刑事事件で逮捕~現行犯逮捕~
現行犯逮捕について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所神戸支部が解説します。
~ケース~
兵庫県篠山市の公園で、下半身を露出した男性がいるとの目撃者からの通報を受けて兵庫県篠山警察署の警察官が現場に駆け付けました。
警察官は、現場にいたAさんに話を聞いたところ容疑を認めたので、公然わいせつの容疑で現行犯逮捕しました。
逮捕の連絡を受けたAさんの妻は、このまま身体拘束が長引くと会社をクビになってしまうのではないかと心配し、すぐに接見に行ってくれる弁護士を探しています。
(フィクションです)
前回まで、3種類ある逮捕のうち「通常逮捕」と「緊急逮捕」について説明しました。
今回は、残りの「現行犯逮捕」についてみていきましょう。
現行犯逮捕について
現行犯逮捕は、現に罪を行っている、あるいは行い終った直後の者の場合に、逮捕状なしに逮捕できるというものです。
現行犯逮捕については、刑事訴訟法第213条に規定されています。
第二百十三条 現行犯人は、何人でも、逮捕状なくしてこれを逮捕することができる。
現行犯逮捕は、現行犯は逮捕者の面前における犯行であるから、嫌疑が明白で、犯人を誤認して逮捕する危険が少なく、緊急性があるため、令状主義の例外として無令状の逮捕を認められています。
「現行犯人」については、刑事訴訟法第212条で次のように定められています。
第二百十二条 現に罪を行い、又は現に罪を行い終つた者を現行犯人とする。
○2 左の各号の一にあたる者が、罪を行い終つてから間がないと明らかに認められるときは、これを現行犯人とみなす。
一 犯人として追呼されているとき。
二 贓物又は明らかに犯罪の用に供したと思われる兇器その他の物を所持しているとき。
三 身体又は被服に犯罪の顕著な証跡があるとき。
四 誰何されて逃走しようとするとき。
「現行犯人」の定義について
(1)「現に罪を行う者」
「現に罪を行う」とは、逮捕者の面前で犯罪の実行行為を行いつつある場合をいいます。
「罪」は特定されたものであることが必要となります。
(2)「現に罪を行い終った者」
「現に罪を行い終った」とは、犯罪の実行行為を終了した直後をいいます。
この判断は、時間的接着性および場所的接着性を考慮して行われます。
時間的接着性というのは、犯行と逮捕との間が時間的にそれほど隔たっていないことをいい、場所的接着性は、犯行と逮捕が場所的にも近接していることを指します。
「準現行犯人」の定義について
刑事訴訟法第212条は、その第2項で、現行犯人とみなす者(「準現行犯人」)について規定しています。
準現行犯人は、現行犯人とのものではないけれど、罪を行い終って間がない犯人であることの明白性が価値的に現行犯と同視できることから、現行犯とみなされます。
(1)「罪を行い終ってから間がない」
「間がない」というのは、時間的・場所的に近接した時点をいいます。
「罪を行い終ってから間がないと明らかに認められるとき」という文言は、刑事訴訟法第212条第2号の各号とあわせて、犯罪と被逮捕者との結びつきが逮捕者に明白であることを必要とします。
①追呼
「犯人として追呼されているとき」というのは、犯人として追われている、或いは呼びかけられている状態です。
②贓物等の所持
「贓物(ゾウブツ)」とは、他人の財産を侵害する犯罪行為によって不法に領得された財物を意味します。
「兇器」とは、人を殺傷し得る器物で、一般人をして危険を感じさせるものであればよいとされます。
この兇器は、「明らかに犯罪の用に供したと思われ」なければなりません。
③犯罪の顕著な証跡
その犯罪を行ったことが外部的に、客観的に明らかといえる痕跡が身体あるいは服に認められる場合です。
④誰何されて逃走
「誰何」という言葉は、相手が何者かわからないときに、呼び止めて問いただすことを意味しますが、ここでは、これに類似する行為も含まれます。
現行犯逮捕は、警察などの捜査機関のほか一般人でも可能です。
一般人が現行犯逮捕した場合、直ちに検察官または司法警察職員に現行犯人を引き渡さなければなりません。
公然わいせつ事件は、目撃者が警察に通報し、現場に駆け付けた警察官が現行犯逮捕するケースが多いです。
刑事事件で逮捕されたら、できるだけ早期に弁護士に相談し、身柄解放活動に動くのがよいでしょう。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件・少年事件を専門とする法律事務所です。
ご家族が刑事事件で逮捕されてお困りであれば、弊所の弁護士にご相談ください。