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器物損壊と礼拝所不敬で逮捕
器物損壊と礼拝所不敬について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所神戸支部が解説します。
~事例~
兵庫県神崎郡神河町にある墓地で、墓石が倒され、灯籠が散乱し、お供え物の食器が割られるという事件がありました。
墓地の管理人が発見し、すぐに兵庫県福崎警察署に通報しました。
同警察署は、器物損壊と礼拝所不敬の容疑で捜査を開始し、付近の防犯カメラの映像から、Aさんを特定し、器物損壊、礼拝所不敬の容疑で逮捕しました。
Aさんは、「むしゃくしゃしてやった。」と容疑を認めています。
(フィクションです。)
器物損壊罪
器物損壊罪は、刑法261条に次のように規定されている罪です。
前3条に規定するもののほか、他人の物を損壊し、又は傷害した者は、3年以下の懲役又は30万円以下の罰金若しくは科料に処する。
「前3条に規定するもの」とは、公用文書等、私用文書等、他人の建造物・艦船であり、それら以外の他人の物が器物損壊の客体となります。
器物損壊の客体は、動産・不動産だけでなく、動物も含まれます。
「損壊」とは、広く物本来の効用を失わしめる行為をいいます。
物を物理的に壊してしまうことだけでなく、他人の飲食器に放尿するなどのように、物自体は壊されてはいないけれども、心理的にそれを使用することができない場合も、その物の本来の効用を失わしめた(=損壊した)ことになります。
「傷害」とは、動物を物理的に殺傷するほかに、動物を逃がすといった本来の効用を失わせる行為をも含みます。
このように、他人の物を損壊した場合には、器物損壊罪が成立する可能性があります。
墓石も他人の物ですので、これを倒す行為は、器物損壊罪に当たるでしょう。
礼拝所不敬罪
礼拝所不敬罪は、刑法188条1項に次のように規定されています。
神祠、仏堂、墓所その他の礼拝所に対し、公然と不敬な行為をした者は、6月以下の懲役若しくは禁錮又は10万円以下の罰金に処する。
礼拝所不敬罪は、一般の宗教感情を保護するために設けられたものです。
「神祠」とは、神道により神を祀った祠のことをいいます。
「仏堂」とは、仏教の寺院の本堂などのことです。
「墓所」とは、人の遺体や遺骨を埋葬・安置することにより、死者を祀り、記念する場所のことをいいます。
そして、「その他礼拝所」には、キリスト教、イスラム教など宗教を問わず、一般の人が宗教的崇敬を捧げる場所のことをいいます。
それらの物に対して、「公然と」「不敬な行為」をした場合に礼拝所不敬罪は成立します。
「公然と」とは、不特定または多数の人が認識し得る状態のことで、実際に誰かに目撃されたかどうかは問題となりません。
「不敬な行為」というのは、宗教的崇敬を捧げられるべき対象物の尊厳を害するに対する行為を広く含み、損壊、転倒、汚す、除去するといった行為が含まれます。
墓地は、上の「墓所」に当たりますし、墓石を倒す行為は「不敬な行為」だと言えるでしょう。
行為を行ったのが夜であったとしても、それをもってして公然性を否定することにはなりません。
誰かが夜中に偶然通りかかったとしたら、行為を目撃する可能性はありますからね。
よって、墓石を倒すなどして墓地を荒らす行為は、礼拝所不敬罪に当たる可能性があります。
器物損壊罪の保護法益は、損壊の対象となった物に対する財産権であり、個人的法益に対する罪に分類されます。
そのため、損壊の対象となった物の所有者が直接の被害者であり、被害者に対する被害弁償や示談を成立させることにより、不起訴で事件を終了させる可能性を高めることができるでしょう。
他方、礼拝所不敬罪の保護法益は、国民の宗教的感情及び死者に対する敬虔・崇拝の感情、あるいは宗教的自由の保護です。
損壊された墓石の所有者や墓地の管理人などは、直接の被害者とはなりませんが、墓石の所有者や墓地の管理人への謝罪・被害弁償、示談の有無は、加害者本人の反省の表れとも言え、最終的な処分にも大きく影響するでしょう。
器物損壊や礼拝所不敬事件で逮捕されて対応にお困りであれば、刑事事件専門の弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。
無料法律相談・初回接見サービスに関するご予約・お問い合わせは、フリーダイヤル0120-631-881で24時間受け付けております。
強要事件で逮捕されたら
強要事件で逮捕された場合について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。
~事例~
兵庫県朝来市に住むAさんは、泣きながら帰宅した小学生の娘が、「Vくんにからかわれた。」と言ったことで激高し、帰宅途中だったVくんに対して怒鳴り散らし、胸倉をつかむなどの暴行を加え、土下座をするよう強要しました。
Vちゃんの話を聞いたVくんの母親は、すぐに兵庫県南但馬警察署に相談したことで事件が発覚しました。
同警察署の署員は、Aさん宅を訪れ、話を聞いたところ、Vくんの土下座させたことは認めていますが、「あいつが悪いことしたから、しつけでやっただけ。」と容疑を一部否認しています。
警察署は、Aさんを暴行および強要の疑いで逮捕しました。
(フィクションです)
強要罪について
強要罪は、暴行または脅迫を手段として、一定の作為もしくは不作為を強いる罪で、刑法第223条に次のように規定されています。
第223条 生命、身体、自由、名誉若しくは財産に対し害を加える旨を告知して脅迫し、又は暴行を用いて、人に義務のないことを行わせ、又は権利の行使を妨害した者は、3年以下の懲役に処する。
