往来危険事件で執行猶予判決

2020-02-16

往来危険事件における執行猶予判決獲得に向けての弁護活動について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所神戸支部が解説します。

~ケース~
酒に酔った勢いで、自転車を線路上に投げ入れたとして、大学生のAさんは、兵庫県加古川警察署往来危険および業務妨害の容疑で逮捕されました。
警察から、裁判になるだろうと言われているAさんは、どうなるのか不安で仕方ありません。
(フィクションです)

往来危険罪は重い罪

往来危険罪という罪について、あまり聞き覚えがないという方が多いのではないでしょうか。

往来危険罪は、刑法第125条に規定される罪です。

第百二十五条 鉄道若しくはその標識を損壊し、又はその他の方法により、汽車又は電車の往来の危険を生じさせた者は、二年以上の有期懲役に処する。
2 灯台若しくは浮標を損壊し、又はその他の方法により、艦船の往来の危険を生じさせた者も、前項と同様とする。

(1)客体
●「鉄道若しくはその標識」
「鉄道」とは、レールだけでなく、構造上これと密接不可分の関係にあって、汽車、電車の走行に直接役立っているものすべてをいいます。
例えば、枕木、鉄橋、トンネルなどです。
「標識」とは、信号機その他運行のための目標をいいます。
●「灯台若しくは浮標」
「灯台」は、夜間、艦船の航行の利便を図るために、灯火をもって示した陸上の標識です。
「浮標」というのは、艦船の航行上安全か否かや水の深さを標示する水上の目標、標示物のことです。

(2)行為
●鉄道、標識、灯台、浮標を「損壊」し、またはほかの方法によって、汽車、電車、艦船の往来の危険を生じさせる。
汽車・電車の往来の危険または艦船の往来の危険を生じさせる行為であって、その手段として、鉄道やその標識の損壊、灯台や浮標の損壊、或いは他の方法と定められています。
「損壊」とは、物理的に破壊して、その効用を失わせることをいいます。
「その他の方法」とは、損壊以外の方法で汽車、電車、艦船の往来の危険を生じさせることをいい、その手段や方法は問いません。
線路上に石などの障害物を置くことも「その他の方法」に該当しますので、自転車を線路に投げ込むことも「その他の方法」に当たるでしょう。

「往来の危険」とは、汽車・電車・艦船の衝突・脱線・転覆・沈没・破壊など交通の安全を害するおそれのある状態をいいます。
往来危険罪が成立するためには、交通の妨害を生じさせた程度では足りません。
交通機関の往来に危険な結果を生ずるおそれのある状態を発生させることが必要です。
しかしながら、実害発生のおそれについては、一般的可能性で足り、その必然性や蓋然性は必要ではないと解されます。

往来危険罪の法定刑は、2年以上の有期懲役で、罰金刑は設けられていません。
このような重い刑となっているのは、交通機関の運転に従事する者や利用者の生命・身体に対する危険を生じさせるためです。

執行猶予判決を獲得するために

往来危険罪には、罰金刑が設けられていませんので、略式手続をとることができません。
検察官に起訴された場合、正式な刑事裁判が開かれることになります。
裁判では、審理が終わると、裁判官が被告人に対して有罪もしくは無罪を言い渡します。
有罪となった場合であっても、必ずしも刑が執行されるわけではありません。
刑の執行を一定期間猶予し、猶予期間内に再び罪を犯すことがなければ、刑の言渡しは効力を失う制度を「執行猶予」といいます。
刑に執行猶予が付いていれば、有罪であることには変わりありませんが、直ちに刑務所へ送られることはありません。
一方、執行猶予が付いていない刑を「実刑」といい、例えば、裁判で懲役2年の実刑が言い渡された場合、その判決が確定すれば、直ちに刑務所で服役することになります。

往来危険事件の場合、被告人が初犯であり、3年以下の懲役の言渡しをするとき、「情状により」執行猶予付き判決が言い渡される可能性があります。
「情状」というのは、検察官が起訴するかどうかを決める際や、裁判官が有罪の場合の判決で、どの程度の量刑にするかを判断する際に考慮される事情のことをです。
情状には、犯罪行為自体に関する事情(犯情)と、それ以外の事情(一般情状)とがあります。
具体的に言うと、前者には、犯行態様、犯行動機、犯行の結果、共犯関係など、後者には、その人の年齢・性格、被害弁償の有無、反省の有無、被害感情、更生・再犯の可能性などです。
公訴事実に争いがない場合には、被告人にとって有利な事情を集め、裁判で説得的に主張することが弁護人に求められる重要な弁護活動となります。

上のケースであれば、犯情については、酒に酔って行った行為であり電車の運行に支障をきたしてやろうと思ってやった行為ではない点が考えられるでしょう。
また、一般情状に関しては、被告人が反省し事件以降断酒していること、家族による監督が期待できること、被告人が学生であること、鉄道会社への被害弁償が済んでいる(被害弁償できなかった場合でも、被害弁償金を供託している)といった点が挙げられるでしょう。

ケースによって情状弁護の内容も異なりますので、一度刑事事件に強い弁護士にご相談ください。

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