脅迫罪・強要罪

脅迫罪

生命、身体、自由、名誉又は財産に対し害を加える旨を告知して人を脅迫した者は、2年以下の懲役又は30万円以下の罰金に処する(刑法222条)。

脅迫とは

脅迫とは、一般に人を畏怖させるに足りる害悪の告知のことをいいます。
告知は、相手方に到達して認識されたことは必要ですが、現実に相手方が畏怖したことまでは必要ではありません。

また、告知した加害の対象は、相手方又はその親族の生命・身体・自由・名誉・財産に限られます。

告知する加害の内容・程度

将来の害悪であって、告知者がその害悪の実現をある程度支配・左右し得るものとして告知される必要があります。
したがって、害悪の内容は告知された者が、告知者がどのような害悪を告知したかを認識できる程度には具体的である必要があります。

また、告知された者に、害悪の実現可能性があると思わせる程度のものでなければなりません。
害悪の内容があまりにも抽象的である場合や、およそ実現しえないと思わせるような場合には、相手方を畏怖させるに足りるものとはいえないのです。

告知の方法

加害告知の方法には特に制限がありません。文書や口頭で告知する場合のほか、態度で示す場合でも構いません。
また、明示しなくとも、黙っていることで相手方に暗示することになる場合も含まれます。
第三者を介して伝達する場合でも構いません。

強要罪(刑法223条)

  1. 生命、身体、自由、名誉又は財産に対し害を加える旨を告知して人を脅迫し、又は暴行を用いて、人に義務のないことを行わせ、又は権利の行使を妨害した者は、3年以下の懲役に処する。
  2. 親族の生命、身体、自由、名誉又は財産に対して害を加える旨告知して脅迫し、人に義務のないことを行わせ、又は権利の行使を妨害した者も、前項と同様とする。

脅迫

他人を畏怖させて義務のないことを行わせたり、権利の行使を妨害したりすることができる程度のものでなければなりません。

ここでの脅迫は、脅迫罪におけるのと異なり、必ずしも人を畏怖させる程度のものである必要はありません。
強要罪は、結果として相手方に何らかの行為を無理やりに行わせることで成立する結果犯であるためです。ただ、さほどの相違はありません。

暴行

暴行とは、一般には不法な有形力の行使を意味しますが、ここでの暴行は、他人を畏怖させて義務のないことを行わせたり、権利の行使を妨害したりすることのできる程度のものである必要があります。
つまり、相手の自由な意思決定を妨げ、その行動の自由を制約する程度のものであることを要します。
ただし、実力で他人の自由を奪って、行動を強制した場合には、相手方の意思に基づく行為とはいえないため、義務のないことを行わせたとはいえません。

また、相手に向けられたものであれば、相手以外の者に対して加えられたものであっても、物に対して加えられたものであっても構いません。

義務のない行為の強制・権利行使の妨害

義務のない行為とは、脅迫や暴行により強制を受忍する義務のないことを、権利の行使とは、法律上許容されている行為を行うことを意味します。
これらを脅迫や暴行を手段として行った場合に本罪が成立します。

~脅迫事件・強要事件における弁護活動~

口論となった際、つい攻撃的になりすぎて、言い過ぎてしまった。

相手から、脅迫で訴えるといわれてしまった。

 ➡ そのような場合、ご心配であれば、ぜひ弁護士にご相談ください。

あなたの発言や行動が、脅迫罪や強要罪に当たるかどうか、事件化されるものであるかどうか、弁護士が具体的事実に基づいて見通しをご説明差し上げます。刑事事件において絶対はありませんが、弁護士から見通しなどの説明を受けることにより、安心が得られることもあります。

また、脅迫事件や強要事件で事件化されたり、逮捕されたりした場合は、早期に示談を成立させられるよう試みます。
脅迫罪や強要罪は、人の意思決定や意思活動の自由を保護するために設けられた犯罪です。
ですから、被害を受けた方から許しが得られれば、捜査機関や裁判所に対して、寛大な処分を求めるための大きな説得材料となります。
犯罪事実に間違いないという場合は、被害者に真摯に謝罪の意を伝え、許しを得ることが大切です。

