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少年事件:学校への対応

2020-03-16

少年事件を起こした場合の学校への対応について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所神戸支部が解説します。

~ケース~
兵庫県加古郡稲美町に住む高校生のAくんは、ある日、兵庫県加古川警察署に強制わいせつの容疑で逮捕されました。
逮捕の連絡を受けたAくんの両親は、すぐに接見に行ってくれる弁護士を探しました。
Aくんの両親は、今後学校にどのように対応すればよいのか分からず困っています。
(フィクションです)

少年事件において、少年本人や少年の家族が懸念する問題のひとつに、事件を起こした少年が、学校に所属する場合、事件が原因で学校を退学せざるを得ない状況になるのではないか、ということがあります。

今回は、少年事件において、どのように学校対応すべきか、また、学校にどのような協力を得る必要があるのか、という点について考えてみましょう。

学校が事件を把握する時期について

事件が学校で起きたり、学校関係者が関与している場合には、すぐに学校側は事件について把握します。
しかし、学校外で起きた事件については、学校もすぐには把握することはできません。

学校が事件について把握する経緯としては、おおまかに次の3つがあります。

①警察から連絡がいく場合

地域によっては、警察と学校が連絡を取り合う制度(「警察・学校相互連絡制度」)が実施されています。
例えば、神戸市では、教育委員会と兵庫県警察本部との間で「学校と警察における相互情報連絡制度に係る協定」を結んでいます。
この協定における連絡対象事案には、犯罪または触法事案、またはそのおそれのある事案が含まれています。
つまり、神戸市の公立学校に所属する少年が何等かの事件を起こした場合、事件について所属の学校に連絡がいくことになっているのです。
この制度によって、少年や保護者が知らないうちに警察から学校に連絡が入り、学校に事件のことを知られるという事態が生じることがあります。
しかし、警察は、必ずしもすべての対象事件について自動的に学校に連絡しているわけではないようですので、学校への連絡を避けるべき事情がある場合や連絡に際して配慮が必要となる場合には、早期に警察にその旨を申し入れ、対応を協議する余地はあるでしょう。

②保護者から連絡する場合

事件を起こした少年の保護者から、学校に連絡を入れることによって学校が事件を把握することもあります。
とりわけ、逮捕・勾留され、学校を欠席せざるを得ない場合に、保護者が学校に事件のことを報告することがあります。

③被害者などから連絡がいく場合

事件の被害者や関係者が、少年の所属先を知っており、学校に連絡することもあります。
被害者が少年と同じ学校に所属している場合には、被害者の保護者から学校に被害申告がなされることが多いようです。

学校に事件が発覚した場合、義務教育中の公立学校の場合には退学はありませんが、私立学校や高校、大学では、事件が原因となり退学となってしまう可能性もあります。
後で説明するように、学校は少年の環境調整においても非常に重要な役割を担いますので、退学により少年の更生を害することにならぬよう慎重に対応する必要があります。

環境調整における学校の位置づけ

環境調整は、保護者を含めた家族との関係の調整、就業先の開拓、帰住先の確保等、少年の社会復帰を円滑にするために少年をとりまく環境を調整することです。
少年審判では、非行事実だけでなく、要保護性についても審理されるため、少年の更生に資する環境調整を行うことは、裁判官が少年に対する処分を検討する上でも重要な要素となります。

調整を行う環境のなかでも、少年が一日の中でも大半を過ごす学校について環境を調整することは必要不可欠です。
学校に在籍する少年の場合、今後も在籍できるかどうか、学校側が少年を受け入れて適切な指導をしてくれるかどうかは、少年の更生を考えるうえで重要な事項となります。
しかしながら、前述したように、学校が少年を退学にするなど、学校の対応が要保護性を解消する上での障害となることも少なくありません。
そこで、学校に関する環境調整を行うにあたっては、少年や保護者から、学校の状況やこれまでの学校や教師との関係性について聞き取った上で、適切に学校にアプローチしていかなくてはなりません。

学校が事件について把握している場合には、少年事件の手続や理念について説明したり、少年が自身の行為を猛省していることや復学を希望していること、少年の更生には学校の協力が必要不可欠であることを伝え、学校側の積極的な受け入れを要請することが必要となるでしょう。

少年事件は、成人の刑事事件とは異なる手続となりますので、少年事件については少年事件に強い弁護士に相談・依頼するのがよいでしょう。

お子様が事件を起こし、学校への対応にお困りの方は、少年事件に精通する弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所に相談ください。
無料法律相談初回接見サービスのご予約・お問い合わせは、フリーダイヤル0120-631-881までご連絡ください。

略式手続で正式裁判を回避

2020-03-15

略式手続について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所神戸支部が解説します。

~ケース~
兵庫県神戸市兵庫区の駅構内の階段で、女子学生のスカート内にスマートフォンを差し入れ盗撮したとして、会社員のAさんは迷惑防止条例違反で兵庫県兵庫警察署に逮捕されました。
翌日、Aさんは釈放されました。
ある日、神戸地方検察庁に呼び出されたAさんは、担当検察官から略式手続についての説明を受けました。
そのまま同意していいか判断できなかったAさんは、いったん保留にしてもらい、刑事事件に強い弁護士に相談することにしました。
(フィクションです)

略式手続とは

略式手続」というのは、簡易裁判所が、その管轄事件につき、検察官の請求のより、公判手続を経ないで、主として検察官の提出した証拠を審査して、一定額以下の罰金または科料を科す簡易裁判手続のことです。

事件の捜査を終えると、検察官は被疑者を起訴するか否かを決めます。
起訴するとした際も、検察官は正式裁判を請求することもできますし、略式命令を請求することもできます。

略式手続の特徴

略式命令の請求は、公訴の提起と同時に書面でしなければなりません。
また、被疑者が略式手続によることについて異議がないことことを書面で明らかにしなければならず、これを略式命令の請求書に添付しなければなりません。

略式手続は、非公開で、検察官が提出する書面や証拠物を審査した上で、略式命令が言い渡されます。
公判請求のように、起訴状一本主義の適用はなく、必要な書類・証拠物も裁判所に差し出さなければなりません。

