Archive for the ‘性犯罪’ Category

盗撮事件で逮捕

2021-04-14

盗撮事件について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所神戸支部が解説します。

~事例~
兵庫県赤穂郡上郡町にあるホテルの大浴場の脱衣所で女性を盗撮したなどとして県外に住むAさんが逮捕されました。
調べに対してAさんは、「撮ったことは認めるが、交際相手から指示を受けてやった。私は盗撮した画像をどうにかするつもりはなかった。」と話しています。
(フィクションです。)

盗撮をした場合

盗撮は、多くの場合、各都道府県が制定する迷惑防止条例で禁止する行為に該当します。
兵庫県は、「公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等に関する条例」の第3条の2において、以下のように規定しています。

第3条の2 何人も、公共の場所又は公共の乗物において、次に掲げる行為をしてはならない。
(1) 人に対する、不安を覚えさせるような卑わいな言動
(2) 正当な理由がないのに、人の通常衣服で隠されている身体又は下着を撮影する目的で写真機、ビデオカメラその他これらに類する機器(以下「写真機等」という。)を設置する行為
2 何人も、集会所、事業所、タクシーその他の不特定又は多数の者が利用するような場所(公共の場所を除く。)又は乗物(公共の乗物を除く。)において、次に掲げる行為をしてはならない。
(1) 正当な理由がないのに、人の通常衣服で隠されている身体又は下着を写真機等を用いて撮影し、又は撮影する目的で写真機等を向ける行為
(2) 前項第2号に掲げる行為
3 何人も、正当な理由がないのに、浴場、更衣室、便所その他人が通常衣服の全部又は一部を着けない状態でいるような場所にいる人を写真機等を用いて撮影し、撮影する目的で写真機等を向け、又は撮影する目的で写真機等を設置してはならない。

◇1項◇
第2条の2第1項は、「公共の場所」又は「公共の乗物」において、①人に対する、不安を覚えさせるような卑わいな言動、或いは、②正当な理由がないのに、人の通常衣服で隠されている身体又は下着を撮影する目的で写真機等を設置する行為を禁止しています。

「公共の場所」とは、不特定かつ多数が自由に利用し、又は出入りすることができる場所のことをいいます。
道路、公園、広場など国や地方公共団体の所有地や施設のみならず、駅、桟橋、埠頭、デパート、飲食店、興行場も公共の場所に当たります。
「公共の乗物」とは、電車、バス、船舶、航空機その他不特定多数の者が利用するための乗物を指します。

①卑わいな言動については、一般人の性的道義観念に反し、他人に性的羞恥心、嫌悪を覚えさせ、又は不安を覚えさせるようないやらしくみだらな言語、動作をいうと解されています。(最決平20・11・10)
「不安を覚えさせるような卑わいな言動」と規定してあり、「盗撮」という文言は明記されていませんが、「盗撮」という行為が「不安を覚えさせるような卑わいな言動」に当たるため、公共の場所・公共の乗物において盗撮をした場合には、迷惑防止条例第3条の2第1項に該当し、迷惑防止条例違反の罪が成立することになります。

②正当な理由がないのに、人の通常衣服で隠されている身体又は下着を撮影する目的で写真機等を設置する行為は、実際に盗撮に成功していない場合であっても、盗撮目的でカメラを「設置」する行為が禁止対象となっているため、迷惑防止条例違反の罪が成立することになります。

◇2項◇
第2条の2第2項は、1項で規定されている「公共の場所・公共の乗物」を除いた「集会所、事業所、タクシーその他の不特定又は多数の者が利用するような場所」において、①人の通常衣服で隠されている身体又は下着を写真機等を用いて撮影し、又は撮影する目的で写真機等を向ける行為、及び、②盗撮目的で写真機等を設置する行為を禁止しています。

◇3項◇
第2条の2第3項は、「浴場、更衣室、便所その他人が通常衣服の全部又は一部を着けない状態でいるような場所にいる人を」盗撮する行為、盗撮目的で写真機等を向ける行為、又は盗撮目的で写真機等を設置する行為を禁止しています。

事例のようなホテルの大浴場の脱衣所での盗撮は、この3項違反となります。

しかしながら、被写体が18歳未満の者であった場合には、児童買春・児童ポルノ処罰法違反の罪が成立する可能性があります。
児童買春・児童ポルノ処罰法は、盗撮による児童ポルノ製造も処罰対象としており、ひそかに児童ポルノに係る児童の姿態を写真、電磁的記録に係る記録媒体その他の物に描写することにより、当該児童に係る児童ポルノを製造した者は、3年以下の懲役又は300万円以下の罰金に処するとしています。

いづれの罪の成立にも、「故意」がなければなりません。
「故意」とは、罪を犯す意思のことです。
盗撮を例にとれば、盗撮をしようと思って行為に及んだ場合に罪が成立するのであって、偶然様々な要素が相まって盗撮に当たるような行為をしてしまった(なかなかそんなことはないのですが…)場合には故意が認められず罪は成立しないことになります。
また、「盗撮をしてやる」と確信的な故意はなくとも、「盗撮してしまうかもしれないけど、ま、いいや。」といった犯罪の実現を可能なものと認識して認容している場合(これを未必の故意といいます。)にも故意は認められます。
この点、事例のように、「人に頼まれて盗撮した。自分のためではない。」といった主張をしたからといって、罪の成立が妨げられるわけではありません。
自分のためであろうが、人のためであろうが、大浴場の脱衣所で着替えている人の姿を撮影することの認識があれば、故意は認められます。

盗撮事件のように被害者がいる事件では、被害者への謝罪・被害弁償、そして示談締結の有無が最終的な処分に影響する可能性が高いです。
そのため、事件を穏便に解決するためには、早期に被害者と示談交渉を行うことが重要です。
盗撮事件を起こしてしまい、被害者への対応にお困りであれば、弁護士に相談・依頼されるのがよいでしょう。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、盗撮事件をはじめとした刑事事件・少年事件を専門とする法律事務所です。
無料法律相談初回接見サービスに関するご予約・お問い合わせは、フリーダイヤル0120-631-881で24時間受け付けております。
まずはお気軽にご連絡ください。

