危険ドラッグ

危険ドラッグとは

一般に、覚せい剤や麻薬と同種の成分や類似の化学物質を混入させた植物片等を意味しますが、法的な定義はありません。

危険ドラッグと一口に言っても、粉状のものや錠剤になっているもの、液状のもの等、様々な形態で販売されており、合法ハーブ・脱法ハーブ・アロマ・リキッド・お香等と聞こえの良い呼び方をされることが多いです。

しかし、合法ドラッグや脱法ドラッグと言われていても、覚せい剤などの違法薬物よりも人体への悪影響が強い危険な成分が混入されていることも多く、危険ドラッグの多くが違法薬物として規制の対象に含まれます。

以下では、危険ドラッグに関する現在の法律の規制について説明していきます。

危険ドラッグの法規制

危険ドラッグは、成分などが他の規制薬物とは異なるため、覚せい剤取締法や、大麻取締法、麻薬及び向精神薬取締法などの法律では規制することができません。
そこで、従来、個別に指定した薬物について、薬事法によって、製造や販売、輸入、所持等が規制されてきました。

現在では、法律の改正に伴い、規制範囲の拡大がされ、名称も薬事法から医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安産性などの確保に関する法律(医薬品医療機器等法)へと改められました。

医薬品,医療機器等の品質,有効性及び安全性等の確保に関する法律(旧薬事法)による規制

医薬品医療機器等法76条の4、84条26号

指定薬物について、医療等の用途以外での製造、輸入、販売、授与、所持、購入、譲り受け、使用が禁止されています。
違反すると、3年以下の懲役もしくは300万円以下の罰金、又は両方が併科されます。

医薬品医療機器等法83条の9

業として、指定薬物の製造、輸入、販売、授与し、又は、所持販売や授与をする目的で貯蔵し、陳列した場合に限る)した場合には、5年以下の懲役もしくは500万円以下の罰金、又は両方が併科されます。

医薬品医療機器等法76条の5、85条9号

指定薬物の広告は、医薬関係者や医療等用途に使用するものを対象として行う場合を除き禁止されています。
違反すると、2年以下の懲役若しくは200万円以下の罰金、又は両方が併科されます。

医薬品医療機器等法76条の6第1項、87条15号

指定薬物である疑いがある物品、及びそれに加え指定薬物と同等以上に精神毒性を有する蓋然性が高い物である疑いがある物品の貯蔵・陳列している者、製造・輸入・販売・授与した者に対して、検査命令を出すことができます。
検査命令に違反した場合は、50万円以下の罰金です。

医薬品医療機器等法76条の6第2項、86条23号

検査結果が出るまでは、当該物品や同一の物品を製造・輸入・販売・授与、販売又は授与の目的で陳列し、広告してはならない旨を併せて命じることができます。
命令に違反した場合には、1年以下の懲役又は100万円以下の罰金です。

関税法による規制

危険ドラッグの濫用者による交通事故や、2次的犯罪の増加が深刻な社会問題となってきたことを背景とし、平成27年4月1日より、関税法においても新たに指定薬物の輸入が規制対象とされ、重い罰則が設けられました。

医薬品医療機器等法に基づき指定される指定薬物を輸入した場合、10年以下の懲役3000万円以下の罰金、又は両方が併科されます(関税法109条1項、69条の11第1項1号の2)。

条例による規制

危険ドラッグについては、法律の規制以外に、各都道府県の薬物乱用防止条例で規制されています。

薬物乱用防止条例では、上記法律の規制対象外である薬物であっても、各都道府県独自の調査の結果、健康被害が生じると認められた場合には所持や使用が禁止され、違反者には刑罰が科せられる条例もあります。

兵庫県薬物の濫用の防止に関する条例

兵庫県の薬物乱用防止条例では、中枢神経系に一定の作用を及ぼす可能性のあるもので、健康被害が生じる恐れがあるものを危険薬物と定義しており、危険薬物の使用や販売などを規制しています。

兵庫県薬物乱用防止条例の規制に違反した場合、警告措置及びそれに従うことの命令に従わない場合に販売中止・回収などの命令をすることが可能です。
緊急の場合には、警告措置をとらずに販売中止・回収などの命令をすることが可能です(兵庫県薬物濫用防止条例18条2項,3項)。
命令に反した場合には、50万円以下の罰金が科せられます(兵庫県薬物濫用防止条例23条)。

また、危険薬物につき警告など一定の措置を施行するのに必要な場合には、立ち入り調査が可能とされており(兵庫県薬物濫用防止条例20条)、違反した場合には、20万円以下の罰金が科せられます(兵庫県薬物濫用防止条例24条)。

上記規定は、法人の業務に関して行っていた場合、法人もともに罰金刑が科されます(兵庫県薬物濫用防止条例25条)。

警告に従わずに、危険薬物を吸入、摂取などにより使用した者は、5万円以下の過料が科せられます(兵庫県薬物濫用防止条例26条)。

危険ドラッグ事件の弁護活動

犯罪の成立を争う場合

危険ドラッグの所持・使用、輸入・販売等をした場合でも、犯行当時に違法な薬物であることの認識がなかったのであれば、罪に問われることはありません。

ただ、違法性の認識については、これが規制薬物に該当するという認識までを要するものではなく、当該薬物が違法な物かも知れないという認識がある程度で構わないとされています。
ですから、違法薬物とは知らなかったという主張は、容易に通るものではありません。

しかし、確実に適法であるとの確信を持っていた場合には、犯罪が成立しませんし、十分に争う余地はあります。
弁護士は、違法薬物との認識がなかったということを、客観的な証拠や事実に照らして、具体的に主張していきます。

また、たとえ事件を起こしても、それを証明するに足りる証拠がなければ有罪にはなりません。
その証拠は適法な捜査によって獲得されたものでなければなりません。ですから、職務質問・所持品検査・取り調べなど、捜査の過程で看過しがたい重大な違法行為があれば、その旨を主張して、収集された証拠を排除します。

こうした主張が認められれば、犯罪を立証する証拠が不十分であるとして、不起訴処分・無罪判決を受けられる可能性が高まります。

環境調整・再犯防止

危険ドラッグ・脱法ドラッグを使用したことなどにつき争いがない場合、できる限り量刑を軽くしてもらえるように、酌むべき事情を精査して主張していきます。

具体的には、薬物への依存や常習性がないこと・再犯を防ぐ対策をとっていること・共犯者間で従属的な立場にあったことなどを客観的な証拠に基づいて説得的に主張します。
薬物依存を断ち切るためには、専門医の治療を受けることも重要です。

減刑・執行猶予付き判決の獲得には、ご家族や周囲の方の理解と協力のもと、二度と薬物犯罪に手を染めない環境作りと具体的な対応策を裁判所に示すことが重要なのです。

身柄解放活動

危険ドラッグ・脱法ドラッグに関する犯罪をしてしまった場合でも、証拠隠滅のおそれがない・逃亡のおそれがないことなどを客観的な証拠に基づいて積極的に主張します。
こうした活動は、逮捕・勾留されている方の早期釈放・保釈につながります。

 

keyboard_arrow_up

0120631881 無料相談予約はこちら LINE予約はこちら