2 親族の生命、身体、自由、名誉又は財産に対し害を加える旨を告知して脅迫し、人に義務のないことを行わせ、又は権利の行使を妨害した者も、前項と同様とする。
3 前2項の罪の未遂は、罰する。
◇客体◇
強要罪の客体、つまり、犯行の対象は、「人」です。
ここでいう「人」というのは、自然人の意味であって、法人は含みません。
◇行為◇
強要罪の行為とは、「相手方またはその親族の生命・身体・自由・名誉・財産に対して、害を加える旨を告知して脅迫し、または暴行を用いて、人に義務のないことをおこなわせ、または権利の行使を妨害する」ことです。
①脅迫
相手方またはその親族の生命、身体、自由、名誉または財産に対して害を加えることを相手方に告知する行為を「脅迫」といいます。
どの程度の脅迫であれば、強要罪における「脅迫」に当たるのかといえば、害悪の告知が「一般人を畏怖させるに足りる程度」のものでなければなりません。
実際に相手方が畏怖したかどうかは問題ではなく、一般人を畏怖させるに足りる程度の害悪の告知がされていればよいのです。
害悪の内容それ自体は、必ずしも犯罪である必要はなく、違法なものでなくともよいとされています。
Aさんは、Vくんに対してAさんの娘をからかったことについて、説教という建前で怒鳴り散らしているようですが、その内容如何によっては「脅迫」に当たりかねません。
例えば、成人男性に大声で「しばくぞ」、「どつくぞ」、「いてまうぞ」などといった暴言を吐かれたとしたら、普通の人、ましてや小学生なら恐れおののきますよね。
②暴行
「暴行」というのは、人に対して加えられた有形力の行使のことです。
有形力の行使は、必ずしも直接人の身体に対して加えられる必要はありません。
強要罪における「暴行」に当たるには、相手方が畏怖し、そのため行動の自由が侵害されるに足りる程度の有形力の行使であることが求められます。
Aさんが、Vくんを力づくで動けないようにし、土下座させたのであれば、暴行を手段とする強要となるでしょう。
◇結果◇
行為の結果、「人に義務のないことを行わせ、または権利の行使を妨害する」ことが必要です。
「義務のないことを行わせ」るというのは、行為者において何ら権利・権能がなく、相手方に何ら義務がないのに、相手方に作為・不作為または忍容を余儀なくさせることをいいます。
「権利の行使を妨害する」とは、相手方が法律上許されている作為・不作為に出ることを妨害することです。
VくんはAさんの娘をからかったとされていますが、それが本当であるならば、VくんはAさんの娘に謝るのが筋だとは思いますが、土下座をすることはVくんに課された義務などではないため、そのような行為を強いる行為は、人に義務のないことを行わせるものと言えるでしょう。
Aさんは、しつけでやったと言っていますが、Aさんの行為は決してしつけとして正当化されるものではありません。
強要事件で逮捕された場合
Aさんは、強要などの容疑で逮捕されてしまいました。
そのような場合、事件を穏便に解決するためにはどのような活動をする必要があるのでしょうか。
1.身体拘束からの解放
逮捕後、勾留に付されてしまうと、さらに長い期間身体拘束を受けることになります。
身体拘束が長引けば、その分会社に行くことはできませんし、事件のことが明るみになる、解雇されてしまう可能性も高まります。
そのような事態を避けるためにも、できる限り早期に釈放となることが望まれます。
そのため、逮捕されたら、いち早く弁護士に相談し、身柄解放活動に着手してもらうことは重要です。
弁護士は、勾留前に検察官や裁判官に働きかけ、勾留を回避したり、勾留後には勾留に対する不服申し立てを行い、勾留の取り消しで釈放となるよう動きます。
2.被害者との示談交渉
強要事件では被害者がいるため、被害者への対応如何が最終的な処分結果に大きく影響することになります。
被害者への謝罪や被害弁償、示談が成立している場合には、検察官が不起訴処分で事件を終了させたり、起訴されたとしても執行猶予が付くなど被疑者・被告人に有利な事情として働きます。
ただ、被害者が被疑者・被告人に対して恐怖や怒りを感じているため、被害者が自身の連絡先を加害者側に教えなかったり、仮に連絡先を入手できたとしても、当事者間の交渉は感情的になり難航する可能性が高いため、第三者である弁護士を介して行うのがよいでしょう。
ご家族が強要事件を起こし逮捕されてお困りであれば、今すぐ弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。
無料法律相談・初回接見サービスに関するご予約・お問い合わせは、フリーダイヤル0120-631-881で24時間受け付けております。
【お客様の声】強制わいせつ事件で執行猶予
■事件概要
ご依頼者様の息子様(30代、会社員、前科前歴なし)が、夜間に帰宅途中の女性に対してわいせつな行為をしたとして強制わいせつの容疑で逮捕された事件。同種の余罪もあり、別件で再度逮捕されることが予想された。
■事件経過と弁護活動
ご依頼者様は、逮捕当日、息子様との接見を行った当番弁護士から報告の連絡を受けたものの、事件についてはあまり詳しく分からず心配され、弊所に初回接見をご依頼されました。すぐに弊所の弁護士は、息子様との接見を行い、息子様が夜間に女性を背後から襲いわいせつな行為をする事件を起こしたことや同様の事件を他にも起こしたことが分かりました。接見後、担当弁護士は、ご依頼者様に事件内容や余罪があることから、本件以外にも余罪で逮捕され身体拘束が長期化する可能性があることや、余罪が立件されれば被害者も増えることから、全ての被害者との間で示談が成立しない可能性があることを丁寧に説明しました。ご依頼者様は、早期に被害者への謝罪と被害弁償を行い、示談交渉に着手すること、そして、息子様には幼いお子様がいらっしゃるため、でき限り早期に釈放となることを目指した弁護活動を弊所にご依頼されました。