略式命令では、100万円以下の罰金または科料を科すことができ、刑の執行を猶予することもできます。

略式命令を受けた者または検察官は、略式命令の告知を受けた日から14日以内に正式裁判の請求をすることができます。

略式手続のメリット・デメリット

被疑者から見た略式手続のメリットは、早期に社会復帰しやすいという点です。

公判請求された場合、裁判所に出廷しなければなりませんし、そのための準備に時間や労力を割くことになります。
また、裁判は公開で行われますので、身から出た錆とは言えども、自身が行った犯罪について世間に知られてしまうことになります。

この点、略式手続であれば、裁判所に何度も足を運ぶ必要はなく、普段の生活にそれほど支障をきたすことなく事件を終了させることができます。
特に、在宅事件であれば、事件について会社に発覚せずに事件が処理される可能性もあるでしょう。
逮捕・勾留されたとしても、略式手続がとられれば、その日に罰金を納めて釈放となりますので、早期に社会に復帰することができ、事件後の生活に大きな支障をきたすのを防ぐこともできます。

一方、略式手続がとられることのデメリットは、前科が付くということです。

略式手続といっても、裁判所に有罪判決が下されて、罰金または科料が科されるので、前科が付くことになります。
前科が付くことで日常生活に直接何らかの不利益が生じるのかと言えばそうではありませんが、ある一定の職に就く場合や資格を得る際に、欠格事由に該当してしまうこともあります。

また、検察官が略式命令を請求する前には、必ず被疑者に略式手続について詳しく説明し、被疑者の了解を得なければなりませんが、略式手続においては、被疑者被告人が自身の主張を行う機会はありません。

以上のように、略式手続には、メリットおよびデメリットがありますので、そられをよく考えた上で、略式手続に同意するか否かを判断しなければなりません。

そうはいっても、刑事手続には疎く、自分のケースではどちらがいいのかすぐには判断できないという方も多くいらっしゃるでしょう。
そのような場合には、略式手続に同意する前に、一度刑事事件に精通する弁護士に相談されるのがよいでしょう。
上のケースのような初犯の盗撮事件であれば、被害者との示談が成立した場合には不起訴処分となる可能性も十分あります。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件・少年事件を専門とする法律事務所です。
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盗撮事件で不起訴処分に

2020-03-14

盗撮事件不起訴処分となる場合について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所神戸支部が解説します。

~ケース~
兵庫県伊丹市のゲームセンターで、女子高生のスカート内にスマートフォンを差し入れ盗撮したとして、ゲームセンターの従業員に取り押さえられたAさん。
その後、通報を受けて駆け付けた兵庫県伊丹警察署の警察官に、迷惑防止条例違反の疑いで逮捕されました。
Aさんは容疑を認めています。
逮捕の連絡を受けたAさんの家族は、事件について詳しいことが分からず不安になり、刑事事件に強い弁護士に接見を頼みました。
弁護士から接見の報告を受けたAさんの家族は、不起訴処分の可能性について弁護士に聞いています。
(フィクションです)

不起訴処分とは

目撃者や被害者からの通報、被害届の提出、職務質問などを端緒とし、事件が捜査機関に発覚すると、警察による捜査が始まります。
警察が犯人を特定し、逃亡や罪証隠滅のおそれがあると判断されれば、犯人を逮捕することもあります。
警察は、証拠や関係資料を、身体拘束している場合には犯人の身柄と一緒に、検察庁に送ります。
そして、検察官は警察から送られてきた証拠などを検討し、追加の捜査が必要な場合は、警察に支持し捜査を行います。
捜査を終えると、検察官は犯人を起訴するか否かを決めます。
検察官は、全ての事件について起訴するのではありません。
犯人がある罪を犯したと疑う十分な証拠がある場合であっても、起訴しないとする決定を行うこともあるのです。
起訴しないとする決定を「不起訴処分」といいます。

不起訴処分には、主に以下の種類があります。

①罪とならず
そもそも犯罪が成立しない場合には、罪とはならないので、検察官は不起訴とします。

②嫌疑なし
犯罪を認定する証拠がない場合や人違いのケースがこれに当たります。

③親告罪の告訴取り下げ
被害者等による告訴がなければ公訴を提起することができない罪を「親告罪」といいます。
親告罪について、被害者等が告訴を取り下げた場合には、起訴することができませんので、不起訴となります。

④起訴猶予
犯罪を起こしたことが事実であり、その証拠もあるけれども、犯人の年齢や境遇、性格や犯罪
の軽重、情状、犯罪後の情状などを考慮し、公訴の提起を猶予し不起訴とするものです。

不起訴処分の大半は④起訴猶予によるものと言われています。
犯人が初犯で、自分の罪を認めて素直に反省している場合には、起訴猶予に向けた弁護活動を行うことが重要です。

盗撮事件で不起訴処分を獲得するには

痴漢や盗撮事件では、他の犯罪と比べ起訴猶予が認められる可能性が高いので、起訴猶予での不起訴処分獲得を目指した弁護活動を行います。
被害者のいる犯罪については、被害が金銭面で回復されたか、被害者が被疑者に対してどのような感情を抱いているのかといった点が、検察官が処分を決めたり、裁判官が宣告刑を決めるにあたって重要な意味を持ちます。

ですので、盗撮事件のように被害者がいる場合、起訴猶予に向けた最も有効な弁護活動は、被害者と示談をすることと言えます。
示談は、加害者が被害者に対して被害弁償を行い、被害者からの許しをえ、今回の事件については当事者間で解決したとする合意のことです。

示談交渉を行うにあたって、まずは、被害者の連絡先を把握する必要があります。
通常、事件の担当検察官や警察官を通じて、被害者の連絡先を教えてもらうことになりますが、性犯罪事件の場合、検察官や警察官が被疑者やその家族に被害者の連絡先を教えることはありません。
被疑者が直接被害者と連絡をとることで、罪証隠滅のおそれが生じるからです。
また、性犯罪の被害者が直接加害者と連絡をとることに応じるケースは少なく、弁護人限りで、加害者には連絡先は伝えないと約束することで、弁護人に連絡先を教えてくれることが多いです。
被害者との示談交渉にあたっては、被害者の感情に配慮しつつ、加害者の謝罪の言葉や被害弁償の意思を誠実に伝える必要があります。
そのうえで、被害者が示談をするメリット・デメリットを丁寧に説明し、被害者および加害者の両者が納得のいく内容で示談が成立するよう粘り強く交渉していかなければなりません。

