殺人罪と傷害致死罪①

殺人罪と傷害致死罪①

殺人罪傷害致死罪といった犯罪が成立する場合について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所神戸支部が解説します。

~ケース~
兵庫県川辺郡猪名川町にある介護付き有料老人ホームから、入居者Vさんの意識がないと119番の通報が施設職員から入りました。
通報を受けて駆け付けた救急車で、Vさんは病院に搬送されましたが、まもなく死亡が確認されました。
死因は、腹腔内の多発損傷による出血性ショックと診断され、兵庫県川西察署は、Vさんは何者かに暴行を受け殺されたのではないかと捜査に着手しました。
防犯カメラの映像から、事件直前にVさんの部屋に入る施設職員Aさんの姿が確認されたため、警察署はAさんを殺人容疑で逮捕しました。
(実際の事件を基にしたフィクションです)

犯罪が成立する場合

犯罪が成立するためには、
①構成要件該当性
②違法性
③有責性
の各要素を満たす必要がある、とするのが通説です。

構成要件該当性について

「構成要件」とは、刑罰法規に規定された違法かつ有責な処罰に値する行為の類型をいいます。
上で述べたように、犯罪が成立するための第一要件は、問題となる行為が構成要件に該当することです。
構成要件は、構成要件要素から成っており、個別の犯罪ごとに異なりますが、一般的には、次のような要素です。
①行為の主体
②行為
③結果
④行為と結果との間の因果関係
⑤故意・過失(これを構成要件要素とするか否かについては争いあり。)

以下、各構成要件要素についてみていきましょう。

1.行為の主体
法分上、犯罪行為の主体は「者」と表現されていますが、これは自然人を指し、法人はこれに含まれません。
法人を処罰の対象とする特別の罰則がある場合にのみ、法人は限定的・例外的に処罰されるにとどまります。

2.行為
「行為」のみが処罰の対象となります。
行為者が心の中で思っているだけであれば、それは処罰の対象にはなりません。
では、一体何が行為であるのか?が問題となりますが、この点、「意思に基づく身体の動静」を行為と理解するのが通説となっています。
「意思に基づく身体の『動静』」と解するので、身体の「動」である「作為」だけでなく、身体の「静」である不作為も「行為」に含まれます。
「不作為」というのは、「期待された行為を行わないこと」を意味します。
単に「何もしないこと」ではありません。

3.結果
刑法は、保護法益(生命・身体・自由・財産などの法的に保護に値する利益)を侵害する、または保護法益を侵害する脅威をもたらす(=保護法益侵害の危険をもたらすこと)行為を将来抑止し、法益を保護するために、保護法益の侵害行為や侵害の危険をもたらす行為を犯罪として規定し、処罰の対象としています。
よって、犯罪の成立には、法益侵害や法益侵害の危険を引き起こすことが必要となります。

4.行為と結果との因果関係
行為者は、その行為によって、構成要件的結果を引き起こすことが必要となるのですが、構成要件該当性を肯定するためには、その行為は、構成要件的結果を引き起こす現実的な危険性が認められる行為でなければなりません。
このような構成要件的結果への因果関係の起点となる行為を「実行行為」といいます。
構成要件的結果をもたらす現実的危険性を備えた実行行為と構成要件的結果との間に因果関係が認められなければなりません。
この因果関係をめぐっては、学生上さまざまな議論が展開されてきました。
実行行為(構成要件的行為)と構成要件的結果との間には、事実的なつながりとしての条件関係が必要となりますが、それをどのように判断するのかという点に争いがあるというわけです。
・条件説…「あれなければこれなし」という条件関係があれば、刑法上の因果関係を認める説。
・相当因果関係説…条件関係の存在を前提に、社会生活上の経験に照らしてその行為からのそ結果の生ずることが一般的であり相当である場合に刑法上の因果関係を認める説。
判例は、基本的には条件説にしたがっていると解されますが、相当因果関係説を採用したとも読めるような判例もあり、判例の態度は1つの学説で特徴づけることは難しいとされています。

5.故意・過失
「故意」とは、「罪を犯す意思」をいい、犯罪事実の認識・予見と換言されます。
一方、「過失」は、犯罪事実の認識・予見可能性と解され、実務においては「注意義務違反」であると解されます。
その注意義務には、結果予見義務と結果回避義務とが挙げられます。
本ブログのテーマでもある殺人罪傷害致死罪とを区別するポイントとして「故意」が問題となりますので、次回のブログで詳細にみていきたいと思います。

もし、あなたやあなたの家族が、殺人罪あるいは傷害致死罪で逮捕されお困りであれば、刑事事件専門の弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所に今すぐご相談ください。

keyboard_arrow_up

0120631881 無料相談予約はこちら LINE予約はこちら