余罪については、強制わいせつ事件が2件立件されました。弁護人は、捜査機関を介して被害者3名の方に示談の申入れを行いました。夜間に行われた犯行であり、被害者の方は息子様の行為によって癒しがたい傷を負われており、息子様に対する処罰感情は大きいものでした。被害者の代理人との粘り強い交渉により、最終的には3名全員との間で示談を成立させることができました。強制わいせつ罪という重い罪で3件起訴されていたため、全ての被害者の方との示談成立は、執行猶予獲得には欠かせませんでした。決してスムーズに交渉が進んだとは言えない状況でしたが、担当弁護士は、判決が言い渡される最後の最後まで諦めずに粘り強い交渉を続け、全ての被害者の方との間での示談成立を成し遂げました。
当初の予想通り、息子様は余罪で逮捕・勾留され、捜査段階での身体拘束は長期に及びました。しかし、余罪についての起訴のタイミングを見計らい、できる限り早期に釈放となるよう保釈請求をし、息子様は無事に釈放されることとなりました。
公判では、被害者との示談が成立していることも考慮され、執行猶予判決が言い渡され、実刑を回避することに成功しました。
【お客様の声】盗撮事件で不起訴処分獲得
■事件概要
ご依頼者様(30代、会社員、前科前歴なし)が、商業施設内で女性を盗撮したとして検挙された事件。
■事件経過と弁護活動
警察に検挙された盗撮事件では、被害者の方が盗撮画像を削除することを条件に被害届を提出しないと言われたそうですが、ご依頼者様には盗撮の余罪が多数あったため、警察に余罪が発覚した場合の対応について不安に思われ、弊所の法律相談を依頼されました。
初回の法律相談後に、再び警察での取調べを受け、結局余罪が発覚し、検察官の取調べでは厳しいことを言われたため、何とか不起訴処分にならないかと弊所に再び相談に来られました。相談後、ご依頼者様は弊所の弁護士を信頼し、不起訴処分獲得を目指して刑事弁護を依頼されました。
担当弁護士は、すぐに担当検察官に連絡をとり、送致された事件では被害届が提出されていないこと、ご依頼者様は初犯であり真摯に反省していることから再犯の可能性は低いことを説明し、不起訴処分として事件を処理するよう働きかけました。その結果、余罪については立件することなく、送致された1件分のみで処理され、当初の目標通りに不起訴処分で事件を終了させることに成功しました。
ご依頼者様は、この結果に大変満足され、二度と同じ過ちを繰り返すまいと心に誓われました。
児童福祉法違反(淫行をさせる行為)で逮捕
児童福祉法違反(淫行をさせる行為)について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所神戸支部が解説します。
~事例~
兵庫県明石警察署は、自身の経営する塾に通う女子高生にみだらな行為をさせたとして、Aさんを児童福祉法違反(淫行をさせる行為)の疑いで逮捕しました。
女子高生と両親が同署に相談したことで事件が発覚しました。
被害を受けた女子高生は、「言うことを聞かないと志望校に受からないと思った。」と話していますが、Aさんは「恋愛感情があった。」と述べており、容疑を否認しています。
(フィクションです。)
児童福祉法違反(淫行をさせる行為)について
児童福祉法第34第1項第6号条は、「児童に淫行をさせる行為」を禁止する旨を規定しています。
児童福祉法違反(児童に淫行をさせる行為)は、社会における児童の福祉を保護法益とするものです。
児童福祉法で定義される「児童」の対象年齢は、「満18歳に満たない者」であり、18歳未満の者が「児童」に当たります。
「淫行」とは、「児童の心身の健全な育成を阻害するおそれがあると認められる性交又は性交類似行為」を意味し、「児童を単に自己の性的欲望を満足させるための対象として取り扱っているとしか認められないような者を相手とする性交又はこれに準ずる性交類似行為」が「淫行」に該当するものと理解されています。(最判平28年6月21日)
性交に準ずる性交類似行為には、手淫、口淫、素股、肛淫等を伴う男色行為、バイブレーダーを調達して児童に手渡し、自己の面前において、児童をしてこれを性器に挿入させる行為などが該当します。
また、「させる行為」については、「直接たると間接たるとを問わず児童に対して事実上の影響力を及ぼして児童が淫行をなすことを助長し促進する行為をいうが、そのような行為に当たるか否かは、行為者と児童の関係、助長・促進行為の内容及び児童の意思決定に対する影響の程度、淫行の内容及び淫行に至る動機・経緯、児童の年齢、その他当該児童の置かれていた具体的状況を総合考慮して判断する」とされます。(最判平28年6月21日)
雇用関係や身分関係などにより、行為者が児童を支配している場合には、淫行を助長促進する行為は、必ずしも積極的でなくてもよいと解されており、飲食店の経営者が、住み込み女中である児童が客と淫行することを承認した場合(最判昭30年12月26日)においても、児童に淫行をさせる行為を認めています。
「させる行為」とあるのは、児童福祉法第34条第1項第6号が、本来は売春防止法と同様の趣旨で、特に児童に売春をさせることを処罰する目的で立法されたためです。
しかし、判例は、自己を相手とする淫行をさせる場合も、「させる行為」に当たるとの解釈を採用しており、自己を相手とする淫行であっても、それが「児童に対して事実上の影響力を及ぼして児童が淫行をなすことを助長し促進する行為」と言えるものであれば、淫行を「させる行為」に当たると考えられます。
