~裁判員制度とは~
裁判員制度は、一般の国民の中から選ばれた裁判員が裁判官とともに一定の重大な犯罪に関する裁判を行うという制度です。
この制度は、国民に裁判に加わってもらうことによって、国民の司法に対する理解を増進し、長期的にみて裁判の正統性に対する国民の信頼を高めることを目的とするものであり、従来の刑事裁判が基本的にきちんと機能しているという評価を前提として、新しい時代にふさわしく、国民にとってより身近な司法を実現するための手段として導入されたものです。
裁判員対象事件
裁判員制度の対象となる事件は、法定刑に死刑又は無期刑を含む事件、及び裁判官の合議体で審判すべきものと法律で決められている事件のうち故意の犯罪行為で人を死亡させた事件です。
基本的に、国民の関心の高い重大事犯が対象とされています。
具体的には、殺人罪、強盗致死傷罪、傷害致死罪、強制性交等致死傷罪、強制わいせつ致死傷罪、保護責任者遺棄致死罪、現住建造物等放火罪などが挙げられます。
ただし、裁判員に過度の負担を課すような事件については、対象事件から除外されることもあります。
合議体の構成
基本的には裁判官3人と裁判員6人の合議体で対象事件が取り扱われます。そして、裁判員が体調不良等により、欠けてしまう場合に備えて、必要であれば補充裁判員が置かれます。
なお、例外的に、問われる犯罪事実に争いがなく、当事者にも異議がない場合には、裁判官1人と裁判員4人の合議体で審理することができるとされています。
評議・評決
裁判員は、裁判官とともに、事実認定や法令の適用に加えて刑の量定を行います。
そして、その判断は、構成裁判官とともにする評議のなかで、評決をとって決められます。
もっとも、裁判員は、一般の国民ですから、評議では、裁判長が必要な説明を丁寧に行い、裁判員が職責を十分に果たせるように配慮するものとされています。
評決は、基本的に単純な多数決で行われますが、裁判員のみの多数では、被告人に不利な判断をすることができません。
たとえば、裁判官3人が無罪であると判断し、裁判員のうち1人が無罪で残りの5人が有罪の票を投じた場合、多数決では有罪となってしまいますが、このような場合に、有罪の判断を下すことはできないということです。
裁判員裁判と通常裁判(裁判官裁判)の違い
裁判員裁判では、一般の方が裁判員となって、公判手続きに関わります。
しかし、一般の方にとって、裁判はなじみが薄いものですから、裁判員にできる限り負担をかけないよう制度設計が工夫されています。
たとえば、裁判員対象事件では、必ず公判前整理手続きに付されることとなっています。
公判前整理手続きでは、事前に弁護人、検察官、裁判官の三者で、争点や証拠を整理し、公判で集中的な審理を行うための綿密な準備が行われます。
これによって、公判を連日開廷し、集中的に審理が行えるようになるとともに、裁判員に分かりやすい計画的で充実した審理を行うことができるのです。
公判前整理手続きでは、証拠の採否決定まで行うことができるため、この段階で裁判員の関与しない手続きに関する判断は、終わらせておくことができます。
また、従来、審理が長期化する一つの大きな要因となっていた鑑定についても、公判開始前に鑑定を実施する決定をして、その結果を予定された公判審理の中で報告させることができるようになっています。
裁判員裁判における弁護士の重要性
裁判員裁判では、一般の方が裁判員となって、事実の認定や刑の量定の判断をします。そのために、裁判員を十分に説得するため、通常の裁判よりも分かりやすく丁寧な説明を心掛ける必要があるといわれています。
そこで、裁判員裁判対象事件では、公判前整理手続きが必須とされています。
裁判員裁判では、連日の集中審理が行われますので、そのために入念な事前準備が必要となることは間違いありません。
弁護士は、公判前整理手続きの中で、積極的に証拠の開示を求めるとともに、弁護側からの主張を立て、何処が争点となるのかをしっかりと把握したうえで、公判での訴訟活動に向けた準備を行う必要があります。
裁判員裁判では、集中した審理を行うために、公判までに膨大な資料を精査し、何が有利な証拠となるのかを見極めたうえで、しっかりとした主張構造を整える必要があります。
裁判員裁判において、充実した弁護を行うためには、高い弁護技術だけでなく、高い機動力と体力が求められます。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所神戸支部では、刑事事件を専門に扱っており、数多くの刑事事件を経験しています。裁判員裁判についてもお力になれるはずです。
裁判員選任手続によって、被告人に対して個人的な恨みを持っている人・厳しい処罰感情を抱く人、犯罪行為について厳罰化の意向を持っている人などが裁判員に選任されると、被告人にとっては不利な裁判が行われる可能性が高くなります。
日本では憲法上被告人に公平な裁判を受ける権利が保障されているのですから、できる限り公平な裁判が行われるよう裁判員の選任にも厳しい目を向ける必要があります。
具体的には、弁護士が裁判員の選任手続に立ち会い、被告人に不利・不公平な裁判をするおそれのある裁判員候補者をチェックして、そのような者が裁判員に選ばれることがないよう阻止します。
~裁判員に選ばれた方へ~
1 裁判員の保護するための措置
- 裁判員の職務を行うために休暇を取得しても不利益な取り扱いをすることの禁止
- 裁判員・裁判員候補者などを特定する情報を公にすることの禁止
- 裁判中に当該事件について裁判員らと接触することの禁止
これ等のほか、裁判員法には、裁判員等を保護する様々な規定が設けられています。
2 裁判員に対する罰則
裁判員は、独立してその職務を行い、法令に従い公平性実にその職務を行わなければならず、このような職務を果たすよう、裁判員の一定の行為についても罰則が定められています。
- 裁判員として知りえた秘密などを漏らした場合
→6か月以下の懲役又は50万円以下の罰金(裁判員法108条) - 裁判員候補者が質問票に虚偽の記載をした場合
→50万円以下の罰金、30万円以下の過料(裁判員法110条、111条) - 裁判員候補者が裁判所の呼び出しに応じない・
公平な裁判をする旨の宣誓を拒んだ場合
→10万円以下の過料(裁判員法112条)