公然わいせつで現行犯逮捕

2021-04-11

公然わいせつ現行犯逮捕された場合について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所神戸支部が解説します。

~事例~
会社員のAさんは、兵庫県揖保郡太子町の路上に駐車していた車内で、わいせつな行為をしてたとして、目撃者からの通報を受けて駆け付けた兵庫県たつの警察署の警察官に事情を聴かれました。
その後、「また連絡します。」と警察官から言われたAさんは、今後どのような流れになるのか、いかに対応すべきか分からず、ネットで刑事事件専門弁護士を探し法律相談の予約を入れました。
(フィクションです。)

公然わいせつ罪

刑法第174条
公然とわいせつな行為をした者は、6月以下の懲役若しくは30万円以下の罰金又は拘留若しくは科料に処する。

公然わいせつ罪は、性秩序ないし善良な性風俗を保護法益とするものです。

公然わいせつ罪は、「公然とわいせつな行為」をする犯罪ですが、ここでいう「公然」とは、不特定又は多数の人が認識することのできる状態を意味します。
認識することが「できる」状態であることが求められるのであって、必ずしも公衆の面前である必要はなく、現実に不特定又は多数の人が認識したことまでも必要ではなく、不特定又は多数の人が認識する可能性があれば足ります。

「わいせつな行為」については、その行為者又はその他の者の性欲を刺激興奮又は満足させる動作であって、普通人の正常な性的羞恥心を害し善良な性的道義観念に反するものと理解されています。(東京高判昭27・12・18)
正常な羞恥心を害するか否か、善良な性的道義観念に反するか否かについては、その時代における社会の一般人を基準にして判断され、行為者自身や目撃者が現実に性的羞恥心を害されたか否かといった点で判断されるものではありません。

刑法の公然わいせつ罪に当たらない場合であっても、軽犯罪法に規定される身体露出の罪となる可能性があります。

軽犯罪法の身体露出の罪は、公衆の目に触れるような場所で公衆に嫌悪の情を催させるような仕方でしり、ももその他身体の一部をみだりに露出する犯罪です。
「公衆の目に触れるような場所」とは、公然わいせつ罪における「公然」とほぼ同じ意味であり、不特定又は多数の者が認識し得る状態をいいます。
「公衆に嫌悪の情を催させるような仕方」とは、一般通常人の風俗感情からして不快の念を与えるようなものをいいます。
そして、「しり、ももその他身体の一部をみだりに露出」するとは、例示されている尻、ももに代表されるような通常人が衣服などで隠している部分を正当な理由なく人目に触れる状態に置くことを指します。

公衆の面前で身体の一部を露出した場合、その行為が「嫌悪の情を催させるようなもの」であれば軽犯罪法違反となりますが、当該行為が「わいせつ」にあたれば公然わいせつ罪が成立することになります。

公然わいせつで現行犯逮捕された場合

公然わいせつで逮捕されるケースは、
①犯行時、又は犯行直後に警察官に逮捕される場合、
②犯行後、しばらくしてから逮捕される場合
となるでしょう。

①の場合を「現行犯逮捕」といい、目撃者からの通報を受けた駆け付けた警察官や付近を警ら中の警察官に犯行を目撃され、その場で逮捕される場合も少なくありません。
②は、目撃情報などから事件が発覚し、捜査の結果、犯人と思われる人物が特定され、裁判所に逮捕状発行を請求し、逮捕状を得た上で逮捕する「通常逮捕」と呼ばれる場合です。

①も②も、逮捕されてから48時間以内に、被疑者を釈放するか、検察官に証拠物等と一緒に送致するかを警察が決めます。
公然わいせつの場合、身元もはっきりしており、家族等の身元引受人がいる場合には、48時間以内に釈放されるケースが多いでしょう。

当然ながら、釈放されたからといって、それで事件が終わるわけではありません。
事件は引き続き捜査され、検察官に送致された後、検察官が最終的に起訴・不起訴の判断をします。

公然わいせつ事件を起こして捜査を受けておられるのであれば、今後の対応などを含めて弁護士に相談するのがよいでしょう。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件・少年事件専門の法律事務所です。
刑事事件を起こして対応にお困りの方は、一度弊所の弁護士にご相談ください。
無料法律相談初回接見サービスに関するご予約・お問い合わせは、フリーダイヤル0120-631-881で24時間受け付けております。
まずはお気軽にご連絡ください。

強制わいせつ事件で逮捕されたら

2021-01-27

強制わいせつ事件で逮捕された場合について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所神戸支部が解説します。

~事例~
兵庫県飾磨警察署は、強制わいせつの疑いで、兵庫県姫路市に住むAさんを逮捕しました。
逮捕容疑は、X年X月X日午後X時X分ごろ、姫路市内の路上で、歩いていた女子高生に後ろから近づき、胸や尻などを触ったということです。
Aさんは容疑を認めています。
逮捕の連絡を受けたAさんの妻は、今後どうなるのか不安で仕方ありません。
すぐに刑事事件に強い弁護士に相談することにしました。
(フィクションです)

強制わいせつ事件で逮捕されたら

強制わいせつ罪は、①13歳以上の者に対し、暴行又は脅迫を用いてわいせつな行為をし、或いは、②13市未満の者に対し、わいせつな行為をした場合に成立する犯罪です。
本罪の法定刑は、6月以上10年以下の懲役となっており、起訴され有罪となればこの範囲内で刑が言い渡されることになります。