そのため、18歳未満の者との性交・性交類似行為すべてが児童福祉法違反(児童に淫行をさせる行為)となるのではなく、行為者と児童との関係、助長・促進行為の内容や児童の意思決定に対する影響の程度、淫行の内容、淫行に至る動機・経緯、児童の年齢などを総合的に考慮して、児童に淫行をさせる行為と言えるのかどうかが判断されます。
上の事例においても、Aさんと女子高生との間の関係性(塾講師と生徒)から、助長・促進行為の内容や児童の意思決定に対する影響の程度、淫行の内容、淫行に至る動機・経緯、児童の年齢などといった要素が検討されることになります。
児童福祉法違反(児童に淫行をさせる行為)の法定刑は、10年以下の懲役または300万円以下の罰金、もしくはその併科と非常に厳しいものとなっています。
相手方児童が被害者であるため、被害者への被害弁償や示談を成立させることを目指すことになります。
被害者自身は18歳未満であるため、示談交渉の相手は被害児童の保護者となります。
保護者の処罰感情は往々にして厳しく、示談交渉も難航することが予想されます。
そのため、刑事事件に詳しく、被害者との示談交渉にも豊富な経験を有する弁護士を介して示談交渉をすることをお勧めします。
また、児童福祉法違反(児童に淫行をさせる行為)は、被害者等の告訴がなければ公訴を提起することができない罪(これを「親告罪」といいます。)ではありませんので、事案によっては、示談が成立したとしても、公判請求される可能性もあります。
しかしながら、示談が成立している場合には、検察官が起訴猶予として不起訴で事件を終了させる可能性を高めることができますので、やはり、非親告罪であっても、被害者との示談の有無は最終的な処分に大きく影響を与える要素となります。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件・少年事件を専門に扱う法律事務所です。
ご家族が刑事事件・少年事件を起こし対応にお困りの方は、今すぐ弊所の弁護士にご相談ください。
無料法律相談・初回接見サービスに関するご予約・お問い合わせは、フリーダイヤル0120-631-881で24時間受け付けております。
詐欺事件で逮捕
詐欺事件で逮捕された場合について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所神戸支部が解説します。
~事例~
兵庫県伊丹警察署は、兵庫県伊丹市にある美容室の店員から、「客がお金を下ろしてくると言ったまま戻ってこない。」と連絡がありました。
同警察署は、逃げた客の身元を特定し、詐欺の容疑で市外に住むAさんを逮捕しました。
Aさんは、「料金は支払うつもりだった。」と容疑を否認しています。
(フィクションです。)
詐欺罪について
刑法第246条
1 人を欺いて財物を交付させた者は、10年以下の懲役に処する。
2 前項の方法により、財産上不法の利益を得、又は他人にこれを得させた者も、同項と同様とする。
詐欺罪は、
①人を欺いて財物を交付させた場合、
②人を欺いて、財産上不法の利益を得、又は他人にこれを得させた場合
に成立する罪です。
①人を欺いて財物を交付させる
■客体■
詐欺罪(1項)の客体は、他人の「財物」であり、不動産も含まれます。
■行為■
詐欺罪が成立するためには、人を欺いて錯誤を生じさせ、その錯誤に基づいて財物を交付させることが必要となります。
つまり、(a)人を欺く行為(欺罔行為)→(b)相手方の錯誤→(c)交付行為→(d)財産の移転、という一連の流れがあり、(a)~(d)の間に因果関係がなければなりません。
(a)欺罔行為
詐欺罪における「欺罔行為」は、人の錯誤を惹起する行為と意味し、人による財物の交付行為に向けられたものであることが必要となります。
つまり、相手方に対して、相手の財物を行為者に渡すよう嘘の情報を伝える行為のことです。
「人」を欺く行為でなければならないため、器械の不正操作は、詐欺罪には当たりません。
人を欺く行為は、不作為(あえて積極的な行為をしないこと)によっても成立することがあります。
それは、相手方が錯誤に陥ろうとしていること、あるいは既に錯誤に陥っていることを知っておきながら、真実を告げて誤解を解こうとせず、あえてそのままの状態にしている場合です。
(b)相手方の錯誤
欺罔行為により、相手方が錯誤に陥ることが必要となります。
人を欺く行為により生じる錯誤は、交付の判断の起訴となる重要な事項についてのものであり、それがなければ交付行為を行わなかったであろうような重要な事実に関するものでなければなりません。
(c)交付行為
詐欺罪の成立には、錯誤により生じた瑕疵ある意思に基づいて、物が交付されることが必要です。
つまり、騙された者が、その者の意思に基づいて、交付行為を行い、物が移転することが必要となります。
相手方の意思に基づかず、例えば、相手方の隙をついて物を移転させた場合には、詐欺ではなく窃盗が成立することになります。
(d)財物の移転
物が交付行為によって移転することにより、詐欺罪は既遂(犯罪を実行し、結果が発生したということ。)となります。
②人を欺いて、財産上不法の利益を得、又は他人にこれを得させる
■客体■
詐欺罪(2項)の客体は、「財産上の利益」です。
条文は、「財産上不法の利益を得、又は他人にこれを得させた」とありますが、これは、財産上の利益を不法に取得し、又は他人に取得させることを意味しているのであって、不法な利益を取得することを意味するものではありません。
「財産上の利益」とは、債券など有体物以外の財産的権利・利益のことをいいます。
具体的には、債務免除(支払義務、契約に基づいて交付しなければならない義務の免除)、弁済の猶予、役務の提供などが挙げられます。
上の事例で問題となっている美容室での施術料金の支払いですが、これは支払義務の免除という財産上の利益に当たります。
■行為■