被害者との示談交渉には、刑事事件や示談交渉に長けた弁護士に依頼されるのがよいでしょう。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件・少年事件を専門とする法律事務所です。
刑事事件を起こしてお困りの方、被害者との示談交渉にお悩みの方は、一度弊所の弁護士にご相談ください。
無料法律相談初回接見サービスのご予約・お問い合わせは、フリーダイヤル0120-631-881までご連絡ください。

無免許運転で人身事故

2020-03-13

無免許運転人身事故をした場合について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所神戸支部が解説します。

~ケース~
Aさんは、免許の更新を受けずに車の運転を続けていました。
ある日、Aさんは車で外出をしていた際、兵庫県朝来市の交差点で右折しようとしたところ、左側からきたバイクと衝突してしまいました。
幸い、Aさんもバイクの運転手も大きな怪我を負わずに済みましたが、通報を受けて駆け付けた兵庫県朝来警察署の警察官に免許の提示を求められ、免許を提示したところ、Aさんの免許が有効期限切れであることが発覚しました。
(フィクションです)

無免許運転で人身事故を起こしたら

無免許運転について

無免許運転とは、公安委員会の運転免許を受けていないにもかかわらず自動車や原付自転車を運転する行為をいい、運転免許を取得したことがない場合だけでなく、免許停止中の運転や、免許取り消し処分後に免許の再取得なく運転している場合も無免許運転に含まれます。

Aさんの場合、運転免許の更新をし忘れています。
つまり、運転免許の更新を受けず、運転資格が停止した人が運転することになるので、Aさんの場合も無免許運転に該当します。

無免許運転は、道路交通法で次のように禁止されています。

第六十四条 何人も、第八十四条第一項の規定による公安委員会の運転免許を受けないで(第九十条第五項、第百三条第一項若しくは第四項、第百三条の二第一項、第百四条の二の三第一項若しくは第三項又は同条第五項において準用する第百三条第四項の規定により運転免許の効力が停止されている場合を含む。)、自動車又は原動機付自転車を運転してはならない。

無免許運転に対する罰則は、3年以下の懲役又は50万円以下の罰金です。
無免許運転について、交通反則通告制度は適用されませんので、反則金を支払って終わることはできません。

無免許運転による人身事故の場合の刑の加重

上の規定は、無免許運転を行ったことに対するものです。
無免許で人身事故を起こした場合には、無免許運転による罪が加重されることになります。

まずは、人身事故を起こした場合に問われる罪についてみていきましょう。
人身事故を起こした場合、自動車運転処罰法に規定される「過失運転致死傷罪」または「危険運転致死傷罪」が成立する可能性があります。

(1)過失運転致死傷罪

第五条 自動車の運転上必要な注意を怠り、よって人を死傷させた者は、七年以下の懲役若しくは禁錮又は百万円以下の罰金に処する。ただし、その傷害が軽いときは、情状により、その刑を免除することができる。

過失によって交通事故を起こし、人を死傷させてしまった場合に成立します。
前方不注意などのちょっとした不注意が原因で人身事故を起こした場合には、過失運転致死傷罪となることが多いのです。

(2)危険運転致死傷罪

第二条 次に掲げる行為を行い、よって、人を負傷させた者は十五年以下の懲役に処し、人を死亡させた者は一年以上の有期懲役に処する。
一 アルコール又は薬物の影響により正常な運転が困難な状態で自動車を走行させる行為
二 その進行を制御することが困難な高速度で自動車を走行させる行為
三 その進行を制御する技能を有しないで自動車を走行させる行為
四 人又は車の通行を妨害する目的で、走行中の自動車の直前に進入し、その他通行中の人又は車に著しく接近し、かつ、重大な交通の危険を生じさせる速度で自動車を運転する行為
五 赤色信号又はこれに相当する信号を殊更に無視し、かつ、重大な交通の危険を生じさせる速度で自動車を運転する行為
六 通行禁止道路(道路標識若しくは道路標示により、又はその他法令の規定により自動車の通行が禁止されている道路又はその部分であって、これを通行することが人又は車に交通の危険を生じさせるものとして政令で定めるものをいう。)を進行し、かつ、重大な交通の危険を生じさせる速度で自動車を運転する行為
第三条 アルコール又は薬物の影響により、その走行中に正常な運転に支障が生じるおそれがある状態で、自動車を運転し、よって、そのアルコール又は薬物の影響により正常な運転が困難な状態に陥り、人を負傷させた者は十二年以下の懲役に処し、人を死亡させた者は十五年以下の懲役に処する。
2 自動車の運転に支障を及ぼすおそれがある病気として政令で定めるものの影響により、その走行中に正常な運転に支障が生じるおそれがある状態で、自動車を運転し、よって、その病気の影響により正常な運転が困難な状態に陥り、人を死傷させた者も、前項と同様とする。

人身事故でも、飲酒運転、薬物使用運転、技能不足での運転、高速度での運転など、特に悪質な運転が原因である場合には、危険運転致死傷罪が適用される可能性があります。

無免許運転の場合には、過失運転致死傷罪または危険運転致死傷罪よりも刑が加重されることになります。

第六条 第二条(第三号を除く。)の罪を犯した者(人を負傷させた者に限る。)が、その罪を犯した時に無免許運転をしたものであるときは、六月以上の有期懲役に処する。
2 第三条の罪を犯した者が、その罪を犯した時に無免許運転をしたものであるときは、人を負傷させた者は十五年以下の懲役に処し、人を死亡させた者は六月以上の有期懲役に処する。
3 第四条の罪を犯した者が、その罪を犯した時に無免許運転をしたものであるときは、十五年以下の懲役に処する。
4 前条の罪を犯した者が、その罪を犯した時に無免許運転をしたものであるときは、十年以下の懲役に処する。