ここでは、強制わいせつの容疑で逮捕された場合の流れについて説明していきます。

1)勾留

逮捕から48時間以内に、警察は被疑者の身柄を証拠や関係書類と共に検察庁に送ります。
これを「送致」と言い、検察庁に送致しない場合には、警察は被疑者を釈放します。
強制わいせつ事件では、警察の段階で釈放されることはあまりありません。
検察庁に送致された後、検察官は被疑者の身柄を受けてから24時間以内に、被疑者を釈放する、或いは裁判官に対して被疑者の勾留を請求します。
「勾留」というのは、逮捕に引き続き比較的長期間身柄を拘束するもので、検察官は、被疑者の取調べを行い、送られてきた証拠や関係書類を検討した結果、引き続き被疑者の身柄を拘束して捜査をする必要があると判断すれば、勾留請求を行います。
検察官からの請求を受けて、裁判官が勾留の判断を行います。
裁判官は、被疑者と面談し、送られてきた証拠等を検討し、当該被疑者を勾留すべきか否かを判断します。
勾留すべきではない場合には、検察官の請求を却下し、被疑者を釈放します。
他方、勾留の決定をした場合には、被疑者は、検察官が勾留請求をした日から原則10日間、延長が認められれば最大で20日間の身体拘束を余儀なくされます。
強制わいせつ事件では、電車内でのわいせつ行為のような痴漢類型であれば勾留されない可能性は高い一方、それ以外の類型であれば一般的に勾留される可能性は比較的に高いと言えるでしょう。
しかしながら、被害者と面識がない場合や行為態様が悪質ではない場合には、勾留とならないケースもあります。
ですので、強制わいせつ事件においても、早期に弁護士に相談し、身柄解放に向けて活動することは重要です。

2)起訴

起訴するか否か決めるのは、検察官です。
強制わいせつ罪は親告罪ではありませんが、起訴・不起訴の判断においては、被害者との示談が成立しているか否かといった点が重視されます。
そのため、示談が成立していれば起訴猶予となる可能性が高く、示談できていなければ公判請求となる可能性が高くなります。
つまり、不起訴を獲得するために捜査段階で最も重要な弁護活動のひとつに被害者との示談交渉が挙げられます。
もちろん、これは容疑を認めている場合のことですので、否認している場合には最後まで争い嫌疑不十分での不起訴や無罪獲得を目指した活動を行います。

3)裁判

公判請求された場合、保釈制度を利用し釈放される可能性はあります。
捜査段階で勾留されていた場合でも、起訴後であれば保釈が認められ釈放となるケースは多いので、起訴後すぐに保釈請求できるように準備しておく必要があります。
また、捜査段階で示談が成立しなかった場合でも、粘り強く交渉を続けることは重要です。
裁判までに示談が成立すれば、被告人に有利な事情として考慮してもらえ、言い渡される刑にも影響を及ぼすことになります。
示談が困難であっても、被害弁償、贖罪寄附、供託などの方法を試みることもあります。
一方、事実を争う場合には、被告人の主張が通るよう、被告人に有利な証拠を収集し、無罪獲得に向けた活動を行います。

強制わいせつ罪は、決して軽くはない犯罪です。
前科・前歴、行為態様、被害の程度、被害者との示談の有無などによっては、実刑が言い渡される可能性も十分あります。
容疑を認める場合でも、争う場合でも、早期に弁護士に相談することをお勧めします。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、強制わいせつ事件を含めた刑事事件・少年事件を専門に扱う法律事務所です。
無料法律相談初回接見サービスに関するご予約・お問い合わせは、フリーダイヤル0120-631-881で24時間受け付けております。

少年事件における被害者対応

2021-01-17

少年事件における被害者対応について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所神戸支部が解説します。

~事例~
兵庫県神戸市灘区の路上を歩いていた女性の背後からいきなり抱き着き胸を服の上から触って逃走するという事件が起きました。
兵庫県灘警察署は、市内に住むAくん(高校1年生)を強制わいせつの疑いで逮捕しました。
Aくんは容疑を認めているとのことですが、Aくんの両親は被害女性への対応をどのようにすべきか分からず困っています。
(フィクションです)

被害者対応について

窃盗・詐欺・傷害・盗撮・痴漢などといった犯罪には、犯罪によって被害を被った被害者が存在します。
民事上の責任として、加害者は、自身の行為によって身体的・精神的・財産的損害を被った被害者に対して、損害賠償責任を負う可能性があります。

それでは、刑事事件においては、被害者対応の如何が最終的な処分やその後にどのような影響を及ぼすのでしょうか。

被害者がいる事件では、被害弁償や示談が成立しているか否かといった点が最終的な処分に大きく影響します。
示談というのは、被害者との合意のことを意味しますが、通常は、加害者が被害者に対して慰謝料を含めた被害弁償を行う一方、被害者から許しを得、今回の事件は当事者間では解決したとする約束のことをいいます。
被害者のいる事件では、被害が金銭的に回復されたか否か、被害者が加害者に対してどのような感情を抱いているのか(厳しい処罰感情があるのか、処罰を求めていないのか)といった点が、処分を決めたり、宣告刑を決めるにあたって重要な意味を持ちます。
特に、被害者等の告訴権者からの告訴がなければ公訴を提起することができない「親告罪」に該当する罪を犯した場合には、被害者との示談が成立し、被害者からの許しを得ているのであれば、検察官は起訴することができませんので、不起訴処分で事件を終了させることになります。
親告罪ではない場合でも、被害者との示談が成立していることが考慮され、不起訴処分となるケースは多くなっています。
起訴後であっても、被害弁償や示談は量刑上重要な要素となりますので、捜査段階で示談が成立していない場合でも、公判期日までに示談が成立するよう示談交渉に動くことは重要です。

以上のように、容疑を認めている場合には、被害弁償や示談成立に向けて活動することは、最終的な処分への影響という点で重要です。

また、刑事事件の段階で被害者と示談を成立させることにより、別途民事訴訟を起こされる危険性を回避することができます。

少年事件における被害者対応

刑事事件における被害者対応、つまり被害弁償や示談は、最終的な結果に大きく影響するという意味で重要であると言えますが、少年事件においても同様のことが言えるのでしょうか。

少年審判では、非行事実と要保護性の2点について審理されます。
非行事実は、成人の刑事事件でいう公訴事実です。
要保護性は、一般的に次の3要素から構成されるものと理解されます。
①再非行性
少年の現在の性格、環境に照らして、将来再び非行をする危険性があること。
②矯正可能性
少年法上の保護処分による矯正教育によって再非行性を除去できること。
③保護相当性
少年法上の保護処分が更生のために有効適切であること。
少年審判では、非行事実と要保護性が審理されるので、例え非行内容が重いものであっても、要保護性が解消されていると判断されれば、保護観察処分などの社会内処遇が言い渡される可能性があります。
逆に言えば、比較的軽い罪に当たる非行内容であったとしても、要保護性が高いと判断されると、少年院送致などの重い処分となる可能性もあるということです。