詐欺罪(2項)の行為も、1項と同じで、人を欺いて錯誤を生じさせ、その錯誤に基づいて財産上の利益を得させることです。
詐欺罪は故意犯ですので、罪を犯す意思がなければ犯罪は成立しません。
詐欺罪の故意は、「人を欺いて財物を交付させること、あるいは、人を欺いて財産上不法な利益を得、又は他人にこれを得させること」の認識・認容です。
また、詐欺罪の成立には、故意の他に、不法領得の意思が必要となります。
不法領得の意思は、権利者を排除して、他人の物を自己の所有物として、その経済的用法に従い利用・処分する意思のことです。
詐欺事件で容疑を否認するケースの多くが、「だますつもりはなかった。」などといった故意を否認するものです。
その場合には、単に「だますつもりはなかった。」と主張するだけでは捜査機関や裁判所に故意がないことを認めてもらうことは難しいです。
故意がなかったことを裏付ける客観的な証拠を収集し、捜査機関や裁判所に提示し、故意がなく犯罪が成立しないことを認めてもらう必要があります。
自己に不利な供述がとられてしまうことがないよう、できるだけ早期に弁護士に相談し、取調べ対応についてのアドバイスを受けるなどして適切な弁護を受けられるのがよいでしょう。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件・少年事件を専門に扱う法律事務所です。
刑事事件・少年事件を起こし対応にお困りであれば、今すぐ弊所の弁護士にご相談ください。
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盗撮の在宅事件
盗撮の在宅事件について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所神戸支部が解説します。
~事例~
兵庫県丹波市の商業施設内の女子トイレに侵入し、個室の扉の上部からスマートフォンを差し入れ、個室内にいた女性を盗撮したとして、兵庫県丹波警察署は、会社員のAさんを逮捕しました。
Aさんは、当初は犯行を否認していましたが、警察署での取調べにおいて容疑を認める供述をしました。
Aさんの父親が身元引受人として警察署に訪れ、Aさんは釈放されましたが、警察からは「後日取調べにまた来てもらう。」と言われており、今後どのような流れになるのか不安でたまらないAさんは、すぐに刑事事件に強い弁護士に法律相談の予約を入れました。
(フィクションです。)
盗撮で問われる罪とは
盗撮行為は、各都道府県で制定されている迷惑防止条例で禁止されている「卑わいな言動」に当たります。
兵庫県の迷惑防止条例(正式名称は、「公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例」です。)は、その3条の2において、盗撮行為を禁止しています。
第3条の2 何人も、公共の場所又は公共の乗物において、次に掲げる行為をしてはならない。
(1) 人に対する、不安を覚えさせるような卑わいな言動
(2) 正当な理由がないのに、人の通常衣服で隠されている身体又は下着を撮影する目的で写真機、ビデオカメラその他これらに類する機器(以下「写真機等」という。)を設置する行為
2 何人も、集会所、事業所、タクシーその他の不特定又は多数の者が利用するような場所(公共の場所を除く。)又は乗物(公共の乗物を除く。)において、次に掲げる行為をしてはならない。
(1) 正当な理由がないのに、人の通常衣服で隠されている身体又は下着を写真機等を用いて撮影し、又は撮影する目的で写真機等を向ける行為
(2) 前項第2号に掲げる行為
3 何人も、正当な理由がないのに、浴場、更衣室、便所その他人が通常衣服の全部又は一部を着けない状態でいるような場所にいる人を写真機等を用いて撮影し、撮影する目的で写真機等を向け、又は撮影する目的で写真機等を設置してはならない。
■1項■
まず、迷惑防止条例第3条の2第1項は、「公共の場所又は公共の乗物」での、「人に対する、不安を覚えさせるような卑わいな言動」、及び、「人の通常衣服で隠されている身体又は下着を撮影する目的で写真機、ビデオカメラその他これらに類する機器を設置する行為」を禁止しています。
「公共の場所」とは、道路、公園、広場、駅、空港、埠頭、興行場、飲食店その他の公衆が出入りすることができる場所で、「公共の乗物」とは、汽車、電車、乗合自動車、船舶、航空機、その他の公衆が利用できる乗物のことをいいます。
そのような場所・乗物内で、「人に対する、不安を覚えさせるような卑わいな言動」や、盗撮目的でのカメラ等の設置する行為が禁止の対象です。
「人に対する、不安を覚えさせるような卑わいな言動」には、痴漢や盗撮も含まれます。
■2項■
続いて、同条2項では、不特定多数の者が利用する場所や乗物での盗撮、盗撮目的でのカメラの差し向けや設置行為を禁止しています。
■3項■
最後に、3項は、人が通常衣服の全部・一部を着けない状態でいるような場所にいる人を盗撮したり、盗撮目的でカメラを向けたり、カメラを設置したりする行為を禁止しています。
ここでは、公共の場所・乗物や不特定多数が利用する場所・乗物には当てはまらない場所での盗撮等の行為が禁止されており、職場や学校、個人宅の浴場、更衣室、便所などでの盗撮がこれに当たります。
これらの規定に違反した場合には、6カ月以下の懲役又は50万円以下の罰金に処せられる可能性があります。
常習性が認められた場合には、1年以下の懲役又は100万円以下の罰金と加重されます。
盗撮の在宅事件の流れ
盗撮事件では、初犯であり、定職に就いており、身元がはっきりしている場合であれば、被疑者は逮捕されたとしても警察あるいは検察で釈放されるケースは少なくありません。
