準強制性交等罪の心神喪失・抗拒不能

2019-04-15

準強制性交等罪の心神喪失・抗拒不能

準強制性交等罪における心神喪失抗拒不能について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所神戸支部が解説します。

~ケース~
○○会社で勤務するAさんは、出身大学の学生からOB訪問を希望する連絡を受けました。
AさんはOB訪問を快諾し、学生2人と会うことになりました。
会社の話をした後、Aさんは学生たちを飲みに誘いました。
学生のVさんは、あまりお酒が強くないと言っていましたが、酒を飲んで気が大きくなっていたAさんは、Vさんに強いお酒を勧めました。
最終的にはVさんはお店で眠り込んでしまったので、AさんがVさんを自宅まで送ることにしました。
AさんはVさんをタクシーで自宅まで送っていき、部屋までVさんを連れて行きました。
Vさんをベッドまで運んだ際、Aさんは、Vさんは自分に気があるんじゃないかと思い、Vさんにキスをしました。
Vさんが嫌がる様子がなかったので、そのままVさんの服を脱がし性行為をしました。
途中、Vさんは何か言っているようでしたが、特段拒絶されることもなく、事が終わりました。
しかし、後日、兵庫県三田警察署にVさんが被害届を出し、Aさんは準強制性交等の容疑で逮捕されました。
Aさんは、同意があったと主張していますが、Vさんは抵抗できなかったと供述しているようです。
(フィクションです)

準強制性交等罪について

第百七十八条 人の心神喪失若しくは抗拒不能に乗じ、又は心神を喪失させ、若しくは抗拒不能にさせて、わいせつな行為をした者は、第百七十六条の例による。
2 人の心神喪失若しくは抗拒不能に乗じ、又は心神を喪失させ、若しくは抗拒不能にさせて、性交等をした者は、前条の例による。

刑法178条2項が準強制性交等罪について規定しています。
強制性交等罪が、性交等を行う手段として「暴行又は脅迫」と定めているのに対して、準強制性交等罪については、①「心神喪失若しくは抗拒不能に乗じ」または②「心神を喪失させ、若しくは抗拒不能にさせ」ることによるものとしています。
心神喪失」とは、精神的または生理的な障害によって正常な判断能力を失っている状態といい、熟睡、泥酔、麻酔状態、高度の精神病等により被害者が行為の意味を理解できない場合がこれにあたります。
抗拒不能」とは、心神喪失以外の理由により心理的または物理的に抵抗ができない状態をいいます。
例えば、行為自体は認識しつつも医療行為と誤信した場合など、錯誤により抵抗する意思を失っている場合などがあります。
心神喪失抗拒不能の程度についてですが、完全に不可能であることを必要とせず、反抗が著しく困難であればよいとされます。
①心神喪失・抗拒不能に乗じて
既に被害者が心神喪失抗拒不能にある状況を利用することを指します。
例えば、被害者の高度の精神沈滞状況を利用した場合、睡眠中や泥酔状態の利用などがあげられます。
②心神喪失・抗拒不能にさせる
被害者にお酒を飲ませて泥酔させたり、医師の医療行為を装い治療と誤信した被害者に性交等を行う場合などです。
被害者の無知、困惑、驚愕等や、加害者との関係などといった被害者のおかれた特別の状況を利用して行為が行われた場合にも本罪が成立する可能性があります。

ここで、上記ケースに照らしてみると、AさんがVさんと性交しようと最初から考えていてお酒の弱いVさんに強いお酒を勧めてVさんを泥酔させ、性交したのであれば、「心神喪失抗拒不能にさせて性交等をした」と言えるでしょう。
また、最初からVさんを酔わせるつもりはなくとも、Vさんが泥酔した状態を利用して性交等したのであれば、「心神喪失抗拒不能に乗じて性交等をした」ことになる可能性はあります。
また、Vさんが実際にどのような泥酔状態であったのかも問題となります。
自分で歩くことができない、呂律が回らず会話ができないといった状態であれば、Vさんが自分の意思表示(=反抗)を行うことは著しく困難であったと考えられます。
一方、そこまで酔ってはいなかった場合、直ちにVさんが犯行当時著しく反抗するのが困難ではなかったと判断されるのかと言えばそうではなく、Vさんが心理的に抵抗することができない状態にあった場合には、抗拒不能の状態が肯定されます。
例えば、AさんとVさんの関係性から、行為を拒否することでVさんが危害を加えられるのではないかと恐怖に慄いた結果、身動きが取れず反抗することができなかった場合は、抗拒不能であったと判断されるでしょう。

しかしながら、本罪の成立には、加害者側の故意がなければなりません。
つまり、被害者が心神喪失または抗拒不能の状態にあることを認識して行為に出ること、そして被害者の同意がないことの認識が必要となるのです。
被害者が心神喪失抗拒不能の状態であったことが明らかであっても、それを加害者が認識していない場合や、被害者が同意していないことを加害者が認識していない場合には、準強制性交等罪は成立しないことになります。
ただ、これらは内心の問題となるので、単に「知らなかった。同意があったと思っていた。」と主張するだけは足りず、客観的な証拠により、AさんがVさんを心神喪失抗拒不能の状態にあることを認識して行為に出たものではなかったことが立証される必要があります。
このような弁護活動は、刑事事件に強い弁護士に任せるのがよいでしょう。

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