危険運転で裁判員裁判①

危険運転で裁判員裁判①

危険運転について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所神戸支部が解説します。

~ケース~
Aさんは、通勤に車を使用していました。
ある日、会社の飲み会があり、Aさんは車は会社の駐車場に止めておいて、バスで帰宅しようと考え、飲酒しました。
相当酔っていたAさんは、バスで帰宅することが面倒に思い、自分で車を運転して帰ることにしました。
しかし、Aさんは車を走らせてしばらくすると、急に眠気に襲われ、運転中に眠りこけてしまい、車線をはみ出し、対向車線に進入し、Vさんが運転する対向車に衝突してしまいました。
Vさんは救急搬送されましたが搬送先の病院で死亡が確認されました。
Aさんは兵庫県豊岡南警察署に逮捕され、その後神戸地方検察庁に危険運転致死罪で起訴されました。
(フィクションです)

危険運転致死傷罪

「自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律」(通称、「自動車運転死傷処罰法」)は、従前、刑法第208条の2(危険運転致死傷罪)及び第211条第2項(自動車運転過失致死傷罪)として規定されていたものを、自動車運転による死傷事犯の実情等に鑑み、事案の実態に即した対処をするため、悪質かつ危険な自動車の運転により人を死傷させた者に対する新たな罰則を創設するなどして平成26年5月20日に施行され、現在は、危険運転致死傷罪及び過失運転致死傷罪の規定は、自動車運転死傷処罰法において独立して規定されています。

危険運転致死傷罪

危険運転致死傷罪は、自動車運転死傷処罰法の第2条及び3条に規定されています。

第二条 次に掲げる行為を行い、よって、人を負傷させた者は十五年以下の懲役に処し、人を死亡させた者は一年以上の有期懲役に処する。
一 アルコール又は薬物の影響により正常な運転が困難な状態で自動車を走行させる行為
二 その進行を制御することが困難な高速度で自動車を走行させる行為
三 その進行を制御する技能を有しないで自動車を走行させる行為
四 人又は車の通行を妨害する目的で、走行中の自動車の直前に進入し、その他通行中の人又は車に著しく接近し、かつ、重大な交通の危険を生じさせる速度で自動車を運転する行為
五 赤色信号又はこれに相当する信号を殊更に無視し、かつ、重大な交通の危険を生じさせる速度で自動車を運転する行為
六 通行禁止道路(道路標識若しくは道路標示により、又はその他法令の規定により自動車の通行が禁止されている道路又はその部分であって、これを通行することが人又は車に交通の危険を生じさせるものとして政令で定めるものをいう。)を進行し、かつ、重大な交通の危険を生じさせる速度で自動車を運転する行為
第三条 アルコール又は薬物の影響により、その走行中に正常な運転に支障が生じるおそれがある状態で、自動車を運転し、よって、そのアルコール又は薬物の影響により正常な運転が困難な状態に陥り、人を負傷させた者は十二年以下の懲役に処し、人を死亡させた者は十五年以下の懲役に処する。
2 自動車の運転に支障を及ぼすおそれがある病気として政令で定めるものの影響により、その走行中に正常な運転に支障が生じるおそれがある状態で、自動車を運転し、よって、その病気の影響により正常な運転が困難な状態に陥り、人を死傷させた者も、前項と同様とする。

(1)危険運転致死傷罪(2条)
以下の行為を行い、その結果、人を負傷させた者は15年以下の懲役に処し、人を死亡させた者は1年以上の有期懲役に処するとしています。
①アルコール又は薬物の影響により、正常な運転が困難な状態で自動車を走行させる行為。
②進行を制御することが困難な高速度で自動車を走行させる行為。
③進行を制御する技能を有しないで自動車を走行させる行為。
④人又は車の通行を妨害する目的で、走行中の自動車の直前に進入し、その他通行中の人又は車に著しく接近し、重大な交通の危険を生じさせる速度で自動車を運転する行為。
⑤赤信号等を殊更無視し、重大な交通の危険を生じさせる速度で自動車を運転する行為、
⑥通行禁止道路を進行し、重大な交通の危険を生じさせる速度で自動車を運転する行為。

(2)危険運転致死傷罪(3条)
アルコール、薬物又は一定の病気の影響により正常な運転に支障が生じるおそれがある状態で、そのことを認識しながら自動車を運転した上、客観的に正常な運転が困難な状態に陥って人を負傷させた者は12年以下の懲役、人を死亡させた者を15年以下の懲役に処するとしています。

上記ケースでは、飲酒運転の末の人身事故を事例として挙げています。
そこで、今回は、「アルコールの影響により正常な運転が困難な状態」、そして「アルコールの影響により、その走行中に正常な運転に支障が生じるおそれがある状態」について考えてみたいと思います。

1.アルコールの影響により正常な運転が困難な状態
これについては、平成23年10月31日最高裁決定において、以下のように解されています。「アルコールの影響により正常な運転が困難な状態」というのは、「アルコールの影響により道路交通の状況等に応じた運転操作を行うことが困難な心身の状態をいい、アルコールの影響により前方を注視してそこにある危険を的確に把握して対処することができない状態もこれに当たる」。
アルコールの影響により正常な運転が困難な状態にあったか否かの判断に当たっては、「事故の態様のほか、事故前の飲酒量及び酩酊状況、事故前の運転状況、事故後の言動、飲酒探知結果等を総合的に考慮すべきである」とあり、事故の態様、アルコールの摂取状況、事故前の運転状況や事故後の言動等を総合的に評価して決定されます。

2.アルコールの影響により正常な運転に支障が生じるおそれがある状態
先の「正常な運転が困難な状態」であるとまではいえないが、自動車を運転するのに必要な注意力、判断能力、操作能力が、そうではないときの状態と比べて相当程度減退して危険性のある状態や、そのような危険性のある状態になり得る具体的なおそれがある状態を含むと考えられています。

危険運転致死傷罪は、その法定刑が重く、危険運転致死事件は裁判員裁判の対象事件です。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、危険運転致死傷事件を含めた刑事事件を専門に扱う法律事務所です。
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