ただ、釈放されたことで事件が終了したと勘違いされる方もいらっしゃいますが、身柄を確保しないまま捜査は進められます。
釈放後に、何度か警察での取調べを受けた後に、事件は検察に送られ、今度は検察官による取り調べを受けることになります。
そして、捜査が終了すると、検察官は起訴するかどうかの判断を行います。
検察官が起訴・不起訴の判断をする際に考慮する要素のひとつとして、被害者との示談が成立しているか否かという点があります。
迷惑防止条例違反は、被害者等の告訴がなければ公訴を提起することができない親告罪と呼ばれる罪ではありませんが、被害者がいる事件では、被害者の処罰意思の有無も最終的な処分決定の判断に影響します。
初犯である場合には、被害者との示談が成立していれば、不起訴で事件が処理される可能性は高いでしょう。
そのため、不起訴で事件を終了させるためには、在宅事件であっても、早期に被害者との示談交渉を行い、示談を成立させることが重要となります。
通常、被害者との示談交渉は弁護士を通じて行います。
被害者との接触を避けるため、捜査機関が被疑者やその家族に被害者の連絡先を教えることはあまりなく、また、被害者も被疑者らと直接連絡を取ることを拒否する傾向にあるため、弁護士を介して行う方が交渉を円滑に進めることにつながりやすいからです。
盗撮事件を起こし、被害者への対応、示談交渉にお困りであれば、今すぐ刑事事件に精通する弁護士にご相談ください。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件・少年事件を専門に扱う法律事務所です。
無料法律相談・初回接見サービスに関するご予約・お問い合わせは、フリーダイヤル0120-631-881で24時間受け付けております。
まずはお気軽にお問い合わせください。
特殊詐欺事件における弁護活動
特殊詐欺事件における弁護活動について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所神戸支部が解説します。
~事例~
兵庫県神戸西警察署は、特殊詐欺事件に関与したとして、Aさんを窃盗未遂の容疑で現行犯逮捕しました。
Aさんは、指示役から兵庫県神戸市西区に向かうよう指示を受けており、同市の公園で待機をしていたところ、警察官の職務質問を受けたことで事件が発覚しました。
Aさんの両親は、「Aさんを特殊詐欺事件で逮捕した。明後日まで会えません。」と言われ、どうすればよいのか分からずネットで検索した刑事事件専門弁護士に相談の電話を入れました。
(フィクションです。)
特殊詐欺事件で逮捕された場合
特殊詐欺による被害は大きく、社会的にも大きな問題となっています。
警察などによる注意喚起が頻繁に行われていますが、特殊詐欺による被害は後を絶ちません。
特殊詐欺は、組織的に行われており、特殊詐欺事件で逮捕される被疑者の多くは、高額収入の広告に飛びついた組織の外部の人間で、いわゆる「受け子」や「出し子」といった役割を担っている場合が多いです。
「受け子」や「出し子」といった組織の下部の者は、顔も知らない指示役からの指示を受けて犯行に加担しているのですが、特殊詐欺は組織犯罪として取り扱われるため、共犯者との接触を防止するために逮捕後に勾留され、外部の者との接見が禁止される可能性が高いことが特徴です。
逮捕・勾留は、1つの事件につき1回とされていますが、特殊詐欺事件の被疑者は、最初に逮捕された事件以外にも、同様の事件に関与していることが多く、最初の事件についての勾留の期間が終了しても、他の事件について逮捕・勾留される可能性が高いため、長期の身体拘束が見込まれます。
また、複数の特殊詐欺事件に関与している場合には、当然、被害者の数や被害金額も大きくなるので、被害弁償に係る金額も高額になることが予想されます。
しかしながら、特殊詐欺事件は財産犯であるため、終局処分や量刑においては被害弁償の有無が重視されます。
特殊詐欺事件における弁護活動
特殊詐欺事件の特徴を考慮しつつ、弁護人は主に次のような弁護活動を行います。
1.身柄対応
先にも述べたように、特殊詐欺事件では、高額収入の求人広告に応募してきた組織の外部の人間であっても、逮捕・勾留される可能性は非常に高いです。
組織犯罪であるため、共犯者と接触により罪証隠滅を図る可能性が高く、勾留の要件を満たしていると判断される傾向にあります。
そのため、捜査段階で被疑者が釈放されることは難しいのですが、起訴後に保釈制度を利用して釈放される可能性はあります。
組織犯罪となると、証拠の量が膨大になり、共犯者も多数に及び、起訴後であっても、罪証隠滅のおそれありとして、直ちに保釈が認められないこともありますが、弁護人は、そのようなおそれがないことを客観的な証拠に基づいて立証し、保釈が認められるよう、捜査段階から準備し、できる限り早期の釈放を目指します。
また、勾留決定に際して、弁護士以外の者との接見等を禁止する接見禁止決定がなされることも多いのですが、弁護士は、被疑者の家族等に対して接見禁止を解除するよう、家族等が事件とは無関係であることや、家族等との面会が必要であることを主張し、それらの者との接見を認めるよう裁判官に申立てを行うなどして、接見禁止の一部解除を目指します。
2.裁判に向けた弁護活動
財産犯であれば、起訴・不起訴の終局処分にあたっては、被害弁償の有無が重視されますが、特殊詐欺事件において、容疑を認めている場合には、被害弁償が済んでいる場合であっても、起訴される可能性が高いです。
そのため、弁護人は、捜査段階から裁判を見据えた弁護活動を行うことになります。
特殊詐欺は財産犯であるため、被害弁償の有無が大きな量刑事情となります。
弁護人は、捜査段階から、被害者への被害弁償、示談の成立に向けた示談交渉を行います。
被害者との示談交渉は、通常、弁護士を通じて行います。