危険運転致傷罪の法定刑は、15年以下の懲役ですが、無免許運転である場合には、6月以上の有期懲役と刑が加重されます。
また、過失運転致死傷罪の法定刑は、7年以下の懲役もしくは禁錮または100万円以下の罰金ですが、無免許運転であれば、10年以下の懲役となります。

このように、無免許運転人身事故を起こした場合、通常の人身事故を起こした場合よりも重い刑が科せられる可能性があります。
刑の減軽や執行猶予の獲得でお困りであれば、交通事件を含む刑事事件に強い弁護士にご相談されるのがよいでしょう。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件・少年事件を専門とする法律事務所です。
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少年事件の審判手続について

2020-03-10

少年事件審判手続について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所神戸支部が解説します。

~ケース~
兵庫県神崎郡福崎町に住む高校生のAくんは、駅の構内で女子高生のスカート内にスマートフォンを差し入れ盗撮したとして、兵庫県姫路警察署に逮捕されました。
Aくんは、逮捕された日の夜に、Aくんの母親が警察署に迎えに来て家に帰れることになりました。
その後、Aくんは何度か警察署で取り調べを受け、警察官からは「関係書類を検察に送ってから、家庭裁判所に送られることになる。家庭裁判所で審判を受けて、最終的な処分が決まる。」と言われました。
Aくんは、家庭裁判所の審判とはどのようなものなのか分からず心配になり、翌日、AくんとAくんの母親は、少年事件に詳しい弁護士に相談することにしました。
(フィクションです)

少年事件の場合、警察官や検察官は、原則としてすべての事件を家庭裁判所に送致しなければなりません。
家庭裁判所が事件を受理すると、審判条件や非行事実の存否について捜査機関から送られてきた事件記録によって、書記官や裁判官が法的調査を行います。
法的調査というのは、主に事件記録に基づいて、審判条件と非行事実の存否について、法律的な視点から行われる審査・検査のことです。

法的調査の結果、非行事実が存在することについて、裁判官が蓋然的心証を得た場合、原則として調査官に要保護性の判断のために社会調査を命じます。
要保護性というのは、多義的に用いられる用語ですが、概ね次の要素で構成されるものと理解されています。
①再非行の危険性
少年の性格や環境に照らして、将来再び非行に陥る危険性があること。
②矯正可能性
保護処分による矯正教育を施すことによって、再非行の危険性を除去できる可能性。
③保護相当性
保護処分による保護がもっとも有効かつ適切な処遇であること。
調査官は、心理学、教育学、社会学などの専門としており、法律家である裁判官とは異なる観点から、非行少年が持つ問題性を探り、裁判官に調査結果を報告します。

社会調査が終了すると、調査官は、少年鑑別所の鑑別結果通知書などとともに裁判官に調査結果を提出します。
裁判官は、検察官や警察から送られた証拠書類などと併せて、調査官から提出された調査結果を検討してます。
その結果、審判に付することができず、又は審判に付するのが相当でないと認めるときは、審判を開始しない決定をしなければなりません。

他方、少年が非行事実を行った蓋然性があり、調査官による教育的措置を経てもなお少年に要保護性が認められる場合には、審判開始決定がなされます。
ただし、家庭裁判所に事件が送致され、観護措置がとられた事件については、観護措置の要件として審判を開く蓋然性が求められるため、調査命令と共に審判開始決定が出されるのが通例となっています。

少年審判は、刑事裁判とは異なり、審判手続や進行についても裁判官の裁量が大きいのが特徴です。
審判の時間は、非行事実に争いがなく、1回の審判で決定まで言い渡す事件であれば、40~60分ぐらいとなります。
審判の進行は、概ね、次のような順序で行われます。

①人定質問、黙秘権告知、非行事実の告知、それに対する少年・付添人の陳述
開廷後、裁判官は審判廷の在籍者を確認します。
その際、裁判官が少年やその保護者にどこの誰であるかを問い、出廷者が人間違いではないかを確認します。
次に、黙秘権の告知が行われ、裁判官から審判に付すべき事由の要旨が告げられ、これに対する少年の陳述が行われます。
また、少年の付添人に対しても非行事実に対する陳述が求められます。

②非行事実の審理
非行事実に争いのある場合、まずは、非行事実に関する審理を行い、その結果、裁判官が非行事実があるとの心証を得た場合に、要保護性について審理することになります。

③要保護性の審理
要保護性の審理では、少年本人に対する質問から始まり、少年の保護者や審判に在席している関係者に対する質問が行われます。

④調査官、付添人の処遇意見の陳述、少年の意見陳述
調査官と付添人は、裁判官の許可を得て、審判で意見を述べることができます。
最後に、裁判官が少年の意見を求め、少年が陳述します。

⑤決定の言渡し
審判手続がすべて終わると、裁判官が決定を言い渡します。
言渡しでは、まず初めに、裁判官は少年に対する処分の内容について述べます。
その次に、裁判官は、なぜ当該処分を決めたのか、理由を説明します。

概ね、以上のような流れで事件が処理されることになります。

少年事件手続は、刑事事件とは異なりますので、少年事件に精通した弁護士に相談・依頼されるのがよいでしょう。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件・少年事件専門の法律事務所です。
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相手を騙して物をとる:詐欺罪or窃盗罪?

2020-03-08

相手を騙して物をとった場合に、どのような犯罪が成立し得るかについて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所神戸支部が解説します。

~ケース~
Aさんは、兵庫県神戸市西区の宝石店に入り、ショーウィンドウの指輪を見ていたところ、その指輪が欲しくなりました。
Aさんは、店員に対して、指輪を試着させてもらえないかと頼み、店員はAさんに指輪を渡しました。
Aさんは、指輪をはめて、似合うかどうか考えているふりをしていましたが、他の客の対応のために店員が一瞬その場を離れたすきに、Aさんはそのまま店外に逃亡しました。
Aさんがいないことに気づいた店員は、すぐに兵庫県神戸西警察署に通報しました。
(フィクションです)

相手を騙して物をとる行為は、詐欺罪か?窃盗罪か?

