淫行条例違反と児童福祉法違反
淫行条例違反と児童福祉法違反について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所神戸支部が解説します。
~ケース~
兵庫県尼崎市の学校で臨時教師として勤務するAさん(23歳)は、勤務校の女子生徒(16歳)と付き合うようになりました。
二人が付き合い始めてから半年ほど経ったとき、女子生徒の誘いでホテルに行き、性行為をしました。
その後、二人の関係はしばらく誰にも発覚しなかったのですが、Aさんが別の学校に赴任することとなり、女子生徒に別れを告げました。
しかし、女子生徒は分かれることに納得がいかず、ひどく落ち込んでしまいました。
心配した女子生徒の両親が、女子生徒から話を聞いたことで二人の関係が発覚し、両親は学校と兵庫県尼崎東警察署に相談しました。
Aさんは、警察から話が聞きたいと言われており、自分がどのような罪に問われるのか不安で仕方ありません。
(フィクションです)
18歳未満の者とみだらな行為をした場合
18歳未満の青少年と性交等のみだらな行為をした場合に問われ得る罪としては、まず「淫行条例違反」が考えられます。
「淫行条例」とは、青少年の健全な保護育成を図ることを目的として各地方公共団体が定めた青少年保護育成条例(兵庫県では、「青少年愛護条例」という名称)の中にある青少年との淫行を禁止する条文の通称です。
兵庫県の青少年愛護条例では、第21条で「青少年に対し、みだらな性行為又はわいせつな行為」をすることを禁止しています。
青少年愛護条例における「青少年」とは、18歳未満の者です。
青少年愛護条例で禁止している「みだらな性行為」について、過去の最高裁判決による「淫行」(=「みだらな行為」)の解釈では、
「青少年を誘惑し、威迫し、欺罔し又は困惑させる等その心身の未成熟に乗じた不当な手段により行う性交又は性交類似行為のほか、青少年を単に自己の性的欲望を満足させるための対象として扱っているとしか認められないような性交又は性交類似行為をいうものと解するのが相当である」
とされています。
また、「わいせつな行為」についてですが、過去の判例では、
「徒に性欲を興奮または刺激せしめ、且つ普通人の正常な性的羞恥心を害し、善良な性的道義観念に反すること」
と定義しています。
18歳未満と知りながら、金銭のやりとりはなく性行為をした場合、淫行条例違反に問われる可能性があります。
たとえ交際関係にあったとしても、両者の年齢差、性行為に至る過程、交際の態様などの要件が考慮された結果、淫行条例違反か否かが判断されます。
さて、上記ケースのように二人の関係が教師と生徒だった場合はどうでしょうか。
この場合、児童福祉法違反(児童淫行罪)に問われる可能性があります。
児童福祉法第34条1項6号は、「児童に淫行をさせる行為」を禁止しています。
この「児童に淫行をさせる行為」については、東京高等裁判所の判例によると、
「…淫行を「させる行為」とは、児童に淫行を強制する行為のみならず、児童に対し、直接であると間接であると物的であると精神的であるとを問わず、事実上の影響力を及ぼして児童が淫行することに原因を与えあるいはこれを助長する行為をも包含するものと解される。…淫行をする行為に包摂される程度を超え、児童に対し、事実上の影響力を及ぼして淫行をするように働きかけ、その結果児童をして淫行をするに至らせることが必要であるものと解される。」
とされます。
ですので、教師と生徒の師弟関係の実質的影響力を行使して性交等を行ったと判断される場合には、児童福祉法違反の罪に該当することになるでしょう。
当該罪に対しては、10年以下の懲役若しくは300万円以下の罰金又はそれらの併科が科される可能性があります。
淫行条例違反に対する法定刑が2年以下の懲役又は100万円以下の罰金ですので、児童福祉法違反のほうが重くなっています。
淫行条例違反または児童福祉法違反事件で、加害者となってしまった場合には、被害者との示談締結が重要な弁護活動のひとつとなります。
しかし、被害者本人は未成年であるため、実際にはその保護者と示談交渉を行う必要があります。
被害者の保護者は、被害者以上に加害者に対して怒りを感じていることが多いため、示談交渉には弁護士を介して行うことをお勧めします。
兵庫県の淫行条例違反事件・児童福祉法違反事件でお困りの方は、刑事事件専門の弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。
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