食い逃げで詐欺罪

食い逃げで詐欺罪

食い逃げ詐欺罪となる場合について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所神戸支部が解説します。

~ケース~
兵庫県神戸市長田区の居酒屋でバイトとして働いるXさんは、若い女性2人組をテーブル席に案内しました。
Xさんは、この女性客から注文を受け料理を運んでいました。
夜の忙しい時間帯でもあったので、他の客の対応に追われていたXさんでしたが、ふと見るとあの女性客らがいなくなっていることに気が付きました。
いつの間に会計を済ませたのかと思ってテーブルの上を見ると、伝票入れには未会計の伝票が入ったままということに気が付きました。
慌てて、店長に報告し、店長とXさんは店を出て、女性客を探し回ると、店から少し離れたところに発見し、Xさんは女性客2人に声を掛けました。
「お客様、お会計が未だだと思うのですが。」と尋ねると、「現金を持ち合わせていないことに気が付いて、近くのATMを探していたところ。」と女性客は回答しました。
店長はすでに兵庫県長田警察署に通報しており、駆け付けた警察官が女性客に事情を聞いています。
(フィクションです)

食い逃げで成立し得る犯罪とは?

レストランなどで料理を注文し、飲食したにもかかわらず、その代金を支払わずにその場を後にすることを「無銭飲食」といい、俗にいう「食い逃げ」のことです。
食い逃げ行為により成立し得る犯罪とは、どのようなものでしょうか。

まず、食い逃げ行為で問われ得る犯罪として挙げられるのが「詐欺罪」です。

詐欺罪

第二百四十六条 人を欺いて財物を交付させた者は、十年以下の懲役に処する。
2 前項の方法により、財産上不法の利益を得、又は他人にこれを得させた者も、同項と同様とする。

詐欺罪の構成要件は、次のとおりです。
【1項詐欺罪
①人を欺いて
②財物を交
③交付させたこと。
【2項詐欺罪
①人を欺いて
②財産上不法の利益を得、または他人にこれを得させたこと。

詐欺罪の行為は、「人を欺いて財物を交付させること」、または「人を欺いて財産上不法の利益を得、または他人にこれを得させること」です。
1項詐欺についていえば、①欺く行為をして、②それに基づき相手方が錯誤に陥り、③その錯誤によって相手方が処分行為をし、④それによって財物の占有が移転し、⑤財産的損害が生ずることが必要となり、①~⑤が客観的に相当因果関係になければなりません。
詐欺罪のポイントは、人を欺く行為によって錯誤に陥った相手方に財物を交付させた、という点です。
つまり、食い逃げ行為が詐欺罪に該当し得るのは、次のケースとなります。
(a)注文する時点ですでに支払いの意思がない場合、
(b)注文時には支払う意思があったが、支払い時にお金がないことに気づき、「お金をおろしてくる」などと嘘を言って支払いを免れる場合
前者については、通常、飲食店で料理を注文する行為は、暗に「後で注文した料理の代金を支払うので、注文した料理をください。」という意味に捉えられますから、支払う意思がないのに支払う意思があるかのように装ったということで、注文行為が欺く行為となります。
その欺く行為により、支払う意思があると騙された店から商品という財物の提供を受けているので、第1項詐欺が成立することになります。
後者は、会計時に支払う意思がないのに支払う意思があるかのように店員を騙して、代金の支払いを免れているので、人を欺き、よって財産上不法の利益を得ていると理解できるでしょう。

さて、ここでふと疑問に思われた方もいらっしゃるのではないでしょうか。
「支払う意思」があったか否か、という人の内面をどのように評価するのか。
その当時の所持金やカードの所持の有無など、客観的に「支払う能力があったのか」という点から、「支払う意思があったか」を判断することになります。
ですので、単に「払うつもりだった」と主張するだけでは、足りません。

詐欺罪をはじめ刑事事件を起こし捜査機関から呼び出しを受けている方、取調べ対応にお困りの方、刑事事件専門の弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。

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