少年の特殊詐欺事件について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所神戸支部が解説します。
~事例~
学生のAさん(18歳)は、高齢女性からキャッシュカードを窃取し、ATMで現金50万円を引き出したとして、兵庫県丹波警察署に窃盗容疑で逮捕されました。
Aさんは、ネット上の高額アルバイトの募集に応募し、指示役の指示通りに動いており、いわゆる受け子・出し子として特殊詐欺に関与していました。
警察は、余罪があるとみており、Aさんの親には、「Aさんはすぐには出れないと思います。」と身体拘束が長期化する見込みを伝えています。
Aさんの親は、Aさんがどのような処分を受けることになるのか、少年院に入ることになるのではと心配しています。
(フィクションです。)
少年と特殊詐欺事件
特殊詐欺がニュースなどで大きく取り沙汰されている昨今ですが、特殊詐欺に関与し警察に検挙される少年が後を絶ちません。
特殊詐欺の特徴としては、役割を分担して組織的に行われている点があげられます。
被害者に連絡をとる「かけ子」、被害者から現金やキャッシュカード等を取得する「受け子」、そして、取得したキャッシュカードを使用して現金をATMから出す「出し子」といったように役割が分担されています。
「受け子」や「出し子」は、警察に捕まる確率が高く、組織の人間は、外部の人間をそれらの役割に就かせる傾向にあります。
ネットを巧みに利用し、「高額バイト」や「簡単に稼げる仕事」などと甘い誘い文句を使って外部の人間を募り、特殊詐欺に関与させます。
このような誘いに安易に乗ってしまいがちなのが、心身共に発展段階にある少年です。
組織側から、「これは特殊詐欺だから。」と言われることはないため、応募した段階では犯罪に気が付かないことが多いようです。
ただ、指示に従うにつれて、「これは犯罪なのではないか?」と疑問を持つようになるのですが、指示通りに動くだけで数万円という高額な報酬が得られるため、また、最初に身分証明書などの提示が求められており、やめるとなれば組織側から何かされるのではないかと怖くなったりと、すぐに組織から脱退することは簡単ではないようです。
少年であっても、犯罪行為を行った場合には、少年法に従った手続に付されることになります。
少年であっても、捜査段階では基本的に刑事訴訟法が適用されることになるため、逮捕・勾留による身体拘束の可能性もあります。
特殊詐欺事件の場合には、組織犯罪であり共犯との接触を防ぐために、逮捕後に勾留される可能性は非常に高いでしょう。
成人であれば、勾留の決定とともに接見禁止となることがありますが、少年の場合には、接見禁止に付される場合でも保護者との面会等は認められます。
捜査機関の捜査が終了し、事件が家庭裁判所に送致された後には、観護措置がとられ引き続き少年の身柄が拘束されることになるでしょう。
このように特殊詐欺事件においては、少年であっても長期の身体拘束の可能性があります。
しかしながら、その間に少年が自身の犯した罪や自身が抱える問題と向き合い、原因や今後同じ過ちを繰り返さないよう再発防止策をしっかりと考えられるようにすることこそが最も重要なのです。
少年審判では、非行事実に加えて、要保護性が審理の対象となります。
「要保護性」というのは多義的に用いられますが、
①少年の性格や環境に照らして、将来再び飛行に陥る危険性があること。
②保護処分による矯正教育を施すことによって、再非行の危険性を除去できる可能性があること。
③保護処分による保護が最も有効かつ適切な処遇であること。
の3つの要素で構成されるものと考えられています。
特殊詐欺事件のように、成人であれば初犯でも実刑となる可能性が高い悪質なものであっても、その後に少年の要保護性が解消されたと判断されれば、少年院送致という重い処分ではなく保護観察といった社会内処遇となる可能性もあるのです。
少年事件は、成人の刑事事件とは異なる特徴を持つため、お子様が事件を起こして対応にお困りの方は、少年事件に精通する弁護士に相談されるのがよいでしょう。
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