このように、少年事件では、要保護性が最終的な処分に大きく影響します。
そして、この要保護性という観点からも、少年事件においても被害者対応が重要であると言えるのです。
少年事件では、被害者との示談成立が直接処分に影響することはありません。
つまり、成人の刑事事件のように、被害者と示談が成立していることをもって事件を終了させることはありません。
しかし、家庭裁判所は、少年が、被害者への被害弁償や示談を通して、被害者の気持ちを考え、自分の行った行為を振り返り、その反省を深めることができたかどうかを見ており、その意味で、被害者対応が要保護性の減少につながり、処分にあたっても考慮される事情となります。
つまり、少年事件では、被害弁償や示談成立の有無それだけが考慮されるのではなく、例え示談が最終的には成立していなくとも、その過程で少年が被害者の気持ちを理解しようとし、事件と向き合い内省を深めたか否かも最終的な処分を決める際に考慮されることになるのです。

このように、成人の刑事事件における被害者対応と少年事件における被害者対応とでは、幾分か異なるところがあるため、少年事件でお困りであれば少年事件に強い弁護士にご相談されるのがよいでしょう。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、少年事件を数多く扱う法律事務所です。
お子様が事件を起こし、被害者への対応にお困りであれば、一度弊所の弁護士にご相談ください。
無料法律相談初回接見サービスに関するご予約・お問い合わせは、フリーダイヤル0120-631-881で24時間受け付けております。

盗撮で逮捕されたら

2021-01-03

盗撮逮捕された場合について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所神戸支部が解説します。

~事例~
会社員のAさんは、駅構内の階段で、女性のスカート内にスマートフォンを差し入れ盗撮したところ、後ろにいた男性に、「盗撮しましたよね。」と言われ、腕を掴まれました。
Aさんは、最初は盗撮を否定していましたが、最終的には犯行を認めました。
その後、Aさんは、兵庫県芦屋警察署に迷惑防止条例違反の疑いで逮捕されました。
Aさんの帰りが遅いことを心配したAさんの母親は、警察署に連絡したところ、Aさんが盗撮逮捕されたことを知らされました。
Aさんの母親は、ショックを受けたと同時に、この後どのような流れでいかなる処分が言い渡されるのか不安で仕方ありません。
(フィクションです)

盗撮事件は、弊所の扱う刑事事件で最も多い事件のひとつです。
携帯電話やスマートフォンにカメラ機能が付いていることが通常であり、駅のエスカレーターや階段などといった場所で、自分のスマホを用いて、衝動的に盗撮を行うケースから、靴やカバン、さらにはペンなどといった物に小型カメラを仕込んで女性のスカート内を盗撮する計画的な盗撮のケースまで様々です。
メディアなどから得た誤った情報を基に、「盗撮は簡単にできる」、「身体に触れるわけじゃないから、相手もそんな嫌な気持ちにはならないだろう」、「ばれなければ大丈夫」などといった歪んだ認識を持ち、犯行に及ぶ傾向が見られます。
しかしながら、盗撮は犯罪です。
犯罪に軽いも重いもありません。

盗撮で逮捕された場合の流れ

盗撮逮捕される場合には、2つのケースがあります。
1つは、盗撮を行った際に、被害者や目撃者に身柄が拘束されてしまう場合です。
いわゆる「現行犯逮捕」です。
盗撮事件で逮捕されるケースの多くが、現行犯逮捕となっています。
見つからないと思っていても、不自然な行動は周囲に目立ちやすく、その場で犯行が発覚することが多いのです。
このように犯行現場で逮捕された場合、その後に警察に引き渡されることになります。

もう1つは、盗撮時には誰にも犯行がばれなかった場合や犯行が発覚したものの逃亡に成功した場合であっても、被害者が被害届を提出したり、目撃者が警察に通報するなどし、盗撮が警察に発覚すれば、警察は盗撮事件として捜査を開始します。
被害者や目撃者からの供述や周囲の防犯カメラの映像などから、犯人を特定します。
このように、捜査によって犯人が発覚した場合、かつ、被疑者の身柄を確保する必要があると判断されれば、警察は逮捕状を持って被疑者を逮捕します。
このような逮捕を「通常逮捕」といいます。
通常逮捕の場合、早朝に被疑者の自宅を訪れて逮捕したり、警察へ呼び出した後に逮捕するなどして逮捕が執行されることが多いようです。

どちらのケースであっても、盗撮逮捕されると、通常の刑事事件と同様に、逮捕後、まずは警察署で取り調べを受けます。
警察は、犯人をさらに拘束して取り調べる必要があると判断すれば、逮捕から48時間以内に、証拠や関係書類と共に被疑者を検察に送ります。
これを「送致」と呼びます。
盗撮事件では、初犯であり、容疑を認めており、家族などの身元引受人がいる場合には、検察に送致されずに、48時間以内に釈放となることも少なくありません。
しかしながら、職場や学校などでの盗撮事件のように、被害者との接触可能性がある場合や、余罪が疑われていたり、盗撮の常習者である場合には、検察に送致されることになるでしょう。

検察に送致されると、今度は検察官による取り調べを受けます。
検察官は、被疑者の身柄を受けてから24時間以内に、被疑者を釈放するか、裁判官に勾留の請求をするかを決めます。
被疑者をさらに拘束して捜査をする必要があると判断すれば、検察官は裁判官に勾留の請求を行います。
検察官からの請求を受けた裁判官は、被疑者と面談を行った上で、送られてきた事件資料に目を通し、当該被疑者を勾留すべきか否かを判断します。
裁判官が勾留を決定すると、被疑者は検察官が勾留請求を行った日から原則10日間の身体拘束を受けることになります。
他方、裁判官が勾留請求を却下すると、検察官が却下決定に対して不服申し立てを行わない限り、当該被疑者は即日釈放されることになります。