被疑者・被告人が逮捕・勾留されているため、本人が直接行うことはできませんし、捜査機関も罪証隠滅のおそれから、被疑者・被告人やその家族に被害者の連絡先を教えることはありません。
また、被害者は特殊詐欺の被害に遭い、財産的損害だけでなく精神的にも大きなショックを受けておられることが多く、弁護士を介しての話し合いであれば受けてくださるケースも少なくありません。
被害弁償に加えて、裁判では、効果的な再発防止策を講じていることも被告人に有利な事情となります。
特殊詐欺事件では、組織からの完全な離脱と、事件を起こした原因を解明し、それに対する有効な対策を講じていることが重要なポイントとなります。
特殊詐欺事件においては、「受け子」や「出し子」といった組織の端末の立場で関与した者であっても、初犯であれど、実刑を科されるケースは少なくありません。
しかし、事件の内容や、被害弁償の有無等によって執行猶予となる可能性はありますので、ご家族が特殊詐欺事件の被疑者として逮捕された場合には、すぐに弁護士に相談されることをお勧めします。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件・少年事件を専門に扱う法律事務所です。
ご家族が特殊詐欺事件で逮捕されてお困りであれば、今すぐ弊所の弁護士にご相談ください。
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喧嘩闘争における正当防衛
喧嘩闘争における正当防衛について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所神戸支部が解説します。
~事例~
兵庫県兵庫警察署は、「路上で喧嘩している人たちがいる。一人は腹を刺されて血を流している。」との目撃者からの通報を受けました。
現場に駆け付けた警察官は、現場にいたAを傷害の容疑で逮捕しました。
しかし、Aは「相手が手を出してきて、喧嘩になった。いったんやめたのに、相手が一方的に殴る蹴るしてくるから、自分の身を守るために護身用のナイフを出したら相手に刺さった。」と正当防衛を主張しています。
Aは、接見にやってきた弁護士に、自身の行為が正当防衛に当たるのか聞いています。
(フィクションです。)
正当防衛とは
犯罪は、「構成要件に該当する、違法で有責な行為」をいうと一般的に理解されています。
構成要件というのは、犯罪の類型のことで、法律で、こういう行為を犯罪とします、と定められている行為のことです。
例えば、殺人罪であれば、「人を殺した」行為であることが、殺人罪の構成要件となります。
問題となる行為が、構成要件に該当する場合でも、それが違法でなければ犯罪は成立しません。
犯罪として法律に定められた行為は、その行為を禁止するために規定されているので、本来違法であることが想定されているものです。
ただ、例外的な事情がある場合にのみ、その違法性を否定し、犯罪は成立しないこととされています。
そのような例外的な事情を「違法性阻却事由」といいます。
違法性阻却事由として刑法に規定されているものとしては、「正当行為」、「正当防衛」、「緊急避難」があります。
正当防衛
刑法第36条1項は、
急迫不正の侵害に対して、自己又は他人の権利を防衛するため、やむを得ずにした行為は、罰しない。
と規定しています。
これが「正当防衛」と呼ばれる違法性阻却事由です。
①急迫不正の侵害
「侵害」とは、権利を侵害する危険をもたらすものをいいます。
「不正な侵害」とは、違法である侵害を意味します。
この「不正な侵害」は「切迫」したものでなければなりません。
判例によれば、「刑法36条にいう『急迫』とは、法益の侵害が現に存在しているか、または間近に押し迫っていることを意味」するとしています。(最判昭46・11・16)
この点、急迫性が認められるかどうかの判断において、被侵害者がその侵害を予期していたような場合には、急迫性が認められるかどうかが問題となります。
判例は、侵害が予期されるものであっても、被侵害者に積極的加害意思がなければ急迫性が認められるとするとの立場に立っています。
②権利の防衛
正当防衛は、急迫不正の侵害に対して、自己又は他人の権利を防衛するために認められます。
正当防衛は「防衛するための行為」でなければならず、攻撃を受けたのに乗じて積極的に相手方を加害する場合は、防衛の意思を欠き、正当防衛は成立しません。
③やむを得ずした行為
正当防衛は、防衛するために「やむを得ずにした行為」でなければなりません。
判例は、正当防衛の成立要件として、必要性、相当性の両方を必要とするとの立場をとっています。
つまり、必要性については、必ずしもその行為が唯一の方法であることを要せず、また、厳格な法益の権衡も要求されないが、少なくとも相手に最小の損害を与える方法を選ぶことを要するとしています。
また、相当性については、「急迫不正の侵害に対する反撃行為が、自己または他人の権利を防衛する手段として必要最小限度のものであること、すなわち反撃行為が侵害に対する防衛手段として相当性を有するものであることを意味するのであって、反撃行為が上記の限度を超えず、したがって侵害に対する防衛手段として相当性を有する以上、その反撃行為により生じた結果がたまたま侵害されようとして法益より大であっても、その反撃行為が正当防衛行為でなくなるものではないと解すべきである。」として、どのような結果が生じたかよりも、どのような手段がとられたのかという観点から相当性について判断されています。(最判昭44・12・4)
さて、喧嘩において正当防衛は成立するのでしょうか。
基本的には、双方が攻撃や防御を繰り返す連続的行為となった場合は、喧嘩両成敗として正当防衛は成立しません。