相手に嘘をつき、相手から物を取得するケースはいろいろあります。
嘘をついて物を得ることから、詐欺罪が成立することが多いのですが、相手の隙を作るために嘘をつくような場合は詐欺罪ではなく窃盗罪が成立することあります。

まずは、詐欺罪と窃盗罪、それぞれどういった場合に成立するのか、説明していきます。

詐欺罪

刑法第246条 人を欺いて財物を交付させた者は、十年以下の懲役に処する。
2 前項の方法により、財産上不法の利益を得、又は他人にこれを得させた者も、同項と同様とする。

詐欺罪は、(1)人を欺いて財物を交付させた場合(1項詐欺)、およ(2)人を欺いて、財産上不法の利益を得、又は他人にこれを得させた場合(2項詐欺)に成立する罪です。
詐欺罪が成立するためには、①「人を欺く行為」をし、それにより②「相手方が錯誤に陥り」、③「物や財産上の利益が交付され」、④「物や財産上の利益が移転する」といった一連の流れがあることが必要となります。

①欺く
欺く、つまり「欺罔」とは、人を錯誤に陥らせる行為のことです。
「人」を錯誤に陥れることが必要なのであって、「機械」を相手とする行為は該当しません。
欺く行為の手段や方法に制限はなく、言語、態度、動作、文章の方法によっても構いません。
また、欺く行為は、相手が本当のことを知れば、財物を交付しないであろうというべき重要な事項に関することでなければなりません。

②錯誤
錯誤は、観念と信念との不一致をいい、財産的処分行為をするように動機ふけられるものであればよく、法律行為の要素の錯誤であると動機の錯誤であるとを問いません。

③処分行為
相手方の錯誤に基づく財産的処分行為により、財物の占有を取得する「処分行為」が、詐欺罪の成立には必要となります。
つまり、嘘を信じた相手方が、財産を処分する意思をもって財産を占有を行為者が取得したことが求められるのです。

④財物の移転
相手方の財産的処分行為の結果として、行為者側に財産の占有が移転すること、または、行為者または第三者が不法に財産上の利益を取得することが必要です。

窃盗罪

刑法第235条 他人の財物を窃取した者は、窃盗の罪とし、十年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。

窃盗罪は、「他人の財物を窃取した」場合に成立します。
「他人の財物」とは、「他人の占有する他人の財物」のことで、自己の財物といえども、他人の占有に属し、または公務所の命令によって他人が看守しているものは、他人の財物とみなされます。
不動産については、刑法第235条の2の客体となるので、窃盗罪の客体からは除かれます。
ここでいう「占有」というのは、「人が財物を事実上支配し、管理する状態」をいいます。

また、「窃取」とは、占有者の意思に反して財物に対する占有者の占有を排除し、目的物を自己または第三者の占有に移すことをいうと解されています。
窃取の方法や手段に制限はありません。

詐欺罪と窃盗罪の大きな違い

上で見たことを検討すると、詐欺罪と窃盗罪との大きな違いは、詐欺罪には相手方の財産的処分行為があるのに対して、窃盗罪にはそれがないことです。
つまり、詐欺罪と窃盗罪を区別するポイントは、相手方の財産的処分行為があるか否か、更に言えば、財産的処分行為は相手方の錯誤に基づくのですから、行為者の嘘(欺罔)の内容が財産的処分行為に向けられたものか否かという点にあります。

この点を上のケースで考えてみると、Aさんは店員に対して「指輪の試着」を頼んでおり、店員もAさんが「指輪の試着」をするものと信じ、Aさんに指輪を渡しました。
店員は、試着のために指輪を渡しており、Aさんがそのまま持ち去り自分のものにすることまでも許容してはいません。
ですので、店員の財産的処分行為はありません。
また、Aさんが店員に対して「指輪の試着」をしたいと嘘を言ったのは、店員の隙をみて逃走するためのものであり、指輪の引き渡しを求める内容の嘘ではなく、指輪という財物の処分行為に向けられた欺く行為を行っていないため、詐欺罪は成立せず、窃盗罪が成立することになると考えられます。

このように事件の内容によって成立し得る犯罪が異なる場合があります。
刑事事件を起こし、どのような罪に問われるのか分からずご不安な方、その後の対応にお困りの方は、刑事事件・少年事件専門の弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。
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強制性交等事件と中止犯

2020-03-06

中止犯について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所神戸支部が解説します。

~ケース①~
兵庫県兵庫県須磨区の路上で、Aさんは深夜に帰宅途中の若い女性を背後から襲い、近くの空き地に連れて行き、服を無理やり脱がした上で、行為に及ぼうとしました。
しかし、女性の悲痛な顔を見たことで、「可哀そうだ。」と我に返ったAさんは、その場から逃亡しました。
後日、兵庫県須磨警察署は、Aさんを強制性交等未遂の疑いで逮捕しました。
(フィクションです)

~ケース②~
兵庫県神戸市須磨区の路上で、Aさんは深夜に帰宅途中の若い女性を背後から襲い、近くの空き地に連れて行き、服を無理やり脱がした上で、行為に及ぼうとしました。
しかし、その夜は非常に寒かったため、女性の身体に鳥肌がたっており、これを見たことで、性欲が減退したAさんは、その場から逃亡しました。
後日、兵庫県須磨警察署は、Aさんを強制性交等未遂の疑いで逮捕しました。
(フィクションです)

中止犯とは

ケース①もケース②も、いずれもAさんは性交するに至らず、いずれも強制性交等未遂罪で逮捕されています。
未遂犯の場合、既遂(最終的に結果まで発生されたもの。強制性交等罪の場合には、実際に性交した場合をいいます)と比較して、その法定刑を減軽することが「できる」とされています(刑法43条)。
強制性交等罪の場合、法定刑は5年以上の懲役ですので、強制性交等未遂罪の法定刑が、2年6月以上の懲役という形で減軽される「こともある」ということになります。
これに対して、「自己の意思により犯罪を中止したとき」は、「刑を減軽し、又は免除する」とされており(刑法43条但書)、単なる未遂犯の場合と異なり、必ず法定刑が減免されることになっています。
このような場合を、一般に、中止犯と呼んでいます。
なお、中止犯は、自己の意思によって犯罪を中止しなければいけませんから、犯罪が既遂に達しているときには中止犯には当たり得ません。
未遂犯であることが前提となります。