事件について起訴する起訴しないの判断を行うのは、検察官です。
捜査を遂げた結果、被疑者が犯罪を犯したことが証拠上明白であり、その訴追が必要であると判断する場合に、検察官は裁判所に起訴状を提出して起訴します。
逆に言えば、そのような場合でなければ、検察官は起訴しない、つまり不起訴で事件を終了させることになります。
勾留されている場合には、検察官は、勾留期間内に起訴不起訴の判断を行います。
既に釈放されていれば、比較的ゆっくりと捜査が進み、検察官の終局処分判断までにも時間を要します。

検察官による起訴の種類も1つではなく、盗撮の場合には、略式起訴による略式手続に付されることも多いです。
略式手続は、簡略化された手続であり、検察官による簡易裁判所への略式命令の請求により、法廷での審理を行わず、検察官が提出した証拠のみに基づき、簡易裁判所が罰金・科料を科す略式命令を言い渡すものです。
勾留されているケースでは、勾留期間満期日に、検察官に略式手続についての説明を受け、被疑者の了解を得たうえで、即日略式起訴され、罰金を納めて釈放となります。

盗撮などの同種前科があったり、犯行態様が悪質であるなど、略式手続に付するのが相当ではないと判断されれば、検察官は公判請求を行います。
この場合、公開の法廷で審理されることになります。
起訴されると、被疑者段階での勾留が被告人勾留に切り替わり、原則2か月の勾留となります。
起訴後は、保釈制度が利用できるため、捜査段階では身体拘束を解くことが困難であった場合には、起訴後すぐに保釈を請求し、釈放されるよう準備しておく必要があるでしょう。

盗撮逮捕された後の流れは、以上のようになります。
ただ、盗撮の内容や前科の有無、被害者との示談成立の有無などにより、釈放の可能性や最終的な処分結果も異なります。
ご家族が盗撮逮捕されたのであれば、早期釈放やできる限り穏便に事件を解決するために、早期に弁護士に相談されるのがよいでしょう。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、盗撮を含めた刑事事件・少年事件を専門に扱う法律事務所です。
無料法律相談初回接見サービスに関するご予約・お問い合わせは、フリーダイヤル0120-631-881で24時間受け付けております。

強盗・強制性交等罪で逮捕

2020-11-01

強盗・強制性交等罪について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所神戸支部が解説します。

~事例~
Aは、兵庫県高砂市にあるアパートの一室に侵入し、その場にいたVに対し、包丁を突きつけ、「静かにしろ。」などと脅迫し、抵抗できなくなったVに馬乗りになり性交しました。
さらに、Aは、Vが抵抗できなくなっている状態にあることから、「金を出せ。」などと脅迫し、Vから現金2万円を奪って逃亡しました。
翌年、兵庫県高砂警察署の警察官がA宅を訪れ、住居侵入、強盗・強制性交等の容疑でAを逮捕しました。
逮捕の連絡を受けたAの家族は、罪名を告げられ、ショックを受けています。
しかし事件の詳細や今後の流れについて分からず不安になったAの家族は、刑事事件専門の弁護士に相談することにしました。
(フィクションです)

強盗・強制性交等罪とは

平成29年の刑法改正以前は、強盗犯人が強姦行為をした場合、強盗強姦罪が成立し、その法定刑は無期懲役または7年以上の有期懲役とされていました。
一方、強姦犯人が強盗行為をした場合、強姦罪と強盗罪の併合罪となり、その法定刑は5年以上30年以下の有期懲役とされており、強盗行為と強姦行為のどちらが先行したかによって刑に差が生じていました。

しかし、平成29年の刑法改正において、同一の機会に、強盗強制性交等罪の行為が行われた場合につき、その行為の先後関係を問わず、強盗・強制性交等が成立し、その法定刑は無期懲役または7年以上の有期懲役とされました。

刑法第241条 
強盗の罪若しくはその未遂罪を犯した者が強制性交等の罪(第179条第2項の罪を除く。以下この項において同じ。)若しくはその未遂罪をも犯したとき、又は強制性交等の罪若しくはその未遂罪を犯した者が強盗の罪若しくはその未遂罪をも犯したときは、無期又は7年以上の懲役に処する。

◇主体◇

強盗・強制性交等罪の犯行の主体は、
強盗の罪もしくはその未遂罪を犯した者、
強制性交等の罪もしくはその未遂罪を犯した者
です。
①には、強盗罪の他、事後強盗罪、昏睡強盗罪を含みます。
②には、強制性交等罪の他、準強制性交等罪も含みます。

◇行為◇

強盗・強制性交等罪の実行行為は、
強盗の罪もしくはその未遂罪を犯した者の場合は、①強制性交等の罪もしくはその未遂罪を犯すこと、
強制性交等の罪もしくはその未遂罪を犯した者の場合は、②強盗の罪もしくはその未遂罪を犯したこと、
です。
強盗の罪(未遂を含む。)と強制性交等の罪(未遂を含む。)は、同一の機会に行われていることが必要です。

◇故意◇

強盗・強制性交等罪の成立には、強盗の罪(未遂を含む。)および強制性交等の罪(未遂を含む。)の認識・認容が必要となります。

強盗・強制性交等罪で逮捕されたら

強盗・強制性交等罪で逮捕された場合、非常に重い罪であるため、逮捕後に勾留される可能性は高いと言えるでしょう。

事件について身に覚えがない場合、弁護士を通して冤罪を証明する証拠を収集し、捜査機関の主張が十分な証拠に裏付けられていないことを指摘し、冤罪を主張する必要があります。
また、虚偽の自白がとられることのないよう、弁護士から取調べ対応について的確なアドバイスを受けることも大切です。

他方、容疑を認める場合には、被害者に対して真摯に謝罪し、被害弁償を行うことが重要です。

強盗・強制性交等罪は親告罪ではないため、被害者等の告訴がない場合でも、公訴の提起が可能です。
被害者への被害弁償が済んでいることにより必ずしも起訴されないというわけではありませんが、きちんと被害者に謝罪や被害弁償をしていることが裁判で被告人に有利な事情として考慮されることはありますので、被害者への対応は重要です。

