交通事故で逮捕
交通事故を起こした場合に成立し得る罪について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所神戸支部が解説します。
~ケース~
Aさんは深夜、兵庫県加古郡稲美町の交差点を左折する際、左から横断中の歩行者を見落とし、横断中の歩行者に当たってしまいました。
運転前に飲酒していたAさんは、事故を起こしたことに動揺していた上に、飲酒運転がバレたら大変だと焦り、そのまま現場を立ち去りました。
翌日、防犯カメラの映像から犯人を特定した兵庫県加古川警察署は、Aさんの自宅を訪れ、Aさんを逮捕しました。
(フィクションです)
交通事故を起こしたら~成立し得る罪とは~
1.物損事故の場合
物損事故を起こした場合、物損事故それ自体については刑事責任が問われることはありません。
しかし、物損事故を起こしたにもかかわらず、その後警察に報告せず、道路上危険を防止する措置を怠った場合(つまり「当て逃げ」)には、道路交通法違反が成立する可能性があります。
報告義務違反の法定刑は、3月以下の懲役または5万円以下の罰金で、道路上の危険防止措置義務違反の法定刑は、1年以下の懲役または10万円以下の罰金です。
2.人身事故の場合
人身事故を起こした場合、以下の犯罪が成立する可能性があります。
過失運転致死傷罪
自動車を運転する上で必要な注意を怠って、人を負傷または死亡させた場合に成立する犯罪です。
ここの言う「過失」とは、車間距離を見誤ってブレーキをかけるのが遅くなった場合や、赤信号を見落としていた場合など、車を運転するに当たって気をつけなけばいけないことをしていなかった場合をいいます。
ですので、上記ケースのように、横断中の歩行者を見落として巻き込んでしまった場合には、本罪が成立するでしょう。
過失運転致死傷罪の法定刑は、7年以下の懲役或いは禁錮または100万円以下の罰金です。
しかし、飲酒運転をしていた場合、その影響の程度によっては、危険運転致死傷罪が成立する可能性もあります。
危険運転致死傷罪
以下に該当する危険な運転をし、人を負傷または死亡させた場合に成立する罪です。
・アルコールや薬物の影響を受けて正常な運転が困難な状況で自動車を走行させる行為
・進行を制御することが困難なのどの速度で自動車を走行させる行為
・進行を制御する技量を有しないで自動車を走行させる行為
・人や自動車などの通行を妨害する目的で、それらに著しく接近し、重大な交通の危険を生じさせる速度で自動車を運転する行為
・赤信号を無視し、重大な交通の危険を生じさせる速度で自動車を運転する行為
・通行禁止道路を走行し、重大な交通の危険をしょうじさせる速度で自動車を運転する行為
アルコールの影響で「正常な運転が困難な状況」というのは、前方の注視が困難になったり、意図したとおりの時期や加減でハンドルやブレーキを操作するのが困難になったりするなど、現実に道路や交通の状況に応じた運転操作をすることが困難な心身の状態にあることと理解されています。
危険運転致傷罪の法定刑は、15年以下の懲役、そして危険運転致死罪の法定刑は1年以上の有期懲役です。
準危険運転致死傷罪
アルコールや薬物、政令で指定する病気の影響により、その走行中に正常な運転に支障が生じるおそれがある状態で、自動車を運転し、その結果、アルコールや薬物、病気の影響で正常な運転が困難な状態に陥り、事故を起こし、よって人を負傷または死亡させた場合に成立します。
「正常な運転に支障が生じるおそれがある状態」とは、飲酒などの影響で、自動車を運転するのに必要な注意力・判断能力・操作能力が相当程度に低下して、危険な状態にあることをいいます。
例えば、道路交通法の酒気帯び運転に該当する程度のアルコールが体内にある状態であれば、これに該当することになります。
飲酒運転の発覚を恐れて逃亡し、体内のアルコール濃度を下げるなど罪を免れようとした場合には、過失運転致死傷アルコール等影響発覚逸脱の罪に問われることになります。
また、交通事故を起こし、無免許であった場合には、刑罰は加重されます。
そして、ひき逃げをした場合には、救護義務・危険防止措置義務違反となり、これらの違反と過失運転致死傷罪または危険運転致死傷罪とは併合罪となります。
交通事件では、成立する犯罪によって、科され得る刑罰の重さも異なりますので、交通事故を起こし、刑事責任を問われてお困りであれば、交通事件を含めた刑事事件専門の弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。