中止犯の減免根拠

なぜ中止犯の場合に、刑が必ず減免されることになっているかについては、学説が分かれています。
よく説明に用いられるのは、政策説と呼ばれるものです。
法律は、できる限り結果の発生を避けることを目標としていますが、犯罪の実行に着手した犯人にも、できる限り最後の結果発生前に思いとどまってほしいと考えています。
そのため、「後戻りのための黄金の架け橋」として中止犯規定を設けておき、犯人に対して、犯罪を途中でやめるよう働きかけをしているというのが、この説の内容です。
これだけですべてを説明できるものではないかもしれませんが、中止犯というのは刑事政策的に設けられた規定であることは否定できないように思えます。

任意性

それでは、「自己の意思により犯罪を中止した」とはどのような場面でしょうか。
先ほど述べた通り、中止犯の規定は、刑事政策的な意図に基づいて設定されているものですから、刑の減免をするのに相応しい場面が選択されることになります。
一般に、この要件を「任意性」と呼んでおり、どのような場合が任意に犯罪を中止したといえるのかについて、判例や学説の集積があります。
この点について裁判例では、同じ立場に立たされた一般人であれば、通常犯行の継続を思いとどまらせるような状況であったかどうかということを基準に判断をしているものがあります。
しかし、判例上明確な定義などはなく、個別具体的な場面に応じて判断されるというほかありません。

中止行為

中止犯が成立するためには、「中止した」ことが要件となります。
実行行為自体が途中である場合には、それ以上行為を継続しなければ結果は発生しないため、行為を止めること自体で中止行為といえますが、既に実行行為が終了して結果が発生する前のような場合には、結果発生を防止するような行為を行う必要があります。
例えば、殺人のため、時限爆弾を仕掛けたというような場合には、実際にその爆弾を撤去するなどしなければ、中止行為として認められないということになります。

それでは、それぞれのケースについて中止犯の規定が適用されるかどうかを考えます。
①のケースは、Aさんが被害者の顔を見てかわいそうと考え、犯行を中止したというものです。一旦強制性交等罪に着手した以上、周りに人がいるとか、被害者に抵抗されるというような事情がない限り、犯人にとって、性交することに特段の障害があったとはいえません。
しかし、今回の場合には、かわいそうに思うという、犯人特有の事情により、犯罪の実行を中止ししたといえるでしょうから、
ケース①の場合には中止犯の規定が適用されると思われます。
これに対し、ケース②は、被害者の鳥肌をみて性欲が減退したというものです。
もちろん、この場合も物理的な障害があったというわけではありませんが、同じ状況に置かれた一般人であっても、性欲が減退するということは十分考えられます。
そのため、このような場合まで、中止犯の規定の恩恵を与えることは適当ではありません。
よって、ケース②の場合には中止犯規定は適用されないと思われます。

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道路交通法違反事件:罰金と反則金の違い

2020-03-04

道路交通法違反事件における罰金反則金の違いについて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所神戸支部が解説します。

前回のブログにおいて、あおり運転が道路交通法違反となる可能性があることを説明しました。
車間距離不保持違反、急ブレーキ禁止違反、安全運転義務違反ともに罰則が設けられています。
しかし、必ずしもこれらの義務違反により刑事罰が科されるとは限りません。

交通反則通告制度について

自動車や原動機付自転車の運転者がした違反行為のうち、反則行為については、一定期間内に反則金を納めることにより、その行為につき刑事裁判、少年の場合は家庭裁判所の審判を受けることなく事件が処理される制度を「交通反則通告制度」といいます。

この制度は、交通手段として自動車が普及するようになり、道路交通法違反事件の件数が増大したことで、検察庁や裁判所の仕事を圧迫するようになったため、関係機関の負担を軽減するために設けられました。

交通反則通告制度の対象となる「反則行為」とは、車両等の運転者が行った道路交通法の第8章の罪に当たる行為のうち、道路交通法の別表第2の上欄に掲げるものをいいます。
つまり、別表第2の上欄に掲げるもののうち、犯罪として成立する行為のことです。
別表第2の上欄に掲げるものとは、比較的軽微なものであって、おおむね現認、明白、典型的なものです。
例えば、一時停止違反、駐車違反、時速30キロ未満の速度超過などです。
無免許運転や酒酔いといった危険性の高いものや警察官の指示命令に違反する行為のような特殊のものについては、除外されます。

車間距離不保持違反に関しては、一般道であれば普通自動車等で反則金は6千円、高速道路では普通自動車等の反則金は9千円です。
急ブレーキ禁止違反の反則金は7千円、安全運転義務違反は9千円です。

交通反則通告制度の対象となる違反をした場合、警察官から現場で「交通反則告知書」、いわゆる「青キップ」と「反則金仮納付書」が交付されます。
告知を受けた日の翌日から7日以内に反則金を納付すれば、手続が終了します。
納付期限を過ぎてしまった場合、通告センターに出頭し、通告書と納付書の交付を受けます。
出頭できなかった場合、通知書と納付書が送付されます。
通告を受けた日の翌日から10日以内に反則金を納付すれば、手続は終了しますが、期限内に納付しない場合には、刑事手続がとられ、交通裁判所または検察庁に呼び出しを受けることになります。
未成年者の場合は、家庭裁判所もしくは検察庁から呼び出されます。

刑事手続がとられた場合

交通反則通告制度が適用されない場合、刑事手続がとられます。
この場合、違反者は「被疑者」となります。
捜査機関による捜査が終了すると、検察官は被疑者を起訴するか否かを判断します。
起訴には、①公判請求、②即決裁判手続の申立て、③略式命令の請求があります。
実際には、事件のほとんどが③の略式手続によって処理されます。

①公判請求は、裁判所に対し、特定の犯罪事実について特定の被告人に対する実体的審理および有罪の判決を求める意思表示です。
公判請求されると、公の裁判で審理され、有罪か無罪か、有罪の場合にはどのような刑罰を受けるべきなのかが決められることになります。