また、強盗・強制性交等事件は、裁判員裁判の対象事件となりますので、裁判員裁判にも豊富な経験を持つ弁護士に弁護を任せるのがよいでしょう。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件・少年事件専門の法律事務所です。
ご家族が強盗・強制性交等罪で逮捕されてお困りの方は、弊所の弁護士に今すぐご相談ください。
無料法律相談初回接見サービスに関するご予約・お問い合わせは、フリーダイヤル0120-631-881で24時間受け付けております。

多目的トイレへの盗撮目的侵入

2020-10-25

多目的トイレへの盗撮目的侵入を行った場合について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所神戸支部が解説します。

~事例~
兵庫県福崎郡市川町に住むAさんは,かねてより女性がトイレをしているところに興味があったことから,
商業施設の多目的トイレ盗撮用のカメラを仕掛けることにしました。
ある日Aさんは,自宅近くにある商業施設に赴き,多目的トイレの中に入って,盗撮用のカメラを設置しました。
しかし,その後にトイレを使用したBさんに,カメラがあることを見抜かれてしまい,兵庫県福崎警察署の捜査もあって,Aさんは逮捕されしまいました。
(フィクションです)

Aさんの行為について,トイレにカメラを設置すること自体は各都道府県の迷惑防止条例によって処罰される場合がありますが,そもそもトイレに入った行為に何らかの犯罪が成立するのでしょうか。

1 多目的トイレについて

商業施設等にある多目的トイレは,男女両方とも使用できるようになっていることが多く,入り口も男女のトイレとは別のところにあるところも多いです。
また,トイレの前にわざわざ係員などが立っているといったこともなく,営業時間内であれば,誰でも自由に立ち入れる様になっています。

2 建造物侵入罪について

人の住居ではない,商業施設等の建造物に侵入する行為は,建造物侵入罪で処罰されます。
建造物侵入罪は,①正当な理由なく②人の看守する建造物に侵入した場合に成立します。
ただ,「正当な理由なく」という要件には,特別な意味はないと考えられており,実際には
①その建物の管理者等の同意がないのに②人の看守する建造物に侵入した場合に罪が成立すると考えられています。

3 管理者の同意の有無

まず,管理者の同意の有無について考えます。
1つ目の問題として,トイレの前には管理者(商業施設の職員)が立っているわけではないのに,同意の有無をどのように考えるかという問題があります。
これは,もしそこに立っていたらどうなるか,ということを基準に考えることになります。
2つ目の問題は,いちいち立入りの理由を告げることはないが,そこをどのように考えるか,という問題です。
たとえば男性が女子トイレに入る行為などは,立ち入る理由が考えづらく,立ち入ることに管理者が同意するとは考えられません。
しかし,盗撮目的多目的トイレに入る行為は,外から見ているだけでは,本当にトイレを使う目的なのか,そうでないのかがはっきりしません。このような場合に,正当な理由の有無はどのようにして判断するのでしょうか。
これについても,もし本当の目的を知ったら,管理者が同意するのか,という観点から判断することになります。

多目的トイレの中に盗撮用のカメラを仕掛けるということを知っていたら,当然管理者はトイレへの立入りを同意するはずありませんから,管理者の同意はないものと考えられます。

4 人の看守する建造物

「看守」とは,現にそこに人がいて見ているという意味ではなく,その部分を事実上管理・支配していることを言います。
多目的トイレの場合にも,現に警備員や職員が見張っているわけではありませんが,入り口の前の通路には防犯カメラが設置されていたり,
使用を禁止する場合のための鍵などが設置されていることが通常ですから,この部分も人の看守する建造物ということになります。
なお,建造物は,建物全体を念頭に考えても構いませんし,トイレのような一区画を念頭に考えても構いません。
今回のような事例の場合には,そもそも商業施設に立ち入ることさえ,管理者は同意しないでしょうから,商業施設の入り口を入った段階で建造物侵入を認めることもできると思われます。

このように、盗撮目的での多目的トイレへの侵入行為は、建造物侵入罪に該当する可能性があります。

ご家族が盗撮目的での多目的トイレへの侵入で逮捕されてお困りであれば、今すぐ刑事事件・少年事件専門の弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。
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少年事件における弁護士の役割

2020-10-04

少年事件における弁護士の役割について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所神戸支部が解説します。

~事例~
兵庫県伊丹市の駅構内で、女子高生のスカート内をスマートフォンで盗撮したとして、兵庫県内に住む大学生のAさん(18歳)が迷惑防止条例違反の疑いで逮捕されました。
逮捕後、釈放されたAさんは、今後どのような手続きを踏み、如何なる処分が言い渡されるのか不安で仕方ありません。
Aさんは、Aさんの父親と共に、少年事件専門弁護士に相談することにしました。
(フィクションです)

少年事件の特色

20歳未満の者(以下、「少年」といいます。)が、罪を犯した場合、あるいは、刑罰法令に触れる行為を行ったり、将来おいてそのおそれがある場合、主に少年法に基づいた手続に付されることになります。

◇少年法の目的◇

少年法は、少年の健全な育成という観点から、非行のある少年に対して性格の矯正及び環境の調整に関する保護処分を行うことを目的としています。
つまり、少年法の目的は、少年の健全育成にあります。
それは、少年法が、少年が行った過去の犯罪に対する応報として少年を処罰するものではなく、将来二度と犯罪ないし非行を行わないよう、その少年の改善教育することを目的とするものだということを意味しています。

◇全件送致主義◇

少年事件では、犯罪の嫌疑があるすべての事件を家庭裁判所に送致することになっています。
これを「全件送致主義」といいます。
少年事件においては、成人の刑事事件における起訴猶予に相当する処分はありません。
また、犯罪の嫌疑がない場合であっても、その性格又は環境に照らして、将来、罪を犯し、又は刑罰法令に触れる行為をするおそれがある場合には、ぐ犯事件として家庭裁判所に送致されることがあります。