兵庫県内の脅迫事件・強要事件の容疑で捜査機関に捜査され、又は逮捕された方は、すぐに弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所神戸支部の弁護士にご相談ください。

~どんな場合に犯罪が成立する?~

ケース1
兵庫県川西市、川西池田駅近くに在住のAさんは、仕事上のトラブルからBさんに電話したところ、激しい口論になり「おまえの女ぶち殺したるからな。」と怒鳴りつけました。

また別の日、Aさんは兵庫県加古川市にあるBさんの店に出向き、再びBさんと激しい口論をした後、今にも殴り掛かりそうな勢いで、「いい加減にせんと、ボコボコにすんぞ。土下座しろ。」と大声で怒鳴り散らし、Bさんに無理やり土下座をさせました。

このケースでは、お前の女を殺す旨の発言や、ボコボコにする・土下座しろなどと述べて土下座させたことが、脅迫罪や強要罪に当たるかが問題となります。
Aさんのしたこれらの発言は、いずれについても脅迫罪が成立するようにも思えます。

しかし、脅迫罪において危害を加える対象は、加害を告知する相手方自身とその親族に限られています。
ですから、「恋人を殺す」という発言をしたとしても脅迫罪は成立しないのです。

ですから、お前の女を殺すというAさんの発言については、脅迫罪は成立しません。

それに対して、後者の発言は、明らかに脅迫に当たるうえ、Bさんに義務のない土下座をさせていますから、Aさんに強要罪が成立するものといえます。

ケース2
兵庫県たつの市のある建設工事を受注した神戸市東灘区にあるX建設会社は、Y建設会社に下請けさせる予定にしていました。
しかし、Aさんは、その予定を覆して、知人が経営するB建設会社に下請けをさせようとして、X建設会社の担当者Zらを脅迫しようと企て、3回にわたりX建設会社に押し掛け、「なんで、地元の業者を使わんねん。地元の業者使わな工事でけへんようにしたるぞ。妨害が出てもしらんからな。」「Y社にだけ仕事回すいうんやったら、仕事ででけへんようになるぞ。わしは黙ってへんからな、毎日でもここに押し掛けたる。」「お前とこは、わしに恥かかした。いつでも相手になったるからな。そこんとこよう覚えとけ。」などと怒鳴りつけました。

このケースでのAさんの言動は、X社の担当者らやX社の営業になどに対して、如何なる危害を加えるかもしれない旨の気勢を示したものといえます。従って、Aさんの行為が脅迫行為に当たることは間違いないでしょう。

では、Aさんには、脅迫罪が成立するでしょうか。

ここで、脅迫罪は、人の意思活動の自由を保護するために規定されたもので、刑法上、逮捕監禁の罪および略取誘拐の罪に並び、その両者の間に規定されています。
これらからすると、脅迫罪は、自然人に対し、その生命、身体、名誉又は財産に危害を加えることを告知する場合に成立するものであって、法人に対し、危害を加える旨告知しても、それによって法人に対する脅迫罪が成立するものではないと考えられます。

ですから、Aさんの言動は、たしかにX建設会社の営業活動に対して危害を加えるような旨告知しているものですが、X建設会社に対する脅迫罪は成立しないと考えられます。

ただし、法人に対する加害の告知であっても、それが現実に告知を受けた法人の代表者や構成員自身の生命、身体、自由、名誉又は財産に対する加害の告知に当たると評価可能な場合には、その自然人に対する脅迫罪が成立すると考えられます。

今回のケースでも、Aさんの言動は、X社の担当者Zらに対して生命、身体、名誉又は財産に対して危害を加えるという告知に当たると判断され、Zらに対しての脅迫罪が成立する可能性があります。

 

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