大麻関係の刑罰
大麻については、世界的潮流として大麻解禁に向けての動きが徐々に活発化してきていますが、日本では従来から大麻取締法という法律によって規制がされてきました。
そして、令和5年(2023年)12月の法改正により、大麻取締法は大麻草の栽培の規制に関する法律という名称に変わりました。また、法改正により大麻は「麻薬」として位置付けられるようになり、その所持や譲渡は、麻薬及び向精神薬取締法による規制に移行しました。
法改正前の大麻取締法においては、大麻の栽培、輸入、輸出、所持、譲り受け、譲り渡しといった行為が処罰の対象でしたが、法改正後は、これらに加えて、新たに使用(麻薬及び向精神薬取締法においては「施用」という用語です。)も処罰されることになりました。
また、大麻取締法においては5年以下の懲役とされていた単純所持等が、法改正により7年以下の懲役とされるなど、厳罰化されました。
法改正後の各行為の法定刑は以下の通りです。
行為 | 自己使用等 営利目的でない |
営利目的 |
所持・譲り受け・譲渡し | 7年以下の懲役 | 1年以上10年以下の懲役もしくは情状により300万円以下の罰金又はその両方 |
輸入・輸出・製造 | 1年以上10年以下の懲役 | 1年以上の有期懲役もしくは情状により500万円以下の罰金又はその両方 |
施用(使用) | 7年以下の懲役 | 1年以上10年以下の懲役もしくは情状により300万円以下の罰金又はその両方 |
栽培 | 1年以上10年以下の懲役 | 1年以上の有期懲役もしくは情状により500万円以下の罰金又はその両方 |
大麻に関する犯罪は、未成年者など若者を中心に逮捕件数が非常に多くなっています。
また再犯者が多いことも特徴です。
最近の大麻事件の多くは、大麻の所持・栽培によって検挙されています。
大麻事件の場合、証拠隠滅などを防止するため逮捕・勾留されることが多く、刑事裁判になれば初犯の単純所持、施用(使用)などを除き、実刑判決を受ける可能性が高いです。
~大麻事件における弁護活動~
無罪の主張
大麻の所持や輸入等をした場合でも、行為当時に違法な薬物であることの認識がなかったのであれば、罪に問われることはありません。
ただ、違法性の認識については、これが規制薬物に当たるということまで必要とせず、これが違法な物かも知れないという程度の認識で足りるとされています。
ですから、違法薬物とは知らなかったという主張は、容易に通るものではありません。
しかし、確実に適法であるとの確信を持っていた場合には、犯罪が成立しませんし、十分に争う余地はあります。
弁護士は、違法薬物との認識がなかったということを、客観的な証拠や事実に照らして、具体的に主張していきます。
こうした主張が認められると、大麻所持などの犯罪が成立していないとして不起訴処分や無罪判決を勝ち取ることができます。
捜査段階で重大な違法行為があったことを主張する
たとえ事件を起こしても、それを証明するに足りる証拠がなければ有罪にはなりません。
その証拠は適法な捜査によって獲得されたものでなければなりません。
ですから、職務質問・所持品検査・取り調べなど、捜査の過程で看過しがたい重大な違法行為があれば、その旨を主張して、収集された証拠を排除します。
職務質問・所持品検査・捜索差押え・逮捕・取調べなど捜査機関が行う刑事捜査の過程で看過しがたい重大な違法行為があれば、その点を指摘し、違法な捜査に基づき収集した証拠を裁判で使用しないよう、主張・立証します。
情状(減刑)の主張
大麻事件において(認識を含め)事実に争いがない場合、違法行為の成立を争わずできる限り量刑を軽減するように弁護活動を行います。
具体的には、大麻への依存や常習性がないこと・再犯の防止策を講じていること・共犯事件の場合あくまで従属的な立場であったことなどを客観的証拠に基づいて主張します。
減刑や執行猶予付き判決を獲得するには、ご家族や周囲の方の協力を得ながら、薬物犯罪に2度と手を染めない具体的な対策の実施や環境づくりが重要です。
身柄解放活動
大麻事件の容疑で逮捕・勾留されてしまった場合、証拠隠滅や逃亡のおそれがないこと・証拠隠滅のおそれが少ないことなどを主張し、早期の釈放・保釈を目指します。