検察官の請求があるとき、簡易裁判所は、公判を開かずに書面審理によって、簡易裁判所が管轄する事件について、100万円以下の罰金または科料を科すことができます。
この手続を「略式手続」といい、簡易裁判所が言い渡す裁判を「略式命令」と呼びます。
公判を開かずに非公開の簡易な手続きで迅速に行われる点がその特徴です。
交通事件のほとんどが略式手続で処理されます。
この略式手続に基づき、略式命令が出されると、刑の言渡しを受けた者は、「罰金」を納めなければなりません。
罰金」は、刑事罰の一種ですので、有罪判決を受けたことが前提となります。
ですので、交通反則通告制度が適用された場合とは異なり、前科が付くことになります。

交通事件で刑事手続がとられ、対応にお困りであれば、交通事件にも対応する刑事事件・少年事件専門の弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所に一度ご相談ください。
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あおり運転で刑事事件~道路交通法違反~

2020-03-03

あおり運転行為により刑事事件道路交通法違反)に発展する場合について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所神戸支部が解説します。

あおり運転の厳罰化への動き

2017年に神奈川県の東名高速道路で、無理やり停止させられた車の夫婦に、後方を走っていたトラックが追突し死亡した痛ましい事故を機に、あおり運転が社会問題となり、その危険性についてメディアでも大きく取り上げられました。
残念ながら、その後も、あおり運転をする者は絶えず、あおり運転に起因する事故や事件が起きています。
警察庁は、厳罰化に向けて道路交通法あおり運転を新たに定義し、違反1回で即免許取り消しとするほか、懲役刑を設ける改正案を国会に提出する予定だとしています。

現行法では、あおり運転は如何なる罪に当たる可能性があるのでしょうか。

あおり運転は何罪に?

道路交通法上、「あおり運転」の定義はありませんが、一般的に「あおり運転」とは、その言葉の通り、周囲を走行する車などに対して煽るように、つまり、他車の運転手等を刺激して、道を譲らせたり、車を停止させたりといった行動に駆り立てるように運転し、道路における交通の危険を生じさせる行為を意味します。
他車を煽る方法は様々ですが、代表的なものを挙げると、車間距離を極端に詰めたり幅寄せを行ったりする行為、必要のないパッシングやクラクションでの威嚇行為、いきなり急ブレーキをかけて後続車を脅かす行為があります。

1.道路交通法違反

あおり運転の運転態様につき、道路交通法違反が成立する可能性があります。

(1)車間距離不保持違反

第二十六条 車両等は、同一の進路を進行している他の車両等の直後を進行するときは、その直前の車両等が急に停止したときにおいてもこれに追突するのを避けることができるため必要な距離を、これから保たなければならない。

前を走っている車が急ブレーキをかけたとしても、その車に追突しない距離を空けて自車を運転しなければなりません。
過去の裁判例によれば、保たなければならない車間距離は、車両等の種類、構造、速度、性能、道路の状況、昼夜の区別、見透しの状況、積載量、制動操作の運転技術等の諸条件によって異なるので、一律に決定することは難しいとしていますが、具体的な状況において社会通念によって判断するほかはないけれども、運転者としては事故の運転技能、道路の状況その他の諸条件を十分に考慮し、先行者の行動に注意を払いながら適切な判断をする必要があるとしています。(名古屋高裁、昭30・3・10)

罰則は、一般道においては、5万円以下の罰金、高速自動車国道等においては、3月以下の懲役または5万円以下の罰金です。

あおり運転の車間距離を極端に詰める行為は、車間距離不保持違反に当たります。

(2)急ブレーキ禁止違反

第二十四条 車両等の運転者は、危険を防止するためやむを得ない場合を除き、その車両等を急に停止させ、又はその速度を急激に減ずることとなるような急ブレーキをかけてはならない。

ここでいう「危険を防止するためやむを得ない場合」とは、走行している車両の直前に歩行者が飛び出してきた場合、左側端を走行していた自転車が走行している車両の直前に急に右折をはじめ入ってきた場合、または道路の損壊や道路上の障害物をその直前で発見した場合などをいい、目前の危険を防止するためやむを得ない場合を指します。

罰則は、3月以下の懲役または5万円以下の罰金です。

(3)安全運転義務違反

第七十条 車両等の運転者は、当該車両等のハンドル、ブレーキその他の装置を確実に操作し、かつ、道路、交通及び当該車両等の状況に応じ、他人に危害を及ぼさないような速度と方法で運転しなければならない。

「車両等の運転手」は、車両等を運転し又は操縦することができる免許を受けている者だけでなく、免許を受けていない者が運転している場合も「車両等の運転手」に含まれます。
①装置の確実な操作、②他人に危険を及ぼさないような速度、③他人に危害を及ぼさないような方法の3つの義務のうち一つでも欠いていれば、安全運転義務に違反することになります。

①安全操作履行義務
ハンドル、ブレーキその他の送致を確実に操作し、その機能を正しく発揮することができるようにしなければなりません。
②安全状態確認義務
道路、交通及び当該車両等の状況に応じて、他人に危害を及ぼさないような速度と方法で運転する義務です。

ブレーキペダルの踏み間違えやハンドル操作の過ち、漫然運転、脇見運転、安全不確認など交通事故の主要な原因は、安全運転義務違反によるものと言われています。
あおり運転においては、幅寄せ行為等が安全運転義務違反に当たります。

罰則は、3月以下の懲役または5万円以下の罰金です。

現行法において、あおり運転により道路交通法違反が成立する場合、必ずしも刑事事件として刑事手続が進められ、刑事罰を科されるとは限りません。
交通反則通告制度に従い、反則金の納付により公訴を提起されない場合があります。
もちろん、あおり運転が原因で人身事故を起こした場合には、過失運転致死傷罪や危険運転致死傷罪といった反則通告制度が適用されない重い罪に問われることになりますので、刑罰が科される可能性があります。
次回は、罰金と反則金の違いについて解説します。

