刑事事件で正当防衛を主張

2019-12-17

違法性阻却事由の正当防衛について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所神戸支部が解説します。

~ケース~
兵庫県明石市の路上で、いきなり背後から知らない男性に抱きつかれたAさんは、必死に抵抗しようとしました。
しかし、男性は果物ナイフをAさんに突きつけ、「だまらんと、これで殺すぞ。」などと脅し、Aさんを人気のない河川敷に連れて行き、押し倒しました。
男性は、Aさんの身体を触り、服の中にも手を入れてきたので、Aさんは「このままじゃ犯される。」と思った時、男性が果物ナイフを手から離し地面に置いていることに気が付きました。
とっさに、Aさんはその果物ナイフを手に取り、男性の太ももに刺しました。
痛みで男性がひるんだ隙にAさんは急いで逃げ、最寄りの駐在所に駆け込みました。
兵庫県明石警察署が現場に駆け付けた時には、男性はすでに意識がなく、搬送先の病院で死亡が確認されました。
警察は、Aさんを傷害致死の容疑で神戸地方検察庁に送検しました。
(実際の事件を基にしたフィクションです。)

犯罪が成立するには

「犯罪」は、一般的に、「構成要件に該当する、違法で有責な行為」と理解されています。
つまり、犯罪が成立するためには、以下の要件を充たしていなければなりません。
①人の行為であること。
②法律により犯罪として決められた行為類型(構成要件)に該当すること。
③構成要件に該当する行為が違法であること。
④構成要件に該当し、違法である行為が有責に行われたこと。

上記ケースの場合、Aさんに対して傷害致死罪が問えるか否かが問題となっています。
傷害致死罪は、刑法第205条に以下のように規定されています。

第二百五条 身体を傷害し、よって人を死亡させた者は、三年以上の有期懲役に処する。

傷害致死罪の構成要件は、人の身体を傷害した結果、人を死なせることです。
Aさんは、男性が所持していた果物ナイフで男性の太ももを刺し、大量出血で死なせてしまったということであれば、傷害致死罪の構成要件に該当していると考えられるでしょう。
しかし、Aさんは、男性に果物ナイフで脅された上で襲われていたため、どうにかして逃げなければという思いから、視界に入った果物ナイフで男性の太ももを刺した、ということですが、このことは③の違法性の要件を充たさないと言えるのでしょうか。

違法性阻却事由:正当防衛について

構成要件に該当する行為について、刑法上の禁止を解除し、違法性を失わせる特段の事情を「違法性阻却事由」といいます。
違法性阻却事由として刑法に規定されたものとしては、
・正当行為
正当防衛
・緊急避難
があります。

ほとんどの方が「正当防衛」という言葉を聞いたことがあるのではないでしょうか。
正当防衛については、刑法第36条に次のように規定されています。

第三十六条 急迫不正の侵害に対して、自己又は他人の権利を防衛するため、やむを得ずにした行為は、罰しない。
2 防衛の程度を超えた行為は、情状により、その刑を減軽し、又は免除することができる。

つまり、正当防衛とは、「急迫不正の侵害」に対して、「自己又は他人の権利を防衛するため」「やむを得ずにした行為」です。

1.急迫不正の侵害

◇侵害◇
「侵害」とは、権利を侵害する危険をもたらすものをいいます。

◇急迫性◇
「急迫」とは、法益の侵害が現に存在しているか、または間近に押し迫っていることを意味します。

◇不正な侵害◇
ここでいう「不正」というのは、違法であることを意味します。

2.自己又は他人の権利

「自己又は他人の権利」の「権利」は、明確な権利性を有するものだけでなく、法律上保護に値する利益であれば足りると理解されています。

3.防衛の意思

正当防衛は、「防衛するため」の行為でなければなりません。
しかし、防衛行為であるためには、客観的に防衛行為としての性質をゆうしていればよいのか、それとも、防衛の意思で当該行為がなされなければならないのか、という問題となります。
判例は、防衛の意思を正当防衛の要件と解しており、憤激・逆上したからといって防衛の意思は直ちに失われず、攻撃の意思が併存していても防衛の意思は認められ得るとしています。
ただし、「攻撃を受けたのに乗じ積極的な加害行為に出たなどの特別な事情」があるときには防衛の意思は否定され、「防衛に名を借りて新会社に対し積極的に攻撃を加える行為」は防衛の意思を欠くと解しています。

4.やむを得ずにした行為

「やむを得ずにした行為」の意義について、正当防衛の成立要件として、必要性および相当性の両方を必要とするのが判例および通説です。

◇必要性◇
「やむを得ずにした行為」というためには、必ずしもその行為が唯一の方法であることまで必要ではなく、また、厳格な法益の権衡も要求されませんが、少なくとも相手に最小の損害を与える方法を選ぶことが求められます。

◇相当性◇
相当性に関して、判例は、どのような「結果」が生じたのかという点よりも、どのような「手段」がとられたのかという点に着目して判断しています。
「素手」対「素手」であったのか、「凶器」対「凶器」であったのか、といったように、行為様態と防衛行為の危険性の比較衡量によって相当性を判断しているものが多くなっています。
相当性については、武器の対等性の他、侵害者・防衛行為者の身体的条件、加害行為の態様、防衛行為の危険性・性質、代替手段の有無等の事情を考慮して判断されます。

上記ケースにおいて、Aさんが正当防衛を主張した場合、「やむを得ずにした行為」の相当性の点が争われるのではないかと考えられます。
ですので、上述した相当性について判断する際に考慮される事情について、被疑者・被告人側に有利な事情を示し、正当防衛が認められるよう動くことが重要です。

そのような活動は、刑事事件に精通した弁護士に任せるのがよいでしょう。
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