少年事件における弁護士の役割

少年は、成人と比べて、法的知識はもとより社会的知識が不足しており、表現力にも乏しいため、捜査機関などからの説明を誤解したり、自分の気持ちを上手く言葉にすることができない場合があります。
そのため、捜査官の誘導に乗ってしまい自己に不利な供述がとられてしまうことがあります。
そのようなことがないよう、弁護士は、少年の話をじっくりと聞いた上で、少年に対して少年が持つ権利を丁寧に説明し、取調べにおける対応方法についてアドバイスを行います。
少年が大人に対して不信感を持っていることも少なくないため、少年の話に耳を傾け、少年の気持ちを理解するよう努めることが弁護士に求められます。

また、少年事件では、逮捕・勾留・観護措置といった身体拘束の結果、退学や解雇となる可能性があり、少年の更生を大きく妨げてしまうことがあります。
そのため、弁護士は、事案に応じて、勾留や観護措置を回避するための活動を積極的に行います。

少年事件における弁護士の役割の中でも重要なものに、環境調整があります。
少年を取り巻く環境を調整し、要保護性を減少させる弁護士の活動を「環境調整活動」といいます。
環境調整活動には、主に、少年自身に対するもの、保護者・学校・友人に対するものがあります。
少年自身に対しては、内省を促し、事件や少年自身が抱える問題と向き合い、事件の原因及び結果や被害者の心情・状況について考える機会を提供し、少年の内省を深めるよう支援します。
事件の背景には、少年の家庭環境や人間関係にあることが多く、保護者や学校、職場、友人等との関係を改善し、少年が更生に向けて進んでいけるよう周囲と協力し環境を調整します。
身柄の少年事件の場合、家庭裁判所に送致されてから3~4週間ほどで審判が開かれるのが通常となっており、捜査段階から審判を見据えて、早期に環境調整活動に着手する必要があります。

このように、少年事件において弁護士が果たす役割は大きく、最終的な処分にも影響を与え得ると言えるでしょう。

お子様が事件を起こし、対応にお困りであれば、少年事件を専門に扱う弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。
無料法律相談初回接見サービスに関するご予約・お問い合わせは、フリーダイヤル0120-631-881で24時間受け付けております。

18歳未満との性交等:児童福祉法違反

2020-08-09

18歳未満との性交等を行い刑事事件(児童福祉法違反)となる場合について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所神戸支部が解説します。

~ケース~
兵庫県豊岡南警察署は、県外に住むスポーツクラブ講師Aさんを児童福祉法違反の疑いで逮捕しました。
18歳未満であることを知りながら、Aさんが指導するスポーツクラブに通う15歳の少女と性交をした疑いです。
Aさんは、「少女が18歳未満であることは分かっていたが、無理やりしたわけではなく、お互い同意の下でやった。」と話しています。
Aさんは、会社に事件のことが知られるとクビになるのではないかと心配しています。
(フィクションです)

18歳未満の者と性交等をした場合

18歳未満の者と性交や成功類似行為(以下、「性交等」といいます。)を行った場合、犯罪が成立し、刑事事件として手続に付される可能性があります。
前回は、淫行条例違反が成立する場合について説明しましたが、今回は「児童福祉法違反(淫行をさせる行為)」について解説します。

2.児童福祉法違反(児童に淫行をさせる罪)

児童福祉法第34条1項6号は、「児童に淫行をさせる行為」を禁止しており、違反者に対しては罰則(10年以下の懲役若しくは300万円以下の罰金、又はその両方)が科される可能性があります。

判例によれば、ここでいう「淫行」とは、「児童の心身の健全な育成を阻害するおそれがあると認められる性交又はこれに準ずる性交類似行為」をいうのであり、「児童を単に自己の性的欲望を満足させるための対象として扱っているとしか認められないような者を相手とする性交又はこれに準ずる性交類似行為」は「淫行」に含まれます。(最高裁、平成28年6月21日決定)

また、淫行を「させる行為」については、「直接たると間接たるとを問わず児童に対して事実上の影響力を及ぼして児童が淫行をなすことを助長し促進する行為」をいうと解されます。
「させる行為」に当たるか否かは、「行為者と児童の関係、助長・促進行為の内容及び児童の意思決定に対する影響の程度、淫行の内容及び淫行に至る動機・経緯、児童の年齢、その他当該児童の置かれていた具体的状況を総合考慮して判断」されます。

また、「させる」とありますが、児童と第三者が淫行をすることを助長・促進する行為だけでなく、自身が行為者となり児童と淫行をする場合も、それが事実上の影響力を及ぼして児童が淫行をすることを助長・促進したのであれば「させる行為」に当たります。

上の判例では、児童と被告人は同じ学校の生徒と教師という関係であり、「各性交は、児童を単に自己の性的欲望を満足させるための対象として扱っているとしか認められないような者を相手とする性交であり、同児童が通う高等学校の常勤講師である被告人は、校内の場所を利用するなどして同児童との性的接触を開始し、ほどなく同児童と共にホテルに入出して性交に及んでいる」ことから、「このような事実関係の下では、被告人は、単に同児童の淫行の相手方となったにとどまらず、同児童に対して事実上の影響力を及ぼして同児童が淫行をなすことを助長し促進する行為をしたと認め」ています。

淫行相手に児童に淫行をさせる罪を認めたケースでは、行為者と児童とが、親子関係またはこれに準ずる関係性にあったことや、教師と生徒との関係またはそれに準ずる関係性にあり、当該関係性の下で児童に心理的に作用し、児童に影響力を及ぼす状況があったことが認められています。

被害者が存在する刑事事件における重要な弁護活動の一つは、被害者との示談交渉です。
被害者との示談が成立しているか否かは、被疑者・被告人の最終的な処分の結果にも大きく影響します。
児童福祉法違反事件においても、被害者との示談の有無は重要です。
上の事例のように、被疑者と被害者との関係性が指導者と生徒である場合、示談交渉の実際の交渉相手は被害児童の保護者となります。
通常、被害者の保護者との示談交渉は、通常の示談交渉よりも、処罰感情が激しく、交渉も困難だと言われています。
そのため、加害者が直接被害者と交渉することはあまり得策とは言えません。
刑事事件に精通する弁護士を介して示談交渉を進めるのがよいでしょう。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件・少年事件を専門とする法律事務所です。
児童福祉法違反事件で被疑者となり対応にお困りであれば、今すぐ弊所の弁護士にご相談ください。
無料法律相談初回接見サービスのご予約・お問い合わせは、専門ダイアル(フリーダイヤル:0120-631-881)で24時間受付ております。

