略式手続について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所神戸支部が解説します。
~ケース~
Aさんは、兵庫県宍粟市の交差点を右折する際、横断中の自転車に気付くのが遅れ、自転車と衝突し、運転手の女性に怪我を負わせてしまいました。
Aさんは、すぐに女性の様子を確認し、通報しました。
幸い女性の怪我は軽く、Aさんは、通報を受けて駆け付けた兵庫県宍粟警察署の警察官に逮捕されることもなく、取調べを受けた後、帰宅を許されました。
Aさんは、裁判になるのではないかと心配していますが、相談した弁護士から、略式手続がとられる可能性があることを聞きました。
(フィクションです)
略式手続とは
ある犯罪に関し、犯人の処罰について判断するための一連の手続を「刑事手続」といいます。
刑事手続は、捜査に始まり、公訴の提起を経て、第一審の公判手続、そして上訴審の手続と段階的に処理されていきます。
捜査段階では、すべての事件が検察官のもとに集まり、これらの事件を検察官が処理をすることになります。
検察官による処理は、終局処分と中間処分とに分けられます。
終局処分には、起訴処分、不起訴処分、そして家庭裁判所送致とがあります。
起訴処分、つまり公訴提起には、①公判請求、②即決裁判手続の申立て、③略式命令の請求、④交通事件即決裁判の請求、の4種類あります。
検察官の略式命令の請求により、簡易裁判所が、その管轄事件につき、公判手続を経ないで、主として検察官の提出した証拠を審査して、一定額以下の罰金又は科料を科す簡易裁判手続を「略式手続」といいます。
略式手続をとるためには、次の要件を満たす必要があります。
①簡易裁判所の管轄に属する事件であること。
簡易裁判所の管轄する事件についてのみ略式手続によることができます。
簡易裁判所は、罰金以下の刑に当たる罪、選択刑として罰金が定められている罪または刑法第186条、第252条もしくは第256条の罪に係る訴訟についての第1審の裁判権を有しています。
②公訴提起と同時の、書面による検察官の請求があること。
略式命令の請求は、公訴の提起と同時に書面でしなければなりません。
③検察官による説明、正式裁判を受ける権利の告知、略式手続に異議がない旨の書面による確認があること。
検察官は、略式命令の請求に際し、被疑者に対してあらかじめ、略式手続を理解させるために必要な事項を説明し、通常の規定に従い審判を受けることができる旨を告げた上、略式手続によることについて異議がないかどうかを確かめなければなりません。
被疑者は、略式手続によることについて異議がないときは、書面でその旨を明らかにしなければなりません。
④検察官による略式命令の請求と同時に書類・証拠が差し出されていること。
起訴状一本主義の適用はなく、必要な書類や証拠物も裁判所に差し出さなければなりません。
⑤略式手続によることの相当性
略式手続よることができるのは、略式命令をすることができるものであり、かつ、略式命令をすることが相当であるものです。
例えば、事案が複雑で、公判手続において慎重な審理をするのを相当と認めるときや、100万円以下の罰金又は科料以外の刑を科すべきものと認めたときなど、通常手続に移して審判しなければならない場合は、不相当とされます。
略式手続のメリットは、正式裁判に比べて身体拘束期間が短くなることや、刑罰が罰金で済むことが挙げられます。
一方、デメリットは、有罪判決を受けていることになるので、前科がつくこと、そして、略式起訴される場合、審理は書面だけで行われるので、法廷で自分の言い分を述べるということができないということです。
このように、略式手続にはメリットとデメリットがあります。
事件によっては、略式手続が最善の場合も、そうでない場合もあります。
過失運転致傷事件でも、被害者の怪我の程度が軽く、被害弁償等もきちんと行っているような場合には、略式手続がとられることがあります。
略式手続についてお悩みであれば、一度弁護士に相談されるのがよいでしょう。
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