刑事事件と幇助犯
幇助犯について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所神戸支部が解説します。
~ケース~
大学生のAくん(20歳)は、友人のBくん(21歳)に「用事があるから車で送ってくれへん?」と頼まれました。
AくんとBくんは、中学校の同級生で、中学校卒業以降は、時々連絡をとって遊ぶ仲でした。
Aくんはレンタカーを借り、Bくんとその友人Cくんを乗せて指定された場所まで連れて行きました。
指定された場所に着くと、「ちょっとここで待っててくれる?戻ってきたらすぐに車出してな。」と言われたAくんは、そのまま車で待機していました。
慌てたようすで戻ってきたBくんとCくんは、「はよ車出して」と言い、Aくんは二人を乗せて車を発進させました。
後日、兵庫県美方警察署の警察官がAくん宅にやってきて、「BとCが行った侵入盗について話を聞かせてほしい」と言われ、そのまま署まで連れて行かれました。
Aくんの両親は、心配になり慌てて刑事事件に強い弁護士に接見を依頼しました。
(フィクションです)
幇助犯とは
幇助犯とは、「正犯をほう助した者」のことをいいます(刑法第62条)。
幇助犯は従犯とされ、その刑は正犯の刑を減軽したものが科されます(同法第63条)。
幇助犯が成立するためには、以下の2つの要件を満たすことが必要です。
①正犯を幇助すること
②被幇助者が犯罪を実行したこと
成立要件①正犯を幇助すること
幇助犯の成立要件の一つである「正犯を幇助する」とは、構成要件に該当する実行行為以外の方法によって、正犯の実行行為を容易にすることをいいます(最判昭24・10・1)。
幇助は、正犯の実行行為にとって必要不可欠なものであることは必要とはされません(大判昭4・2・19)
「正犯を幇助」したと言えるためには、「幇助行為」および「幇助の故意」が必要となります。
幇助行為
幇助の方法は、物理的方法であると、心理的方法であるとを問いません。
幇助行為は、犯罪の実行を容易にするものであればいいのです。
例えば、殺人を犯そうとする者に対して凶器を提供することであっても、その者を激励する行為であっても、その行為により犯罪の実行を容易にしたのであれば、幇助行為となるのです。
幇助の故意
幇助者に故意を認めるためには、まず、正犯に対する犯罪行為遂行の促進を認識・予見していなければなりません。
つまり、自分の行為によって正犯が犯罪を犯すことを容易にすることを認識・予見していなければならないのです。
しかし、これだけでは、包丁職人が、自ら製造する包丁は、使い方によっては人の命を奪う可能性があることを認識していながら、包丁を製造した場合、実際に何者かがその包丁を使って殺人を犯しても、この包丁職人が殺人罪の幇助に問われることになってしまいます。
ですので、先の要件に加えて、幇助の故意を認めるには、正犯による既遂構成要件該当事実惹起の認識・予見が必要となります。
例えば、知人が人を殺そうとしていることを認識しているうえで、その殺人を実現することを促進し得る凶器を当該知人に渡したのであれば、①その凶器を渡すことによって、殺人を容易にすること、並びに、②その凶器を用いて人を殺すだろうことも認識・予見していたと言えるので、幇助の故意があったと認められるでしょう。
それでは、上記ケースを検討してみましょう。
Aくんは、Bくんに頼まれ、BくんとCくんを事件現場まで車で送迎しました。
Aくんが車で送らずとも、BくんとCくんは他の手段を使って現場まで行くことはできたでしょうが、Aくんが運転手役を担ったことで、BくんとCくんは現場まで容易に行くことができ、犯行後すぐに逃亡することができたと言えるので、Aくんの行為はBくんCくんの実行行為を容易にしたと言えるでしょう。
しかし、Aくんが、二人が何をするか知らずに車で送り迎えをしたのであれば、幇助の故意が認められないことになります。
例えば、犯行前の車内で、BくんとCくんが侵入盗を行うことを匂わす会話をしており、Aくんもそれを聞いており、「BくんとCくんは侵入盗をするのかもしれない」と認識・予見していた場合には、故意が認められる可能性があります。
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