人に犯罪を依頼したら

2019-06-28

人に犯罪を依頼したら

~ケース~
海外に住む妻Vさんが、現地で何者かに銃で射殺される事件が起きました。
現地の警察は、Vさんを射殺したとされる被疑者を2名逮捕しました。
取調べにおいて、被疑者らは兵庫県に住むVさんの夫のAさんからVさんを殺すよう依頼された旨を供述していることが明らかになりました。
兵庫県警察は、殺人の容疑でVさんの夫であるAさんを逮捕しました。
(朝日新聞デジタル 2019年6月14日5時00分掲載記事を基にしたフィクションです)

他人に犯罪を依頼した場合に問われる刑事責任とは

殺害依頼と聞くと、「殺し屋」などが出てくるドラマや映画の話だと思ってしまいますが、現実でも起こり得る話なのです。
このように、自らが実際に犯行に及ばないけれども、他人に犯罪を実行するよう依頼すると、依頼者に如何なる刑事責任が問われるのでしょうか。
ここでは、上記ケースを例に人を殺すことを依頼した場合で考えてみましょう。

まず、実際に犯行に及んだ者(正犯)は、人を殺意を持って殺したのですから、殺人罪が成立します。
それでは、殺人の依頼者はどうでしょうか。

1.殺人罪の教唆犯

教唆犯については、刑法第61条に規定されています。

第六十一条 人を教唆して犯罪を実行させた者には、正犯の刑を科する。

教唆は、「人を教唆して犯罪を実行させた」ことで成立します。
人に犯罪行為を遂行する意思を生じさせて、それに基づき犯罪を実行させることです。
つまり、教唆行為によって、正犯における犯罪行為を遂行しようとする意思が惹起され、その意思に基づいて犯罪を実行し、構成要件該当事実(殺人罪の場合には、人を殺すこと)の発生という、一連の因果関係が肯定されることが必要となります。
教唆行為は、黙示的でもよく、利益の供与、誘導、強制、威嚇、哀願等、その手段方法は問いません。
教唆犯の法定刑は、正犯のそれと同じですので、教唆犯であっても起訴され有罪判決を受ければ、死刑または無期もしくは5年以上の懲役刑が科される可能性があるのです。

2.共謀共同正犯

人の殺人を依頼した場合の依頼者の刑事責任について、共謀共同正犯となることも考えられます。
「共謀共同正犯」とは、複数人が一定の犯罪を実行することを共謀し、その共謀した者の中の一部の者が共謀した犯罪の実行に出た場合、共謀に参加したすべての者について共同正犯としての罪責が認められる共犯形態をいいます。
「共同正犯」の一類型が「共謀共同正犯」です。
「共同正犯」というのは、二人以上が共同して犯罪を実行することです。

第六十条 二人以上共同して犯罪を実行した者は、すべて正犯とする。

共同正犯者はすべて正犯とされる点で、教唆犯とは異なります。
共謀共同正犯の成立要件は、次のとおりです。
①共謀の存在
②共謀に基づき、共謀者の全部または一部の者が実行行為をおこなったこと
つまり、2人以上の者が特定の犯罪をおこなうため、共同意思の基に一体となって互いに他人の行為を利用し、各自の意思を実行に移すことを内容とした謀議をなし、よって犯罪を実行した事実が認められなければならないのです。

殺害を依頼した依頼者が犯罪にどのように関与したかによって殺人の教唆犯となるか共謀共同正犯となるかは異なります。
いずれにせよ、法定刑はどちらも同じです。

殺人事件における弁護活動については、容疑を認める場合と否認する場合とで異なります。
容疑を否認している場合には、教唆も共謀もしておらず殺人罪を犯していない、殺意がないことを立証し、殺人罪が成立しない旨を主張し、無罪獲得に向けた活動を行います。
容疑を認めている場合には、他の刑事事件と比べて起訴猶予による不起訴処分の獲得の可能性は著しく低いと言えるでしょう。
ですので、公判請求されることを前提に、情状証拠の収集に努め、量刑の軽減を目指す弁護活動が中心となります。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、殺人罪等の暴力事件を含めた刑事事件専門の法律事務所です。
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