ただ、喧嘩闘争状況であれば常に正当防衛の成立が否定されるわけではなく、攻撃や防御を繰り返す連続的行為が崩れた場合、例えば、最初は素手で喧嘩をしたいたものの、突然相手が刃物を持ち出して攻撃してきたので、それに反撃した場合や、喧嘩がいったん収まったにもかかわらず、相手がなおも攻撃を続けてきたことに対して反撃した場合などは、正当防衛が成立する余地があるでしょう。
Aは、正当防衛を主張していますが、喧嘩全体の流れの中でのAの反撃行為が正当防衛に当たるかどうかを検討しなければなりません。
事案によっても異なりますので、刑事事件に強い弁護士に早めに相談されるのがよいでしょう。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件・少年事件を専門とする法律事務所です。
ご家族が刑事事件・少年事件で逮捕されてお困りの方は、今すぐ弊所の弁護士にご相談ください。
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殺人未遂で逮捕
殺人未遂について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所神戸支部が解説します。
~事例~
兵庫県高砂市のマンションに住むAさんは、マンション前の路上で、近くに住むVさんと口論になりました。
Vさんは、「埒が明かないので、警察を呼ぶ。」言い、携帯電話で通報し始めました。
Aさんは、警察を呼ぶVさんに腹が立ち、マンションの自分の部屋に戻り、ベランダから路上に立っているVさんの頭上めがけて、ダンベルを投げつけました。
幸い、Vさんにダンベルは当たらず、Vさんは無傷でした。
Vさんは、通報を受けて駆け付けた兵庫県高砂警察署の警察官にAさんの行為を報告したところ、警察官はAさんを殺人未遂の容疑で現行犯逮捕しました。
Aさんは、「Vさんに腹が立ったからやったが、結局Vさんには当たってないし、なんで殺人未遂なんや。」と不満を述べています。
(フィクションです。)
Aさんは、マンションのベランダから下にいたVさんを狙ってダンベルを投げつけた行為について、殺人未遂に問われています。
そこで、今回は、殺人未遂罪とはどのような場合に成立する罪であるかについて説明していきます。
殺人未遂罪
殺人未遂は、その名の通り、「殺人」が「未遂」に終わったものを意味します。
「殺人」は、みなさんご存じの通り、「人を殺す」という罪ですね。
犯罪が成立するのは、構成要件(殺人の場合は、人を殺すこと)に該当する場合です。
より細かく言えば、犯罪の成立には、法律の条文に規定された要件に該当し(=構成要件該当性)、社会的に許されず(=違法性)、かつ、社会的に非難される(有責性)行為であることが求められますが、基本的に構成要件に該当する行為は、違法性及び有責性を一応有しているものと考えられるため、犯罪が成立しているかどうかを検討するときには、まず、構成要件に該当するか否かを検討してから、特に違法性や有責性を否定する特別な事情があるか否かを検討することになります。
構成要件に該当しているか否かは、条文に規定された実行行為があり、その行為により結果が発生していること、そして、実行行為にはその行為を認識、認容して行動に出るという内心、つまり、故意があるかどうかという要素に基づいて検討されます。
実行行為に基づき結果が発生した場合を、既遂といいます。
一方、犯罪の実行に着手したが、結果が発生しなかった場合を未遂といい、法律で未遂犯に処罰規定がある場合には、未遂罪として処罰される可能性があります。
殺人には未遂犯がありますので、人を殺そうとして実行行為を行ったけれども、人を死亡させるに至らなかった場合には、殺人未遂罪が適用され、処罰の対象となります。
殺人未遂罪が成立するには、犯罪の実行に着手していなければなりません。
実行の着手時期については、結果が発生する危険性が認められる行為への着手の時点とされており、判例では、クロロホルムを吸引させて被害者を失神させ、その失神状態を利用して被害者を自動車ごと海中に転落させて溺死させる事案においては、すでに最初の行為を開始した段階で、殺人未遂が成立するとしています。(最決平16・3・22)
Aさんのマンションのベランダから下にいたVさんを狙ってダンベルを投げつける行為は、Vさんを死亡させる危険性が認められる行為と言えます。
高い場所からダンベルを投げつけて、それが人の頭に当たったら、その人が死んでしまう可能性は高いですからね。
実際に、Aさんはその行為を行っていますので、犯罪の実行に着手していることになります。
また、故意についてですが、Aさんが「Vさんを殺してしまえ!」と確信的な殺意を有していなくても、鉄の塊であるダンベルを投げつければVさんに当たって死なせてしまうかもしれないことは通常予測することができますので、「Vさんに当たったら死んでしまうかもしれない。」という程度の認識があったことは認められるため、未必の故意があったと言えるでしょう。
Aさんは、犯罪の実行に着手はしたものの、たまたまダンベルがVさんに当たらなかったので、Vさんが死亡するようなことはありませんでしたが、結果が発生しなかったのは、Aさんの意思によるものではなく、それ以外の理由により、Aさんの実行行為に基づく結果が生じなかっただけであり、未遂犯のうち「障害未遂」に当たり、任意的に刑が減軽されます。
殺人未遂は、一歩間違えれば、人の命を奪っていたかもしれず、決して軽い罪とは言えません。
しかし、情状により刑が減軽される可能性もあるので、適切な弁護活動により、少しでも寛大な処分となるよう早期に対応する必要があります。
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