あおり運転による交通事件を起こしお困りの方は、交通事件にも対応する弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。
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少年事件における私選弁護人・付添人

2020-03-02

少年事件における私選弁護人付添人について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所神戸支部が解説します。

~ケース~
兵庫県西宮警察署は、特殊詐欺事件に関与したとして少年Aくん(18歳)を詐欺容疑で逮捕しました。
Aくんは、警察官から、弁護人を付けれることを聞き、国選弁護人を選任することにしました。
逮捕の連絡を受けたAくんの両親は、刑事事件に強い弁護士に相談し、すぐに接見に行ってもらうことにしました。
両親が依頼した弁護士と接見をしているAくんは、弁護士に国選弁護人私選弁護人の違いについて聞いています。
(フィクションです)

少年事件の流れについて

Aくんは、特殊詐欺に関与したとして兵庫県西宮警察署に逮捕されました。
特殊詐欺の場合、逮捕後勾留となる可能性が高いと言えます。
ですので、事案によって異なりますが、10日間の勾留の後、勾留延長され20日の勾留延長満期日にAくんの身柄と共に事件が家庭裁判所に送致されることになります。
もちろん、行った犯罪の数が多ければ別件で再逮捕され、勾留期間が更に延長となる可能性はあります。
家庭裁判所に送致されると、観護措置がとられ、身柄は少年鑑別所に収容されることになります。
家庭裁判所は事件を受理すると、事件が係属している間いつでも観護措置をとることができます。
観護措置には、家庭裁判所の調査官の観護に付する観護措置と初年鑑別所に収容する観護措置とがありますが、実務上前者はほとんどとられておらず、観護措置という場合には後者を指すものとされます。
捜査段階で逮捕・勾留されている少年の場合、家庭裁判所に送致されるとそのまま観護措置がとられることがほとんどですので、Aくんも送致後少年鑑別所に収容される可能性が高いでしょう。
その後、調査官による調査、少年審判を経て、少年に対して処分が言い渡されることになります。

弁護人と付添人

1.弁護人

弁護人とは、刑事手続において被疑者・被告人が正当に権利を行使し、正当な利益を保護するための支援者・代弁者です。
事件の発覚から家庭裁判所送致までの被疑者段階では、少年と成人の手続に顕著な差異はありません。
少年であっても、少年または少年と一定の関係にある者は、いつでも、弁護人を選任することができます。(刑事訴訟法第30条)

弁護人には、「私選弁護人」と「国選弁護人」とがあります。

◇私選弁護人◇

少年または少年の家族などから選任された弁護人で、弁護士費用は自己負担となります。
身体拘束の有無にかかわらず、被疑者その他の選任権者は、いつでも弁護人を選任することができます。

◇国選弁護人◇

捜査段階においては、少年事件も成人事件と同様に、刑事訴訟法の適用を受けます。
被疑者国選弁護人が選任される要件に該当する場合には、国がその費用を負担する国選弁護人を選任することができます。
被疑者国選弁護人が選任される要件とは、以下のものです。
・対象事件が、「死刑又は無期若しくは長期3年を超える懲役若しくは禁固に当たる事件」。
・少年が「貧困その他の事由により弁護人を選任することができない」。
被疑者国選弁護人制度は、逮捕後勾留前の段階では、利用することはできません。
少年事件では、「勾留に代わる観護措置」により少年鑑別所に収容された場合にも、被疑者国選弁護人の選任が可能です。
被疑者国選弁護人制度は、身体拘束されていない在宅事件には適用されません。

少年の場合、学生であれば資力は乏しく、対象事件が該当するのであれば国選弁護人を選任できることが多いでしょう。

2.付添人

付添人は、少年の権利を擁護し、その代弁者としての役割と、少年の更生に向けて家庭裁判所と協力し援助する役割を担う者です。
少年が家庭裁判所に送致された後、少年及び保護者は、家庭裁判所の許可を得て、付添人を選任することができます。
ただし、弁護士を付添人とする場合には、家庭裁判所の許可は要りません。
少年事件においては、捜査段階で弁護人であっても、家庭裁判所送致後に、新たに付添人として選任する必要があります。
付添人にも、「私選付添人」と「国選付添人」とがあります。

◇私選付添人◇

少年及び保護者は、自ら付添人を選任することができます。
捜査段階で私選弁護人を選任している場合であっても、弁護人選任の効力は家庭裁判所送致時に失われるので、同じ弁護士を付添人として選任するのであっても、家庭裁判所送致後に改めて家庭裁判所に付添人選任届を提出しなければなりません。

◇国選付添人◇

私選弁護人の場合と同様に、捜査段階で被疑者国選弁護人の選任効力は失われるので、被疑者国選弁護人が当然に国選付添人になるわけではありません。
平成26年施行の改正少年法によって国選付添対象事件の範囲が拡大し、被疑者国選弁護対象事件と同じ範囲にまで拡大されましたが、国選付添人を選任するか否かは、家庭裁判所の裁量に委ねられています。
家庭裁判所は、犯罪少年又は触法少年のうち、「死刑又は無期若しくは長期3年を超える懲役若しくは禁固に当たる罪」に該当する非行に及んだ者について、「観護措置」がとられており、弁護士の付添人がいない場合に、事案の内容、保護者の有無その他の事情を考慮して、審判の手続に弁護士である付添人が関与する必要があると認めるときは、弁護士である付添人を付けることができます。
ただし、検察官関与決定がなされた事件で、少年に弁護士である付添人がいないときは、家庭裁判所は弁護士である付添人を付けなければなりません。

少年事件も、成人の刑事事件と同様に、少年の権利・利益の擁護や少年の更生に向けた活動を行う弁護士の役割は大きいと言えるでしょう。
しかし、医者にも内科医や外科医といった専門性があるように、必ずしもすべての弁護士が少年事件・刑事事件に精通しているわけではありません。
少年事件・刑事事件でお困りであれば、専門の弁護士にご相談されるのがよいでしょう。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、少年事件・刑事事件を専門とする法律事務所です。
無料法律相談初回接見サービスのご予約・お問い合わせは、フリーダイヤル0120-631-881までご連絡ください。

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