外国人事件(不法残留、不法就労、偽造在留カード)について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所神戸支部が解説します。
~ケース~
研修生として日本に入国した外国籍のAさんは、在留期間を過ぎても日本で生活していました。
知り合いを通じて、偽造在留カードを取得し、Aさんは兵庫県加西市の工場に勤務していました。
ある日、兵庫県加西警察署の警察官からの職務質問を受けた際に、Aさんは持っていた偽造在留カードを提示しました。
提示された在留カードを見て不審に思った警察官が、警察署までAさんを任意同行し、事情を聞いたところ、偽造であることを認める発言をしたため、そのままAさんを逮捕しました。
(フィクションです)
一昔前と比べて、町で外国から来られた方をよく見かけるようになりました。
昨年の4月には、特定技能の在留資格が新たに創設されるなど、ますます多くの外国人が日本に滞在していくものと予想されます。
それに伴い、外国人が事件に巻き込まれるケースも増加しています。
今回は、外国人が日本で生活するにあたり、特に留意すべき刑事事件として、出入国管理法に係る事件について説明します。
不法在留と不法残留
「不法在留」や「不法残留」という言葉を、一度は耳にされていることと思います。
入管法(「出入国管理及び難民認定法」の略称)が定める罰則の中でも、よくあるケースは、「不法在留」と「不法残留」です。
「不法在留」は、日本に不法に入国または上陸した者が、上陸後も引き続き日本に在留することです。
入管法70条2項は、不法在留罪の罰則について規定しており、法定刑は3年以下の懲役もしくは禁錮または300万円以下の罰金で、懲役刑等と罰金刑は併科されることがあります。
一方、「不法残留」は、在留期間の更新または変更をすることなく在留期間を経過して日本に滞在し続けることです。
いわゆる「オーバーステイ」のことです。
入国は正規の手続を踏んでいる点で不法在留とは異なります。
入管法70条1項5号は、不法在留罪の刑罰として、3年以下の懲役もしくは禁錮または300万円以下の罰金、およびその併科を科すとしています。
また、偽りその他不正な手段により上陸許可を受けて上陸したり、在留資格の変更許可を受ける、在留期間の更新許可を受けたりした場合なども、3年以下の懲役もしくは禁錮または300万円以下の罰金、あるいはその両方が科されることがあります。
上記ケースでは、研修生として日本にやってきたAさんは在留期間を過ぎたにもかかわらず更新等の手続をせず日本に滞在し続けている点で、「不法残留」罪に当たるでしょう。
不法就労
在留資格は、その外国人が行おうとする活動を考慮して付与されます。
取得した在留資格で日本に滞在する外国人は、与えられた在留資格に対応する活動以外の就労活動を行うことは認められていません。
在留資格に対応する活動以外の就労活動を行うと、資格外活動となり、不法就労とされ、処罰対象となります。
資格外活動を「専ら」行っていると明らかに認められる場合は、3年以下の懲役もしくは禁錮または300万円以下の罰金に処せられる可能性があります。
また、「専ら」行っていると明らかに認められる場合ではないが、資格外活動を行った者に対して、1年以下の懲役若しくは禁錮または200万円以下の罰金を科すものとされます。
いずれも、懲役・禁錮と罰金の両方が科せられる可能性があります。
偽造在留カード
3か月を超えて滞在する外国人に対して、「在留カード」が交付され、その常時携帯義務、提示義務等が課されます。
平成21年に入管法が改正され、それまでの外国人登録制度が廃止され、在留カード制度が創設されました。
これに伴い、在留カード偽造罪等が入管法に新設されました。
在留カードに関する主な罰則は、次のとおりです。
①偽造・変造
行使の目的で、在留カードを偽造し、または変造した者は、1年以上10年以下の懲役に処する。
未遂も処罰される。
②行使
偽造・変造の在留カードを行使した者は、1年以上10年以下の懲役に処する。
未遂も処罰される。
③提供・収受
行使の目的で、偽造・変造の在留カードを提供し、または収受した者は、1年以上10年以下の懲役に処する。
未遂も処罰される。
④所持
行使の目的で、偽造・変造の在留カードを所持した者は、5年以下の懲役または50万円以下の罰金に処する。
⑤準備
偽造・変造の犯罪行為の用に供する目的で、器機または原料を準備した者は、3年以下の懲役または50万円以下の罰金に処する。
⑥他人名義の在留カードの利用
他人名義の在留カードを行使した者、行使の目的で他人名義の在留カードを提供・収受・所持した者、行使の目的で自己名義の在留カードを提供した者は、1年以下の懲役または20万円以下の罰金に処する。
所持に係るもの以外は未遂も処罰される。
外国人が関与する入管法に係る事件の代表的なものをご紹介しました。
次回のブログでは、入管法関係事件で外国人が逮捕された後の流れについて説明します。
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