18歳未満との性交等:淫行条例違反

2020-08-02

18歳未満との性交等を行い刑事事件(淫行条例違反)となる場合について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所神戸支部が解説します。

~ケース~
兵庫県三田警察署は、県外に住むAさんを兵庫県青少年愛護条例違反の疑いで逮捕しました。
18歳未満であることを知りながら、無料通信アプリで知り合った15歳の少女と性交をした疑いです。
Aさんは、「少女が18歳未満であることは分かっていたが、無理やりしたわけではなく、お互い同意の下でやった。」と話しています。
Aさんは、会社に事件のことが知られるとクビになるのではないかと心配しています。
(フィクションです)

18歳未満の者と性交等をした場合

18歳未満の者と性交や性交類似行為(以下、「性交等」といいます。)を行った場合、犯罪が成立し、刑事事件として手続に付される可能性があります。
該当し得る罪としては、以下のようなものがあります。

1.淫行条例違反

各都道府県は、青少年(18歳未満の者)の保護育成とその環境整備を目的にした条例を制定しています。
兵庫県は、「青少年愛護条例」を制定しており、その第21条は、青少年とのみだらな性行為等を禁止しており、違反者に対する罰則を設けています。

第21条 何人も、青少年に対し、みだらな性行為又はわいせつな行為をしてはならない。
2 何人も、青少年に対し、前項の行為を教え、又は見せてはならない。

本条例における「みだらな性行為(=「淫行」)」の意義については、福岡県の青少年保護育成条例についてではありますが、最高裁判所の判例で、以下のように解されています。

『「淫行」とは、広く青少年に対する性行為一般をいうものと解すべきでなく、青少年を誘惑し、威迫し、欺罔し又は困惑させる等その心身の未成熟に乗じた不当な手段により行う性交又は性交類似行為のほか、青少年を単に自己の性的欲望を満足させるための対象として扱つているとしか認められないような性交又は性交類似行為をいうものと解するのが相当である。けだし、右の「淫行」を広く青少年に対する性行為一般を指すものと解するときは、「淫らな」性行為を指す「淫行」の用語自体の意義に添わないばかりでなく、例えば婚約中の青少年又はこれに準ずる真摯な交際関係にある青少年との間で行われる性行為等、社会通念上およそ処罰の対象として考え難いものを含むこととなつて、その解釈は広きに失することが明らかであり、また、前記「淫行」を目にして単に反倫理的あるいは不純な性行為と解するのでは、犯罪の構成要件として不明確であるとの批判を免れないのであつて、前記の規定の文理から合理的に導き出され得る解釈の範囲内で、前叙のように限定して解するのを相当とする。』(最高裁大判昭60年10月23日)

結婚を前提としたような真剣交際の関係にあった場合には、淫行には当たらず、本条例違反を構成することはありません。

上の事例のように、ネットで知り合った青少年に対して、知り合ってから短期間で性交等に及んだ場合は、真剣な交際にあったとは認められ難いでしょう。
Aさんは、少女が18歳未満であったことは認識していたようですが、「お互いに同意の上での行為」だと主張しています。
しかし、この場合、相手が性交等に同意していたか否かは問題ではなく、相手の青少年を「誘惑し、威迫し、欺罔し又は困惑させる等その心身の未成熟に乗じた不当な手段により行う性交又は性交類似行為のほか、青少年を単に自己の性的欲望を満足させるための対象として扱つているとしか認められないような性交又は性交類似行為」をしたか否かが問われているので、Aさんが相手の少女と性交に至る経緯や関係性などを考慮すると、Aさんの行為は「淫行」に当たるり、Aさんが相手を18歳未満だと認識していたのであれば、淫行条例違反が成立することになります。

もし、Aさんが相手を18歳以上だと誤信していた場合には条例違反が成立するのでしょうか。

兵庫県青少年愛護条例は、18歳未満であることの認識に過失があっても処罰するとしています。

6 第17条第1項(同項第4号又は第9号に係る部分を除く。)、第20条第1項若しくは第2項、第21条第1項若しくは第2項、第21条の2、第21条の3又は第24条第2項の規定に違反した者は、当該青少年の年齢を知らないことを理由として、第1項又は前3項の規定による処罰を免れることができない。ただし、過失のないときは、この限りでない。(第30条6項)

例えば、相手が18歳以上を示す身分証明書を提示したため、18歳以上だと信じたけれども、実際には他人の身分証明書で相手は18歳未満であった場合には、相手を18歳以上だと信じるのが通常であるため、故意も過失もなく、上の規定に関わらず罪は成立しません。
しかし、提示された身分証明書がその相手のものではないと気付くような状況であった場合には、過失があったとして、条例違反が成立することになります。

兵庫県青少年愛護条例違反(淫行条例違反)の法定刑は、2年以下の懲役又は100万円以下の罰金です。
初犯であり、立件された事件数も少ない場合には、罰金となるケースが多いでしょう。
しかし、初犯であっても、複数の事件が立件されており、その犯情も悪い場合には、公判請求され刑事裁判となる可能性もあります。
他方、早期に被害者(実際には、被害者の保護者)との間で示談を成立させることができれば、不起訴処分で事件を終了させる可能性を高めることができます。
ですので、18歳未満の者と性交等を行い、淫行条例違反で被疑者として捜査の対象となっているのであれば、できるだけ早くに弁護士に相談・依頼し、被害者との示談交渉に着手することが重要です。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件・少年事件を専門とする法律事務所です。
ご家族が淫行条例違反で逮捕されてお困りであれば、今すぐ弊所の弁護士にご相談ください。
お問い合わせは、フリーダイヤル0120-631-881へ。

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