謝罪の意を表すことが大切ですが、交渉に当たっては被害者の気持ちや立場に立って、十分な配慮のもと行われるべきです。示談交渉に関しては、弁護士にお任せください。

たとえば、二度と加害者と被害者が会うことのないように、通学時間や通勤時間、経路の変更などを被害者の方に約束します。場合によっては、引っ越しなども検討し、加害者としてできる限りの範囲で被害者の方の不安を取り除けるかを一緒になって考えます。

・ 再発防止と環境改善

性犯罪を起こした方は、自分のした行為を恥じ、深い後悔をされている方がほとんどです。にもかかわらず、犯行を常習的に行ってしまう場合があります。繰り返し性犯罪で捕まった場合、反省や更生がされていないとして、重い処分がなされる可能性が高まります。

しかし、そのような常習者のなかにも、犯罪行為を辞めたいと思いながら、自らをコントロールできずに繰り返してしまう方がいます。このような場合には医療機関などの専門機関への受診と治療などを行い、根本からの改善を試みるように促します。

・ 無罪の主張

不同意性交等罪(強制性交等事件・準強制性交等事件)として警察が捜査を始めても、実際には性交渉をしていない、あるいは同意の上での行為であった場合など、犯罪にに当たらないにもかかわらず捜査対象となり、取調べや逮捕が行われる場合があります。

そのような場合、弁護士は、犯罪の成立を否定する客観的な証拠を提出したり、捜査機関の見解が十分な証拠に基づくものではないことを主張したりして、不起訴処分・無罪判決を勝ち取るように尽力します。

また、依頼者の方に対しては取調べ対応などについての的確なアドバイスをして、捜査機関により思いがけず不利な証拠を作られてしまわないようにします。

・ 身柄解放活動

不同意性交等罪の事件で逮捕されると、その後釈放・保釈を受けることは非常に難しいです。

しかし、早期の身柄解放を実現できなければ、それだけ元の生活を取り戻すことが困難になりますし、容疑者の方やそのご家族の苦労も増えてしまうでしょう。そこで弁護士は、検察官や裁判官に積極的に働きかけることで、釈放・保釈を勝ち取り身柄拘束が長期化しないように尽力します。

 

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