相手を騙して物をとる:詐欺罪or窃盗罪?

2020-03-08

相手を騙して物をとった場合に、どのような犯罪が成立し得るかについて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所神戸支部が解説します。

~ケース~
Aさんは、兵庫県神戸市西区の宝石店に入り、ショーウィンドウの指輪を見ていたところ、その指輪が欲しくなりました。
Aさんは、店員に対して、指輪を試着させてもらえないかと頼み、店員はAさんに指輪を渡しました。
Aさんは、指輪をはめて、似合うかどうか考えているふりをしていましたが、他の客の対応のために店員が一瞬その場を離れたすきに、Aさんはそのまま店外に逃亡しました。
Aさんがいないことに気づいた店員は、すぐに兵庫県神戸西警察署に通報しました。
(フィクションです)

相手を騙して物をとる行為は、詐欺罪か?窃盗罪か?

相手に嘘をつき、相手から物を取得するケースはいろいろあります。
嘘をついて物を得ることから、詐欺罪が成立することが多いのですが、相手の隙を作るために嘘をつくような場合は詐欺罪ではなく窃盗罪が成立することあります。

まずは、詐欺罪と窃盗罪、それぞれどういった場合に成立するのか、説明していきます。

詐欺罪

刑法第246条 人を欺いて財物を交付させた者は、十年以下の懲役に処する。
2 前項の方法により、財産上不法の利益を得、又は他人にこれを得させた者も、同項と同様とする。

詐欺罪は、(1)人を欺いて財物を交付させた場合(1項詐欺)、およ(2)人を欺いて、財産上不法の利益を得、又は他人にこれを得させた場合(2項詐欺)に成立する罪です。
詐欺罪が成立するためには、①「人を欺く行為」をし、それにより②「相手方が錯誤に陥り」、③「物や財産上の利益が交付され」、④「物や財産上の利益が移転する」といった一連の流れがあることが必要となります。

①欺く
欺く、つまり「欺罔」とは、人を錯誤に陥らせる行為のことです。
「人」を錯誤に陥れることが必要なのであって、「機械」を相手とする行為は該当しません。
欺く行為の手段や方法に制限はなく、言語、態度、動作、文章の方法によっても構いません。
また、欺く行為は、相手が本当のことを知れば、財物を交付しないであろうというべき重要な事項に関することでなければなりません。

②錯誤
錯誤は、観念と信念との不一致をいい、財産的処分行為をするように動機ふけられるものであればよく、法律行為の要素の錯誤であると動機の錯誤であるとを問いません。

③処分行為
相手方の錯誤に基づく財産的処分行為により、財物の占有を取得する「処分行為」が、詐欺罪の成立には必要となります。
つまり、嘘を信じた相手方が、財産を処分する意思をもって財産を占有を行為者が取得したことが求められるのです。

④財物の移転
相手方の財産的処分行為の結果として、行為者側に財産の占有が移転すること、または、行為者または第三者が不法に財産上の利益を取得することが必要です。

窃盗罪

刑法第235条 他人の財物を窃取した者は、窃盗の罪とし、十年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。

窃盗罪は、「他人の財物を窃取した」場合に成立します。
「他人の財物」とは、「他人の占有する他人の財物」のことで、自己の財物といえども、他人の占有に属し、または公務所の命令によって他人が看守しているものは、他人の財物とみなされます。
不動産については、刑法第235条の2の客体となるので、窃盗罪の客体からは除かれます。
ここでいう「占有」というのは、「人が財物を事実上支配し、管理する状態」をいいます。

また、「窃取」とは、占有者の意思に反して財物に対する占有者の占有を排除し、目的物を自己または第三者の占有に移すことをいうと解されています。
窃取の方法や手段に制限はありません。

詐欺罪と窃盗罪の大きな違い

上で見たことを検討すると、詐欺罪と窃盗罪との大きな違いは、詐欺罪には相手方の財産的処分行為があるのに対して、窃盗罪にはそれがないことです。
つまり、詐欺罪と窃盗罪を区別するポイントは、相手方の財産的処分行為があるか否か、更に言えば、財産的処分行為は相手方の錯誤に基づくのですから、行為者の嘘(欺罔)の内容が財産的処分行為に向けられたものか否かという点にあります。

この点を上のケースで考えてみると、Aさんは店員に対して「指輪の試着」を頼んでおり、店員もAさんが「指輪の試着」をするものと信じ、Aさんに指輪を渡しました。
店員は、試着のために指輪を渡しており、Aさんがそのまま持ち去り自分のものにすることまでも許容してはいません。
ですので、店員の財産的処分行為はありません。
また、Aさんが店員に対して「指輪の試着」をしたいと嘘を言ったのは、店員の隙をみて逃走するためのものであり、指輪の引き渡しを求める内容の嘘ではなく、指輪という財物の処分行為に向けられた欺く行為を行っていないため、詐欺罪は成立せず、窃盗罪が成立することになると考えられます。

このように事件の内容によって成立し得る犯罪が異なる場合があります。
刑事事件を起こし、どのような罪に問われるのか分からずご不安な方、その後の対応にお困りの方は、刑事事件・少年事件専門の弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。
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